
こんにちは、SB C&Sのストレージ担当 中田です。
今回は、Dell Technologiesのストレージ製品「PowerStore」の検証を行ってまいりました。その一部始終を皆さまにお伝えいたします。
PowerStoreとは
以前別の記事にて、Dell Technologiesのストレージ製品についてまとめさせていただきました。PowerStoreの概要について、まずはこちらをご覧いただければと思います。
系譜から学ぶ、Dell Technologiesのストレージ製品ラインナップ - PowerStore
さて、このPowerStoreですが、従来はXシリーズとTシリーズの2種類がありました。(現在はXは終息済み)
それぞれ以下のような特徴があります。
Xシリーズ(終息済み)
PowerStore内部にESXiがインストールされています。そのため、ストレージとしての利用に加え、PowerStoreX上で仮想マシンを直接動作させることが可能です。ただし、ストレージとしての利用はブロックのみとなります。
Tシリーズ
ブロックに加え、ファイルも利用可能なユニファイドストレージです。ファイル機能を利用したい場合はTでしか利用できません。
また、各シリーズ内に幾つかのモデルがあり、第1世代PowerStoreでは1000/3000/5000/7000/9000の5種類、第2世代PowerStoreでは500/1200/3200/5200/9200の5種類が展開されています。そのため、今回検証で利用した PowerStore1000Tは、第1世代PowerStoreの中のエントリーモデル、かつユニファイドで利用可能なストレージ、といった位置付けの製品となります。
ちなみに、本機器は弊社にて貸出を行っている機器です。貸出をご希望の場合は、SB C&S営業担当までお声がけください。
その1 : 各種ハードウェアを探ってみた
メタリックなドライブの外装がかっこいい
届いたPowerStoreがこちらです。2Uの本体に、前面に2.5インチのドライブベイがSlot0-24の計25本分あります。Slot 21〜24はNVRAM用のスロットのため、ベースシャーシに搭載可能なSSDは、Slot 0〜20の21本となります。本検証機では、ドライブに1.92TB SSDが6本搭載されています。 "NVMe" の文字が見て取れるように、NVMe対応のSSDとなっています。
また、サポートや後述のCloudIQの登録等で必要となってくるサービスタグ(シリアル)はSlot16と17の間のタグに記載がありますので、こちらを参照してください。

ベゼルもかっこいい
付属品はケーブル類やベゼル、ラックマウントレール等です。付属のケーブル類は構成によりますので、あくまで「SB C&Sから検証機を借りたらこういうセットで届くんだな」と考えていただけると幸いです。

SSDがこちらです。一部シリアル等マスクしてありますが、調べたところTLCのSSDでした。
NVRAMがこちら。8GB NVRAMです。ノード上ではなく独立したモジュールとして搭載されているので、障害時の交換などが影響最小限で済みそうなのは良いですね。
1000Tはエントリーモデルのため2本のみですが、5000T/X以上では4本搭載となります。
偶数本搭載であることからお気づきの方もいるかもしれませんが、NVRAMは2本1組でペアを構成しており、NVRAM上に書き込まれたデータは、ペアのNVRAMにミラーされます。単一障害点をなくす仕組みの一つですね。

ラックマウントレールは最近多い、ラックの奥行きに合わせてレールを伸ばして金具を噛み合わせるだけの、ドライバーいらずのタイプです。

シャーシ背面およびそこから取り出した各モジュールの写真がこちら。上下段で向きを逆にする形で、2台のコントローラーおよび2台の電源が搭載されていることがわかります。下段がノードA、上段がノードBです。
また2、3枚目の写真を見ていただくとわかるとおり、各種ポートがモジュール単位で分離される形で搭載されています。交換や増設の際にノードごと抜く必要がないので障害時の対応による影響も最小限で済むなど、保守性の面で嬉しい形ですね。
各ポートの役割は以下のとおりです。

