はじめに
こんにちは、SB C&Sの大塚です。Veeam Backup & Replication v12.2のリリースに伴いNutanix AHVとのインテグレーションがより強化されました。この記事では、v12.2で更新されたNutanix AHVのバックアップに関連する新機能と変更点を紹介します。
v12.2は2024年8月28日にリリースされた最新のバージョンとなります。
※この記事は、VeeamのRelease NotesおよびWhat's Newをもとに作成しておりますので、詳細はRelease NotesおよびWhat's Newをご確認ください。
v12.2にて追加された新機能および変更点
●Prism Central の登録がサポートされたことによる統合管理
VeeamにBackup InfrastructureとしてNutanix AHVを登録する場合は、v12.1以前では、AHVクラスター単位で登録していましたが、v12.2からPrism Centralの登録がサポートされました。
登録手順は従来のAHVクラスターを登録する流れと同様に「Add Server」から登録ウィザードを進めて、Prism Centralの情報を入力して登録します。登録が完了するとPrism Centralで管理しているすべてのAHVクラスターがPrism Central配下に表示されます。
Nutanix AHV > Prism Central Server > 登録したPrism Central > 管理対象のAHVクラスターの順で展開されています。アイコンからもPrism Centralと管理対象のAHVクラスターが分かれていることが読み取れます。
管理対象のAHVクラスター内で作成されたすべてのVMを一元管理できるようになり、バックアップジョブを作成する際に複数のAHVクラスターをまたいでVMを登録できるようになりました。これにより、管理の効率性が向上します。
既存の環境で複数のAHVクラスターを登録している場合でも、「Add Server」からPrism Centralを登録することができます。登録が完了した後に「Refresh」を行うことで、表示が更新されます。
※既存で登録されているAHVクラスターは、削除せずに進めてください。
●カテゴリを利用したバックアップ対象の動的更新機能
Nutanix AHVのPrism Centralでは、VMに「キー:値」形式のカテゴリを付与し、個別に管理できます。v12.2からは、バックアップ対象としてカテゴリを選択することで、そのカテゴリが付与されたVMをまとめてバックアップできるようになりました。
カテゴリをバックアップ対象として選択するためには、ジョブ作成/編集ウィンドウのAdd Object内に配置されている画像赤枠のアイコンをクリックすることで、Nutanix AHV上に存在するすべてのカテゴリから選択できます。選択する際にはCtrlを押しながらクリックすることで複数のカテゴリを一度に選択することも可能です。
バックアップ対象にカテゴリを選択するメリットは、新たにデプロイしたVMにそのカテゴリを付与するだけで、既存のバックアップジョブは、動的に新しいVMをバックアップ対象として認識するため、Veeam側のメンテナンスが不要になる点です。
Veeamがバックアップ対象としてVMを認識する際の条件はOR条件であり、複数のカテゴリが設定されたVMでも、いずれか1つのカテゴリがバックアップジョブに選択されていれば、そのVMはバックアップ対象として認識されます。
●レプリケーション環境からのバックアップ取得
Prism CentralのDisaster Recovery機能により、snapshotのレプリケーションを実施しているVMのバックアップを取得する際に、レプリケーション先のsnapshotからバックアップを取得する機能が追加されました。
機能を有効化するためにはジョブ作成/編集時にチェックボックスにチェックを入れて完了してください。
この機能を利用することで、レプリケーション先のNutanix AHVにデプロイされたWorker VMにバックアップ処理をオフロードすることができるため、本番環境の負荷を軽減できます。
また、レプリカ コピーが RPO に準拠していない場合や使用できない場合は、オリジナルのVMからバックアップを取得するように自動で切り替わります。
レプリケーション先のNutanix AHVにWorker VMが存在しない場合、オフロードされるべきバックアップ処理が本番環境のBackup Applianceに依存することになります。したがって、本機能を有効利用するためには、レプリケーション先にWorker VMをデプロイすることが推奨されます。
●複数のネットワーク アダプターのサポート
