※本投稿で紹介される内容は、発表当時のものであり将来のアップデート内容をお約束するものではありません。
この記事では現在アメリカの首都ワシントンD.C.で開催されているNutanix社の年次イベント「.NEXT」で発表された内容について、Nutanixのプリセールスを担当する当社エンジニアの視点で要約して速報ブログ形式でお伝えします。
目次
はじめに
Modern Hybrid Cloud(モダン-ハイブリッドクラウド)
Simplicity at Scale(大規模環境をシンプルに管理 / 運用)
Air-Gapped Cyber Resilience(エアギャップ環境におけるサイバー攻撃からの回復)
Cloud Native Anywhere(クラウドネイティブアプリケーションの可搬性)
AI Empowering Nutanix(AIがもたらすNutanixの進化)
まとめ
【セミナー告知】
はじめに
昨日のDay1基調講演では、Nutanix 社長 兼 CEOであるRajiv Ramaswami氏が登壇し、Nutanixがこれから市場を導くための方向性を以下の3つのテーマに基づいて紹介しました。
- Modernize Your Infrastructure(インフラのモダナイズ化)
- Build Apps Once and Run Them Anywhere(コンテナアプリケーションの可搬性)
- Enable Agentic AI(自律型 / エージェント型AI)
Day1基調講演の詳細については、以下のリンクをご覧ください。
Nutanix .NEXT 2025 Day1 の速報をお届け
本日のDay2基調講演では、Nutanix製品およびソリューションマーケティング担当副社長であるLee Caswell氏が登壇しました。Day1の発表内容に対する反響の大きさに良い手応えを感じつつも、まずはDay1の内容を振り返ることから講演が始まりました。
その後、Nutanixの製品やソリューションが提供する価値を示す重要な4つの柱を軸に、一部デモンストレーションを交えながら技術を深掘りする内容が展開されました。
- Modern Hybrid Cloud(モダン-ハイブリッドクラウド)
- Simplicity at Scale(大規模環境をシンプルに管理 / 運用)
- Air-Gapped Cyber Resilience(エアギャップ環境におけるサイバー攻撃からの回復)
- Cloud Native Anywhere(クラウドネイティブアプリケーションの可搬性)
Modern Hybrid Cloud(モダン-ハイブリッドクラウド)
複数のクラウド環境とオンプレミスを統合し、柔軟性と効率性を提供するハイブリッドクラウドの重要性が強調されました。企業がハイブリッドクラウドを活用することで、異なるプラットフォーム間のシームレスな統合を実現し、運用の複雑さを軽減しながら、ビジネスの俊敏性を向上させる方法が紹介されました。
さらに、クラウドネイティブアプリケーションやコンテナ化技術を活用することで、最新のアーキテクチャに対応する能力を備える必要性が指摘されました。これにより、企業は変化する市場のニーズに迅速に対応し、競争力を維持することが可能になります。
Nutanixのソリューションはこれらの課題を解決するための具体的な事例を提供し、ハイブリッドクラウド環境における効率的な運用と技術的な優位性を実現する方法が示されました。
外部ストレージ:Dell PowerFlex, Pure Storage
Prism Centralの管理メニューに新たに「External Storage」が追加されたことが紹介されました。この機能により、ストレージ側で操作を行うことなくストレージコンテナの作成が可能となり、管理が簡素化されました。さらに、AHV上の仮想マシンに対して以下の設定が行われている様子が示されました:
- リカバリポイント(データ保護)
- セキュリティポリシー(マイクロセグメンテーション)
これにより、コンピュートオンリーの構成でもNutanix Disaster RecoveryやFlow Network Securityが利用可能であることがわかりました。また、Moveを使ったNCP with Dell PowerFlexへの移行では、従来の操作と同様にシーディングとカットオーバーが行われ、移行後の仮想マシンの起動までが実現されていました。
エコシステム:Omnissa on AHV
Horizonによる仮想デスクトップがAHV上に展開されている状態がデモで示されました。Horizonのデスクトッププール画面では、[Source]に「Nutanix AHV (Prism Central)」の表記が確認され、Nutanix AHVが仮想デスクトップの基盤として利用されている様子が映し出されました。
ハイブリッドクラウド:NC2 on AWS, Azure, and Google Cloud
オンプレミスのNutanix仮想マシンをNC2 on AWSおよびNC2 on Google Cloudの両方で保護している様子が紹介され、ハイブリッド・マルチクラウドの実現が明確に示されました。
