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VMware Cloud Disaster Recoveryのご紹介

仮想化
2022.02.15

皆さま、こんにちは。SB C&Sでバックアップソリューションを担当している臼井です。
今回は、昨年、VMware社からリリースされた新しい災害対策ソリューションであるVMware Cloud Disaster Recoveryについて、ご紹介します。

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VMware Cloud Disaster Recoveryとは?

VMware Cloud Disaster Recovery(以下、VCDR)は、DRaaS ソリューションとして提供されるVMware のオンデマンドのディザスタリカバリサービスです。VMware Cloud サービスの一つであり、クラウドで災害対策を実現します。例えば、オンプレミスにある仮想マシンのバックアップデータは、「DRaaS Connector」と呼ばれる中継アプライアンスによって、クラウド上のストレージ「Scale-out Cloud File System」に送られます。

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災害発生時、VMware Cloud on AWS 上にSDDC を一時的に展開し、クラウドストレージにバックアップされたデータを元にSDDC にフェイルオーバーを行います。遠隔地にあるデータセンターに送るのではなくクラウドを活用することで、設備とインフラ運用管理コストを削減できます。

VCDRの構成要素

1.Protected site(保護サイト)

オンプレミスやVMware Cloud on AWS vSphere環境を保護するために、保護サイトの vSphere環境にDRaaS Connector仮想アプライアンスを配置します。 DRaaS Connectorは、保護サイトとクラウドベースサービス間のデータをレプリケートする役割があります。オンプレミスにはこの DRaaS Connector のみを配置するだけのため、オンプレミス側の構成変更を最小限に抑えられます。

2.クラウドベースサービス

クラウドベースサービスは、 Scale-out Cloud File System SaaS Orchestrator で構成されます。 Scale-out Cloud File System は、Amazon S3をベースとしたセキュアなクラウドストレージで仮想マシンスナップショットの保存先です。 SaaS Orchestrator は、SaaS として提供される管理ダッシュボードです。

3.VMware Cloud on AWS

フェイルオーバー先として VMware Cloud on AWS を活用することができます。災害発生時に VMware Cloud on AWS SDDC を構成し、その SDDC にフェイルオーバーさせます。

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VCDRのアーキテクチャ

VCDRを構成し保護グループを作成すると、VADPVMware vSphere Storage APIs - Data ProtectionVMware のデータ保護フレームワーク) によって仮想マシンのスナップショットが作成され Scale-out Cloud File System にレプリケーションします。

フェイルオーバー時には、仮想マシンのスナップショットが保存されている Scale-out Cloud File System SDDC NFS データストアとして Live Mount され、仮想マシンを起動します。仮想マシンイメージは、仮想マシンの起動後に Scale-out Cloud File System から SDDC vSAN データストアに Storage vMotion されます。この Live Mount によって、バックアップデータを長時間かけてリストアする必要がなく、短い RTO を実現します。

テスト時は、 Live Mount 後に Storage vMotion をするかしないかの選択ができます。仮想マシンのパフォーマンス検証などが必要な場合は Storage vMotion することもできます。

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VCDRのメリット

(1)DRサイト用の大規模な初期費用が不要

VMware Cloud on AWS を活用することにより、物理的なデータセンターの調達から、リカバリサイトで稼働するインフラの構築・運用管理・監視などに係わる費用が不要になります。必要な時にのみリカバリサイトの SDDC を展開することにより、大規模な設備投資を回避することができます。

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(2)シンプルな運用と安全で確実な災害対策

保護サイトやリカバリサイト、リソースなどの構成を事前に定義したリカバリープランを作成しておくことで、有事の際にはプランを実行するだけでフェイルオーバー操作を完了できます。オペレーションを簡素化することで、ヒューマンエラーを回避することが可能です。

また、フェイルオーバーのテストも実施できるため、定期的にテストを実施することで災害発生時に確実な災害対策を実現できます。

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(3)ランサムウェア対策

VCDRは災害対策以外にランサムウエア対策としても活用可能です。仮想マシンの複数のリカバリポイントを保持しているため、リカバリポイントの保存期間を長く設定することで、仮にランサムウェア感染しても攻撃を受ける前の時点のデータに復旧できます。

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簡単にVMware Cloud Disaster Recovery のご紹介をさせていただきましたが、弊社ではVMware Cloud Disaster Recovery の操作手順書を公開しております。下記のリンクからダウンロードいただき、 VMware Cloud Disaster Recoveryの操作イメージを掴んでいただければ幸いです。

尚、本手順書は2021年9月時点のSaaS Orchestratorバージョン7.21.7.0を利用して作成しております。VMware Cloud Disaster Recovery のその後のアップデートにより、表示や機能が一部変更されている箇所がありますが、予めご了承ください。

本手順書は2024年1月時点のSaaS Orchestratorバージョン7.27.0.0を利用して作成しております。VMware Cloud Disaster Recovery のその後のアップデートにより、表示や機能が一部変更されている箇所がありますが、予めご了承ください

著者紹介

SB C&S株式会社
ICT事業本部 ICT事業戦略・技術本部 技術統括部 第3技術部 1課
臼井 守