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よくある質問からひも解くNutanix 第2回~ストレージ構造とバックアップ編~

Nutanix
2025.12.23

はじめまして!SB C&Sの川衞です。
この記事は「よくある質問からひも解くNutanix」の第2回となります。第2回では、Nutanixのストレージ構造の仕組みと、バックアップにまつわる疑問に触れていきます!

この記事はNutanixを扱う人がよく疑問に思うこと、そして問い合わせの多い質問について、一問一答形式でご紹介していく連載ブログです。これからNutanixを扱う方、または久しぶりにNutanixに携わる方の参考になれば幸いです。
以下「よくある質問からひも解くNutanix」のリンクを掲載していますのでご参照ください。

「よくある質問からひも解くNutanix」連載記事

第1回~AHVとCVM編~
第2回~ストレージ構造とバックアップ編~

Nutanixはハイブリッドなのにオールフラッシュのようなパフォーマンスがでると聞きました。本当ですか?

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Nutanixのストレージ構成には、ハイブリッドモデルやAll SSDモデル、All NVMeモデルなど、いくつかのストレージ構成が存在します。
そんな中でよくNutanixは、ハイブリッドモデルにおいても、All SSDモデル、All NVMeモデルに近しいディスク性能が出ることで知られています。
そんなハイブリッドモデルにおいてオールフラッシュモデルのようなパフォーマンスを実現している秘密は、ストレージの階層構造にあります。

まず、ストレージI/Oの処理として、AOSが書き込みI/Oを受信すると、Stargateと呼ばれるプロセスが、I/Oをランダム、またはシーケンシャルとして分類をし、そのI/Oの宛先を決定します。
宛先領域として、Nutanixは、SSDHDDの一部、又はそれらをまたがる「Oplog」、「Extent Store」と呼ばれる領域を作成し、ストレージI/Oの処理を行っています。

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Oplog

Oplogは、Nutanixで必須要件となっているSSD上の領域を確保して作成される、最速層の専用領域です。ランダム特性のあるデータの書き込みが発生すると、データはOplog書き込まれます。Oplogはランダム特性のあるデータの書き込みにのみ利用され、シーケンシャル特性のあるデータの書き込み時には利用されません。
また、OplogからExtent Storeに書き出される前にリードが発生すると、OpLogはリードキャッシュとして機能します。

Extent Store

Extent Storeは、SSDHDDをまたがった領域を確保して作成される領域です。Extent Storeには、ランダム特性のあるOpLogに書き込まれたデータが非同期でこの領域に書き出されるか、シーケンシャル特性のあるデータが直接書き込まれます。シーケンシャル特性のあるデータは連続しており、大きなブロック単位でディスクに効率的に書き込むことができるため、Extent Storeに直接書き込まれる形となります。
Extent Storeは、ILMIntelligent Lifecycle Management)と呼ばれる機能によって、古いデータはCOLD TierであるHDDに、新しいデータはHOT TireであるSSDに、といったイメージで、アクセスパターンに基づいてデータが階層間でそれぞれ動的に配置されます。内部的には、Stargateと呼ばれるプロセスにより、頻繁にアクセスされるデータが下位層から上位層へ移動されます。一方、Curatorとよばれるプロセスにより、データへのアクセス頻度が低下すると、上位層から下位層へデータが移動されます。このプロセスにより、AOSは上位層のスペースを最適に活用し、レイテンシを低く抑える必要がある最も頻繁にアクセスされるデータのみが、上位層に保持される仕組みとなります。

以上、ご紹介したように、ストレージの階層構造と、データ配置の仕組みにより、(もちろんデータの性質や容量に左右される部分もあると思いますが)基本的にHDD層にデータを落とさず、SSD層のみでデータを捌くことで、ハイブリッモデルにおいても、オールフラッシュモデルのような性能を維持することが可能となります。
なお、オールフラッシュモデルの場合は、Extent StoreはSSD領域のみで構成され、ILM機能による管理は行われない形となります。

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Nutanixでバックアップはどうやるんですか?

