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【ワイヤレスブログ第12回】LBS

ネットワーク
    2020.02.12

    みなさん、こんにちは。

    本日は、最近日常生活でも耳にする機会が増えてきたLBS(位置情報サービス)について説明したいと思います。

     

    "街中でスマホを操作していると、アプリ上で突然知らないお店のクーポンが配布された"、

    みなさんはこのような経験はありませんか?

    figure11.png

     

    これも、実はLBSの一部です。

    他には、ArubaネットワークスがアメリカのリーバイススタジアムにBeacon機器を設置しました。これにより、観戦に来た人たちがスマートフォンを使って簡単に自席や売店を探せるようになりました。これらの革新的なソリューションもLBSによってもたらされています。

    (参考URL: https://www.arubanetworks.com/assets/_ja/articles/Nov4_2014_techcrunch.pdf)

     

    では、上記のようなサービスはどのような仕組みによって可能となっているのでしょうか?

    今回は、Bluetoothを利用したビーコンに注目して紹介したいと思います。

     

    ビーコン

    そもそも、ビーコン(Beacon)とはどういったものなのでしょうか。

    単語の元々意味は、「位置」と「情報」を伝える"伝達手段"のことを指していました。

    昔は"のろし"を使って「敵が来た」などの「情報」を伝えていました。のろしというと時代劇などのイメージが強く、電子機器と同じ"ビーコン"に分類されるのは、なんだか衝撃的ですね。

    話を現代に戻すと、スキーやウィンタースポーツをする人には馴染み深いであろう"雪崩ビーコン"も「現在位置」という「情報」を伝えるからこの名前です(性別などの属性情報については一般的に利用しないように設計されています)。

    ワイヤレスブログなのでワイヤレス機器での話をすると、ご存知の方も多いかとは思いますが、例えば無線LANの機器からも定期的にビーコンが発せられています。このビーコンには、PCやスマートフォンといった端末側が接続するにあたって必要な「情報(SSIDや通信速度、暗号化情報など)」が含まれています。

    一定間隔で常に発せられているこのビーコンが何のためにあるかというと、"ここ(「位置」)でWi-Fiに接続できますよ"という「情報」を教えてくれています。アクセスポイントに接続していない人、つまりこれから接続するかもしれない人が必要とする情報なわけです。

    また、接続はしていないが位置情報の精度を高めたい人にとっても有益な情報をビーコンとして発信しているのです。

     

    ビーコンがどのようなものかは大まかに掴んでいただけましたでしょうか。

    では、最初に例に挙げたLBSとは一体何なのか。ご説明したいと思います。

    LBS

    正式には、Location Based Servicesといいます。現在位置情報を利用したサービス(アプリなど)を、スマートフォンや携帯電話といった電子機器を持っているユーザに提供することを指します。日本語では、位置情報サービスと呼ばれています。

    ユーザが現在いる場所をアプリ上で参照した場合に、目的地までの行き方や所要時間を教えてくれたり、あるいはショッピングモールなど今いる場所で利用できるクーポンを受け取ったりできます。

    位置情報を取得するために、GPSやWi-Fi、ビーコンといった技術が活用されています。

     

    つづいて、位置情報を特定するために利用されているシステムについて説明します。

    LBSを提供しているシステム

    一つ目はGNSS(Global Navigation Satellite System)です。あれ、GPSじゃないの?と思った方もいらっしゃると思います。GPS(Global Positioning System)はアメリカが開発した、人工衛星を利用した測量システムのことを指します。元々は軍事用でしたが、それが一般利用にも開放されました。

    日本では、準天頂衛星(みちびき)がこれに相当します。

    対して、GNSSは、人工衛星によって位置情報を測量する"システム全体"を指します。本記事では、便宜上一般的呼称であるGPSを使用したいと思います。

    GPSでの現在位置と時刻の測量は、正確に把握するために4つの人工衛星と通信をしています。受信機側の時刻のズレが僅かであったとしても、とても遠いところにある人工衛星との通信においては大きな差となってしまいます。そこで生まれる差をなくして正確な情報を得るために、4つもの人工衛星と通信をしています。

    二つ目はWi-Fiです。複数のアクセスポイントを設置することで、それらの機器から得た情報を総合して、現在位置情報を確定させます。"複数の"アクセスポイントが無ければ正確に測定することができないのは、GPSの仕組みと同じですね。SSIDなどのアクセスポイント情報を発信しているビーコンを使用します。

    また、クラウドソースデータベースによって蓄積されたアクセスポイント情報を利用して、現在位置を推測することが可能になります。これにより、Wi-Fiに接続していなかったとしても、Wi-Fi機能をオンにするだけで位置情報の精度は向上します。

    三つ目はBluetoothです。GPSやWi-Fiと比較すると、一つのBluetooth発信機で把握できる範囲は狭くなりますが、他の二つに比べてとても精度が高いです。Bluetooth発信機から発せられているビーコンをキャッチして、現在位置を特定します。ビーコンを発信して、それを元に位置を測定するのは、Wi-Fiでも同様です。

    2019年に発表されたBluetooth 5.1には、新たに「方向探知機能(Direction Finding)」が追加されました。これにより、数cm単位での位置測定が可能になり、またその電波を出しているBluetooth機器がどちらの方向にあるかということまで分かるようになりました。

    また、GPSとWi-Fiと併せて位置情報取得のために利用されることもあります。単独での使用時と仕組みは変わりません。

     

