
本記事では、2025年6月11日(PST)に実施された vExpert Embargoed Meeting で公開された情報を基に、6月17日(PST)にリリースされた VMware Cloud Foundation 9.0(VCF 9.0) の概要と注目ポイントを紹介します。
VCF 9.0 は VMware Explore 2024 Las Vegas で既に発表されていましたが、遂にリリースされました。ここでは、その内容を整理し特に注目すべき機能や概要を紹介していきます。
6月17日(PST)に公開された参考情報
- VCF 9.0 Documentation landing page:
https://techdocs.broadcom.com/us/en/vmware-cis/vcf/vcf-9-0-and-later/9-0.html - Release Notes:
https://techdocs.broadcom.com/us/en/vmware-cis/vcf/vcf-9-0-and-later/9-0/release-notes.html - メーカーブログ(What's New in VMware Cloud Foundation 9.0):
https://blogs.vmware.com/cloud-foundation/2025/06/17/whats-new-in-vmware-cloud-foundation-9-0/
VCF 9.0 新機能の概要・注目ポイント
公式ブログ「What's New in VMware Cloud Foundation 9.0」では、「パブリッククラウドのスピード」と「オンプレミスの統制」を兼ね備えた"モダン・プライベートクラウド"への再定義が強調されています。
本記事では、その要点を踏まえ、vExpert Embargoed Meeting で語られていた注目の新機能をピックアップして紹介します。
インストーラーの刷新 - VMware Cloud Foundation Installer
VCF 9.0 では VMware Cloud Foundation Installer が導入され、従来必須だった Excel テンプレートと Cloud Builder が不要になりました。ブラウザベースのウィザード、または JSON ファイルをアップロードするだけで、VCF 、そして vSphere Foundation(VVF)においてもゼロから、あるいは既存環境に追加することができます。
このインストーラーは、必要なソフトウェアバンドルを自動ダウンロードし、あらかじめ検証済みのトポロジに基づいて構成をガイドします。そのため、個別コンポーネント(vSphere、vSAN、NSX、Aria Suite など)のインストール作業を気にせずに済み、設計ミスやパラメータ漏れによる導入リスクを大幅に低減できます。
また、オフライン(エアギャップ)環境にも対応しています。事前に必要なソフトウェアバンドルを取得しVCF Installer にアップロードする方式でも可能です。
ウィザードで入力した内容は即時バリデーションが行われるため、入力ミスがあればその場で修正可能です。結果として、まったく新しい環境を数クリックで立ち上げられるほか、既存の vSphere Foundation(VVF)を VCF へスムーズにアップグレードすることも容易になりました。
実際のインストーラー画面では、最初に VCF か VVF を選択するだけでウィザードが始まります。画面の案内に従って基本情報を入力していきます。
設定を進めていくと、途中で VCF Operations と VCF Automation の設定ステップがあります。各ステップでは FQDN と管理者パスワードを入力するだけで前提条件チェックが自動実行されるため、事前に複雑な設定ファイルを準備する必要はありません。
●VCF Operations のインストール設定画面
●VCF Automation のインストール設定画面
全タスクの進行状況は緑のチェックマーク付きで可視化され、vCenter、NSX Manager、VCF Operations、VCF Automation の順に開始されます。完了後は、 VCF Operations Console へのリンクと初期ログイン情報が示され、そのまま Day‑2 運用に移行できる設計です。
VCF Operations Console の機能・役割
VCF 9.0 では、運用面の管理をVCF Operationsが提供するConsole(VCF Operations Console)に統合されています。
従来 SDDC Manager など複数のコンポーネントに分散していた管理機能が 1つの 画面に集約され、VCF環境全体の健全性の確認、ライフサイクル管理はもちろん、VCF 環境全体の SSO 設定まで直感的な UI で操作可能です。これにより、監視・パッチ適用・証明書更新といったインフラ運用チームが行う日常業務において、ツール間を行き来することなく効率的に実施できるようになります。
ここからは、VCF Operations Console が提供する機能を一部ピックアップしてご紹介します。
Cost Control, Chargeback and Showback
リソースの利用状況をテナント/部門/プロジェクト単位で集計し、コストをダッシュボードで可視化します。将来予測も提示されるため、リソース逼迫を事前に察知して予算申請や容量計画を立てやすくなります。
アプリケーション一覧ビューでは、組織(例:Marketing 部門)や環境(Production/Staging など)ごとに、 総 vCPU / vRAM / ストレージ使用率・想定月額コストが色付きバーで表示されます。利用率が閾値を超えるとバーがオレンジに変わり、"Insights" バッジが付き、詳細ページへドリルダウンできます。
