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VMware Explore 2023 Las Vegas 速報レポート (ウェビナー告知あり)

VMware
2023.08.23

みなさん、こんにちは。
SB C&S 市島です。

私は現在、アメリカ・ラスベガスで開催されているVMware社の年次カンファレンス「VMware Explore 2023 Las Vegas」に参加しています。

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VMware社の年次イベントは、昨年の2022年から「VMware Explore」という名称のイベント名で開催されています。VMware製品の様々なアップデート情報や開発中のテクノロジーの情報、関連する各種ITソリューションの最新技術情報を"Explore (探索する、調査する)"するイベントです。

本ブログでは、VMware Explore 2023 Las Vegasのジェネラルセッションで発表された内容を中心に、現地から速報レポートとしてお届け致します。

※可能な限り正確な情報を掲載するよう努めていますが、VMware Explore 2023 Las Vegasでの発表直後の内容を含むために後日の修正が必要となることや、情報が古くなることで正確性を保持できなくなる可能性もあります。そのため、必ずしも情報の正確性を保証するものではありませんことをあらかじめご理解ご了承ください。

ジェネラルセッションの導入と主たる2つのテーマ

VMware Explore 2023 Las Vegasは、例年同様にVMware 社のCEOであるRaghu Raghuram (ラグー・ラグラム)氏の登壇からスタートしました。

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 最初にRaghu Raghuram氏は、VMware社が25周年の節目の年であることを伝えました。25年の歩みを進めて来たVMwareですが、やはり最近の一番大きなニュースとして皆さんが気になるのがBroadcomによるVMwareの買収でしょう。今回のVMware Exploreのゼネラルセッションでは、BroadcomのPresident & CEOであるHock Tan(ホック・タン)氏のビデオメッセージが流れました。

買収は、Broadcom社の会計年度2023年(2022年11月~2023年10月)に完了する方針は変わらないとのメッセージが伝えられておりました。まだ買収完了前ということで、これといって具体的な発表は今年のジェネラルセッションの中で触れることはありませんでしたが、VMwareソリューションとパートナーエコシステムの強化のために非常に多くの投資をしていると紹介されていました。

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次にRaghu Raghuram氏は、今回のVMware Exploreでの重要なテーマとして「Multi-Cloud」「Generative AI」の2つのテーマがあることを紹介しました。

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今年ジェネラルセッションでのテクノロジーアップデートの発表は、この2つのテーマに沿って紹介されました。本ブログ記事でも、この2つのテーマについてご紹介していきます。

 

Multi-Cloud

まず「Multi-Cloud」です。

現在のお客様はアプリケーションを実行する環境として Amazon Web ServicesAWS、Microsoft Azure(Azure)、Google Cloud Platform、そしてプライベートクラウド(自社のオンプレミス環境を含む)など、様々なクラウドプラットフォームの選択肢があります。こういった状況の中、多くのお客様は1つのクラウドサービスだけを使用するのではなく、2つ以上のパブリッククラウドを活用しています。

このようなマルチクラウドを活用しているお客様を成功に導く方法として、VMwareはCloud-Smart のアプローチを提供していると紹介されました。

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このCloud-Smart なアプローチを実現するのは「VMware Cross-Cloud Services」のサービス群です。「VMware Cross-Cloud Services」は、下記4つのポートフォリオで構成されています。

  • Accelerate App Delivery
    • 開発者が迅速にアプリケーションを生み出しユーザーへ提供する為の、Tanzu ファミリーを中心とした Kubernetes プラットフォームと管理サービス
  • Modernize Cloud Infrastructure
    • クラウドと接続しモダナイズされたVMware Cloud、vSphere、vSAN、NSXといったインフラストラクチャサービス
  • Deliver Autonomous Workspaces
    • Workspace ONEやHorizonによって提供される、自動化によって最適化された従業員のワークスペース環境
  • Enable the Software-Defined Edge
    • ユーザーや端末と物理的に近い拠点のアプリケーション実行環境(Edge Computing)と、VMware SASE・VMware SD-WANによって提供されるEdgeを繋ぐネットワークサービス

今年ジェネラルセッションでは、上記に紹介したポートフォリオに含まれる各製品の主要アップデートが、VMwareのPresidentであるSumit Dhawan(スミット・ダーワン)氏から紹介されました。

本記事でも、それぞれのポートフォリオごとに順を追ってご紹介していきたいと思います。

 

