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GIGAスクール対策~検証裏話編~

ネットワーク
2020.04.10

皆さま、こんにちは。
ここでは、GIGAスクール検証時の裏話についてお話しできればと思います。
約1か月ほどの検証でしたが、いろいろな発見、苦労したことがありました。ワイヤレスとは少し離れた内容もありますが、お付き合いいただけたらと思います。


1. iPadの同時再生方法

今回iPadの検証では、「iPad40台でyoutubeを一斉再生する」という検証を行いました。
これの実施方法について頭を悩ませました。
Windowsの検証では、SKY menuというソフトウェアを利用し、「1台のWindows端末から他40台のWindows端末を一斉操作(同一のマウス操作やキーボード操作が可能)し、動画のショートカットをクリックする」という方法で実現をしました。
しかし、現在SKY menuのiPad向けソフトウェアはリリースされておりませんでした。

そこでWindowsのタスクスケジューラーのような機能がiPadにもないか調べていたところ、「ショートカット」アプリの「オートメーション」機能を見つけました。
iOS13から新しく追加された機能で、「トリガーとなるアクション」と「実行したいアクション」の2つを設定することで、後者のアクションを自動的に実行することが出来るものです。

今回の検証で設定したオートメーションの手順を下記に記載します。
 
トリガーとなるアクション:おやすみモードがONになったとき
実行したいアクション:SafariでyoutubeのURLを開く

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1台の設定は以上で完了となります。これを40台すべての検証端末で設定しました。
動画再生のトリガーである、おやすみモードの時刻設定は検証ごとに手動で設定しないといけないため、SKY menuを使ったWindowsの検証とは違い、地味に大変な作業でした。
1台時刻設定をミスしてしまい検証リトライ・・・なんていうことも何度かあり心が折れそうになりながら実施していました・・・笑

といった苦労話はおいておきまして、iOSのこの機能はなかなかに面白そうな機能だと思います。
今回実行したアクションは、「自動でSafariのURLを開く」という単純なものでしたが、複数アプリや操作を組み合わせて自動化することもできるようです。
iPhoneのオートメーション機能を有効活用している方もいらっしゃるようですので、興味のある方は是非調べてみてください。。


2. デュアル5GHzについて

今回検証したAPにはデュアル5GHz対応のAPがありました。AP紹介編のブログでも触れておりますが、
CiscoのC9120はデュアル5GHz対応のAPですが、今回の検証では40台すべての検証端末が片方のラジオに接続するという結果となりました。
ここでは、C9120のデュアル5GHzモードについてお話しできればと思います。

一般的にデュアル5GHzは、1台のAPで5GHz帯の2つのチャネルを同時に動作できる機能です。
他社のAPとC9120が違う点は、2つのチャネルの提供するエリアの広さが異なる点です。

下図のように、
1つのアンテナは、AP周辺の広い範囲(マクロセル)を提供エリアとし、もう1つアンテナは、AP周辺の狭い範囲(マイクロセル)を提供エリアとします。

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このマイクロセルとマクロセルの組み合わせによるデュアル5GHzには他社にはない利点があります。それはチャネル設計です。
通常のデュアル5GHzは1つのAPが提供するエリアの広さに差はありません。よって下記図のように2台のAPの場合には、4つのチャネルの干渉を考慮した設計が必要になります。
しかし、C9120のデュアル5GHzの場合、マイクロセルが提供するエリアは隣接するAPとは重ならないため、電波干渉の設計がとても楽になります。
また、その電波を利用するクライアント端末の立場からしますと、安定した無線LANを利用することが出来ます。

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しかし、C9120のデュアル5GHzには下記の仕様があります。
 
 
【デュアル5GHzの仕様】
①マクロセルとマイクロセルのチャネルは100MHz以上離れること
②マイクロセルの送信電力は最小に制限される
③同じSSID
 
 
今回の検証では②の送信電力の制限により、検証端末がマイクロセルの電波より、マクロセルの電波を掴んだ方が通信品質が良いと判断し、うまくバランシングされなかったと考えられます。
実際に、同じ設計思想でうまくバランシングされていた2800のマイクロセルの送信電力と比べますと、C9120の送信電力が弱かったことが確認できています。
 