I/Oモジュールや電源の奥には、上下段それぞれにメモリやCPU、ファンなどが搭載されたコントローラーがあります。
今回検証に使用したPowerStore1000Tには、ノードごとに2CPU, 16GB×12本=192GBのメモリが搭載されていました。ノード2台はアクティブ/アクティブで動作します。
また、NVRAM用のバッテリーも各ノードに搭載されています。データをミラーするNVRAMのペアとバッテリーの接続先は襷掛けになっており、単一障害点を排除した構成になっています。

さらに、メモリ搭載部の中央には、OSやログの保存先等としてM.2 SATAデバイスも搭載されています。両面に240GB(DRIVE0)と120GB(DRIVE1)のM.2 SATA SSDが搭載されており、240GBのSSDはプライマリとして、120GBの方は障害時のリカバリなどで利用されるようです。
その2 : いざラッキング
レールの仕様も手伝い、ラッキングは非常に簡単でした。
まずはレールの取り付けです。角穴タイプのラックでの設置でしたが、ドライバーやケージナットなども必要なく、非常にスムーズにセットできました。

背景の結線が見苦しい
シャーシだけでも60kgほどの重さがありますので、ラッキングは必ず2人以上で実施してください。
人数さえいれば、ラッキングは非常に簡単です。本体側に取り付けるレール等は特になく、本体をレールの上に載せて奥まで滑らせ、前部を固定すれば完了となります。(なお、前部の固定にはドライバーが必要となります。)
その2 : 初期セットアップ
初期セットアップは、サービスポートにアクセスして実施します。サービスポートには、それぞれ以下のIP/サブネットマスクが割り当てられています。
ノードA : 128.221.1.250/24
ノードB : 128.221.1.251/24
今回は、128.221.1.200をPCのNICにセットし、ノードBのサービスポートに接続して初期セットアップを実施しました。
ブラウザから128.221.1.251にアクセスすると、GUIが表示されます。デフォルトのユーザー名およびパスワード(Admin/password123#)を入力して設定を開始します。

ログイン後、EULA(End User License Agreement)の同意を経て、クラスター作成に移ります。
ここで注意が必要となってくるのが「Storage Configuration」の項目です。

この項目は「Unified」と「Block Optimized」の選択肢からわかるとおり「ユニファイドストレージとして利用するか、それとも(ブロックしか利用しないから)ブロックに最適化させるか」を選択する項目です。恐らく、ユニファイドにするとストレージのコンピュートリソースを一部割くことになるので、「Block Optimized」の選択肢が用意されているものと思われます。
この選択肢は後から変更ができませんので、慎重に選んでください。
また、クラスターに追加するPowerStoreが他にある場合には、この画面で追加が可能なようです。今回は1アプライアンスのみでのクラスターの構成となりますので、追加はしていません。
続いて、AdminアカウントおよびServiceアカウントのパスワード設定画面となります。AdminアカウントはPowerStore Manager(PowerStoreのGUI)へログインし各種操作を行う際の管理者アカウント、Serviceアカウントはトラブルシュート等に利用するアカウントです。保守の際などにはサポートにサービスアカウント情報を伝えることもありますので、その前提でパスワードを設定してください。

次に出てくるのが「Fault Torerance」の設定画面です。

PowerStoreは、拡張シャーシ含むアプライアンス全体で一つの大きな容量プールを構成し、そこから実データの書き込みベースで容量を消費します。ここでは、その容量プールを構成するシャーシやアプライアンス内のドライブの耐障害性を「Single Drive Failure(=ドライブ1本障害まで耐えられる構成)」or「Double Drive Failure(=ドライブ2本障害まで耐えられる構成)」の2つから選択します。ドライブ単位で指定して細かくRAID構成を行うような製品と比較すると、シンプルに構成できる点は個人的には好感を持てます。
なお画像の注意事項に英語で記載の通り、これも一度構成してしまうと後からの設定変更はできないため、事前に容量含め計画しておく必要があります。
また、今回検証に利用した1000TはSSD6本の最小構成のため、画像ではSingle Drive Failureのみ選択可能となっています。(Double Drive FailureはSSD7本以上で選択可能)
次は、ネットワーク関連の設定画面です。


