みなさん、こんにちは。
SB C&S 熊谷です。
今年もVMware社としての年に一度の最大イベントであるVMworld 2021が昨年同様にオンラインイベントとして開幕しました。
当社では毎年恒例となった感もある、VMworld 初日のジェネラルセッションで発表された内容を中心に速報レポートをお届けしたいと思います。
※可能な限り正確な情報を掲載するよう努めていますが、VMworld 2021 での発表直後の内容を含むために後日の修正が必要となることや、情報が古くなることで正確性を保持できなくなる可能性もあります。そのため、必ずしも情報の正確性を保証するものではありませんことをあらかじめご理解ご了承ください。
VMworld 2021 ジェネラルセッション概要と主な発表内容
今年のVMworld はこれまで長らくVMware社のCEOを務めてきたPat Gelsinger (パット・ゲルシンガー) 氏から2021年5月にそのバトンを引き継いだ新CEOであるRaghu Raghuram (ラグー・ラグラム) 氏の登場からスタートしました。
Raghu Raghuram (ラグー・ラグラム) 氏は、VMwareのこれまでの歴史を「チャプター」という形で振り返りながら、さらにこの先にVMwareが果たすべく役割について触れていきます。
まず、2000年代初頭からの「チャプター1」では仮想化市場のリーダーとして、続いての「チャプター2」ではプライベートクラウドにおけるリーダーとしての役割を果たしてきました。
そして現在、まさにこれからのVMwareはマルチクラウド環境におけるリーダーポジションとしての役割を見据えて新たな「チャプター3」を迎えようとしています。
このように新CEOであるRaghu Raghuram (ラグー・ラグラム) 氏から「マルチクラウド」という今年のVMworldにおける大きなテーマが掲げられたところから様々な発表がされていきます。
まず、マルチクラウドを実現するための新たな戦略として「VMware Cross-Cloud Services」が発表されました。これはVMwareによって統合された様々なサービス群であり、柔軟性とセキュリティを備えたアプリケーションをあらゆるクラウド上で構築、実行、保護するための機能をユーザーに提供するものです。
そしてさらに、こちらの「VMware Cross-Cloud Services」のバックエンドを形成する具体的な5つのビルディングブロックについて中身を少しずつ紐解いていきたいと思います。
・App Platform:
迅速にアプリケーションを生み出すためのTanzuファミリーを中心としたKubernetesプラットフォーム
・Cloud Infrastructure:
VMware Cloud や 従来オンプレミスvSphereなどアプリケーションが実行されるインフラストラクチャ
・Cloud Management:
マルチクラウド利用時のコスト管理やセキュリティを統合管理するためのサービス
・Security + Networking:
NSXやサービスメッシュなどデータセンターネットワークにおけるセキュリティを高めるための製品群
・Anywhere Workspace + Edge:
Workspace ONE / Carbon Black / VMware SASEによる "分散された" 従業員職場環境からのアクセス
本ブログでは、こちらの5つのビルディングブロックの中でもジェネラルセッション内で特に多くの時間が割かれた「App Platform」「Cloud Infrastructure」「Anywhere Workspace + Edge」3つの領域に絞って、それぞれの主だった発表内容について記載をしていきたいと思います。
App Platform
App Platform ひとつの領域内における発表としてもここで語るには尽くせないほどの多くの発表があるのですが、ダイジェストとしては絞るとすると以下の内容あたりがメインになるかと思われます。
- Tanzu Application Platform *β フェーズ2 の開始
- Tanzu Community Edition の提供開始
ひとつめのTanzu Application Platform は、たとえアプリケーション開発者側がインフラとしてのKubernetesプラットフォームに精通していなかったとしても、コードからイメージの生成、スキャンなどまでを自動的に行ってくれるような開発者・IT管理者双方にとって理想的な開発プラットフォームを提供してくれるものとなり、現在βプログラムが走っています。今回そちらのβプログラムのフェーズ2が開始されたことが発表されました。
もうひとつのTanzu Community Editionの提供は、本領域における一番の目玉の発表になっているのではないかと思っています。これまでは、Kubernetesにあまり知見を持っていないユーザーがVMware Tanzuに興味を持ってくれた場合であっても、基本的には有償となるTanzu Basic エディション以上の購入をしてのテストが必要でした。しかし、今回のVMworld 2021のタイミングで誰でも無償で利用開始できるTanzu Community Edition が発表されました。Tanzu Community Edition の無償提供が開始されることで、これまではKubernetes知識習得のための学習に対して高いものと感じてしまっていたハードルをぐっと下げてくれる意味でも大きな期待ができると感じています。
これまではKubernetesの知識習得に二の足を踏んでしまっていた方もこちらの公式ブログなどを参考にしていただきながらチャレンジしてみてはいかがでしょうか?
