皆さまこんにちは、SB C&S 中田です。
6月18〜21日までの4日間、ラスベガスにてPure Storageの年次イベント「Pure//Accelerate 2024」が開催されておりました。我々SB C&Sも17日から現地に赴き新情報を入手してきましたので、今回はイベントの様子と合わせ新情報を皆さまにお届けしようと思います。ぜひ最後までお読みください!
1. 開催概要 |
Pure//Accelerate 2024は、上記の通り現地時間にて6月18 - 21日(うち18日はパートナー向け)の全4日間に渡って、昨年同様ラスベガスのホテル「Resort World Las Vegas」にて開催されました。
(余談ですがホテル「Resort World Las Vegas」の基調色も赤やオレンジなので、Pure Storageと色的に相性がいいのかなと個人的に思っています)
空港やホテルにも広告が掲示されており、Pure Storageの勢いがうかがえます。
2. キーノートと発表内容について |
今回のAccelerateでは、20日午前、21日午前、21日午後の計3回に分けてKeynoteセッションが行われました。時系列順でその内容をご紹介いたします。
キーノート 20日午前
初日のキーノートは、Pure Storageらしい派手なバンドの演奏のち、マーケティングの最高責任者であるLynn Lucas氏の挨拶によりはじまりました。
Lynn氏は、昨今のデータ量の急激な増大やAI、サーバーセキュリティなどの問題提起を行ったうえで、本日からの2日間のキーノートでこれらの問題へのPure Storageの「データストレージ」としてのアプローチを見てほしいとして、CEOであるCharles Giancarlo氏にバトンタッチします。
▲ 回転する舞台装置でのおしゃれな登場
Giancarlo氏は、改めて現代のITが直面していることとして、以下の4つを挙げました。
・AI
・Cybersecurity
・Application Modernization(アプリケーションの近代化)
・Hybrid Cloud Optimization(ハイブリッドクラウド最適化)
またこれらに対する課題として、以下の4つをあげています。
・Manual IT Provisioning and Optimization(手動でのITのプロビジョニングおよび最適化)
・Solid Fragmented Data(断片化された利用しづらいデータ)
・Disruptive Upgrades(サービス停止を必要とするアップグレード)
・Inefficient and Complex to Manage」(非効率で複雑な管理)
そして「課題を解決するには、いままでとは考え方を変える必要がある」とアインシュタインのセリフを借りて述べ、上記の課題を解決するためにエンタープライズのストレージに求められているものは「クラウドライクなストレージ」であるとしました。
そしてPure Storageは(クラウドライクなストレージとして)これらの課題を以下の4つで解決するとしています。
・無停止アップグレードと最新のストレージを提供する「Evergreen」
・クラウドでもオンプレでもユニファイドストレージを柔軟に利用できるOS「Purity」
・管理の効率化と運用の自動化などのための「Pure Fusion」
・クラウドライクな利用形態やスケールの柔軟性と、SLAの保証を行う「Storage as a Service」
上記によって、TCOの削減や運用の効率化、信頼性の向上や省電力/省スペース化を進め、皆さまを「"New Data Era"(新たなデータの時代)に導く」としました。
続いて登壇したのは、Core Platform Business UnitにおけるGeneral ManagerであるShawn Hansen氏です。
Hansen氏のパートでは昨年同様、アップデート情報の発表が行われました。Hansen氏は「AIは企業のインフラを複雑にする」としたうえで、従来の企業のインフラにより簡単にAIを組み込めるようにする、以下2つのアップデートを発表しました。
①NVIDIA DGX Superpod Certification
NVIDIA DGX Superpodは、NVIDIAのAIワークロード等で用いるストレージ「NVIDIA DGXサーバー」をはじめとしたハードウェアと管理ソフトウェアなどがセットになった大規模AI用途向けシステムとなります。本製品に組み込むことのできるストレージとしての認定の取得を、年内に行うとしています。
②Secure Application Workspaces
Secure Application Workspacesは、KubernetesとPortworx、Pure Fusionの組み合わせによって実現され「アプリケーションは独立性や制御を失うことなく AI に安全にアクセスできる」とのことです。
またこれに加えて「AI Copilot for Storage」を発表するとしました。Copilotは "副操縦士" の意味を持ちます。ストレージ管理者を補助するツールとして、大規模なAIストレージ群とその中のデータを、自然言語を使用して「シンプルに」保護および管理できるようになる、としています。
また、上記の中核を担うPure Fusionについては今後Purityをアップデートするだけで使えるようになる(=Purityに組み込まれる)こと、段階(下記画像参照)を経て進化していくことが言及されました。
Pure FusionがPurity組み込みで利用できるようになることで、個人的には今後のPure Storage製品のマルチテナント機能などの進化に期待しております。
続いて登壇したのは、DX Business UnitのGeneral ManagerであるPrakash Darji氏でした。
