SB C&Sの最新技術情報 発信サイト

C&S ENGINEER VOICE

SB C&S

系譜から学ぶ、Dell Technologiesのストレージ製品ラインナップ

ストレージ / HCI
2023.11.14

 こんにちは、SB C&Sでストレージ製品を担当している技術の中田です。
いきなりですが、大手外資系ベンダーのサーバーやストレージの製品ラインナップって、買収による社名変更やブランド名変更などが頻繁にあり、ぶっちゃけるとわかりづらくないですか?
私が新卒で入社したのはDellがEMCを買収した頃でしたが、その頃から製品を覚えるのに苦労していた覚えがあります。
そんな迷える人のため、この記事では(ストレージのみではありますが)各製品の系譜を押さえたうえで、どのような特徴がある製品なのかを説明しようと思います。

※記事内ではDell EMCであった期間も、現在の会社名である「Dell Technologies」と記載しています。
※この記事は2023年10月時点での情報をもとに書いております。

 

PowerMax

powermax.png

 PowerMAXは元々「Symmetrix」という名前でEMCが作った製品でした。作られた当時はメインフレーム向けの製品として作られましたが、のちに対応範囲をオープンシステムにまで広げ、「VMAX」「PowerMAX」と製品名を変更していき、現在の形に至っています。

 Dell Technologiesのストレージポートフォリオ全体で見てみると「Max」の名の通り最上位に位置し、高性能、高可用性に重きを置いた製品です。
ただし、PowerMAXリブランディング以降では下位モデルも登場しているため、従来よりも幅広いニーズに応えられるようになっています。また、マルチノードでのスケールアップにも対応しており、実行容量ベースで最大18PBもの容量が実現可能となっています。

 そんな製品思想からも分かるとおり、この製品は「高い性能」を必要とする用途(データベースやアプリケーション基盤)、また「高い可用性」を必要とするミッションクリティカルな環境(金融、医療等)で多く導入されています。

 

PowerScale

powerscale.png

 PowerScaleは元々「Isilon Systems」という会社が作ったNAS製品です。

Isilon SystemsをEMCが買収、そのEMCをDellが買収し、その後の「Power〇〇」へのリブランディングの流れの中で、現在の「PowerScale」へ至っています。かなり直近までIsilonの名前は使われていたので、Isilonの方が馴染みのある方も多いかと思います。

 そんなPowerScaleのリブランディングですが、個人的にはわかりやすい名前になってよかったのではないかなと思います。というのも、PowerScale最大の特徴はこの"Scale"に表れている通り「スケールアウト」だからです。
PowerScaleには、オールフラッシュのハイパフォーマンスモデル〜HDDのみのアーカイブ向けモデルまで、幅広いモデルがあります。PowerScaleはこれらを、世代やモデルを超えた組み合わせでスケールアウトし、一つのファイルシステムとして構成することができます。

さらに、この「世代を跨いで」実施できるスケールアウトはストレージ更改にも活かすことができ、新しいノードの追加と古いノードの削除によって、データ移行なしにリプレイスを実施することができます。

また、複数の性能の異なるストレージによる巨大なファイルシステム内での階層化にも長けており、ハイパフォーマンスノード〜アーカイブノード、果てはクラウド領域にまでアーカイブを実施することができます。クラスター化すれば、rawで最大で100PBを超える容量も実現可能です。

 そんなPowerScaleですが、主に活躍する用途は「非構造化データの格納」となります。デジタルコンテンツの提供やデータ分析、それらのアーカイブなどの事例が多いです。

『企業で急速に増大する非構造化データの格納先を、PowerScaleに全部まとめてもらおう。データの増加に応じてスケールアウトで対応してもらおう。データのアクセス頻度に応じて階層化して、効率的にストレージを利用してもらおう。』

というのが、PowerScaleの設計思想となっています。

 

UnityXT

unityxt.png

 UnityXTは、図を見ていただくと分かるとおり複雑な系譜を辿ってきた製品です。元々はData Generalという会社が作ったCLARiXという製品で、EMCに買収されたのちファイル機能も追加されたVNXとなり、その後Unityブランドになりました。

 そんなUnityXTですが、その系譜からも分かるとおりユニファイドストレージです。ブロック、ファイルの両方に対応しています。
また、構成としてもハイブリッド、オールフラッシュ構成の選択が可能となっております。これらから分かるとおり、パフォーマンスにおいてもアプリケーションにおいても、幅広いワークロードへの対応が可能な、非常に器用なストレージです。データベースでもVDIでも仮想化基盤でもファイルサーバーでも、多くの導入事例があります。

 

PowerStore

ps.png

 Unityの複雑な系譜とは異なり、Dell Technologiesがいちから作ったミッドレンジ向けストレージ製品が「PowerStore」です。

PowerStoreができたのはUnityXTの発売後である2020年と、非常に最近です。これには、Dell発のストレージとEMC発の製品で乱立していたミッドレンジ向けのストレージを一本化する、という狙いがあったようです。

