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VeeamでAHV上の仮想マシンをバックアップ Vol.1

ストレージ / HCI
2019.10.03


こんにちは。
SB C&S 稲葉です。

本シリーズは3回に分けVeeamを使用してNutanix AHV上で稼働する仮想マシンのバックアップおよびそのリストアに関する検証結果をご紹介していきます。

 1回目:環境構成
 2回目:環境構築
 3回目:バックアップとリストア

1回目は「Veeamとは?」から「Veeam for AHVの環境構成」までを紹介していきます。

1. Veeamとは

Veeamは仮想化基盤に特化したデータ保護ソリューションとなり、vSphereを始め、Hyper-V、AHVと幅広いハイパーバイザーに対応し、バックアップ、リストア、レプリケーション、クラウド連携などデータ保護に必要な様々な機能を使用することができる製品となります。

またAgentをOSにインストールすることでWindowsやLinuxの物理マシンに対してのバックアップの取得も可能です。さらに管理画面の言語は英語に限定されていますが、非常にシンプルな画面構成により言語の壁が気にならない使い勝手が特徴です。

Veeam Backup & Replicationの主な機能の紹介

  • バックアップ
    • 仮想マシン単位のエージェントレスイメージバックアップ(vSphere/Hyper-V/AHV)
    • 選択できるバックアップ取得方式(フル、永久増分、差分)
    • 重複排除+圧縮によるバックアップデータサイズの縮小
    • 重複排除ストレージとの連携によるデータ格納の効率化
    • Cloud、セカンドストレージ、TAPE装置などへのバックアップデータ保存

  • リストア
    • 仮想マシン単位のリストア(vSphere/Hyper-V/AHV)
    • イメージバックアップからのファイルリストア
    • 仮想マシンのバックアップデータから即時起動できるインスタントVMリカバリ機能
    • Active Directory、Exchange、SQL Serverなどのアプリケーションオブジェクト単位の復旧
    • クラウドへのリストア

  • レプリケーション
    • レプリケーション機能標準搭載
    • Failover/Failbackによる仮想マシン障害時の起動/復旧の自動化
    • 初回レプリケーションの帯域負荷軽減



仮想マシンのデータを保護するために必要な基本的なコンポーネントは以下の3種類となります。

  1)Veeam Backup & Replication
  2)Veeam Repository
  3)Veeam Backup Proxy

1)Veeam Backup & Replication

Veeamを使用したバックアップやリストア、レプリケーションなどのVeeamに関する様々な機能と操作するためのコンソールサービスを提供
https://helpcenter.veeam.com/docs/backup/vsphere/backup_console.html?ver=95u4

2)Veeam Backup Repository

Veeam Backup & Replication
上で設定するバックアップデータの格納先
ローカルデバイスや、NAS、重複排除向けストレージなどが選択すること可能
https://helpcenter.veeam.com/docs/backup/vsphere/backup_repository.html?ver=95u4

3)Veeam Backup Proxy

仮想マシンの情報をバックアップサーバーであるVeeam Backup & Replicationへ収集し中継
その他にもデータの圧縮、重複排除、暗号化、ジョブの実行アクションを実施
Veeam for AHV
のBackup Proxyでは、バックアップおよびリストアの操作画面のサービスも提供する
https://helpcenter.veeam.com/docs/backup/vsphere/backup_proxy.html?ver=95u4


これら3つのコンポーネントを組み合わせた基本構成が以下となります。
最小構成としては、バックアップサーバー上に「Veeam Backup & Replication」「Veeam Backup Repository」「Veeam Backup Proxy」を配置する構成となりますが、各コンポーネントは分割することができるよう設計されているため、規模に応じて構成を柔軟に変更することができます。

【Veeam Backup & Replicationの最小基本構成】
veeam-01-04.png



2. Veeam for AHVは必要?

Nutanixにはハイパーバイザーに関係なくデータ保護(Storage Snapshot)やDRを標準のライセンスとして使うことができます。つまりVeeamを使用せず仮想マシンのバックアップからリストア、レプリケーションを実現できます。

