
みなさん、こんにちは。SB C&Sの金井です。
今回は、タイ・バンコクで開催された HPE の販売パートナーエンジニア向けイベント「HPE Tech Jam BANGKOK 2026」に参加してきました。
本記事では、現地の様子やイベント内で発表された情報をご紹介します。
昨年の様子は、こちらをご覧ください。
1. はじめに
Tech Jamは、タイ・バンコクにて5月19日から22日までの4日間にわたって開催されており、HPE イベントの中でも技術者向けの学習・交流イベントとして位置づけられています。
初日の基調講演を皮切りに、参加者は興味のある分野のセッションやハンズオンに参加し、最新情報のキャッチアップや技術理解の深化を図ります。

また、ブースの出展もあり、Hybrid Cloud のような HPE の各カテゴリのブースや Intel のような協賛スポンサーのブースも出展されており、情報を求める参加者や各ブースを巡ってノベルティを獲得する参加者で賑わっていました。

さらに、期間中は協賛スポンサーによるディナーイベントがほぼ毎日開催されていました。最終日には、大規模な別会場を貸し切った盛大なディナーイベントも実施され、参加者同士の交流を深める場となっていました。

2. 基調講演
2.1 HPE が考える企業の課題
Tech Jam の初日に行われた基調講演では、プリセールスリーダーである Rita Martin 氏より企業が現在直面している3つの課題が共有されました。
1つ目は、「Great VM Reset」です。
Broadcom による VMware 買収の影響により、これまで vSphere のライセンス延長で運用を続けてきた企業が、いよいよ別のハイパーバイザーや新たな仮想基盤への移行を検討せざるを得ない状況となっています。
加えて、現在の IT 基盤は、オンプレミス・プライベートクラウド・パブリッククラウド・エッジと多様化しており、複雑化によって管理が困難な状態に陥っています。
この複雑性は、AI 時代に求められるデータ統合やインフラ運用を阻害する大きな要因となっています。
そのため、世界中の企業が「仮想基盤を一度リセットし、AI 時代に最適化された新しい基盤へ再構築する」という動きに踏み出しています。
2つ目は、「AI Gold Rush」です。
生成 AI の登場により、多くの企業が AI 活用を積極的に進めています。しかし実際には、AI を活用するための準備が整っていないケースも多く存在します。
具体的には、「社内データが整理されていない」「どの業務に AI を適用すべきかわからない」「GPU やネットワークなどの AI 基盤が不足している」といった課題があります。
そのため、データ整備・AI 基盤の強化・ユースケースの明確化が不可欠であることが示されました。
3つ目は、「Security & Resiliency Imperative」です。
企業データを狙ったランサムウェア攻撃は増加しており、AI による攻撃の自動化によって脅威はさらに高度化しています。
従来のように「バックアップを取得していれば安心」という考え方では不十分であり、バックアップ自体が暗号化・破壊され、復旧に数時間を要するケースも発生しています。
そのため企業には、数分から数時間で復旧できるレベルのレジリエンシーが求められており、データを守るだけでなく、攻撃後に迅速に復旧できる体制の整備が必要とされています。

2.2 HPE の戦略
これらの3つの課題に対して、HPE は Networking・Hybrid Cloud・AI の3つの柱を軸に解決策を提供できる体制を整えています。

Networking の領域では、Campus、Routing、Datacenter、Security の4つの領域を包括的にカバーしています。加えて、昨年の Juniper 買収により、ネットワークが自動で最適化・修復・調整を行うセルフドライビングネットワークを実現できるようになりました。これにより企業は、障害の自動検知と自動復旧・設定ミスの自動検知といった高度なネットワーク運用を人手に頼らず実現できます。

Hybrid Cloud の領域では、HPE CloudOps Software suite を中心に課題解決を進めています。HPE CloudOps suite は一言で表すと、「複雑化したクラウド運用を1つの画面・1つの仕組みで統合するための運用基盤」であり、 Morpheus・OpsRamp・Zerto の3製品で構成されています。この3製品については、セッションで詳しく説明を聞くことができたため、後ほど紹介します。これにより企業は、クラウドのコスト最適化・可観測性の向上といった運用を、クラウド横断で一元管理できるようになりました。

AI の領域では、AI を本番運用するための基盤(AI Factory)を提供することで課題解決を進めています。AI を活用するためには、学習・推論・データ・運用が一体となって初めて価値を発揮します。そのため、単一製品ではなく、PCAI を始めとする製品群によって、AI 活用に必要な要素を包括的に提供しています。これにより企業は、GPU クラスタによる学習基盤の確保やエッジでのリアルタイム推論といった AI 活用に必要な要素を一貫したアーキテクチャの中で整備できます。

この基調講演を通して、Networking・Hybrid Cloud・AI といった幅広いカテゴリを持ちながら、企業の課題解決を包括的に支援できる点は、幅広いソリューションを展開する HPE ならではの強みであると感じました。
3. Hybrid Cloud セッション
現在、私は VME や PCBE など、HPE の仮想化基盤関連製品を主に担当しているため、今回は Hybrid Cloud 領域を中心にセッションへ参加しました。
この章では、そこで得られた情報について紹介します。
3.1 HPE CloudOps Software suite について
基調講演でも紹介されていた HPE CloudOps Software suite は、企業のハイブリッドクラウド環境をシンプルに運用するためのパッケージ製品です。
クラウドや仮想化基盤が多様化し、管理が複雑化する中で、それぞれ以下の製品が各役割を担い、運用の効率化を実現します。
- 管理(マルチクラウド統合管理):HPE Morpheus Enterprise
- 監視(インフラ・アプリの可視化):OpsRamp
- 保護(バックアップ・セキュリティ):Zerto