詳細ページでは、アプリ構成をマップで視覚化しつつ、右ペインの"Insights"からコスト最適化の提案が提示されます。
Security Operations Dashboard
Security Operations Dashboard では、環境全体のセキュリティ状況を 1 画面で確認できます。CVE データベースと照合して影響ホストをマーキングし、推奨パッチを提示してくれます。常にコンプライアンスを維持し、脆弱性のリスクを最小限に抑えることができます。
Application Insights and Troubleshooting
VCF Operations Console 上でアプリケーション単位の健全性・コスト・依存関係をまとめて可視化し、障害時にはガイド付きワークフローで原因究明から復旧までを自動化できるダッシュボードが追加されています。
この機能により、運用チームは問題の早期検知から原因特定、自動修復までを数クリックで完結できます。
VCF Automation Console の機能・役割
VCF 9.0 では開発者向けに、パブリッククラウド同等のセルフサービス管理画面を標準機能として提供しています。このセルフサービス機能を提供するのが、VCF AutomationのConsole(VCF Automation Console)です。
VCF Automation Consoleは、テナント単位でVPC(Virtual Private Cloud)相当のネットワーク境界を構成し、カタログからVMやKubernetesクラスタを数クリックで展開できます。展開前にはコスト見積もりを提示し、運用後はVCF Operationsと連携してコスト最適化を支援します。
コア技術(vSphere、vSAN、NSX)のパフォーマンスと効率の向上
vSphere、vSAN、NSX の機能が向上したこともトピックとして挙げられていました。
vSphere:Advanced NVMe Memory Tiering
Advanced NVMe Memory Tiering は、アクセス頻度や重要度に応じて高速なDRAMと低コストなNVMe SSDを自動で使い分ける仕組みです。クリティカルなワークロードは DRAM へ、優先度の低い処理はNVMeへと動的に配置されるため、同じサーバーでもより多くのVMを同時に走らせることができます。Broadcomの社内試算によると、これによりメモリとサーバーの TCO を最大 38% 削減できるとのことです。
vSAN:vSAN ESA with Global Dedup
vSAN ESA with Global Dedupはクラスタ全体を対象に高度な重複排除を行い、不要なデータコピーを排除します。これによりストレージ容量を大幅に節約できるだけでなく、読み取りI/Oが減ることでデータアクセスも高速化します。
プライベートクラウドを単一のストレージプールとして管理できるため、拡張に伴う追加コストも抑えられます。Broadcomはこの機能でTCOを 34% 削減し、3 年間で最大 1,000 万ドルの節約が可能だと報告しています。
NSX:Enhanced Data Path
Enhanced Data Pathではネットワークスタックが再設計され、最大で従来の 3 倍に達するスループットを実現しました。データ集約型アプリケーションでも通信遅延を感じさせず、レイテンシとCPU負荷の両方を低減できるため、ハードウェアコストや運用コストも同時に抑制されます。特にバックアップやレプリケーションなど帯域を多用する処理で大きな効果が期待できます。
新ライセンスモデル
ライセンスモデルの変更に関しても言及されていました。
VCF 9.0では従来型のライセンスキーによるアクティベーションが廃止されます。Broadcomが署名したライセンス付与ファイルをVCF Operationsにアップロードする方式、またはBroadcomの提供するクラウドコンソール(VCF Business Services console)へVCF Operationsをオンライン接続させる管理方式へ変更されます。
VCFとVVFのライセンスを同じコンソールで管理でき、ホスト追加時はコア数が自動計算されます。万一ライセンスを超過した場合でも 90 日間の猶予期間が設けられるため、計画的なライセンス増強が可能です。オンライン環境とエアギャップ環境の双方に対応しています。
まとめ
VMware Cloud Foundation 9.0 は、オンプレミスの厳格なガバナンスとクラウド並みのスピードを両立するために設計されたプライベートクラウドです。
特筆すべきは、VCFのデプロイ方法がアップデートされ、新しくリリースされたVCF Installerにより導入プロセスがシンプルになった点です。VCF導入時のインストレーション作業が簡素化されることが期待されます。
また、コンソールが集約されたことも注目すべきポイントです。VCF Operationsが導入後の運用を単一コンソールに集約し、VCF Automationがセルフサービスカタログで開発者の要求を即時に処理します。
以上、VCF 9.0の概要について紹介しました。今回ご紹介した機能のみならず、新機能の詳細については、また別途紹介していきます。
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著者紹介

SB C&S株式会社
ICT事業本部 技術本部 技術統括部
第1技術部 1課
山田 和良 - Kazuyoshi Yamada -
VMware vExpert