それではどのような場面でVeeam for AHVが必要になるでしょうか。主なケースとして3点紹介します。

Case.1)アーカイブとしてテープにバックアップデータを保存したい
Case.2)仮想マシンのバックアップをNutanix外のストレージに保管したい
Case.3)
OracleやActive Directoryなどのアプリケーションオブジェクト単位でリストアしたい

Case.1)アーカイブとしてテープにバックアップデータを保存したい

Nutanixには直接、LTO装置を接続しバックアップデータを保存するという機能はありません。そのためテープにバックアップデータを保存する必要がある場合は、バックアップソフトが必要になります。

Case.2)仮想マシンのバックアップをNutanix外のストレージに保存したい

Nutanixのデータ保護機能およびレプリケーション機能は必ず保存先がNutanix内に限られます。Nutanixではない大容量のストレージなどにデータを保存させる場合は、バックアップソフトが必要になります。

Case.3)OracleやActive Directoryなどのアプリケーションオブジェクト単位でリストアしたい

NutanixにはOracleやActive Directory内のオブジェクトなどを指定しバックアップ/リストアする機能はありません。オブジェクトを指定した復元を希望する場合は、バックアップソフトが必要になります。

3. Veeam for AHVの環境構成を考える

構成に必要なコンポーネントは先ほど説明しました通り以下の3つとなりますが、「3. Veeam Backup Proxy」が「vSphere/Hyper-V版」と異なってきます。


  
1. Veeam Backup and Replication
  2. Veeam Repository
  3. Veeam Backup Proxy (Veeam Availability for Nutanix AHV) 

ハイパーバイザーがAHVの場合、「Backup Proxy」として専用の仮想アプライアンスをNutanix Cluster内に配置する必要があります。

(※Veeam Backup & ReplicationおよびVeeam Repositoryの設置場所は、Nutanix Clusterの内外問いません。)

veeam-01-02.png


Backup Proxy Appliance 1.0の使用条件は以下の通りです。(2019/9/26時点)

  • Windowsライセンスは不要(仮想アプライアンスのOSはLinuxベースを使用)
  • Nutanix CVM(AOS)のバージョンが 5.5.x 〜 5.10.x
     (Community Edition 2017.07.20 (AOS ver. 2017.06.08) も可 )
  • 仮想マシンの割り当てリソース(CPU:4Core以上 / メモリ:4GB以上 / DISK:50GB) *1

*1) CPUおよびメモリサイズはバックアップの並列処理の数により追加が必要になります。  https://helpcenter.veeam.com/docs/van/userguide/system_requirements.html?ver=10

4. ライセンスを考える

Nutanix AHV版の仮想マシンのバックアップおよびリストアにはインスタンスライセンス(サブスクリプション)が必要になります。インスタンスライセンスに関しては、CPUソケット単位のライセンスではなく、仮想マシンの数に依存します。ライセンスの詳細につきましては以下URLをご覧ください。
https://www.veeam.com/jp/faq.html

またライセンスを適用する箇所は従来の「Backup & Replication」ではなく「Backup Proxy Appliance」の管理画面から適用する点も従来と異なるポイントです。
veeam-01-03.png

5. まとめ

今回は「Veeam Availability for Nutanix AHV」設置のための構成例とライセンスのポイントについて紹介しました。内容のポイントをまとめると以下の3点となります。

1) AHV版ではVeeamのBackup Proxy ApplianceをNutanix Cluster内に最低1台配置する

2) ライセンスはインスタンスライセンスを使用する

3) ライセンスの適用先はBackup Proxy Applianceである

今後のVeeam Availability for Nutanix AHVの設計時にお役立てください。
次回は実際の「Veeam Backup & Replication」および「Backup Proxy Appliance」の構築手順を紹介していきます。

著者紹介

SB C&S株式会社
ICT事業本部 技術本部 第3技術部 2課

稲葉 直之

静岡出身で大阪に就職職してはや十数年。お茶と日本酒をこよなく愛し、現在は仮想化及びその周辺のプリセールスエンジニアとして日々修行中。