Prakash氏は最初に、ライドシェアサービスのUberを例に挙げました。Uberを利用する人は、車にガソリンをいれることなく、車の操作方法を知ることもなく、事故のリスクも負わずに、シンプルに目的の場所を伝えて目的の場所に移動したいだけです。
同じようにStorage as a Service(STaaS)も「ストレージを所有する必要なく柔軟に、アプリケーションに対するパフォーマンスと容量のSLAを設けて、操作方法を学ばずにストレージを利用できる。」とSTaaSの利便性について述べました。
また、Pure StorageのSTaaSであるEvergreen//Oneと他社の提供するオンデマンドモデルとの比較を述べ、他社に勝っている点として「ハードウェアの選択の柔軟性」「常に最新のハードウェアを利用できること」「シンプルな操作性」などを挙げました。
加えてEvergreen//OneのSLAには、管理面および電力効率観点でのSLAの追加およびアップデートが入っていること、「AI-Powered Security Assesment(AIを用いた運用セキュリティの評価)」「AI-Powered Anomaly Detection(AIを用いた異常検出)」「Cyber Recovery SLA(サイバー攻撃に遭った際のクリーンデータの復旧の保証)」「Resilience SLA(セキュリティ上の問題の解決)」といった新機能が追加されることも言及されました。
そしてここまでのSTaaSとSLAについての話を踏まえ、新たなSTaaS「Eergreen//One for AI」が発表されました。
これは現在、AIワークロードを考えた際にもっとも高価なハードウェアである "GPU" を常にに最高効率で利用するためのサブスクリプションであり、具体的にはストレージのスループットをSLAとして定義するものだ、としています。
続いて登壇したのは、R&D - Customer EngineeringのVice PresidentであるShawn Rosemarin氏です。
Rosemarin氏は今後、クラウドシフトおよびコンテナシフトがますます進むこと、そして将来的にはほとんどのアプリケーションがKubernetesでサポートされるようになることを示唆しました。
そしてこのような将来に向けての課題として、大規模なコンテナの管理コストと、ハイブリッドクラウドにおけるコンテナ管理の複雑さを挙げました。
上記のような問題について、Pure Storageはデータ保存領域の観点において、PortworxおよびCloud Block Store(CBS)そしてPure Storageの提供するSTaaSプラットフォームを組み合わせることで解決できる、と述べました。
その後、イギリスのPure StorageカスタマーであるTHGとの対談セッションが行われたのち、創業者でありChief Visionary OfficerでもあるJohn "Coz" Colgrove氏が登壇しました。
▲ 半袖短パンはCoz氏のトレードマークです
Coz氏は、昨年のPure//Accelerateで75TB DFMの発表とともにロードマップとして語っていた150TBのDFMの実物を手に発表を行いました。また、来年は300TBモデルを発表するとして、300TB DFMの3Dプリントモデルを観客に見せました。
昨年も本会場にいた私としては、実物を目にすることで「本当に1年ごとに容量密度が倍になっていくこと」を実感し、非常に驚きました。
またDFMの発表ののち、Coz氏のセッションでは「Pure1 New Security Assessment(NIST 2.0標準に沿ったセキュリティリスクの評価を実施)」「AI Copilot for Storage」「Pure Estimate(Evergreen//One移行時やストレージ統合時のコスト試算が可能なツール)」のデモが各セクションのテクニカルディレクターとともに行われました。
その後、Lynn氏が再び登壇しカスタマーとして「NTT Data」および「Indiana Office of Technology」の表彰を行い、Day1のKeynoteは終了となりました。
キーノート(21日午前)
21日午前のKeynoteは、昨日に続きLynn氏の挨拶ののち、CTOのRob Lee氏が登壇しました。
Lee氏は昨今のAIについて、基礎モデルをトレーニングしたいのか、既存のモデルを専門化し、自分たちの組織のデータと結びつけることでより専門的な結果を得たいのかなど、多くの使い方や戦略があるが、すべては "データ" に依存している、と語ります。
そのため、データの取扱い方法をより良く変えることこそが必要であり、Pure Storageは昨日のKeynoteにて話したNVIDIA DGX Superpodの認定取得やEvergreen for AIといったものをはじめとし、どのような戦略・手法を取る顧客に対してでも最良のストレージを提供できる唯一の企業である、と述べました。
そして、ゲストとしてNVIDIA の DGX Systems 担当副社長兼ゼネラルマネージャーであるCharlie Boyle氏がLee氏と対談を行いました。
対談の中でBoyle氏は「AIは各企業がすぐに始めなければ(ビジネスに組み込まなければ)いけないことではあるが、最初から大規模な導入をめざすべきではなく、チャットボットなど小規模なところから少しずつ社内導入を進め、社内の認知を上げていく必要がある。」と語りました。
そして、APJのユーザーとして「SoftBank」がアワードを受賞しました。SoftBankは人工知能の新しいユース ケースの探索、日本市場向けの独自の大規模言語モデルの開発、画期的な通信研究開発の推進などへのPure Storageの導入を行っている、と説明を受けておりました。
