
みなさん、こんにちは。
SB C&S 熊谷です。
我々は現在、サンフランシスコで開催されている Microsoft Ignite 2025 に参加をしています。
本ブログでは Microsoft Ignite 2025 のオープニングキーノートで発表された内容を中心に、現地から速報レポートをお届けしたいと思います。
※可能な限り正確な情報を掲載するよう努めていますが、Microsoft Ignite 2025 での発表直後の内容を含むために後日の修正が必要となることや、情報が古くなることで正確性を保持できなくなる可能性もあります。そのため、必ずしも情報の正確性を保証するものではありませんことをあらかじめご理解ご了承ください。
Microsoft Ignite 2025 オープニングキーノート概要と主な発表内容
今年のMicrosoft Ignite 2025 (以下、Ignite) は、収容人数として約18,000人超もの規模であるサンフランシスコのチェイス・センターという大規模多目的アリーナにて行われました。今回のIgniteではSatya Nadella氏の登壇はなく、コマーシャルビジネス部門CEOであるJudson Althoff氏によるモデレートによって全体が進行される形となりました。

それではいよいよここから本イベントで発表された内容をまとめていきたいと思うのですが、恐らく本記事を読まれている多くの方が予想されている通り、非常に多くのAI関連のアナウンスメントがされておりそのすべてを本ブログ記事だけで網羅することが難しいため、注目ポイントをいくつかピックアップして4つのセクションとしてまとめていきたいと思います。
1. Microsoft 365 Copilot エコシステムの強化
まず、現在のMicrosoft における最重要プロダクト群であるMicrosoft 365 Copilot 関連の大幅なアップデートによる強化についてです。今回、その中でも注目したいのが新たにアナウンスされた「Work IQ」という機能になります。
また、こちらの「Work IQ」のように機能名に含まれている「IQ」という考え方が今後は他の複数のプロダクトにも実装される形になり、この「Work IQ」の他にも「Fabric IQ」および「Foundry IQ」という機能が実装予定 (「Fabric IQ」および「Foundry IQ」については、現在プレビュー中) とのことです。
もちろんそれぞれの機能内容は異なるのですが、いずれの「IQ」にも共通するポイントとしては、企業内に複数のデータソースなどがある場合にこれまでのように単に「コネクタ的に接続するだけ」ではなく、企業内においてそれぞれのデータがどれだけの相関関係を持つものなのかを自律的に判断し、より関係値が高いデータを効率的・優先的に示すことまでをサポートしてくれる「インテリジェンスレイヤー」であるということが共通的に語られていたかと思います。
※「Fabric IQ」と「Foundry IQ」については後述。

少し前置きが長くなってしまいましたが、それではWork IQの中身について見ていきたいと思います。今回のWork IQの登場により、Microsoft 365 Copilotはより特別なAI体験をユーザーへもたらすことができるようになるとしています。
企業は実に様々なデータのもとに成り立っています。例えば、Eメール・チャット、ドキュメント、データベース、基幹システムなどです。そしてこれらのデータを実際に利用する様々な従業員がいます。例えば、CEO、経営幹部、開発者、セキュリティアナリスト、ナレッジワーカーなどこちらも実に多種多様に渡ります。
Work IQはこれらのデータと人との間に入り、まさに"インテリジェンスレイヤー"として単に繋ぐだけではなく、深い洞察のもとにそれぞれの相関関係をはかり、どのデータが誰にとって重要視されるものなのかを示すことができるようになります。

Work IQの登場によって、従業員は自身が普段使用しているCopilotアプリ群から効率的に必要なデータへアクセスすることができるようになり、これまで以上に生産性を向上することができるようになります。
2. 多彩なエージェント システムの作成
2つめにMicrosoftプロダクトによるエージェント作成における多彩な機能について話をしていきたいと思います。現在ですと、すでにCopilot Studioと呼ばれるローコードツールを使用して簡単にエージェントを作成することができることをご存知の方も多いかもしれません。
今回はCopilot Studioよりもさらに簡単に従業員自身で自分用の便利なエージェントを作成することができる「App Builder」という機能がアナウンスされましたので、こちらについて取り上げていきたいと思います。

上図の向かって左側から右側にいくにつれて、専門的なコーディング知識が必要になるのですが、今回新たに発表されたApp Builderは一番左側、つまりコーディング知識がほぼゼロの職種の非エンジニアであっても簡単にエージェントを作成することができるという機能になっています。
App Builderが具体的にどれほど簡単にエージェントを作成することができるのかを示すためにデモが行われていましたので、そちらの画面を以下に示します。

