
SB C&Sの下山です。
弊社の幸田からお送りしている基調講演レポートの番外編として、デスクサイド~小規模環境に好適な「パーソナルAIスーパーコンピューター」であるDGXシリーズ製品を改めてご紹介させていただきます。
パーソナルAIスーパーコンピューターとは
NVIDIAは18日のGTC 2025 Keynoteにて、パーソナルAIスーパーコンピューターと称する製品群を発表しました。この中には1月のCES2025で発表されたDGX Spark(Project DIGITSから改称)、DGX Stationが含まれます。パーソナルAIスーパーコンピューターは、これまでは実質的にデータセンターでしか利用できなかったGrace Blackwellアーキテクチャーのもつ強力な計算能力をユーザーのすぐそばで利用することを可能とします。
それでは、パーソナルAIスーパーコンピューターのそれぞれの製品について見ていきましょう。
DGX Spark
DGX Sparkは、CES 2025にて当初「Project DIGITS」として発表され、3,000ドルという当時の想定価格やその筐体サイズで話題を呼びました。
その後、このGTC 2025 KeynoteにてDGX Sparkへの改称と製品詳細があらためて紹介されています。
- アーキテクチャー: NVIDIA Grace Blackwell
- GPU: Blackwell Architecture
- CPU: 20 core Arm, 10 Cortex-X925 + 10 Cortex-A725 Arm
- CUDAコア: Blackwell Generation
- Tensorコア: 5th Generation
- RTコア: 4th Generation
- テンソル性能: 1000 AI TOPS (FP4)
- システムメモリー: 128 GB LPDDR5x, unified system memory
- メモリーI/F: 256-bit
- メモリー帯域: 273 GB/s
- ストレージ: 1 or 4 TB NVME.M2 with self-encryption
- 製品重量: 1.2kg
特筆すべきは、手のひらに乗る程度のサイズでありながらFP4精度の計算で1PFLOPSを達成していること、そしてその価格設定にあります。これまで費用面の制約からGPUの導入をあきらめていたアカデミックのユーザーや、エンジニア・開発者へ割り当てる個人機としての導入にも適しています。
ただし、GB10 Grace Blackwell Superchipを搭載しているため、通常のx86マシンなどと異なりArmアーキテクチャに対応したOSやソフトウェアを用いなければならない点に注意が必要です。基本的にはプリインストールされるDGX OSで運用することを想定している製品であるものと推測されます。
日本市場での販売は未定ながら、2,999米ドルですでに予約受付が開始されました。
【2025年3月27日追記】
現時点の予約サイトでは、OEMモデルが2,999米ドルで、NVIDIA直販のDGX Sparkが3,999米ドルで提供される旨案内されております。
※両者とも、GB10 Grace Blackwell Superchipを採用し最大128GBの統合システムメモリーを搭載するなど、大まかなスペックは共通していますが、外装や搭載するストレージ容量(OEMモデルは1TBのシステムストレージを搭載)などの差異があります。
現在NVIDIA Marketplace上でラインナップされているOEMモデルはASUSのみですが、追ってDellとHPからも製品が発売される旨アナウンスされております。
・ASUS Ascent GX10 特設ページ
・DELL Dell Pro Max with GB10 特設ページ
・HP ZGX Nano AI Station 特設ページ
【追記ここまで】
DGX Station
- NVIDIA GPU : 1x NVIDIA Blackwell Ultra
- NVIDIA CPU: 1x Grace-72 コア、Neoverse V2
- GPU メモリ: 最大 288GB HBM3e | 8 TB/s*
- CPU メモリ: 最大 496GB LPDDR5X | 最大 396 GB/s
- NVLink-C2C: 900 GB/秒
- ネットワーキング | ピーク帯域幅: NVIDIA ConnectX®-8 SuperNIC | 最大 800 Gb/s
- サポートされている OS: NVIDIA DGX ベース OS
- MIGインスタンス数: up to 7
DGX Stationは「NVIDIA GB300 Grace Blackwell Ultra Desktop Superchip※」を搭載する、デスクサイドでの利用に向けて設計された高性能ワークステーションです。広大なメモリ領域を用い、DGX Sparkと比較してより大きい規模のワークロードにも柔軟に対応します。FP4精度の計算においては、GB300は単体のBlackwell Ultra(B300)の15PFを凌駕する20PFの計算性能を誇ります。
※デスクトップ向けに最適化されたB300 GPU並びに72コアのGrace CPU、GraceとBlackwellが領域を共有する"コヒーレンシーメモリ"から構成されるモジュール
DGX Stationは、Dell / HP/ Supermicroなどのパートナー各社より2025年後半に発売予定となっています。
RTX PRO Workstation
最後に、「パーソナルAIスーパーコンピューター」の枠からは外れるものの、SparkとStationの中間にラインナップされていた、RTX PRO Workstationについて触れておきたいと思います。
こちらは別途発表のあったRTX PRO Blackwellシリーズのうち、ワークステーション向けのエディションを搭載したマシンです。従来通りのx86環境でのビジュアルコンピューティングやシミュレーションの分野においてBlackwell世代のパフォーマンスを享受することができるようになるでしょう。
デスクトップ/ワークステーション向けのRTX PROシリーズは、PNY等の販売パートナーより2025年4月からの提供開始が予定されています。
まとめ
久々のDGX Stationの復活やSparkの登場により、従来のA100やH100ではtoo muchであったユーザー層にもリーチすることが可能となります。このことにより、個人的にはAIの民主化を強力に推進するというNVIDIAのメッセージが感じられる発表内容であったと感じました。
パーソナルAIスーパーコンピューター以外にもまだまだ注目すべきトピックがございますので、ぜひ一度NewsRoomをチェックしていただけますと幸いです。
著者紹介

SB C&S株式会社
ICT事業本部 技術本部 技術統括部 第1技術部 2課
下山 翔也 - Shoya Shimoyama -
NVIDIA社製品のプリセールス・エンジニア業務を担当。
GPUのほか、クラウドサービスやサーバー、ネットワーク機器についても取り扱う。