基本的には画面の内容に従い入力すれば問題ありません。1点分かりづらい点として「Management Network IPs」の項目で設定するIPアドレスレンジは「アプライアンス管理IP」「ノードA管理IP」「ノードB管理IP」にそれぞれレンジ内の若番から設定されますので、ご注意ください。
次に、vCenter Serverのネットワーク情報およびクレデンシャル、PowerStoreのAdminユーザーのパスワードを入力する画面が表示されます。

これはオプションの項目ですが、ここでvCenter Serverの情報を入力すると、vCenter Serverを通じて各ホストにVASAプロバイダが登録されます。後からでも設定可能なため、今回初期設定では割愛しております。
上記ののち、確認画面が表示されます。

構成をチェック(Validate)しチェックが通ると、クラスターの構成が可能となります。
構成中、GUIとの接続が切れます。その後クラスター管理IPへ接続し、クラスターの構成が完了していることが確認できました。
その3 : ストレージOSのアップグレードと言語パッケージの導入(任意)
工場出荷時のバージョンが最新のものではないなどにより、PowerStoreOSのアップグレードが必要となる場合があります。アップグレード先のバージョンは、必要な機能がどのバージョンでサポートされているか、現在のターゲットコード(※信頼性の高いバージョン)、アップグレードパスなどを考慮し決定してください。上述の各種情報は、以下のURLから確認可能です。
https://www.dell.com/support/kbdoc/ja-jp/000175213/powerstoreos-matrix
今回は、現時点(2024年1月)で最新のターゲットコードとなっている、PowerStoreOS 3.5.0.2へのアップグレードを実施しました。(3.0.0.0からのアップグレードとなります)
アップグレード先のバージョンが定まったのち、アップグレードファイル、およびアップグレード前のヘルスチェックのためのファイル、言語パッケージのダウンロードを行いました。言語ファイルはPowerStore Managerの表示言語を変更するために必要なファイルです。デフォルトではEnglishのみしか利用できませんが、言語ファイルを追加することにより、言語設定に8ヶ国語(日本語、ドイツ語、韓国語、中国語、フランス語、スペイン語、ポルトガル語、ロシア語)が追加されることが確認できました。
また各種ファイルは、以下のURLより各製品のサービスタグを入力しダウンロードできます。
https://www.dell.com/support/home/ja-jp

OSアップグレードファイルの容量は5.5GBでした
クラスター管理IPへ接続し、構成時に設定したAdmin/Passwordにてログインを行います。
ログイン後、右上の「Settings」をクリックし、「Cluster」 > 「Upgrades」を開きます。

「UPLOAD PACKAGE」をクリックするとエクスプローラーが立ち上がり、そこから各種ファイルのアップロードが可能です。完了すると、以下のように一覧にファイルが表示されます。

その後、ヘルスチェックを実行しました。問題なく完了したのが以下の画面です。
ヘルスチェック完了後、OSのアップグレードを実施しました。再起動を経てアップグレードが完了すると、以下のようにバージョンが上がっていることが確認できました。


なお、言語パッケージも同様の形でアップロード、適用が可能ですので、今回詳細は割愛いたします。
その4 : 構成後の容量の見え方
バージョンアップや言語パッケージの適用が終わったところで、PowerStore Managerから容量を確認しました。

