SB C&Sの最新技術情報 発信サイト

C&S ENGINEER VOICE

SB C&S

知ってる? エッジ環境向け「PowerEdge XR4000」と関連ソリューション

サーバー
2024.07.29

こんにちは、SB C&Sの湯村です。Dell Technologies製品のプリセールスを行っております。

今回は、Dell Technologiesの "とあるサーバー" をご紹介します。サーバーと言っても汎用的に使われるサーバーではなく、"エッジ環境向けのサーバー" です。「エッジ」と聞いた時にあまり親しみが湧かない方もいるかもしれませんが、ビジネスが成長するためにとても重要な技術領域です。ご紹介する関連ソリューションと一緒に覚えていただけると嬉しいです。

1. エッジコンピューティングとは?

まずは「エッジコンピューティング」についておさらいします。

そもそもエッジとは「Edge = 端」という意味にもあるように、様々な通信が行われているネットワーク上で、データの発生元であるデバイスが存在している環境(ネットワーク上の端っこ)を指します。

近年主流となっているクラウドコンピューティングは、インターネットを介して様々な場所にあるデバイスで発生したデータを集中的に処理・分析する仕組みです。遠隔地に分散しているデータを一括管理できる利便性だけでなく、処理能力の高いサーバーを利用すれば、高度なデータ処理を行うことができます。

一方でエッジコンピューティングは、エッジ環境にあるデバイス(エッジデバイス)でデータ処理を行う仕組みです。データ処理をエッジデバイスで行うことで、「ネットワーク遅延を小さくする」「インターネットを介さないためにセキュリティリスクを低減できる」等のメリットがあります。昨今、あらゆるモノがインターネットに繋がるようになったことで、膨大なデータが生成されています。その影響もあり、エッジコンピューティングは現在とても注目されている領域です。

1.png

エッジデバイスは、私たちが普段よく利用しているスマートフォン・タブレッド・車などのコンシューマー向けデバイスだけはありません。工場・小売店・医療のような業界にも求められています。たとえば、工場の生産ラインの近くにエッジ環境に適したサーバーを配置することで、生産システムの処理をリアルタイムで行うことができます。

2.png

2. Dell Technologies のエッジ環境向けサーバー

では、「エッジ環境に適したサーバー」にはどのようなサーバーが使われるのでしょうか?

Dell Technologiesにはエッジ環境向けに設計されたサーバーポートフォリオがあります。まずはエッジサーバーポートフォリオを簡単にご紹介します。

Dell Technologiesのエッジ向けサーバーは、「モノリシック型」と「マルチノード型」に分類されます。モノリシック型は "1筐体に1ノードで完結" している、いわゆる一般的なサーバーと同じ構成です。マルチノード型はその名の通り、"1筐体に複数ノードが搭載" されている構成となっています。

モノリシック型には、PowerEdge XR7620/XR5610がラインナップしています。XR7620は主にAI用のワークロードで使用できるように300WのGPUを搭載できるモデルです。XR5610は防衛/ビデオ監視/POS分析/通信システムなど、エッジ環境でよく使われる様々なワークロードに対応しています。

マルチノード型には、PowerEdge XR8000/XR4000がラインナップしています。XR8000では2Uシャーシに最大4台までノードを搭載することができます。Open RANや仮想化RANにも対応しているモデルで、通信事業者向けに最適化されています。XR4000は奥行きが350mmと、Dell Technologiesサーバーポートフォリオの中で一番浅く、とにかくコンパクトなモデルです。

3.png

それぞれのモデルは用途別に分類されていますが、全てに共通していることがあります。それは、以下の2つです。

  1. サーバーなのに奥行きが浅く、コンパクトであること。
  2. 衝撃、振動、粉塵、熱など、過酷で予測不可能な環境に対応していること。

これらの共通点は、エッジ環境においてとても重要な要素です。たとえば、工場はまさに過酷な環境の代表と言っても良いエッジ環境です。また、小売店ではバックヤードの狭いスペースに設置することが考えられます。

今回はこの「PowerEdge XR4000」に着目し、XR4000そのものだけでなく関連するソリューションを以降でご紹介します!