Cloud Infrastructure
続いて2つ目の領域としては、Cloud Infrastructure における発表内容についてみていきたいと思います。本領域においても非常に多くの発表が含まれますのでいくつかダイジェストに絞って記載したいと思います。
- NSX Advanced Security の機能がVMware Cloud に統合
- ユーザー所有のオンプレミスデータセンターへのVMware Cloudの展開
- Project Arctic
まず、ひとつめのNSX Advanced Security機能統合からみていきたいと思います。こちらはNSXが保有している各種強力なセキュリティ機能がVMware Cloud上でも利用可能になるという発表のようです。今後は、VMware Cloud上においても、NSXによる分散ファイアウォールや分散IDS/IPS機能などのような高度なセキュリティ機能を用いてユーザーのワークロードをセキュアに保護することが可能になります。
2つ目のVMware Cloudアーキテクチャの柔軟な展開についてですが、今回は2社とのそれぞれ強固なパートナーシップが発表されています。まずはDell Technologies社とのアライアンスによるものです。Dell Technologies社が提供するクラウドサービス統合コンソールであるAPEXサービスの対象にVMware Cloud のラインナップが予定されているようです。恐らく以前からもすでにDell Technologies社として提供しているVMware Cloud on Dell EMC (Dell Technologies社管理によりユーザー所有のオンプレミスなど自由に構築可能なVMware Cloud) のようなオンプレミス版VMware Cloudをこの度APEXサービスの方で統合管理ができるような形がとられるのではないでしょうか。
最後に恐らく今回のVMworld 2021 におけるサプライズ発表だったと言ってもいいのではないかと思われる「Project Arcitic」についてです。
ですが、実はこちらのProject Arciticについてはジェネラルセッションの中では「vSphereのSaaS版です」くらいにしか語られませんでした。これだけ言われただけですとさすがに「はい、そうですか」とはなれず「vSphereのSaaS?ナニソレ?」と気になって仕方がなかったのでこちらについては思わず関連しそうな個別セッションを探し出して視聴してしまいました。
そちらの個別セッション内で見ることのできたスライドが以下になります。
こちらの図を見る限りでは、vSphereそのものがSaaS的にクラウドから提供されるというよりは、オンプレミスに配置されている複数のvSphere環境をクラウド上に準備されたコントロールプレーンから統合管理をするような絵に見えますね。
とはいえ、発表された時点ではまだTechnical Preview 扱いという位置づけになっているようですので本格利用にはまだ少しこれからのサービスだとは思いますが、これまでも数多くのイノベーションを起こし続けてきたVMwareによるなかなか興味深いクラウドアプローチ手法になるかなと思いますので私も期待をして待っておきたいと思います。
Anywhere Workspace + Edge
最後がAnywhere Workspace + Edge パートとなります。本パートも要点を絞った形でいくつか主要なアナウンスを見ていきたいと思います。
実はAnywhere Workspace というコンセプト自体は今回から語られ始めたたものではなく、VMwareとしてはすでに世の中がコロナ禍においてもはや従業員のリモートワークが当たり前になりつつある2021年4月に発表したものになっています。
Anywhere Workspace のコンセプトを構成する主要プロダクトとしては、Workspace ONE、Carbon Black、VMware SASE (Secure Access、Cloud Web Security、VMware SD-WANを包含) の3プロダクト群になっています。
そのため、VMwareとしてはすでにこちらのAnywhere Workspace というコンセプトをもとに、現在ではすっかり多種多様になってしまった従業員たちの職場環境 (自宅からのリモートワークやオフィスに出社してのオフィスワーク) からのアクセスに対して高いセキュリティを担保しつつ柔軟性を持たせた業務環境を提供しています。
