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オブジェクトストレージとは

ストレージ用語辞典
2025.04.14

はじめに

SB C&S株式会社では、2024年8月29日にWasabi Technologies LLC とディストリビューター契約を結び取り扱いを開始しました。そこでWasabi Hot Cloud Storageをはじめとする様々なストレージで採用されているオブジェクトストレージについて解説していきたいと思います。

目次

 ストレージの種類

 ・オブジェクトストレージとは

 ・ファイルストレージとオブジェクトストレージ

 ・オブジェクトストレージのユースケース

 ・C&S取り扱い製品

 ・まとめ

ストレージの種類

近年ではスマートフォンを購入する際にも「ストレージ〇〇GBモデル」のような記載があり、身近な存在となってきたストレージですが、ストレージと聞いてイメージはできるものの、種類まではよくわからないという方もいらっしゃるかもしれませんので、表にまとめてみました。
ストレージの種類.png
それぞれのストレージは異なる特徴を持ちます。この特徴をご理解いただいた上で本記事ではオブジェクトストレージとは何なのか、解説していきます。

オブジェクトストレージとは

オブジェクトストレージとは、格納されたデータを「オブジェクト」と呼ばれる単位で管理するストレージ(記憶装置)です。データの管理方法として、データをオブジェクト単位で分割してIDと呼ばれるユニークな識別子を付与します。保存の際にはメタデータと呼ばれる属性情報が一緒に保存されます。メタデータには「ファイル名」「ファイルサイズ」「日付」「コピー回数」「保管期限」などがあります。

ファイルストレージとオブジェクトストレージ

ストレージと聞いて多くの人がイメージするのは学校や会社で利用しているPCの多くで採用されているファイルストレージではないでしょうか。ストレージと言われてもエンジニアでもない限り仕組みを瞬時に理解することは難しいかと思います。そこで本記事では理解を深めるためにファイルストレージとオブジェクトストレージを比較しながら、身近なものに置き換えて解説したいと思います。

構造の違い

2つのストレージの大きな違いとして構造化方式の違いがあります。構造化方式が異なることでストレージの使用感はがらりと変わりますので押さえておきたいポイントです。

まず、ファイルストレージでは階層構造(ディレクトリ・フォルダ)が採用されています。

図書館の本棚に例えて解説します。図書館では区画ごとに文学(日本文学、外国文学、詩、小説など)や芸術・美術(音楽、演劇、映画、写真、スポーツなど)などの分類はされていて、更に作者ごと、50音順と並べられていることがほとんどですので目当ての本が「夏目漱石の吾輩は猫である」の場合、文学の棚 > 夏目漱石とたどり、わ行の箇所を探すことで目的の本を見つけることができます。
図書館のイメージ.png

ファイルストレージでも同じようにパスと呼ばれる識別方法によりディレクトリとファイルが管理されており、パスをたどることで目的のファイルを見つけることができます。画像のテキストファイルを探す際には「第一営業本部一課の管理しているフォルダに保存されている」という条件がわかっていれば順にたどることで目的のファイルにたどり着くことができます。整理されたファイルストレージは非常にわかりやすく直感的な操作が可能であるため会社組織などのファイル共有に最適なストレージであると言えます。スクリーンショット 2025-04-04 171428.png

オブジェクトストレージは、フラット構造が採用されています。
フラット構造イメージ.png

物流倉庫に例えて解説します。オブジェクトストレージに格納されるデータは物流倉庫に保管される商品だと思ってください。書籍や家電、衣料品やホビーなどすべての商品が個別の「オブジェクト」として管理されます。すべての商品には商品ラベル(ユニークな識別子)がついておりこのラベルによって管理されています。そのためどこにどんな商品があるのか即時に検索できます。
物流倉庫のイメージ.png

また商品ラベルには詳細情報(名前、種類、重量、製造日など)が登録されています。オブジェクトストレージでも同じようにメタデータとしてファイル名、ファイルサイズ、日付、コピー回数、保管期限といった詳細情報が付与されています。