3. PowerEdge XR4000 と関連ソリューション

3.1. PowerEdge XR4000 のご紹介

PowerEdge XR4000(以下、XR4000)を更に詳しく見ていきましょう。

XR4000には2種類のシャーシがあります。どちらのシャーシも他のXRモデルと同様に、過酷環境に耐性があります。

ラックマウント型の「XR4000r」はラックにマウントできるモデルで、最大4台のノードを搭載することができます。一方、据え置き型の「XR4000z」はテーブルや棚板にそのまま置くことができ、最大2台のノードを搭載することができます。わざわざラックを用意しなくてもあらゆる環境にそのまま設置するだけで問題ありません。驚くべきなのはそのサイズです。奥行きは他のXRモデルと同じく360mm程度ですが、なんと幅が300mm程(サイドパネル付き)しかありません!

4.png

XR4000は他のXRモデルと大きく異なる点があります。それは「2ノードvSANをシャーシひとつで構成できること」です。

2ノードvSANの詳細については割愛しますが、従来の2ノードvSANはクラスターの監視役として「Witnessノード」と呼ばれる専用ノードが必要でした。しかし、XR4000で2ノードvSANを構成する場合は、Witnessノードをシャーシの極小スペースに組み込むことができます。

5.png

ここで、登場したXR4000に搭載できるノードをまとめます。

それぞれのシャーシに対して、1Uサイズのコンピューティングノード「XR4510」または2Uサイズのコンピューティングノード「XR4520」を搭載できます。XR4520は上段がPCIeスロットになっており、要件次第でNICを拡張したり、ストレージを拡張したり、GPUを搭載することもできます。2ノードvSANを構成する場合はWitnessノード「XR4000w」を搭載します。

6.png

つまりXR4000は、とても柔軟な導入が可能です。

最小規模の1ノードとして導入することはもちろん、コンピューティングノードとWitnessノードを追加すれば2ノードvSANとして導入できます。さらにXR4000rシャーシを複数使用すれば、3ノード以上の標準的なクラスターとして導入することもできます。

7.png

3.2. XR4000 から派生した仲間たち

ここまで、XR4000について踏み込んでご紹介しました。XR4000単体でもかなり魅力的なサーバーだとおわかりいただけたと思いますが、実はまだお伝えしたいことがあります。

XR4000がベースとなったHCI(Hyper-Converged Infrastructure)もDell Technologiesに存在するということです。現在リリースされているのは「VxRail VD-4000」および「Nutanix XC4000」の2つです。(※2024年7月現在)

XR4000で構成する2ノードvSANもHCIに分類されますが、この2つとの大きな違いは「運用管理性」にあります。VD-4000もXC4000もVxRailとNutanixそれぞれが持っているHCI管理機能の恩恵を受けることができます。運用で定期的に必要になるアップデート対応に関しては、HCI独自のライフライクル管理機能によって、ソフトウェアだけではなくファームウェアまで一括でアップデートしてくれます。

純粋な2ノードvSANの場合は、vLCM(vSphere Lifecycle Manager)を使用してアップデートを行いますが、アップデート対象のコンポーネントはそれぞれ互換性を事前に確認してから行う必要があります。しかし、これらのHCIはソフトウェアとファームウェアの互換性が全て保たれたパッケージとして与えられるため、余計な手間が無くなり運用管理を "ラク" にしてくれます。

8.png

4. エッジ環境こそ必要になる "UPS"

4.1 なぜエッジ環境こそ UPS?