ご覧いただくとわかるように、チャットプロンプト内に「自分はこういうアプリ (エージェント) を作成したい」という内容を自然言語で打ち込んでいるだけになります。記載されている内容が英文になってしまっているので簡単に翻訳をしますと、以下のような内容になっています。
15名の従業員すべてのシフトを、従業員名・役職・日付・開始時刻・終了時刻・店舗所在地などの詳細とともに管理できるようにしてください。
スタッフや店舗マネージャー向けに、以下の内容を表示するリッチなビジュアル付きのダッシュボードを含めてください。1. 今日・今週・今月のシフトカバレッジ(勤務状況)
2. 従業員ごとの総勤務時間
3. 未割り当てのシフトや空き時間
4. 今後のシフト通知およびカバーされていないシフトのアラート
5. シフトのカレンダービュー
6. 従業員が自分のスケジュールを閲覧し、マネージャーがシフトを編集できる簡単な方法
7. なお、私はダークモードが好きではありません。
これはとあるアパレル店舗に勤めるマネージャーが「従業員のシフト管理を簡単に行いたい」という想いを書き連ねただけの内容になっており、これだけの内容を記載することで自分用のアプリができてしまうという非常に便利なものになります。これは現在急速に注目を集め流行にもなりつつある「バイブコーディング (雰囲気コーディング)」に近いものになるかと思います。
エージェントをすべての人により便利に利用してもらう世界観を示すためには今後非常に重要になってくる機能になるのではないでしょうか。
3. Microsoft Agent 365 発表 (エージェントの保護と管理機能)
次に、こちらも今回新たに発表がされた「Microsoft Agent 365」についてです。
恐らくですが、本イベントにおける一番の目玉となった発表のひとつだったのではないでしょうか。

調査会社であるIDCの調査によると、2028年までに13億ものエージェントが配備されると予測されています。このような状況下において私たちがすぐにでも直面するであろう課題がこの増え続けるエージェントの追跡・管理・統制をいかにするかという点になってきます。
今回発表されたMicrosoft Agent 365 はすべてのエージェントのコントロールプレーンとなり、ITチーム・開発チーム・セキュリティチームにまたがり一元的な保護と管理を実現するためのツールになります。
今後、各所で構築されたエージェントはあらゆるワークフローに組み込まれあらゆる場所に存在する未来が予想されます。Microsoft Agent 365はこれまでのユーザー管理の考え方をエージェントにまで拡張し、組織が責任をもってエージェントを管理することを可能にします。具体的には以下の5つの機能を有しています。
・レジストリ:
エージェントIDを持つエージェント、自分で登録したエージェント、シャドウエージェントを含む
組織内すべてのエージェントの完全なビューを取得します。
・アクセスコントロール:
エージェントを管理下に置き、必要なリソースのみにアクセスできるようにします。
リスクベースの条件付きアクセスポリシーでエージェントの侵害を防止します。
・可視化:
エージェント、人、データ間のつながりを調査し、エージェントの行動とパフォーマンスを
リアルタイムで監視して、組織への影響を評価します。
・相互運用性:
人間とエージェントのワークフローを簡素化するために、エージェントにアプリとデータを装備させる。
エージェントをWork IQに接続し、業務のコンテキストを提供することでビジネスプロセスに組み込ませることが可能です。
・セキュリティ:
エージェントを脅威や脆弱性から保護し、エージェントを標的とした攻撃を検出、調査、修復する。
エージェントが作成し使用するデータを過剰共有、漏えい、エージェントの危険な行動から保護する。
上記に色々と記載をしてしまいましたが、要は今後はエージェントに対しても現在の人間と同じようにまずは「ID」を振ることで人間同様の厳格なセキュリティ管理を行っていくための機能がメインとなっているようです。
今後は我々の業務になくてはならなくなっていくであろうエージェントに対する管理手法のスタンダード的な考え方になっていくのではないでしょうか。
4. Fabric IQ / Foundry IQ の発表
最後に、1つめのセクション内においても先述した「Fabric IQ」および「Foundry IQ」についてになります。1つめのセクションで紹介した「Work IQ」を加えて3つの「IQ」機能がこの度、出揃う形になりそうです。

Fabric IQ と Foundry IQ について、簡単に要約説明をするとそれぞれ以下のようになります。
・Fabric IQ:
業務システムとすべてのデータを統合し、ライブでコンテキストに富んだ洞察を理解し、
よりスマートな意思決定とより良いビジネス成果を促進する。
・Foundry IQ:
RAG (検索拡張生成) のさらなる拡張版としてAzureデータ・サービス、Microsoft 365 SharePoint、
Fabric IQ、Webを含む複数のデータ・ソース(インデックス化または連携)上で
知識検索エンジンを実行する1つの知識ベースに接続できるようになる。
と記載してもなんだかまだ難しい感じがしてしまうのではないかと思いますのでこれから詳細説明をしたいところではあるのですが、今回のIgniteで発表された内容が非常に多かったこともありブログ記事としてはすでにかなりの長文になってしまっているため、本記事内ではこの2つに関してはそれぞれMicrosoft社の紹介ブログ記事をご紹介するレベルに留め、詳細説明はまたの機会に譲らせていただきたいと思います。
・Fabric IQ:From Data Platform to Intelligence Platform: Introducing Microsoft Fabric IQ
・Foundry IQ:Foundry IQ: Unlocking ubiquitous knowledge for agents
おわりに
以上で、Microsoft Ignite 2025 現地からの速報レポートとして本記事を終了とさせていただきたいと思います。
実はまだまだ、オープニングキーノート内で語られた内容はあるのですが (Azureサービスのアップデートやセキュリティ機能のアップデートなどなど) 今回はSB C&S目線で注目のピックアップトピックについて書かせていただきました。
いよいよAI (エージェント) 化が本格的になっていく世界において、間違いなく今後も業界を牽引していくであろうトップリーダーのひとつであるMicrosoft社の動向に我々も引き続き、注目していきたいと思います。
最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。
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著者紹介
SB C&S株式会社
ICT事業本部 技術本部 技術統括部
統括部長
熊谷 哲人 - Akihito Kumagai -
