SB C&Sで仮想化製品のプリセールスエンジニアとして活動している、平田と申します。
今回はVMwareの災害対策ソリューションであるVMware Live Recoveryについて、これまで提供されていたVMware Site Recovery Managerとの違いを中心にご紹介いたします。
※VMware Live Site Recoveryのライセンス適用手順は、別の記事でご紹介しておりますので合わせてご覧ください。
VMware Live Site Recovery ライセンス適用の紹介
はじめに
VMwareでは災害対策(DR対策)およびランサムウェア対策として、以前から2つの製品を提供しておりました。
- VMware Site Recovery Manager(SRM)
- 保護サイトに展開されている仮想マシンを異なるvCenter Server環境に切り替えるための支援ソリューション
- VMware Cloud Disaster Recovery(VCDR)
- DRaaS ソリューションとして提供されるオンデマンドのディザスタリカバリサービス
- オプションにランサムウェア被害から安全に復旧する機能Ransomware Recoveryが実装されている
どちらもDR対策製品でしたが、その対策の手法や環境が違います。
(本記事では製品の特長について取り上げないため、製品詳細は上記のリンクから別記事を参照ください。)
VCDRは後発の製品ですが、SRMとは提供する機能が異なるため、お客様の要件に合わせてそれぞれの製品選定がされておりました。一方で、同じDR対策というラインナップでありながら別製品になるため、お客様にとってどちらの製品が適しているか、判断が難しい製品体系になっておりました。
このような背景もあり、VMwareではDR対策の製品ラインナップについて、"VMware Live Recovery"として一本化し、リブランドが行われました。
VMware Live Recoveryの概要
VMware Live Recovery(VLR)はDR対策の製品になっており、2つのソリューションによって構成されております。
- VMware Live Site Recovery(VLSR)
- "VMware Site Recovery Manager"の後継にあたり、基本的に同等の機能を提供
- VMware Live Cyber Recovery(VLCR)
- "VMware Cloud Disaster Recovery"の後継にあたり、基本的に同等の機能を提供
上記の通りVMware Live Recoveryは、SRMの後継にあたるVMware Live Site Recovery(VLSR)と、VCDRの後継にあたるVMware Live Cyber Recovery(VLCR)によって構成されております。それぞれ後継とされてますが、実際には従来の製品の名称を変更し、新しいバージョンとしてVLSRおよびVLCRがリリースされております。そのため、基本的には従来製品と同じ機能を有しており、使い勝手や必要なスキルは変わらずにご利用いただけます。
2つの製品が一本化され、名称が変更されたイメージとなっておりますが、ライセンス面やアクティベーション方法なども一部が変更されています。
本記事では、ご利用者の多い旧名称VMware Site Recovery Manager(SRM)に注目し、新名称VMware Live Recovery(VLR)のVMware Live Site Recovery(VLSR)となった際の違いを中心にご説明していきます。
VMware Live Site RecoveryとVMware Site Recovery Managerの違い
VLSRとSRMの違いについて、3つの視点からご説明いたします。
1.バージョン
上記の概要で記した通り、VMware Site Recovery Manager(SRM)とVMware Live Site Recovery(VLSR)は基本的には同機能・同製品でありますが、バージョンに違いがあります。
本記事作成時において、SRMはリリース"8.8.0.3までの展開"とされてますが、VLSRはリリース"9.0.0~9.0.2以降の展開"になっております。8系までがSRM、9系以降がVLSRであることがわかるのと同時にリリースの番号が連続していることで、VLSRはSRMの後継であることがわかります。
2.ライセンス面
機能面では変わらないSRMとVLSRですが、ライセンス面では大きく変わっております。
SRMでは、"関連付けされているvCenter Serverにライセンスキーを適用して割り当てる"方式でしたが、VLSRでは"関連付けされているVMware Cloud Servicesのアカウントと紐付ける"方式になっております。
実際にVLSRをvSphere環境に展開すると、下図のようにVMware Cloudへ接続するウィザードが用意されております。
SRMではライセンスキーを適用する"オフライン"利用が前提となっておりましたが、VLSRでは"VMware Cloud Servicesで管理する"オンラインの利用が前提になっております。
VMware Cloud Servicesでライセンス管理を行うことで、複数のサイトで保護されているVM数や、VLCRと組み合わせた総数を確認することを一元管理することが可能になります。
一方で、VLSRはSRMの後継であるため、"オフライン"での利用も可能です。VMware Cloud Servicesからオフライン用のライセンスキーを生成することで、従来のようにオフラインで運用することが可能になります。
※リリース"9.0.2"以降の機能になります
オフライン用のライセンスキーを生成などアクティベーション方法については、別の記事にて記載しておりますので、本記事と合わせてご覧ください。
3.コンポーネント
VLSRを構成するコンポーネントについて、下記になります。
- 保護サイトおよびリカバリサイト
- vSphere環境(vCenter Server、ESXiなど)
- SRM(VLSR版)
- vSphere Replication
- インターネット接続環境(DNS、プロキシサーバーなど)
- VLSRにおいてデプロイする仮想アプライアンスはSRMと呼称されております
- VMware Site Recovery Managerの略称と混在するため、本記事ではVLSRにてデプロイする仮想アプライアンスを"SRM(VLSR版)"と記載しております
- インターネット(クラウドサービス)
- VMware Live Recovery Global Console(VMware Cloud Services)
上記にあるようにVLSRでは、VMware Cloud Services 内にある"VMware Live Recovery Global Console"が新たにコンポーネントとして追加されました。
ユーザーはVMware Cloud Services内にあるVMware Live Recovery Global ConsoleへアクセスすることでVLRの管理をすることができます。VLSRではこの管理下に入るためインターネット上にあるVMware Cloud Servicesへのアクセスが必要になります。
VMware Live Recovery Global Consoleでは、ライセンス数の確認だけでなく、利用されているサイト別のライセンス数や、VMの保護ステータスなどを確認することができます。
また、直接的なコンポーネントではありませんがSRM(VLSR版)がライセンス確認などのため、インターネット上にあるVMware Cloud Servicesに接続するインフラ環境が必要になります。接続にはポート443が利用され、プロキシを利用することも可能になっております。
※VLSRの必要な通信要件は下記サイトをご参照ください
◆Network Ports for VMware Live Site Recovery
https://docs.vmware.com/en/VMware-Live-Site-Recovery/9.0/vmware-live-site-recovery/GUID-499D3C83-B8FD-4D4C-AE3D-19F518A13C98.html
おわりに
今回はVMware Live Recoveryについて、VMware Site Recovery Managerとの違いを中心に紹介しました。
VMware Site Recovery Managerが販売終了、後継の製品としてVMware Live Recoveryが登場しましたが使い勝手について大きな変更点はなく利用でき、今まで通りに利用できるか?という不安は解消できたかと思います。
また、VMware Live Site Recoveryのライセンス適用手順を、別の記事でご紹介しておりますので合わせてご覧ください。
VMware Live Site Recovery ライセンス適用の紹介
VMware新ライセンスの実態! vSphere Foundation 調査レポート記事一覧
著者紹介
SB C&S株式会社
ICT事業本部 技術本部 技術統括部
第1技術部 1課
平田 裕介 - Yusuke Hirata -
VMware vExpert
NW機器メーカ、SIerでインフラエンジニアの経歴を経て、SB C&Sに入社。
SIer時代にサーバ仮想化と出会い、人生が大きく変わる。