続いて登場したのは、Pure Storage CIO Krithika Bhat氏でした。Bhat氏は、ニューオーリンズ市のCIOであるKimberly Lagrue氏と、ハッカー集団 "Anonymous" の元テクニカルリーダーであるHector Monsegur氏を会場に招き、対談セッションを行いました。相反する立場の2人の対談は非常に面白いものでした。
元ハッカーであるHector氏は、まだ企業のランサムウェア対策は始まったばかりであり、ランサムウェア攻撃は(ハッカー目線で)まだまだ攻撃に成功すること、そしてサプライチェーン攻撃の危険性を語りました。
また逆にCIOであるLagrue氏は、ニューオーリンズ市が大規模なランサムウェア攻撃に直面したときの悲惨さを語りました。現代でのサイバー攻撃は、人々のインフラにまで影響を及ぼしたとのことです。そしてその経験を活かし、現在行っている堅牢なIT環境環境についても語りました。
その後、電気自動車メーカーであるRivianのアワード受賞があったのち、21日午前のキーノートは終了となりました。
余談ですがアメリカ滞在中、日本ではあまり見かけないRivianの車にUberで乗りました。電気自動車の静音性と、近未来的なデザインが非常にかっこよかったです。
キーノート 21日 午後
21日午後のキーノートでは、Lynn氏の挨拶にはじまり、Pure Storage法務部門の最高責任者(CLO)であるNiki Armstrong氏が登壇しました。
Armstrong氏はintelのProduct Sustainability Storategy & ExecutionにおけるSenior DirectorであるMerlin Kister氏との対談を行いました。
対談の内容はAI分野における電力消費についてでした。AI分野における電力は常に不足している状態にあり、その観点でストレージの省スペース化や水冷の活用などの必要性を語りました。
そして最後にChief Operating OfficerであるMatt Burr氏が登壇し、本日午後のキーノートの目玉である元水泳選手のMichael Phelps氏との対談セッションが行われ、21日午後のキーノートは終了となりました。
3. その他のイベントの様子 |
今回のイベントのキーとなるのは、やはりキーノートでも再三話題に上がっていた「AI」でしょう。そのAI需要に密接に関係している企業 "NVIDIA" は、今回特別枠のスポンサーとして各所にそのロゴが見られました。
また会場ではキーノートセッションの他にも、展示会場やブレイクアウトセッション、商談ルームやランチ会場などがありました。
特に展示会場では、バックアップやクラウドベンダー、ネットワーク製品ベンダーなど、Pure Storageのエコシステム各社の展示や、Pure Storage社の各種最新製品の展示がされていました。
特に各種最新製品の展示ではそれぞれにスタッフが配置され、直接説明を受けたり質問するなどが可能となっており、私も沢山質問させていただき大変お世話になりました。
また特別に、キーノートでも話題となっていた150TB DFMeも見せていただきました。
DFMeはNVRAM一体型のDFMとなっており、端のグレーの部分にNVRAMの機能が搭載されています。NVRAMまで搭載された上で、この大きさで150TBというのは実物を目にすると改めて驚きを感じました。
また会場ではオレンジのグッズを身に着けた人や、オレンジのスーツ・ドレスに身を包んだひとも多くおり、一体感を感じるイベントでした。(私もこっそり服装にオレンジを入れて行きました)
4. まとめ |
今回のPure//Accelerateでは、全体を通してサブスクリプションモデルおよびAIワークロードを見据えたアップデートや新機能などが強くアピールされていました。
その中でも強く印象に残ったのは、2日目のKeynoteにてLee氏が語った内容でした。
「すべてのAIワークロードは結局データに依存している」という考え方のもと、そのデータの取り扱い方として場所、プラットフォーム、パフォーマンス、利用形態などに応じた最適なストレージを提供することを目指している。これは、FlashArrayやFlashBladeのモデルが近年増えていることや、FlashBladeのブレードやDFMの種類などによってその構成にも幅を持たせていることなどにも表れているのだと納得ができました。
一方で柔軟性や多様性は、Pure Storageが本来もつ「シンプルさ」という長所と相反する危険性もあります。構成や機能の選択肢が増えれば増えるほど、複雑さや専門性は増してしまうとためです。
今後のPure Storageが、この複雑さをどのようにしてシンプルに利用させるか、に注目していきたいと思います。
さて、そんなPure//Accelerate in Las Vegasでしたが、昨年同様「Pure//Accelerate 2024 Roadshow」というローカル版Pure//Accelerateが今後世界各地で行われます。
日本でも10月18日(金)に東京で実施予定とのことなので「ラスベガスは遠いけど東京なら」という方は、ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。
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著者紹介
SB C&S株式会社
ICT事業本部 技術本部 技術統括部 第1技術部 2課
中田 浩嗣 - Hirotsugu Nakata -
VMware担当を経て、現在ストレージ担当の中でもPure Storageを専任に担当するプリセールスエンジニア