工場や小売店などのエッジ環境にサーバーを設置してリアルタイムでデータ処理を行うのはいいものの、エッジ環境だからこそ不安なのが "停電によるシステムダウンやデータ損失" です。エッジ環境では膨大なデータ量を処理することが多いため、データを損失したら商機を失ってしまうなんてことも考えられます。

そこで重要性が注目されているのがUPS(無停電電源装置)です。

しかしながら、エッジ環境でUPSを導入するためには過酷な環境(特殊な環境)に対応したUPSである必要があります。汎用的に使用されるサーバーは、データセンターなどの稼働環境が整備された場所に設置されるため、そこにUPSも同居させることは簡単ですが、エッジ環境ではそういった理由でUPSを導入できなかったという背景がありました。

そこで登場したのが "エッジ環境専用のUPS "です。

4.2. オムロン ソーシアルソリューションズ株式会社の「エッジ環境向けUPS」

オムロン ソーシアルソリューションズ株式会社(以下、オムロン社)はUPSを販売してから39年になり、これまでに52機種というラインナップを展開されてきましたが、2024年7月に「エッジ環境向けUPS BVシリーズ」もリリースしいます。

BVシリーズには、エッジ環境の様々なシーンにも対応できる6つの特徴があります。

特長①「使用環境温度 -10~50℃」
-10~50℃というとても過酷な環境下でも稼働できるように設計されています。まさに工場などの温度変化が激しい環境にぴったりです。PowerEdge XR4000も同様に過酷な温度環境下で稼働できるため、エッジ環境で一緒に使うことをオススメします!

特長②「薄型の1U設計」
エッジ環境は、データセンターのように広い空間に設置できるような環境ではない、狭いスペースに置かざるを得ないことがあります。BVシリーズは1Uサイズ(438×400×43mm)というとてもコンパクトなサイズであるため、場所を問わず設置することができます。

特長③「とにかく軽い!」
従来のUPSは20kgや30kg以上のものが多く、"重い機材" としても有名です。そのため、ラックマウントする際はラックの最下部に設置することが基本でした。BVシリーズは最大8kg程しかなく、ラックの中部に簡単に設置することもできます。

特長④「計11種類の設置パターンに対応」
エッジ環境だからこそ、様々な場所に設置できる必要があります。専用の金具(オプション)を使用すれば、通信キャビネット/壁/天井などにも設置できます。

特長⑤「長時間のバックアップが可能」
「小型モデル=電源供給時間が短そう?」というイメージはありますが、バッテリを3台まで増設できるため、機器を長時間止めずに稼働させることができます。

特長⑥「製品寿命が長い」
従来の鉛バッテリに比べてリチウムイオンバッテリは寿命が長いため、長期間使用できるだけでなく、保守工数を削減することができます。

9.png

※BVシリーズのスペックなど、詳しい情報はこちらのページをご覧ください。

また、BVシリーズ(BV100REM/BV55REM)は遠隔監視用のネットワーク機能を搭載しています。

下図のように、PoEスイッチに監視カメラやアクセスポイントなどのデバイスが繋がっている場合、その中の1台が電源障害でフリーズしたとしても、BVシリーズが障害を自動で検出し、自動でリブートを行ってくれます。従来の環境であれば、このような電源障害が発生した場合でも、わざわざ現地に向かって対応する必要がありましたが、BVシリーズであれば全て自動で復旧してくれるため、保守運用の工数や費用を削減することができます。

10.png

オムロン社のエッジ環境向けUPS「BVシリーズ」をご紹介しました。エッジデバイスにエッジUPSを導入することで、これまで軽視しがちだったエッジ環境の可用性をしっかりと担保できます。

4.3. オムロン社の検証結果をご紹介

先ほどご紹介したPowerEdge XR4000から派生したHCIとして「VxRail VD-4000」をご紹介しましたが、オムロン社にご協力いただき、"エッジ向けHCI VD-4000" と "エッジ向けUPS BVシリーズ" を組みわせ、UPS経由でのVD-4000シャットダウン/復電検証を実施していただきました。次回の記事で検証の内容について触れる予定ですので、是非楽しみにしてください!

他のおすすめサイトはこちら

著者紹介

SB C&S株式会社
ICT事業本部 技術本部 技術統括部 第1技術部 2課
湯村 成一 - Seiichi Yumura -

Dell Technologies社製品のプリセールス業務を行うエンジニア。
主にVxRail・Azure Stack HCIといったHCI製品を担当している。