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【連載:ThinApp技術指南】02:仮想化をする前の準備

Omnissa
2025.09.30

SB C&S の後藤です。

Omnissa ThinApp技術指南を進めていきましょう。

ThinAppでアプリケーションを仮想化するために必要なお作法や注意点がいくつかあります。Nagisaworks伊藤さま とともにこのあたりの注意点をお伝えします。


仮想化をする前の準備

前回の記事では、ThinAppがどういったものかをお伝えしました。
今回からは実際にアプリを仮想化するための作業について解説していきます。

最初に行うのは「対象となるアプリの調査」と「クリーンなWindows環境の用意」です。


対象アプリの調査

仮想化を始める前に、対象アプリについて十分な知識を持っておくことが大切です。

対象アプリやその機能をThinAppがサポートしているか、動作に必要なものがすべて揃ったインストール手順を理解しているか――実際に仮想化を行う前にしっかり確認しておきましょう。

仮想化に適したアプリかどうか

残念ながらWindowsの仕様上の問題などによって、仮想化に適さないアプリがあります。
この場合パッケージングの作業自体は完了しますが、期待した動作にならないため注意が必要です。

例えば、右クリックのコンテキストメニューからファイルの解凍・圧縮を実行するアプリの場合、仮想化するとメニューに項目が追加されず利用できなくなってしまいます。
このようなアプリは、仮想化せず通常のインストールで利用することを検討してください。

ThinAppで仮想化できないアプリや機能

代表的なものを以下に挙げます。

  • デバイスドライバが必要なアプリ
    ThinAppはドライバの仮想化をサポートしていません。ウイルス対策ソフト、VPNクライアント、パーソナルファイアウォール、ディスクやボリュームのマウントユーティリティ、PDFプリンタドライバなどは対象外です。
    例えばAdobe Acrobatを仮想化した場合、PDFファイルの編集や保存はできますが、PDFプリンタを使った印刷はできません。

  • OS起動時に開始されるサービスをインストールするアプリ
    ウイルス対策ソフトや常駐型アプリケーションが該当します。

  • カーネルモードで動作するアプリ
    ThinAppはユーザーモードアプリのみ対応しています。

  • OSの一部のようなアプリ
    IME(ATOKなど)、OSのセキュリティ修正プログラムなど。

  • シェル統合アプリ
    右クリックメニューなどシェル統合の機能は制限されます。

  • ネットワークDCOMサービス
    COM/ローカルDCOMはサポートされますが、ネットワークDCOMは対象外です。

  • グローバルフックDLL
    キーボードやマウス入力をフックするアプリ(例:画面キャプチャアプリのホットキー機能、ソフトウェアキーボードなど)は制限されます。

  • Windowsユーザアカウント
    ユーザアカウント情報はパッケージに含まれません。必要な場合は実行環境に事前に作成してください。

  • ネットワーク関連の設定
    HOSTSやLMHOSTS、IP設定などは仮想化しても有効になりません。

  • Windowsの各種設定
    解像度、壁紙、テーマ、フォントなどは対象外です。

詳しくは公式ドキュメントも参考にしてください。
👉 ThinApp 仮想化の制限事項

なお、制限事項に当てはまるアプリは仮想化作業自体は実行可能ですが、設定変更などでは改善しないため注意が必要です。


インストール手順の調査

仮想化においてはアプリのインストール作業がとても重要です。
必要なものが揃っていないと、仮想化後のアプリが正しく動作しなくなります。

特に社内向けツールは注意が必要です。インストールマニュアルがあっても、他のアプリが既に入っていることを前提にしている場合があります。

また、インストール後に行う初期設定についても確認しておきましょう。設定値はパッケージに保存されるので、利用者の手間を減らせます。


クリーンな環境での動作確認

インストール手順を確認したら、クリーンな環境に実際にインストールして動作を確認します。
ここで問題が出るようであれば、仮想化後も同じ問題が発生します。環境や手順を改めて見直してください。


クリーンな環境の準備

ここからは、実際にパッケージングを行うWindows環境について解説します。

👉 ThinApp のインストールに関する推奨事項

仮想アプリの作成環境について

仮想アプリを作成するには専用のWindows環境が必要です。
具体的には「Windowsをインストールしただけで、他のアプリが入っていない環境」です。

条件は以下の通りです。

  • Windowsをインストールしただけの状態(Windows Updateは適用OK)
  • 他アプリを入れてから削除した環境は不可
  • プリインストールPCは不可
  • ウイルス対策ソフトやセキュリティアプリが入った環境も不可

物理PCでも作成可能ですが、現実的には仮想マシンを使う方が便利です。
また、作業中にWindows Updateや不要なファイル更新が行われないように、Windows Updateを停止することも必要です。

ThinApp Capture

なお、セキュリティはWindows Defenderやインターネット切断で十分です。外部のセキュリティソフトは入れないでください。


スナップショットの活用

クリーンな環境とは「一度も他のアプリを入れていない状態」を指します。
アンインストールしても完全に戻るわけではないため、スナップショット機能を活用しましょう。

  • Windowsインストール直後
  • ThinAppをインストール直後

最低でもこの2つのスナップショットを作成しておくと安心です。


VMware Workstation Proについて

VMware Workstation Pro

仮想マシンの作成には VMware Workstation Pro を推奨します。
Broadcomのサイトから無料でダウンロード可能です。

👉 VMware Workstation Pro ダウンロード

アカウント登録や追加情報の入力が必要になる場合がありますのでご注意ください。

VMware Toolsはパッケージングに影響はなさそうなので、必要に応じてインストールしておいてください。

また、インターネット切断はネットワーク設定から「ホストオンリー」を選択すると実現できます。

VM settings


まとめ

今回は、ThinAppで仮想化を行う前に必要な準備について解説しました。
次回は、用意したWindows環境でThinAppのインストール作業を進めていきます。


執筆協力

Nagisaworks 伊藤さま

ThinApp技術指南

著者紹介

SB C&S株式会社
ICT事業本部 技術本部
ソリューション技術統括部 技術推進室
後藤 正幸