こんにちは!
ワイヤレスブログの第6回はアンテナに関する話題をお届けします。
アクセスポイントを設置する場合に重要なポイントとなるアンテナですが、改めてアンテナって何?をつらつらと書き連ねますので、どうぞお付き合いください。
アンテナの役割
そもそもアクセスポイントのアンテナはどのような役割があるのでしょうか。
Wi-Fiのアクセスポイントは2.4GHzや5GHzの電波を利用してサービスを提供しています。
アンテナはその電波を変換する役割を担っています。
そしてアンテナはその形状、特性により様々な放射パターンをもっています。
アンテナの種類
まずアクセスポイントには内蔵アンテナと外付アンテナの2種類があります。
内蔵アンテナは理解できるかと思いますが、外付アンテナとはどのようなものなのでしょうか。
例えばアクセスポイントの外付アンテナとは以下写真の棒状部分になります。
この外付アンテナには写真のようなものだけではなく用途に応じて複数の種類があります。
名称 | 特徴 |
オムニアンテナ | 無指向性であり球状の放射パターンとなる |
ダイポールアンテナ | オムニアンテナと同様に無指向性であるが、棒状のアンテナの水平方向(ドーナツ状)の放射パターンとなる |
パッチアンテナ | 指向性が比較的高く1枚の平面形状でありMIMO対応のために複数のアンテナ線を収容することができるものが多い |
セクターアンテナ | 特定の範囲に無線カバーエリアとするために使用する例が多い。指向性を可変となるものもある |
八木アンテナ | 指向性が非常に高く特定の2拠点間を無線接続する場合に使用する例が多い |
漏洩同軸ケーブル | ケーブルが信号を伝送するだけではなく、ケーブル周辺に微弱電波を均一に放射するアンテナの機能をもつ |
それぞれのアンテナについて、簡単な電波放射のイメージ図を作りましたので、ご覧ください。
それぞれ赤の表示がアクセスポイントのアンテナ、青が電波の放射を限りなく簡略化し表示したものになります。
オムニアンテナ
主にアクセスポイントの内蔵アンテナとして使用される例が多いです。
ダイポールアンテナ
棒状のアンテナから水平方向に電波が放射されるため、利用箇所にあわせて適切な角度で利用することが望ましいでしょう。
パッチアンテナ、セクターアンテナ
両アンテナは厳密には異なるのですが、放射パターンはほぼ同様であるためひとつのものとしています。
高密度にクライアントが存在している環境においてマイクロセルをつくるために利用するなどの例が多いです。
八木アンテナ
屋内で利用する例はほとんどなく、屋外で2点間を結ぶ際に利用する例が多いです。
同軸漏洩アンテナ
ホテルの廊下に設置し、利用者にサービスを提供する例があります。電波が届きにくい箇所に対してアクセスポイントを多く設置するのではなく、アンテナで解決するために利用します。
より詳しい情報については各社のアンテナ紹介ページに方位角パターン、仰角パターンとして記載されていますのでそちらを参照してください。
重要なことは目的にそったアンテナとはどのようなものなのかを判断し、適切な方向に向けて設置することだということです。
ゲイン
アンテナの話をするときにゲインというキーワードが出てきますが、こちらの意味について解説します。
ゲインとは電波が一点から全方向に全くおなじエネルギーで放射を行う仮想的なアンテナを基準として方向毎にどれほどの差分があるのかを表示したものです。
その差分を表現した単位を「dBi」として表記し無線製品のデータシートに記載されています。こちらの値は感度が高くなるにつれ値も大きくなります。
方向によって異なる値となるはずなのに、ひとつだけしか記載されていないのは、該当アンテナの最大の利得が表記されているためです。
技術適合
技術的側面からはすこし離れてしまいますが、選定時には非常に重要な要素ですのでこの場で説明させていただきます。
技適とも省略されることもありますが、簡単に言ってしまうと技適を取得していないと法律違反の恐れがあるということです。
詳細な情報は下記をご参照ください。
総務省 電波利用ホームページ 技適マーク、無線機の購入・使用に関すること
https://www.tele.soumu.go.jp/j/adm/monitoring/summary/qa/giteki_mark/
技適を取得した機器は以下から検索可能です。
総務省 電波利用ホームページ 技術基準適合証明等を受けた機器の検索
https://www.tele.soumu.go.jp/giteki/SearchServlet?pageID=js01
日本で無線製品を販売しているメーカー各社さまは技術適合証明を取得した製品を販売していますが、まれに海外製品を輸入している場合には日本の技術適合証明を取得していないアンテナタイプが存在していることもありますので注意が必要です。
またアンテナ単体で販売している場合には、必ずアクセスポイントと組み合わせた状態で技術適合証明を取得していることをご確認ください。
避雷器
屋内では意識する必要はありませんが、屋外で利用される場合には機器の故障リスクを低下させるために検討してみてください。
こちらの機器は屋外に露出している外付けアンテナに雷、電線などの接触事故などによって生じる電流を地面に逃がすことによりアクセスポイント本体の故障リスクを低減させるものです。
単純にアクセスポイントを守るだけではなく、PoEを経由して給電されているようなネットワーク環境の場合、接続しているスイッチを保護する役割も期待できます。
避雷器を設置する場合には、アース設置が必要となる機器には必ずアース設置工事を実施してください。
まとめ
いままでのものを簡単にまとめると以下の通りです。
・外付けアンテナを選ぶ際には目的にあったものを選択する
・技術適合証明を取得している機器を選択する
いかがでしたでしょうか。
かなりあっさりとしているように見えるかもしれませんが、アンテナの基本的な役割を理解するための取っ掛かりにはなったかと思います。
快適な無線ライフの一助になれば幸いです。
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著者紹介
SB C&S株式会社
技術本部 技術統括部 第2技術部 1課
柴山 弘