3. 導入時の端末Update注意

今回の検証用に用意しました、Surface×40台とiPad×40台は初期セットアップからおこないました。
セットアップ自体は問題なく終わったのですが、序盤のSurfaceでの検証中にWindowsのUpdateが発生するという問題が発生しました。
 
Windowsの自動アップデートにつきましては認識していたため、事前にWindowsの更新とセキュリティの設定で、Windows Updateの一時停止の設定はおこなっていたのですが、再起動のタイミングで更新中動作が確認されたため、一旦Windowsの更新プログラムを最新にした上で再度検証を実施しました。
一時停止ではなく、Update無効の設定もあったためそちらの方がよかったのかもしれません。

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また端末セットアップ時の注意点でいいますと、Windowsの初期セットアップでは、無線設定やUpdateなどインターネットに繋がなければできない設定をスキップすることが出来ますが、
iPadやChromebook(今回の検証端末ではありませんが)は、初期セットアップ時にApple IDの設定やGoogleアカウントの設定が必須のため、初期セットアップ時にインターネット環境が必須となりますので、端末のセットアップの段階でインターネットに接続できる環境も併せて用意する必要がありますので注意が必要です。

  

4. DHCPサーバについて

今回の検証では、DHCPサーバとしてソリトンシステムズ社製の「NetAttest D3」を利用しました。

オフィスなど一般的なネットワークの利用では、DHCPサーバは汎用サーバやルータ上で実行してしまうことも多いと思います。しかし学校での利用では一般の利用方法と異なり、先生の指示に従ってほぼ同時に電源投入/無線接続が発生するということも考えられます。また授業開始直後など複数の教室でその操作が重なることもあり、瞬間的とはいえDHCPサーバに高い負荷がかかることになります。つまりDHCPサーバへの負荷は今後無視できないものとなる可能性があり、性能として余裕を持つために専用のハードウェアアプライアンスを利用することは検討に値します。

また、今回検証では利用していませんが認証サーバにも同じことが言えます。DHCPサーバや認証サーバは動作が単純なだけに甘く見られがちですが、これが動作しなければネットワークが利用できなくなるという重要なコンポーネントですので、専用アプライアンスの導入は有力な選択肢です。DHCP、認証専用アプライアンスの利用は、性能の担保以外にも以下のような利点が得られます。

・高負荷時に他のサービスに影響を与えない
・アップデートなどのメンテナンス作業が最低限ですむ
・単純な冗長構成が可能
・障害時の切り分けが容易
・サポートが受けやすい

上記のうち、特に「障害時の切り分けが容易」「サポートが受けやすい」という点は重要です。汎用サーバを利用していて障害が発生した場合は「どのサービスが期待通りに動いていないのか」「ハードウェアの問題か、ソフトウェアの問題か」「調査のための再起動などを行う場合、他のサービスにどの程度影響が出るか」などの確認にはかなりの手間がかかります。一方専用アプライアンスであれば、単一の機器が単一の機能を提供しているため障害の切り分け作業が最低限となり、結果的に解決までの時間を大幅に短縮することに繋がります。今回利用したDHCPサーバ「NetAttest D3」や、認証サーバである「NetAttest EPS」は日本語のGUIで容易に操作でき、国内での実績も豊富なので利用をお勧めしたい製品です。

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なお・・・「NetAttest D3」は公称値で毎秒1250のDHCPリースが可能であり、今回の試験環境である40台程度では全く問題にならず、性能検証として意味あるデータとはなりませんでした。動画のはじめに出てくる構成図には「NetAttest D3」があるのに検証結果でそれに一切触れられていないのは、こういうわけでした。

裏話編は以上となります、いかがでしたでしょうか。
無線LANの検証でありましたが、意外と無線LAN「以外」のポイントで苦労したり、悩んだりすることがあるということが伝わっていれば幸いです。
それではこの辺りで失礼します。

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著者紹介

SB C&S株式会社
技術統括部 第2技術部 1課
矢野 隆規