特に、NC2 on Google CloudではGA当初からFlow Virtual Networkingが実装される予定であることが発表されました。この機能により、Nutanix Disaster Recoveryを活用したストレッチネットワーク(L2延伸)間で、ネットワーク設定を変更することなくアプリケーションの復旧が可能であることがデモで確認されました。
Simplicity at Scale(大規模環境をシンプルに管理 / 運用)
複雑になりがちな大規模環境でもシンプルさを維持する重要性が強調されました。Nutanixは、数千のクラスターや複雑なインフラを簡単に管理できるツールやフレームワークを提供することで、運用効率を向上させています。特に、ゼロタッチフレームワークや自動化された展開、構成管理ツールを活用し、迅速かつ安全なアップグレードや変更を可能にする方法が紹介されました。また、分散環境での統一的な管理を実現し、ITチームの複雑な作業を減らし、コストと時間を削減する具体的な事例が示されました。これにより、大規模な環境でもシンプルで効率的な運用が可能になります。
デプロイ自動化:ゼロタッチフレームワーク
ゼロタッチフレームワークを活用したデプロイ自動化の様子が紹介されました。このフレームワークでは、Nutanix管理UIに触れることなく、設定値を記載したyamlファイルをGitHubにアップロードするだけで以下の操作が可能となります:
- 複数のNutanixクラスターに対するFoundationの実施
- セルフサービスによるアプリケーション実行環境の展開
- 運用プロセスの効率化
これにより、Infrastructure as Code(IaC)を活用したシンプルかつ効率的な管理が実現され、運用負担を大幅に軽減する様子が伝えられました。
ドリフト管理構成:マルチクラスターLCMアップグレード
多くの拠点やクラスター、ノードが稼働する大規模環境では、ガバナンスを徹底することが課題となります。その解決策としてゼロタッチフレームワークを活用したドリフト管理によるガバナンス強化の方法が紹介されました。
このフレームワークでは、組織のガバナンスをyamlファイルで予め定義することで、ガバナンスから逸脱している環境の有無を機械的に判断し、自動的に対応する仕組みが実現されています。
デモでは、以下の手順が示されました。
- DNSサーバーの値をyamlファイルで定義
- 設定されるべきDNSサーバーの値をyamlに記載。
- Prism操作で意図的にDNS値を削除
- Prism CentralでDNSサーバーの値を削除し、ガバナンス違反を発生させる。
- 自動復元
- ガバナンス違反と判断され、DNSサーバーの値が自動的に元に戻る様子が確認されました。
これにより、ドリフト管理を通じて、組織のガバナンスを維持しながら環境を効率的に運用できることが示されました。
この取り組みは、大規模環境における運用効率化とガバナンス強化の両立を実現する具体的な事例として参加者に強い印象を与えました。
Air-Gapped Cyber Resilience(エアギャップ環境におけるサイバー攻撃からの回復)
エアギャップ環境でのセキュリティと回復力がテーマです。特に、ランサムウェアやサイバー攻撃からの保護を強化するための多層的な防御が重要視されました。Nutanixのソリューションは、分離されたネットワーク環境(エアギャップ)でのデータ保護を実現し、仮想ネットワークセキュリティやマイクロセグメンテーションを活用して脅威を迅速に検出・修復します。また、マルチクラウドスナップショット技術(MST)や自動化された復旧プロセスにより、システムを短時間で回復させる機能が紹介されました。これにより、最小限のダウンタイムで重要な業務を継続できる環境を提供します。
包括的なサイバーレジリエンス
Nutanixが提供する包括的なサイバーレジリエンスの取り組みが紹介されました。以下のポイントが強調されました。
- STIGコンプライアンスによるインフラの強化
- セキュリティ基準に準拠したインフラストラクチャを構築し、堅牢性を向上。
- 仮想プライベートクラウド(VPC)によるネットワークレイヤーの保護
- VPC内の仮想マシンに対して、Flow Network Securityを活用したセキュリティポリシー(マイクロセグメンテーション)が設定可能。
- マルチクラウドスナップショット技術(MST)の拡張
- Amazon S3に加え、Nutanix Objectsにも対応。これにより、インターネット接続を行わずに仮想マシンを保護しつつ、プライマリクラスターに深刻な障害が発生した際には、NC2 on AWSへの迅速な復旧が可能となりました。
隔離状態での検知と対応
これまでのData Lensはクラウドサービスとして提供されていたため、管理や監視にはインターネット接続が必須でした。しかし、近い将来、エアギャップ環境下でもData Lensを活用した検知と対応が可能になる予定です。