倉庫で商品を取り出すとき、「棚の何番目」のように保管されている場所を探すのではなく、システムで「サイズが27.5cmのスニーカー」のように検索することで見つかります。同じようにオブジェクトストレージでは、データを取得するときにフォルダをたどるのではなく、ユニークな識別子(URL)を指定して直接アクセスできます。

データ取得方法の違い

構造の違いでも触れましたが2つのストレージでは、データの取得方法が異なります。

ファイルストレージではパス(path)を用いて特定のファイルやフォルダ(ディレクトリ)がどこにあるのかを指定することで目的のファイルを取得したり、ファイルが格納されているフォルダ(ディレクトリ)へアクセスすることができます。下の画像ではCドライブ>Users>大塚 芳輝>Desktopとたどり、ファイルストレージ_パスという名称のフォルダにたどり着いている状態となります。
ファイルストレージ_パスアクセス.png

オブジェクトストレージではユニークな識別子(URL)を指定して直接アクセスが可能です。その際に利用されるプロトコルはHTTP(S)プロトコルです。実際にオブジェクトストレージのファイルにアクセスしてみます。

今回利用したオブジェクトストレージはwasabi hot cloud storageです。現在demo-backup-bucketというバケットの中にテキストファイルと画像ファイルをそれぞれ保存してある状態です。
スクリーンショット 2025-04-03 135832.png

まずテキストファイルのURLを入力してアクセスすると保存されているテキストファイルの中身が参照できました。
スクリーンショット 2025-04-03 140635.png

続いて画像ファイルにもアクセスします。同じようにURLを入力してアクセスするとあらかじめ保存しておいた本ブログ記事のサムネイル画像が表示されました。
スクリーンショット 2025-04-03 140858.png

ファイルストレージとオブジェクトストレージのデータ取得方法の違いやHTTP(S)プロトコルを用いたURLでのファイルへのアクセスのイメージはつかめたのではないでしょうか。

データの更新方法の違い

2つのストレージはデータの更新方法が異なります。ファイルストレージは保存されているファイルを直接更新することが可能です。またファイルの一部を更新することももちろん可能です。対してオブジェクトストレージは保存されているオブジェクトを更新する必要がある場合、新しいバージョンを新規作成する方式となります。またオブジェクトの一部を更新することはできず、更新する場合にはオブジェクト全体を再アップロードする必要があります。

双方ともにバージョン管理をすることができますが、ファイルストレージはOSやアプリによって管理方法はさまざまであり多くの場合、設定をしないとバージョン管理されないことがあります。対してオブジェクトストレージはバージョン管理機能は標準搭載となっているため過去のバージョンを簡単に管理することができます。
管理方法の比較.png

オブジェクトストレージのユースケース

■バックアップ先としての利用

オブジェクトストレージをバックアップストレージとして採用することで、バックアップデータが大きくなった際に「すぐに」「低コストで」「拡張可能」である点から大きなメリットがあると言えます。

  • 利用開始までの期間

例えばオンプレミスのストレージ機器をバックアップストレージとして採用した場合、機器選定から始まり導入、利用開始となると1.5ヵ月~4ヵ月程度の時間がかかると試算できます。対してクラウドのオブジェクトストレージを利用開始する場合、利用するクラウドサービスが決まっていれば最短1日で利用することができます。

  • 拡張性

オブジェクトストレージの拡張はスケールアウト型が主流となっており、スモールスタートにより小規模から初めてデータ量に合わせてシームレスに拡張可能です。オンプレミス環境でよくある、利用を見越して事前に大きなストレージを組んでみたものの、それほど大きなストレージはいらなかったというケース。余計な費用が掛かってしまいますので必要な時に必要な分だけ拡張(購入)可能というのは組織にとって大きなメリットとなります。