製品の立ち位置はUnityと非常に近く、幅広いワークロードに対応可能な器用なストレージです。しかし、UnityXTとは異なりオールフラッシュのみでの構成(ハイブリッド構成はない)となります。
また逆に、PowerStoreから実装されたサービスとして「Anytime Upgrade」というものがあります。これは、ストレージ購入時に加入していれば、ストレージノードを次世代モデルへアップグレードできる、というオプションです。これによりストレージのデータ移行や買い替えを減らすことが可能となります。

 

PowerVault

vault.png

 PowerVaultは、本家本元がDellのストレージ製品です。

Dell Technologiesのストレージ製品ラインナップ内での立ち位置としては、エントリーレベルとなっています。
しかし一言でエントリーと言ってもシリーズによってそのラインナップは大きく異なっており、NASシリーズ、DAS/SANに対応したブロックストレージシリーズ、テープ装置シリーズなどがあります。
またブロックストレージのラインナップにはオールフラッシュ、ハイブリッド、オールHDDのラインナップもあるなど、幅広いニーズに応えられるラインナップもあります。

 ただし、他製品と比較すると機能が豊富というわけではない、スケールアウト型ではなくユニファイドにも対応していないため、ストレージの統合や拡張性といった面が差別化ポイントかと思います。非常にシンプルな製品です。

 上記のため、用途は単純なデータの格納先〜バックアップ等の用途が主に見込まれますが、オールフラッシュ構成も可能ですので、要件によってはその他色々な用途で利用していただくことが可能かと思います。

 

PowerProtect

dd.png

 PowerProtectは、元々DataDomainという会社が作ったバックアップ用ストレージアプライアンスです。EMCに買収されたのち、Dellの買収後もDataDomainのブランド名のまましばらく販売されていましたが、リブランディングの流れの中でPowerProtect DDという名前になりました。
なお、DataDomainの時代から「DD」の愛称で呼ばれていたため、「DD」が製品名に入ったのは最近であるものの、DDの名前はかなり浸透しております。
また、現在PowerProtectにはPowerProtect DDの他に、バックアップソフト(Avamar)等を全て統合したバックアップアプライアンス製品シリーズ「PowerProtect DP」もあります。

 バックアップ用ということで、優秀なデータ削減技術や、その負荷を分散させる専用プロトコルなど、バックアップデータの保存に最適化された機能が備わっています。
そもそもDataDomainは、世のバックアップがテープからディスクに移行する中で、ディスクバックアップの世界に早期から可変長重複排除を導入した会社でした。バックアップデータ、とくにフルバックアップともなれば重複部分は非常に大きくなってくるので、重複排除技術は非常に有用だったわけです。

Dellの買収後は仮想アプライアンス版のDataDomain「DDVE」も登場し、クラウドでもオンプレミスでも、この優秀な重複排除技術を利用できるようになっています。

 

ECS

ecs.png

 ECSは元々「Elastic Cloud Storage」という名前でEMCから販売されたソフトウェア製品です。これがDellに買収されたのち「Dell ECS」として販売されるようになりました。現在は、ECSをPowerEdgeにインストール済みのアプライアンス製品、およびソフトウェア製品の両方が提供されています。

ECSは、S3対応のオブジェクトストレージを提供します。世間にパブリッククラウドのオブジェクトストレージが認知され始めたころ、このオブジェクトストレージの便利さをオンプレミスでも利用できるようにして、さらにオンプレミスとクラウド間でのデータ移行も簡単にできるようにしよう、という思いからできたソフトウェアです。そのため、パブリッククラウドのオブジェクトストレージに準じ、非構造化データのバックアップやアーカイブ用途での利用が主となっています。

 

PowerFlex

powerflex.png

PowerFlexは、元々はScaleIOという製品でしたが、それをEMCが買収し、その後ハードウェアアプライアンス製品も販売されるようになりました。そしてVxFlex、PowerFlexというリブランディングがなされ、現在に至ります。

そんなPowerScaleは、一言でいうと「分散スケールアウト型SDS(Software-Defined-Storage)製品」です。汎用サーバーにインストールすることで、最小3台〜最大1000台の規模まで拡張可能となっています。

また単純なSDSだけでなく、コンピュートノード用のモジュールをサーバーに導入する、もしくはアプライアンスを購入し構成することで、HCIのような使い方も可能となっています。

 

まとめ

いかがでしたでしょうか。現在に至る流れで覚えることで、より記憶に残るのではないかなと思っています。

また、お客様等との会話の中で、昔話になることはよくあると思います。そういう時に今回の記事を思い出して、役に立てていただければ幸いです。

Dell Technologiesの製品一覧はこちら

著者紹介

SB C&S株式会社
ICT事業本部 技術本部 第1技術部 2課
中田 浩嗣

VMware担当を経て、現在ストレージ担当の中でもPure Storageを専任に担当するプリセールスエンジニア