Backup ApplianceやWorker VMをデプロイする際、v12.1では、ネットワーク設定は一意でしたがv12.2より、ネットワークの設定画面が変更され、赤枠で囲った「Add」ボタンより複数のネットワークアダプターを設定できるようになりました。
複数のネットワークアダプターを設定することで、ご利用のNutanix AHV内で管理系、サービス系といった業務利用するNWに加えて、バックアップ系の経路を用意してバックアップ系のネットワーク設定を持たせてあげることで業務NWとバックアップNWを物理的に分けてあげることも可能となりました。
■バックアップ系ネットワーク分離のイメージ図
複数のアダプターを設定することでバックアップトラフィックの出口を物理的に分けることが可能となり、業務側の経路をひっ迫することなくバックアップを取得することが可能となりました。
●ジョブのAdvanced設定にてカスタマイズ可能なオプションの追加
Nutanix AHV上に作成されたVMをバックアップするためのジョブ作成時、Advanced設定でカスタマイズ可能なオプションが追加されました。
v12.1以前ではNutanix AHVのAdvanced設定でカスタマイズ可能な項目はBackupタブ、Maintenanceタブ、Scriptsタブのみでしたが、v12.2からは、Storageタブが追加されました。
Veeam BitLookerの有効化により、削除済みのファイルブロックや不要なファイルを自動で選別し、バックアップ対象から除外されます。これにより、バックアップデータ量が削減されるため、パフォーマンスの向上が期待できます。
加えてバックアップ時の圧縮レベルの変更とVM処理用のブロックサイズのカスタマイズが可能になりました。これにより、圧縮効率やデータ処理の最適化を図ることができ、バックアップジョブ毎により細かく管理できるようになります。
どちらもVMware vSphere上のVMをバックアップする際には既に利用可能だった機能で、v12.2よりNutanix AHVで作成されたVMのバックアップの際にも利用可能となりました。
BitLookerについて
https://helpcenter.veeam.com/docs/backup/vsphere/dirty_blocks.html?ver=120
データ圧縮と重複排除(圧縮レベル及びブロックサイズに関するドキュメント)
>"データ圧縮設定の変更"部および"ストレージの最適化"部をご参照ください
https://helpcenter.veeam.com/docs/backup/vsphere/compression_deduplication.html?ver=120#optimization
●OAuth 2.0認証に対応した電子メール通知設定
v12.2では、Veeam Backup for Nutanix AHVにおける電子メール通知設定の際に、メールサーバーとして選択できるオプションが拡充されました。これにより、従来のSMTPサーバーに加え、OAuth 2.0認証を用いたモダン認証が利用可能となり、GmailやMicrosoft 365へのアクセスが可能にりました。
■v12.1の設定画面
■v12.2の設定画面
GoogleとMicrosoft はそれぞれSMTP認証についてレガシーと見なしており、無効にする予定であると発表しています。
今回のアップデート以降は、基本認証が利用不可となった場合にも対応できるようになりました。
●Nutanix AHV Appliance Web UI上でのリソース ビュー追加
Nutanix AHV ApplianceWeb UI上でのビューが更新されました。
画像の赤枠部よりOverview内にResourcesのタブが追加されていることがわかります。
ResourcesタブをクリックしていただくことでPrism Centralで管理しているすべてのクラスタ内に作成されたVMがすべて一覧表示されます。また、対象のVMのチェックボックスを選択のうえ青枠部の「Add to Job」をクリックすることで作成済みのバックアップジョブのバックアップ対象としてVMを追加することが可能となりました。
まとめ
v12.2で追加された機能はいかがでしたでしょうか。
Veeamのアップデート情報をこれからも発信していきますのでアップデートが追加された際には是非足を運んでいただけると幸いです。
SB C&S所属のエンジニアにより運営されているC&S ENGINEER VOICEでは、VeeamやNutanix AHV以外にも様々な製品の情報を発信しています。
IT製品に関する情報を収集する際には是非一度、C&S ENGINEER VOICEをチェックしてみてください。
今回は、これにて失礼します。
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著者紹介
SB C&S株式会社
ICT事業本部 技術本部 技術統括部 第1技術部 3課
大塚 芳輝