Modernize Cloud Infrastructure

Modernize Cloud Infrastructureの主たるアップデート情報は5つです。

【1】VMware vSAN MAX

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VMware vSAN Maxは、vSAN 8から利用できるESA(Express Storage Architecture)で構成されたストレージを切り出して利用できる新しいvSANの提供モデルです。VMware vSAN Maxを利用することで、ストレージ機能のみを提供するvSANクラスターを構成し、vSANを構成していない別のvSphereクラスターから外部ストレージとして利用可能になります。

vSANによるHCI(Hyperconverged Infrastructure)アーキテクチャのメリットが評価され広くHCIの導入が進みましたが、従来の3Tier構成の柔軟性を求めるお客様もいらっしゃいます。

今回発表されたVMware vSAN MAXによって、vSANのストレージ リソースとコンピューティングリソースを分離させた柔軟な構成を実現できるようになり、動作させるアプリケーションや用途にあわせ、HCIの機能と管理性のメリットを維持しながら、共有ストレージによる3Tier構成のメリットも享受できるようになります。

 

【2】VMware Cloudの運用効率を向上

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次にESXiの更新を迅速に行い、運用効率を向上するためのアップデートが紹介されました。具体的には、vSphere+がESXiのライフサイクル管理サービスを提供します。

従来vSphere+はvCenter Serverのライフサイクル管理機能(アップグレード管理)を提供していましたが、今回のアップデートによってESXiに対してもライフサイクル管理機能を提供します。

この機能アップデートによって、vSphereのコンポーネントであるESXi」と「vCenter Serverの両方のライフサイクル管理が、vSphere+のクラウド管理コンソールによって行えるようになります。分散されたvSphere環境のライフサイクル管理がvSphere+によって効率化されることで、環境全体の更新作業にかかった時間が従来の3倍の速度で完了するとジェネラルセッションの中では紹介されていました。

 

【3】NSX+ 

3つ目にNSX+の発表です。

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昨年のVMware Exploreで発表されたProject Northstarが、実際の製品としてリリースされたものがNSX+です。昨年リリースされた「vSphere+」「vSAN+」「VMware Cloud Foundation+」に続き、NSXも"+"がついたVMwareのSaaSサービスとして提供されます。

NSX+が提供するL2-L7のネットワーク仮想化機能・セキュリティ機能を、分散された複数のvSphere環境に対して提供し、単一のVMware Cloud Servicesのクラウド コンソールから一元管理できるようになります。

 

【4】Developer Readyなインフラの提供

4つ目の紹介はDeveloper Readyなインフラストラクチャを提供する機能です。
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ジェネラルセッションの中では上記スライドのシンプルな説明のみで、具体的なアップデートされた機能名の紹介はありませんでした。私の方でどういった意図のアップデート紹介なのかを別のセッションやニュースリリースなどで調べてみたところ、このスライドにおける新しい機能発表としては、つい先日リリースされたNSX4.1.1に新機能として追加されているVPC(Virtual Private Cloud)機能を主に指していると思われます。

NSXのVPC機能は、vSphere・NSXで構成されたインフラストラクチャ上に対して、利用者(アプリケーション開発者)ごとに完全に分離されたネットワーク・セキュリティ環境をセルフサービスで提供します。

誤解を恐れず"例えば"でご紹介すると、AWSやAzureといったパブリッククラウドサービスで利用できるようなネットワーク環境を準備する機能です。クラウド利用者毎にネットワーク環境が完全に離され、セルフサービスで準備ができるネットワーク・セキュリティ環境を提供するイメージになります。オンプレミスのvSphereインフラストラクチャ上に、アプリケーション開発者にとって柔軟で使いやすいインフラストラクチャ環境を提供する機能になるかと思います。

 

【5】Ransomware and Disaster Recovery

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5つめは、VMware Cloud Disaster Recovery(VCDR) 、そしてVCDRのオプション機能であるRansomware Recoveryに関するアップデートです。

VMware Cloud Disaster Recoveryは、オンプレミスvSphere環境及びVMware Cloud on AWS環境に対して災害・ランサムウェア被害から保護する機能を提供しておりましたが、今回のアップデートで他のパブリッククラウドインフラストラクチャに対してもリカバリ機能を提供すると発表されました。今回の発表のタイミングでは、新たにGoogle Cloud VMware EngineとAWS Outposts (Techプレビュー) に対応することが紹介されています。

 