デモでは以下の内容が示されました。
- 怪しい振る舞いをした仮想マシンをルーティング不可の閉ざされたVPC内に複製。
- セキュリティポリシーにより仮想マシン間のEast-West通信を遮断。
- 完全隔離された環境でフォレンジック調査を実施可能。
これにより、エアギャップ環境下でも高度なセキュリティ対応が可能となることが説明されました。
スナップショットからの迅速な復旧
Nutanix Filesが提供するイミュータブルスナップショット技術が紹介されました。この技術により、第三者による書き換えが不可能なファイル保護が実現されます。
さらに、マルチクラウドスナップショット技術(MST)がNutanix Objectsに対応したことで、以下が可能となりました:
- ネットワークレイテンシーが少ない環境での構成。
- 復旧時間の向上。
これにより、迅速かつ安全なデータ復旧が可能となり、災害時の対応能力が大幅に向上することが示されました。
Cloud Native Anywhere(クラウドネイティブアプリケーションの可搬性)
クラウドネイティブアプリケーションをあらゆる環境で実行する柔軟性が強調されました。Nutanixは、オンプレミス、エッジ、パブリッククラウドなど、どこでもコンテナ化されたアプリケーションを効率的に管理できるプラットフォームを提供します。特に、Kubernetesを統合した管理ツールにより、複数のクラウドやインフラストラクチャを単一のビューで管理する方法が紹介されました。また、セキュリティやネットワークの分離を維持しながら、クラウドネイティブアプリケーションの展開や運用を簡素化する具体的な事例が示されました。これにより、企業はどこでも迅速かつ安全にクラウドネイティブを活用できます。
マルチクラウドフリート管理
Nutanix Kubernetes Platform(NKP)を活用することで、オンプレミスやクラウドに無数に展開されたKubernetesクラスターを統合的に管理することが可能となり、マルチクラウド環境の視認性や監視能力が大幅に向上します。
デモでは、NKPのGUIを使用し、簡単な入力を行うだけでKubernetes管理クラスターを迅速にデプロイする様子が紹介されました。これにより、複雑な操作を排除し、効率的な運用が実現されることが示されました。
プラットフォームチームの強化
Kubernetesクラスターの管理者からは様々な要件が依頼される一方で、プラットフォームエンジニアは管理の煩雑化を避け、一貫性を維持することを理想としています。
NKPでは、オープンソースコミュニティのアプリケーションを含むアプリケーションカタログが提供されており、異なるロケーションでも同じツールを使用して管理が可能です。この機能により、プラットフォームチームは効率的かつ統一的な管理を実現し、運用負担を軽減することができます。
EKSクラウドネイティブアプリケーションのためのAOS
Cloud Native AOS in AWSを活用することで、AWS EKS上のKubernetesクラスターで提供されるクラウドネイティブアプリケーションを保護し、他のリージョンで簡単に復旧することが可能となりました。
デモでは、AWSロンドンリージョンで起動していたアプリケーションがクラスターレベルで停止した際、AWSパリリージョンで迅速に復旧する様子が説明されました。この機能により、クラウドネイティブアプリケーションの高い可用性と迅速な災害復旧が実現されることが示されました。
AI Empowering Nutanix(AIがもたらすNutanixの進化)
そしてDay2基調講演の締めくくりとなる最後のパートとして、NutanixにおけるAIへの取り組みについての内容が紹介されました。
2022年のChatGPTに代表される生成AIの登場以来、"AI"という言葉を聞かない日はないほどにAIの利用は爆発的に私たちの実生活の中にも普及をしてきた背景があります。しかし、2024年頃までのAIの活用方法を振り返ってみると、それは比較的シンプルなものでした。例えば、チャットボットのような利用形態やユーザーからの問いに対して文書の検索や要約を実行する、などです。
しかし、現在の2025年以降ではAI活用の段階はさらに進み、「AIエージェント元年」と呼ばれるほどに"AIエージェント"によって「何かしらのユーザーからの要求に対して、ユーザーの代わりにAI自身が自律的に判断をし、最終的には最適なアクションまでを実行する」ということまでが可能な時代になりつつあります。
このようなAIエージェント時代においては単純に1つのモデルだけではなく、推論モデル(Reasoning Model)、埋め込みモデル(Embedding Model)、リランキングモデル(Rerank Model)など複数にわたる多くのモデルが必要となり、より一層"AIをどこで稼働させるべきか"という視点が重要になりつつあります。