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Nutanixでは、仮想マシンやボリュームグループのバックアップ取得方法として、スナップショットやレプリケーション機能を利用することができます。
ただ、一般的にスナップショットは、「ある時点の状態を記録し、後でその状態に戻せるようにする」技術であり、あくまでバックアップとは異なる考え方になります。
しかし、Nutanixによるスナップショットは、バックアップデータとしての利用も想定されてた仕組みとなっています。

まず、一般的なvSphere等のハイパーバイザーベースのスナップショットについてです。
仮想マシンに対して、仮想ディスクファイルsrv.vmdkファイルがあります。この状態からvCenter等を使ってスナップショットを取得します。すると、srv.vmdkというファイルは読み取り専用になります。それによってチェーン構造でsrv0001.vmdkという別のファイルが作成され、以降の書き込みはこちらに行われます。さらにスナップショットを取得すると、今度はsrv0002.vmdkというファイルが作成され、srv0001.vmdkファイルは読み取り専用になります。このような形で、縦のチェーン結合になるのが、vSphereはじめとするハイパーバイザーベースのスナップショットです。

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こうした構造は、以下のような課題を含んでいます。

  • ファイルアクセスする際、順番に各ファイルをアクセスしていき、スナップショット取得の度に読み込みの遅延が発生する。
  • 途中のスナップショットが壊れた時点で、最新のファイルの復旧が困難となる。

 一方、Nutanixによるスナップショットは、ストレージスナップショットという機能になります。
仮想マシンと仮想ディスクがあり、仮想ディスクはNutanixに保存される際にストレージデータブロックに対して保存されます。この際、スナップショットの取得後は、仮想マシンは全く同じデータブロックを参照する形となります。イメージとして下の図で表すと、まずNutanixでスナップショットを取得すると、左から4つめまでのデータブロックが読み取り専用になります。そのため、新規データを書き込む際は、新しいブロックに書き込まれます。データの更新の際も、新しいブロック上で上書きがされます。このような形で、ストレージベーススナップショットはスナップショットを取得しています。

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それぞれのスナップショットで仮想ディスクファイルなのか、ストレージブロックなのかの違いがありますが、決定的な違いの1つが、Nutanixが提供するストレージスナップショットは、チェーン構造になっていないという点です。
Nutanix
のストレージスナップショットは、スナップショットを作成し、その後データの変更追加が発生した場合であっても、横並びのストレージブロックの参照位置を変える形となるため、ハイパーバイザーベースのスナップショットの特徴である、パフォーマンスの低下や、スナップショットによる中間仮想ディスクファイルの肥大化による破損等が起こることがありません。このように、Nutanixのスナップショットは、長期的な保存といった、バックアップ用途としての利用が想定された仕組みとなっています。

そんなNutanixのスナップショットは、「Protection Domain(保護ドメイン)」と呼ばれる、保護対象の仮想マシンやボリュームをまとめた単位で、取得、リストアを行うことができます。また、取得したスナップショットはローカルクラスター内に保持するだけでなく、リモートサイトへレプリケーションすることも可能です。

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以下のブログで、Protection Domainによるスナップショットの取得手順が紹介されています。具体的な手順が知りたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
https://licensecounter.jp/engineer-voice/blog/articles/20250930_senutanixprotectiondomain01.html

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おわりに

いかがだったでしょうか。今回はストレージ構造と、バックアップにまつわる疑問に触れていきました。Nutanixは独自のストレージ構造と、データ配置の仕組みにより、ハイブリッドモデルにおいても、オールフラッシュモデルのような性能を発揮していること、またデータ保護の観点においても、独自のスナップショットやレプリケーションといったバックアップ取得方法を提供していることを、理解いただけましたでしょうか。
第3回ではまた異なる分野の疑問点に触れていく予定です。お楽しみに!

よくある質問からひも解くNutanix 第1回~AHVとCVM編~

著者紹介

SB C&S株式会社
ICT事業本部 技術本部 ソリューション技術統括部 ソリューション技術部 2課
川衞 優大