Modernize Cloud Infrastructureの主たる5つのアップデートは以上ですが、このパートの最後にVMware Cloudインフラストラクチャの新しいライセンス体型として「VMware Cloud Editions」が発表されました。5つのエディションが提供され、お客様の環境に合わ選択可能だと紹介されています。

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Accelerate App Delivery

次に、Accelarate App Deliveryについてです。具体的な製品としてはTanzuを中心としたソリューション郡のアップデートで、主だった発表は以下の2点が発表されました。
  • Tanzu Application Platformのアップデート:Tanzu Application Engine(ベータ版)の提供
  • Tanzu Intelligence Services
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Tanzu Application Engineは、インフラストラクチャとアプリケーションの間に抽象化レイヤーを作り出し、アプリケーション開発の共同作業を支援するソリューションとして発表されています。アプリケーションの開発速度向上と共に、コンプライアンス向上も実現するとのことです。(具体的な機能については、我々でも目下調査中なります)

次のTanzu Intelligence Serviceは、AI/ML 機能によりクラウド全体でアプリケーションのコスト、パフォーマンス、セキュリティを最適化するソリューションとして発表されました。

このTanzu Intelligence Serviceのサービスをもう少し調べてみると、昨年発表されたVMware Ariaソリューションの一部が"Tanzu"にリブランドされている形で構成されていることがわかります。

  • VMware Aria Cost powered by CloudHealth ⇒ VMware Tanzu CloudHealth
  • VMware Aria Business Insights ⇒ VMware Tanzu Insights
  • VMware Aria Guardrails ⇒ VMware Tanzu Guardrails
  • VMware Aria Migration ⇒ VMware Tanzu Transformer
  • VMware Aria Hub ⇒ VMware Tanzu Hub

また、リブランドだけでなくこのタイミングで発表された新しい機能「VMware Tanzu with Intelligent Assist 」が発表されました。VMware Tanzu Hub (旧称:VMware Aria Hub)のコンソール上で提供され、生成 AI を活用した会話型チャットボットによって開発環境の運用最適化を実現するソリューションとして紹介されています。

Deliver Autonomous Workspace

次に、Deliver Autonomous Workspaceです。Workspace ONEやHorizonといった製品に関するアップデートです。主だった発表は以下の2点が発表されました。

  • Enhanced DEX Insights
  • Apps on Demandのアップデート
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1つ目の「Enhanced DEX Insights」は、機械学習アルゴリズムを活用しDigital Employee Experience (DEX)をさらに向上するアップデートとなります。

Workspace ONE Intelligenceによって分析可能なデバイスのデータがさらに拡張され、その収集したデータをAIによって分析し異常検出を行います。また、デバイスに異常が発生した際には修復対応が必要となりますが、修復作業を効率的に行うためのPlaybook Builderと呼ばれる機能が新たに提供されると発表されています。

2つ目のアップデートは、VMware App Volumesのテクノロジーを活用した「Apps on Demand」のアップデートです。Horizonのインフラストラクチャだけでなく、Citrix・Azure Virtual Desktop・Windows 365・Amazon WorkSpaces・Amazon AppStreamなど、様々な環境に対してApp Volumesによって仮想化したアプリケーションを配信できるようになります。

 

Enable the Software Defined Edge

最後に、Enable the Software-Defined Edgeです。

VMwareはEdge Computingのソリューションとして、従来よりVMware Edge Compute Stackを提供しています。エッジ環境でアプリケーションを実行するためのプラットフォームとして、VMware Edge Compute StackにはvSphereやvSAN、Tanzu、VMware SD-WAN(VMware SASE)といった様々なVMwareのソリューションが含まれています。

今年のVMware Exploreの発表では、Edge向けのオーケストレーション機能として、VMware Edge Cloud Orchestrator 発表されました。

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VMware Edge Cloud Orchestratorによって、Edge Compute StackとVMware SASE(SD-WAN)のプラットフォームに対するクラウド統合管理を実現します。この統合管理によって、まるでSD-WAN Edgeのゼロタッチプロビジョニングのように、Edge Computingのワークロードのすべての構成をゼロタッチでプロビジョニングできるようになると発表されました。

 
 
以上が、1つ目のテーマである「Multi-Cloud」のアップデートのご紹介でした。本ブログに記載した概要の紹介だけでもかなりの量があり、今回のVMware Exploreではかなりの数のアップデートが発表されたことがおわかりになるかと思います。
 