一方で、AIを効率的に活用するうえで必須となる"データ"に目を向けてみると自社の保有する様々なロケーションで作成されていることが一般的です。エッジ/データセンター/クラウドなど実に様々な環境下において企業の重要なデータが作成されています。
つまり、これらのデータの利活用をより促進させたい場合、これまでは一般的にクラウド上で実行されていたAIを各企業の所有する環境内で稼働させることを検討することが現在では重要になってきています。しかし、AIシステムそのものは非常に複雑なものになっており、なかなか一筋縄ではいかないのも事実です。
そこで、Nutanixの提供するクラウドインフラストラクチャ(NCI)、Kubernetesプラットフォーム(NKP)、共通データサービス(NUS)をベースとして最上層に「Nutanix AI Enterprise(NAI)」を導入することで自社保有の環境内におけるAIシステムの構築からその後の運用管理などをまとめてシンプルにすることが可能となります。
講演の中では実際に企業内に構築されたNAI環境を使ったデモが行われておりましたので、最後にそちらのデモを2つほど紹介させていただきます。
まず1つ目のデモは翻訳エージェントを利用したドキュメント翻訳の自動化デモです。こちらのデモでは、英語で記載されたライセンスドキュメント(PDFファイル)をNUSによって提供されたオブジェクトストレージへユーザーがアップロードしただけで、その後のアクションとして自動的に複数の多言語(フランス語・ヒンディー語)へ翻訳されたドキュメントが生成される様子が実演されました。
さらに2つめのデモでは、ユーザーが作成したお客様向けデモ用のビデオファイルを同じくNUSのオブジェクトストレージへアップロードすると自動的に文字起こしされたものがベクトル化され、事前にベクトル化されていた企業のコンプライアンスポリシードキュメントと突合確認をすることで、その内容が企業コンプライアンスに準拠しているかしていないかまでを自動判別し、結果がメールで送られてくるといった内容の実演が行われました。
結果的には非準拠という内容のメールが届くというデモなのですが、その後のユーザーの対応としては「具体的にどういった部分が準拠していないのか」という詳細をチャット形式で聞くことができるなど、まさにAIの力をフル活用して日々の業務負担を低減することができる様子が映し出されていました。
このように、今後さらにAIの活用が拡がりを見せていくことが予想されるAIエージェント時代の幕開けとともにNutanixならではのアプローチによる「ロケーションを問わず、一貫したデータ管理およびAIシステムの稼働」という可能性を十分に感じることのできるデモによってDay2基調講演は終了となりました。
まとめ
Day2基調講演では、Nutanixが提供する最新技術とソリューションが紹介されました。特に「Modern Hybrid Cloud」「Simplicity at Scale」「Air-Gapped Cyber Resilience」「Cloud Native Anywhere」の4つの柱を中心に、効率的な運用、セキュリティ強化、クラウドネイティブの柔軟性を実現する具体的な事例が示されました。また、AIエージェント時代への進化に対応する取り組みも発表され、複数のモデルや適切な稼働環境を活用して、自律的な判断とアクションを可能にする未来が描かれました。
さらに、Day2夕方に行われたClosing Keynoteでは、次回の.NEXT 2026に関する発表がありました。来年の開催地はアメリカ・シカゴで、2023年の開催地が再び選ばれることが明らかになりました。開催期間は例年の5月から少し前倒しされ、2026年4月7日から4月9日までの開催となります。
.NEXT 2025内のすべての基調講演が終了し、報告ブログもこれにて終了となります。来年もまた異国の地、アメリカ・シカゴにて弊社からの参加メンバーとご一緒させていただくことを、一同楽しみにしております。引き続き、Nutanix製品およびSB C&Sをよろしくお願いいたします。
【セミナー告知】
速報ブログでは割愛せざるを得なかった細かな情報やここだけの話を弊社主催の.NEXTフィード.バックセミナーにて全国の皆さまに直接お伝えに伺いたいと思います。
今年は東京、福岡、大阪、名古屋、札幌の過去最多5拠点での開催を予定しています。開催日程が決まり次第、以下のお申し込みサイトから行うことが可能ですのでぜひご参加ください。
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著者紹介

SB C&S株式会社
ICT事業本部 技術本部 技術統括部
統括部長
熊谷 哲人 - Akihito Kumagai -
著者紹介

SB C&S株式会社
ICT事業本部 技術本部 技術統括部 第1技術部 1課
課長
長濱 歳也 - Toshiya Nagahama -
◇◇◇執筆書籍◇◇◇
・(2019年5月)Nutanix Enterprise Cloud クラウド発想のITインフラ技術
・(2017年4月)Nutanix Hyper Converged Infrastructure入門