  • コスト面

クラウドオブジェクトストレージは従来のオンプレミスストレージと比較して、初期導入コスト(ハードウェア)、年間運用コスト(電力・冷却・管理)、保守やアップグレードコスト、そして一般的にオンプレミスの機器は5年から6年でリプレースが必要であるという観点で比較した際に低コストで運用可能です。拡張性でも述べましたがスケールアウトすることが容易であるため必要な分のストレージを利用いただけるのでオンプレミスの過剰に容量を大きく設計してしまったというトラブルも発生しないため無駄なコストが発生しにくい点もメリットとなります。

Veeam Backup & Replicationなどのバックアップソフトとオブジェクトストレージを組み合わせることでバックアップ保存、アーカイブ保存が素早く開始できるので非常にお勧めです。

■ランサムウェア対策

近年ランサムウェアによる被害が急激に増えていることはご存じでしょうか。様々な方法で対策されていますが、次々に登場する新しい手口に対して完璧に対抗する手段はなく、常に対策が求められ続けている状況です。そんな中注目されているのがオブジェクトストレージが持つオブジェクトロック機能です。オブジェクトロックはバケットあるいはコンテナに保存されているオブジェクトに対してWORM(Write Once Read Many)モデルを提供する機能です。これにより、オブジェクトが削除および編集されるのを一定期間または無期限に防止することができます。この機能を利用することでランサムウェアからの脅威から大切なデータを守ることが可能となります。

■ストレージの階層化(ティアリング

一般的なデータ利用の傾向を示すパレートの法則に基づいて、ストレージに保存されているデータのうち、よくアクセスされるデータというのは全体の20%であると言われています。

全体の20%.png

そのため、このストレージに保存されているすべてのデータを高性能なSSDを使用したストレージ領域に保存しておくのは非常にもったいない使い方と言えます。そこでアクセス頻度の高いデータは高性能なSDDに、アクセス頻度の低いデータはHDDあるいはオブジェクトストレージに配置換えするための機能がストレージの階層化(ティアリング)です。

階層.png

先に解説した通り、オブジェクトストレージは低コストでの運用が可能であるため多くのデータをオブジェクトストレージに格納することで更に高いコストメリットを生むことが可能となります。比較的安価で購入可能とはいえHDDを採用した場合にはディスク故障を想定する必要があり、ランニングコストを考慮すると更にクラウドオブジェクトストレージを採用するメリットは大きくなります。

■監視カメラで録画した映像データの保管先

監視カメラの映像データは高解像度化が進んでおり、データ量はものすごく大きくなる傾向にあります。また、長期間の保存が必要となる場合が多く、ストレージに要求される容量は莫大なサイズとなってきております。そのため素早くスケールアウト可能で、低コスト運用可能なオブジェクトストレージを保存先に採用することは最適解とも言えます。Wasabi Hot Cloud Storageではあらゆる監視環境に最適なストレージと謳っています。
https://wasabi.com/ja/solutions/surveillance

【参考】当社で取り扱うオブジェクトストレージ対応製品

■クラウド

Wasabi Hot Cloud Storage
https://licensecounter.jp/engineer-voice/blog/articles/20240924_wasabi_introduction.html

Azure Blob Storage
https://licensecounter.jp/engineer-voice/blog/articles/20200703__azure_blob1.html

■オンプレミス

Cohesity
https://licensecounter.jp/engineer-voice/blog/articles/20200127_cohesity_1.html

Nutanix Objects
https://licensecounter.jp/engineer-voice/blog/articles/20240927_nutanixnutanix_nci_starter.html

NetApp StorageGRIDシリーズ
https://licensecounter.jp/engineer-voice/blog/articles/20240610_netapp_asa_list.html

Dell ECSシリーズ
https://licensecounter.jp/engineer-voice/blog/articles/20231114_dell_technologies.html


まとめ

今回は、オブジェクトストレージについて解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。

SB C&S所属のエンジニアにより運営されているC&S ENGINEER VOICEでは、様々な製品の情報を発信しています。IT製品に関する情報を収集する際には是非一度、C&S ENGINEER VOICEをチェックしてみてください。

今回は、これにて失礼します。

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著者紹介

SB C&S株式会社
ICT事業本部 技術本部 技術統括部 第1技術部 3課
大塚 芳輝