みなさん、こんにちは。
SB C&Sで仮想化製品のプリセールスエンジニアを担当している、稲葉です。
今回は「VMware Site Recovery Manager」についてご紹介します。
VMware Site Recovery Manager(SRM)は、vCenter Serverに登録された仮想マシンを異なるvCenter Serverに切り替えるため支援ソリューションとなります。リリース当初はオンプレミスのデータセンター間での切り替えが対象でしたが、昨今ではオンプレミス環境同士に加え、オンプレミスとクラウドサービス間の連携も可能となります。
SRMを使用するメリットとしては、主に以下の3点が挙げられます。
1. 仮想化による本番環境とDR先のスペックの違いを吸収可能
仮想基盤を使用することにより、ハードウェアのメーカーや種類、同一スペックなどに依存しない構成でも仮想マシンの稼働を切り替えることができるようになります。
2. 仮想マシンのフェールオーバーのシナリオを自動化
災害発生時に、DRサイトにて仮想環境を復旧させる際、仮想マシンの起動順序やIPアドレスの変更、アプリケーション依存したコマンドの実行などを事前に設定、自動化することができるようになります。
3. DRテストの実現
DRはいざという時に正常に切り替えができるようにするため、日頃からの訓練が必要になります。SRMにはテスト機能も実装されており、DRのシミュレーションを行うことができます。
またSRMの代表的なユースケースでは、計画移行や災害対策、計画メンテナンスなどが挙げらます
1. 計画移行
大量の仮想マシンが稼働している仮想基盤において、機器のリプレースやDCの引っ越しを行う際、計画的かつ迅速に移行を行うことができます。
2. 計画メンテナンス
メンテナンスに伴う一時的な仮想基盤の停止が必要な場合、待機側の仮想基盤へ仮想マシンを迅速に切り替えサービスのダウンタイムを最小にすることができます。
3. 災害対策
自然災害などの物理的な障害において、あらかじめ設定してあるランブックを使用することで、DRサイトにおけるサービスの再開に向けたダウンタイムを最小にします。
SRMの構成にあたりvSphereおよびvCenetr Serverに加えて必要な項目は以下の通りです。
1)VMware Site Recovery Manager Appliance
2)VMware Site Recovery Managerライセンス
3)サイト間のデータをレプリケーションする仕組み
1)VMware Site Recovery Manager Appliance
SRMを構成するためには、本番環境が稼働するサイトとDRサイトそれぞれにSRMを配置する必要があります。SRMのバイナリーはVMware Customer Connectよりダウンロードすることができます。
2)VMware Site Recovery Managerライセンス
SRMを使用するためには、保護する仮想マシンの台数に応じたSRM用のライセンスが必要となります。最低購入数は25VMからとなり、ライセンスの種類としては「Standard」と「Enterprise」があります。
DRを構成するための基本的な機能として「Standard」ライセンスで十分となりますが、1サイトの保護する仮想マシン台数の上限が75VMと規定されています。つまりSRMにより保護対象となる仮想マシンが76台以上となる場合、「Enterprise」が必要になります。「Enterprise」では保護する仮想マシン台数に制限はありません。
SRMのライセンスの適用場所は、vCenter Serverの「ライセンス」-「資産」-「ソリューション」配下となります。データ転送が一方向であれば、データ転送元のvCenter Serverに、双方向であれば両サイトのvCenter Serverに購入したSRMのライセンスキーを登録する必要があります。
SRMのエディション紹介
https://www.vmware.com/jp/products/site-recovery-manager.html
SRMのライセンス適用
https://docs.vmware.com/jp/Site-Recovery-Manager/8.7/com.vmware.srm.install_config.doc/GUID-24CEDBC5-442A-498E-95DF-81E061CC1A0E.html
3)サイト間のデータをレプリケーションする仕組み
SRMはサイト間の切り替えを行う場合の処理を監視し、事前に定義したランブックの処理を実行する仕組みであり、仮想マシンのデータを転送する機能は所持しておりません。そのため、仮想マシンのデータをサイトからサイトへ転送するための仕組みが別途必要になります。SRMと連携できるレプリケーションの仕組みは主に2つとなります。
A:vSphere Replicationによるデータ同期
B:ストレージスナップショットを使用したデータ同期
A:vSphere Replicationによるデータ同期
vSphere Replicationによるデータ同期では、各サイトの仮想基盤上にvSphere Replication Applianceを配置する事で、ストレージに依存しないレプリケーション構成を築くことができます。またvSphere Replicationを使用するためのライセンスとして、vSpher Essentials Plus以上であれば使用することができるため、仮想マシンのリソースが満たせれば、簡単に導入することができるソリューションとなります。
vSphere Replication ApplianceのバイナリはVMware Customer Connectよりダウンロードすることができます。
B:ストレージスナップショットを使用したデータ同期
ストレージスナップショットを使用したデータ同期を用いる場合、SRMと連携するストレージを用意する必要がありますが、スナップショットの機能をvSphereからストレージにオフロードすることができるため、vSphere Replicationより迅速なスナップショットの取得および、効率的なレプリケーションにつながります。
SRMと連携できるストレージの互換性はVMware Compatibility Guiesより確認することができます。
以上を踏まえ、SRMを構成した基本的な構成図がこちらとなります。
レプリケーションの構成はvSphere Replication、ストレージスナップショットを使用したレプリケーションのいずれかを選択して構成することも、両方を共存させることも可能です。
Site Recovery Manager でのアレイベース レプリケーションと vSphere Replication の使用
https://docs.vmware.com/jp/Site-Recovery-Manager/8.7/com.vmware.srm.admin.doc/GUID-E0A3B7FA-E3A9-4C17-A300-26593FE78DB1.html
今回はSite Recovery Managerのメリット、ユースケース、必要な構成をご紹介させていただきました。次回は実際の「Site Recovery Manager」の操作画面や、DRテストの流れをご紹介していきます。
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著者紹介
SB C&S株式会社
ICT事業本部 技術本部 第3技術部 1課
稲葉 直之
静岡出身で大阪に就職職してはや十数年。お茶と日本酒をこよなく愛し、現在は仮想化及びその周辺のプリセールスエンジニアとして日々修行中。