今回、こちらのいわゆる散らばってしまった従業員ひとりひとりのエンドポイントからのアクセスをコントロールするAnywhere Workspaceに加えて、拠点 (特に小売、製造など) からの対してもEdgeというコンセプトも改めて強調することでエンドポイントからのアクセスだけでなく各拠点 (Edge サイト) からのアクセスも一元的に統合された管理を提供することにチャレンジをしていくように感じられました。
そこで、こちらの領域の発表内容については本ブログ内では以下2つをご紹介したいと思います。
- VMware SASE の機能拡張
- VMware Edge Compute Stack の発表
まず、VMware SASE の機能拡張についてですが、今回は特に2つの機能拡張についてアナウンスがされました。「Cloud Access Security Broker (CASB)」と「Data Loss Prevention (DLP)」の2つの機能の拡張です。これまでのVMware SASE でも「URLフィルタリング」「コンテンツフィルタリング」「アンチマルウェア / クラウドサンドボックス」などの機能を有していましたが、今回こちらの2つの機能が追加されることで、より強固かつ柔軟なセキュリティポリシーを実現することが可能になります。
最後がVMware Edge Compute Stack の発表についてになります。こちらは主に小売や製造など多くの複数拠点を持つような業態において利用されるケースが多くなりそうな各拠点に配備するためのアプライアンスとなります。今回、こちらのVMware Edge Compute Stack 対応予定ハードウェアとしてDell EMC VxRail Dシリーズ や Lenovo ThinkSystem SE350 が発表されておりました。
こちらの各拠点に設置したHCIアプライアンス上にVMware Edge Compute Stack をアプライアンス的に構成することでVMware SD-WANの機能などが有効になり、拠点間SD-WAN接続であったりVMware SASEに対してのSD-WAN接続などが可能になります。
以上が、本ブログでの最後のパートとなりましたAnywhere Workspace + Edge についてのご紹介でした。
Edgeというと少し業種が絞られるとかそのような印象を持たれるケースもあるかと思いますが、(今回のジェネラルセッションの中でも) 現在、我々が自宅からのリモートワークをしているような環境においてはもはやその従業員ひとりひとりの自宅そのものがEdgeという捉え方もできるというコメントもありました。さすがに個人宅に小さめサイズとはいえHCIを設置するようなことにはできないと思うのですが、新型コロナウイルスによってすっかり融けてしまったインフラセキュリティの境界線そのものをEdgeととらえることでこれからのセキュリティのあり方や従業員ユーザーエクスペリエンスの向上について改めて考え直す必要性の高まりを感じていただけるのではないかと思います。
ウェビナー告知
例年通り、今回のVMworld 2021 もおいても非常に数多くの発表がされておりダイジェストをかいつまんでお伝えするだけでもやはり一苦労でした。つきましては、こちらも毎年恒例となっている「VMworld 報告会」と題しまして、10/21(木)15:00 - 16:30 の日程で今年も「VMworld 2021 報告会」を開催いたします。
10/21(木) 15:00-16:30
【VMwareパートナーさま限定】vExpertが語る!VMworld2021報告会
https://sbb.smktg.jp/public/
報告会ではより多くの情報をお伝えできるように引き続き最新の情報収集に努めていきたいと思いますので、是非とも今から「Save the date」していただき当社ウェビナーまでお越しいただければと思います。
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著者紹介
SB C&S株式会社
ICT事業本部 ICT事業戦略・技術本部 技術統括部 第1技術部
熊谷 哲人 - Akihito Kumagai -
VMware vExpert 2013~2022