Generative AI  

Sumit Dhawan(スミット・ダーワン)氏による「Multi-Cloud」関連の主要アナウンスが行われたのち、再びRaghu Raghuram (ラグー・ラグラム)氏が壇上に戻り、今回のイベントにおける2つ目の主テーマとされたVMwareとしての「Generative AI」関連ソリューションの発表が行われました。

古くは40年前のPCアプリから始まったアプリケーションですが、その後にWebアプリ、モバイルアプリといった流れを経て、現在ではAIアプリケーションの時代に突入しようとしています。

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その中でもリリース以降、爆発的な勢いで瞬く間に利用ユーザー数を増やしているChatGPTに代表される、いわゆる「生成AI」に対する注目が非常に高まっています。

生成AIではこれまでのような専門的なプログラミング言語を通じてではなく、既に膨大な量の言語を学習済みの大規模言語モデルLarge Language Model/LLMを利用することで、人間が直感的な自然言語を使用して対話をすることができる点が大きなイノベーションの引き金となり、既に多くの企業による導入検討がされつつあります。

しかし、ChatGPTのような生成AIを利用する際に気にしなければならない最も大きな課題がデータの「プライバシー性」です。例えば、ChatGPTに個人や企業の持つ重要なデータを入力すると、それらのデータが漏えいしてしまうなどの恐れがあり、個人や企業独自のデータを活用するといったような利用をすることはセキュリティ上の問題があり、避けるべきだとされています。

そうした課題を解決すべく、今回発表されたのが「VMware Private AI Foundation with NVIDIA」です。VMware Private AI Foundation with NVIDIAを利用することで、ユーザーは自身の保有するセキュアな環境内で自社向けのプライベートな生成AIを開発・稼働させることが可能になります。

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VMware Private AI Foundation with NVIDIAは、「VMware Cloud Foundation」と「NVIDIA AI Enterprise」との組み合わせがベースとなっており、自社で生成AIを利用する際に必要となるサーバー・ストレージ・GPUなどのフルスタックコンピューティング基盤を提供することが可能です。
また、採用するLLMとしてもNVIDIA社のNeMoやMeta社のLlama 2などから選択することができ、ハードウェアプラットフォームとしては、Dell Technologies、Hewlett Packard Enterprise、Lenovoの3社がVMware Private AI Foundationに対応予定となっています。

こちらのVMware Private AI Foundation with NVIDIAの発表時には、NVIDIA社 ファウンダーでCEOでもあるJensen Huang(ジェンスン・フアン)氏もゲストとして駆けつけ、両社間の長きにわたるパートナーシップを改めて感じさせられました。
※ジェネラルセッション内で最も報道陣のシャッターが押されたタイミングだったかもしれません。

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現地からのVMware Explore 2023 ジェネラルセッションの速報としては以上となります。

これまでの「Multi-Cloud」に「Generative AI」が加わることで、今後さらに新たなイノベーションが次々と起きることを予感させてくれるような発表内容となりました。

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ウェビナー告知

本ブログでは、ジェネラルセッションのダイジェストを中心にお伝えいたしました。また、ジェネラルセッションではキーワードだけ紹介され、詳細は別のセッションでのキャッチアップが必要な内容も数多くあり、私も含め当社技術メンバーが様々なセッションに参加しての情報収集に励んでいます。

アップデートが盛りだくさんの VMware Explore ですが、帰国後には、今回のイベントに参加した当社 VMware 技術メンバーを中心に「VMware Explore 2023 報告会」オンラインセミナーを開催いたします。

 

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2023年9月19日(火) 14:00~16:00(オンラインウェビナー)
https://licensecounter.jp/vmware/dl/pdf/vmwx-us-report-sbcs-230919.pdf

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帰国後の報告会ではより多くの情報をお伝えできるよう、引き続き情報収集に努めていきたいと思います。本記事をご覧頂いた皆様は、上記リンクから今すぐセミナーへのお申し込みをお願いします!

 

【2023年10月追記】

2023年9月19日に開催した上記ウェビナーに参加できなかったお客様向けに、オンデマンドによる動画視聴と資料ダウンロードを公開中です。以下のリンクからアーカイブ動画の視聴を是非お申込みください。
https://licensecounter.jp/vmware/document/movie.html#entryid-11353

著者紹介

SB C&S株式会社
ICT事業本部 技術本部 技術統括部
第1技術部 1課
市島 拓弥 - Takuya Ichijima -

VMware vExpert