HPE Morpheus Enterprise(Morpheus)は、HPE CloudOps Software suite の中で統合管理・オーケストレーションの役割を担っています。
まず、Morpheus は HPE Morpheus VM Essentials(VME)とは異なる製品です。
VME から Enterprise 版として Morpheus へアップグレードすることは可能ですが、両者は管理対象の規模や役割が大きく異なります。
では、ここで VME と Morpheus がそれぞれどのような用途で利用されるのか整理してみます。
VME は仮想マシンの管理・運用を中心とした製品であり、ライセンスコストを抑えながら利用できることから、小規模〜中規模環境向けに提供されています。
一方で Morpheus は、仮想マシン管理だけでなく、複数ハイパーバイザー・プライベートクラウドなどを横断的に統合管理できるマルチクラウド管理プラットフォームです。仮想マシン・コンテナ・アプリケーションのデプロイやライフサイクル管理を自動化するオーケストレーション機能を備えており、大規模環境やマルチテナント環境向けに提供されています。そのため、Morpheus は複数ハイパーバイザーやプライベートクラウド・パブリッククラウドが混在する環境を統合管理したい場合に最適な製品として位置づけられています。

OpsRamp は、HPE CloudOps Software suite の中で監視・運用管理の役割を担っています。
SaaS として提供されており、HPE 製品に限らず、オンプレミス・クラウド・各種ハイパーバイザーを横断的に監視することが可能です。
また、AIOps を活用することで、単なる監視だけでなく、障害発生時に大量のアラートを相関分析し、障害の根本原因を推定・可視化することも可能です。
そのため、OpsRamp は単なる監視ツールではなく、運用負荷の軽減や迅速な障害対応を支援する運用基盤として位置づけられています。

Zerto は HPE CloudOps Software suite の中でデータ保護・Disaster Recovery(DR)の役割を担っています。
VM の変更データを継続的にレプリケーションし、障害発生時には数秒前の状態まで復旧可能な製品です。
一般的なバックアップ製品のように「1時間ごと」「1日ごと」にバックアップを取得する方式ではなく、変更差分をリアルタイムに近い形で別サイトへ転送することで、RPO 5〜10秒程度のデータ保護を実現しています。また、独自の Journal 機能により、障害・ランサムウェア感染・操作ミス発生前の任意時点へ巻き戻すことも可能です。そのため、Zerto は単なるバックアップ製品ではなく、データ損失を最小化し、迅速な業務復旧を支援するエンタープライズ向け DR 基盤として位置づけられています。

3.2 HPE Private Cloud シリーズの名称変更
続いて、HPE Private Cloud Business Edition(PCBE)のセッションに参加したところ、名称変更が行われるという驚きのニュースがありました。
元々、それぞれ以下のような製品として提供されていました。
- PCBE:VME+ハードウェアを組み合わせたセットモデル(HPE によるデプロイ作業込み)
- PCE:Morpheus を中核としたプライベートクラウド製品(管理ツールは VME Manager ではなく Morpheus)
また、PCBE には以下2種類の構成が用意されていました。
- HPE ProLiant + Alletra MP B10000 を組み合わせた dHCI モデル
- HCI 製品である SimpliVity モデル

今回、これらの名称が以下のように変更されました。
- PCBE SimpliVity → HPE SimpliVity PC1000
- PCBE dHCI → HPE Private Cloud PC3000
- PCE → HPE Private Cloud PC7000
なお、HPE Private Cloud AI(PCAI)についての名称変更はありませんでした。

名称変更の背景として、今後 HPE Private Cloud シリーズの管理コンソールを Morpheus に統一していく狙いがあるとのことです。
現在は、PCBE では VME Manager やクラウド側の PCBE コンソールを利用し、PCE では Morpheus を中心とした運用管理を行うなど、製品ごとに管理ツールが分かれています。
今後は、これらの管理基盤を Morpheus に統合していくことで、HPE が掲げる Hybrid Cloud の統合管理を実現していく方向性が感じられました。
まとめ
最後に、クロージングセッションでは、来年の Tech Jam の開催日程が発表されました。
2027年4月5日から9日まで、今年と同じくタイ・バンコクで開催される予定です。
次回参加される方は、会場内は非常に寒く、屋外は猛暑となるため、寒暖差には十分注意してください。

今回、初めて Tech Jam に参加しましたが、グローバルの責任者たちから各製品の技術的な内容だけでなく、実装の背景や戦略といった深い部分までキャッチアップすることができました。
その結果、各製品に対する理解や解像度が大きく向上したように感じています。
次回も機会があれば、ぜひ参加したいと思います。
VME に関するお知らせ
著者紹介
SB C&S株式会社
ICT事業本部 技術本部 第1技術統括部 第1技術部 2課
金井 大河 - Taiga Kanai -