スクリーンショットの赤枠部分を見ていただくと分かるとおり「ベース2に6.4TB」「ベース10に7.0TB」と書かれています。ここでの「ベース2 / ベース10」とは「2進数表記/10進数表記」を表しています。そのため「6.4TiB / 7.0TB」がストレージ容量として表示されていることがわかります。
なぜ1.9TBのSSDが6本(Single Drive Failure)で7.0TBなのかを少し補足すると、PowerStoreOSにはDRE(Dynamic Resiliency Engine)と呼ばれるアルゴリズムが組み込まれています。DREにより、パリティおよび従来スペアディスクとして用いられていた容量が分散されて配置されています。パリティで1本分、スペアディスク容量として1本分の容量が必要となり、これがオーバーヘッドの大部分を占めています。
DREの詳細については、以下のpdfのP29「DRE overview」に詳しく記載されておりますので、詳細を知りたい方はこちらをご覧ください。
その5 : SupportAssistの有効化とCloudIQへの接続(任意)
CloudIQとは、Dell Technologiesの提供するクラウドベースの管理・監視ツールです。PowerStoreをはじめとしたストレージはもちろん、サーバーやスイッチまで一括して管理・監視が可能です。
またSupportAssistは、Dell Technologiesのエンジニアがリモートアクセスするのに必要な設定です。障害時にDell Technologiesのエンジニアが迅速にアクセスできるようになり、障害を迅速に解決することを可能とします。
これらはデフォルトでは無効となっています。本検証ではこの有効化を実施しました。
なお、管理ポートのインターネット接続が必要となりますのでご注意ください。また、CloudIQの閲覧にはDell Technologiesのアカウントが必要となります。
また、詳細な要件は以下のP17「SupportAssist」をご確認ください。
しかし検証とはいっても、PowerStoreで上記へ接続するのみであれば詰まるようなことは特にないかと思います。と言うのも、PowerStoreではSCG(Secure Connect Gateway)を別途立てる必要はなく、PowerStore本体から直接、CloudIQとの接続を確立できるためです。(SCGを介しての接続も可能です)
今回はPowerStoreでCloudIQへ接続することのみが目的なので、SCGを介さない直接接続を設定しました。
PowerStore Managerへログイン後、右上の「設定」をクリックし「サポート」 > 「サポート接続」を開き、必要な情報を入力してください。(以下では、言語パッケージを適用しUIが日本語になった前提で操作を進めます)

上記を入力後「適用」をクリックします。
続いて、画面上部の「サポート接続」をクリックします。
「有効」のトグルをオンにし、「直接接続」のラジオボタンをクリックします。
続けて「CloudIQへの接続」にチェックを入れます。リモートサポートについては、エンジニアのアクセスの必要に応じて有効化するなど運用によって変わってくるかと思います。

以上で、筐体側での設定は完了です。
問題がなければ、以下よりCloudIQ上での確認が可能となります。
https://cloudiq.dell.com/ui/index.html#/overview

なお、各機器の情報はSiteIDに紐づいており、アカウントで閲覧可能なSiteIDに機器が紐づいていない場合、サイト上から確認できない場合があります。その際はDell Technologiesのサポートへサービスリクエストを上げ、SiteIDの付け替えを実施する必要があります。(今回私もSiteIDが紐づいておらず、SRを上げてご対応いただきました)
最後に
今回は検証記事の前編ということで、HW周りについて深掘りしたり、初期設定等について実施事項やDell Technologiesのドキュメントに基づき、簡単にですがまとめさせていただきました。
初めてPowerStoreをセットアップしましたが「他のDell Technologies製品と比較すると、シンプルさを非常に意識した、今風な製品だな」というのが率直な感想です。
また、サポートサイトやKB、ドキュメントなども日本語対応がかなり進んでいる点は、製品自体の評価とは別の観点から、非常に便利に感じました。(もちろん、英語ドキュメントの方が最新なので、ものによっては英語ドキュメントを並行して確認することは必要ですが)
英語ドキュメントばかりだと、言語的な得意不得意は置いておいても「このメーカーは今後この製品で日本市場にどれだけ目を向けて、意見を反映してくれるんだろう」と少し不安になったりしますよね。その点、この製品は第2世代で500Tという、第1世代より小さい構成が出ていることもありますし、日本市場もかなりターゲットとして重く見てくれているのかな、というのが私見です。
次回は後編ということで、PowerStoreの気になる機能面や操作性について、今回同様感想を交えつつ書かせていただきたいと思います。次回もぜひご覧ください。
Dell Technologiesの製品一覧はこちら
著者紹介
SB C&S株式会社
ICT事業本部 技術本部 技術統括部 第1技術部 2課
中田 浩嗣 - Hirotsugu Nakata -
VMware担当を経て、現在ストレージ担当の中でもPure Storageを専任に担当するプリセールスエンジニア