    ここまでの、3つのLBSシステムをまとめると以下のようになります。

    table11.png

    上図はあくまでも平均的な環境を想定した場合です。

     

    LBSを提供している3つのシステムについて、それぞれの特徴を掴んでいただけましたでしょうか。

    では、本コラムの主題であるBLEビーコンについて!といきたいところですが、

    その前にBluetooth全般について簡単に説明させてください。

    Bluetooth について

    初めてBluetooth が登場したのは20年ほど前のことです。スウェーデンのエリクソン社やインテル社、IBM社が中心となって開発しました。

    IEEE 802.15.1で規定されている標準規格で、2.4GHz帯の電波を利用します。

    2.4GHz帯を79のチャネルに分け、使用する周波数をランダムに変える作業を行いながらBluetooth 機能搭載機器と通信を行います。

    近距離圏内での通信を得意とし、近年公開されている規格では省電力、通信速度の高速化、通信データ容量の拡大化が実現されています。

    新しく発売されるスマートフォンやタブレット、PCには標準搭載されていることがほとんどで、マウスやイヤフォンなどのアクセサリーと接続するのに利用されています。

    Bluetoothという名前は、初めてノルウェーとデンマークの無血統合に成功し、文化の橋渡しをしたデンマークのハーラル・ブロタン・ゴームソン王に由来しています。なんでも、この王様には死歯があり、それが青黒い灰色だったそうです。blueのtoothでBluetooth。さらにはロゴも、この王様の名前を長枝ルーン文字でH(ハーラル)とB(ブロタン)を表したものだそうです。

     

    さて、ではようやく本題に入ります。

    BLEについて

    正式にはBluetooth Low Energyといいます。

    BLEが初めて規格として発表されたのはBluetooth 4.0に追加されたときですが、今までの規格(Bluetooth1.1※~3.0)とは全く異なります。互換性がないので、従来規格(Bluetooth legacy)とBLEでは通信ができません。

    従来のBluetoothをアップデートしたものとしてではなく、全く新しいコンセプトで作成されたBLE。従来型と比較して「省エネルギー」「シンプル」「低コスト」が特長として挙げられます。ボタン電池1つでも1~2年は使用可能なほどの省電力で、BLE最大のポイントでもあります。

    この「省電力」実現のために、接続確立など電力を消費する過程を極力カットしています。

    通信速度においても、技術的には2Mbpsでの通信が可能ですが(Bluetooth 5.0において)、電力を消費し過ぎてしまうため10kbps程度に抑えられています。

    これらの特徴の他に、同時に接続できる数が格段に増えたことも、従来のBluetoothとの違いとして挙げられます。今までは、マスタ(多くの場合はスマートフォン)と最大7台までのスレーブで通信を行っていました。しかし、BLEでは接続できるマスタ(BLEにおいてはセントラルと呼ばれる)とスレーブ(同様にペリフェラルと呼ばれる)の数に原則制限はありません。これにより、BLE機能を持つ多くの家電製品や電子機器と同時に通信することが可能になりました。

    ※普及版

     

    最後に、BLEビーコンとは一体どのようなものなのか説明します。

    BLEビーコン

    BLEの技術を用い、情報をビーコンとして発信します。ビーコン発信機が設置されている場所にちなんだサービスの提供や、距離の測定といったことが可能になります。

    Apple社が2013年に発表したiBeaconや、Google社が2017年に発表したEddystoneがBLEビーコンの代表規格となります。

    BLEビーコンの発信機は、壁や天井に設置されることが一般的です。機器本体は小さな場合が多いのですが、ボタン電池1つで1~2年使用可能と聞けば納得でしょうか。

    例えば、Arubaネットワークスのビーコン発信機は約5cm角の小さな正方形で高さも1.5cmほどしかありません。

    GPSの場合は地下や屋内などで精度が落ちたりそもそも測位ができなかったり、Wi-Fiの場合はどこでも測位可能ですが精度があまり高くありません。これらの難点をカバーしたのが、BLEビーコンです。発信機は比較的廉価なので初期費用も抑えられ、導入しやすいというメリットがあります。受信機側は既に多くの人が持っているスマートフォンがその役目を果たします。つまり、BLEビーコンを利用するために、新たに機器を購入する必要がないのです。また、ビーコンとして発信された情報を受け取るためにはアプリが必要ですが、すでに利用者数が多いアプリがそのプラットフォームになっています。

    冒頭で話題に挙げた、アプリの使用中にクーポンが送られてくる、というのはまさに場所にちなんだサービスの提供例です。歩いている最中に1km先のお店の情報とクーポンが送られてきても、行こうという気にはなかなかなりにくいかと思います。しかし、10m先のお店ならどうでしょう?お店をのぞいてみよう、という気持ちにはなるのではないでしょうか?

    このように、ごく近距離圏内でサービスを提供する際に適した技術がBLEビーコンです。

    GPSで同様のサービスを検討した場合、位置測定の誤差によって100m離れた場所にいる人に送られる可能性もあります。情報を発信したお店のイメージまで下がりかねません。BLEビーコンの場合は、ピンポイントで(近くにいる人に)送れるのでそのような心配もいりません。

     

    スマートフォンでなんでも出来るようになった時代です。

    これからは、BLEビーコンを用いたサービスに遭遇する機会は今よりもっと多くなるかも知れません。

     

    では、またどこかの記事でお会いしましょう。

    次回の更新をお楽しみに。

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    著者紹介

    SB C&S株式会社
    技術本部 技術統括部 第2技術部 1課
    福田 睦