この投稿では、VMware Aria Automationの概要と、2024年8月に開催された「VMware Explore 2024 Las Vegas」での発表をふまえた近況をあわせてご紹介します。
VMware Explore 2024 Las Vegasの概要については、以下の投稿をご確認ください。
VMware Explore 2024 Las Vegas 速報レポート
VCF への Operations と Automation の統合
VMware Explore 2024では、VMware Cloud Foundation 9(VCF9)の発表とともに、Aria OperationsやAria AutomationなどがVCFに統合され、VMware Cloud Foundation OperationsやVMware Cloud Foundation Automationといった名前に改称されるという説明がありました。
これは、以下のニュース リースなどでも説明されています。
Broadcom Unveils the Future of VMware Cloud Foundation (原文)
Broadcom、VMware Cloud Foundation(VCF)の指針を明示
また、統合予定の製品群は、現時点では多くの管理コンソール(12個以上)に分かれていますが、VCF9がリリースされる際には、VCF Operations ConsoleとVCF Automation Consoleの2つに統合される予定です。
OperationsとAutomationのVCFへの統合はVCF9とともに発表されましたが、メーカーWebサイトや ブログ などでは、すでに「VMware Cloud Foundation Automatin」や「VCF Automation」といった名称が使われはじめているようです。
そこで、あらためてAria Automationについてご紹介します。正式な名称変更のタイミングが現状では不明瞭なところもあるので、この投稿では従来の「Aria Automation」の名称を使用します。
Aria Automation とは?
Aria Automationは、vSphereやパブリック クラウドでのITサービス提供を、自動化し、セルフサービス化する製品です。代表的なコンポーネントとしては、以下が挙げられます。
- VMware Aria Automation Assembler
- VMware Aria Automation Service Broker
- VMware Aria Automation Orchestrator
- VMware Aria Automation Pipelines
Assemblerは、vSphereやパブリック クラウドといったインフラを統合し、仮想マシンやアプリケーションを含む「クラウド テンプレート」の作成や公開といった、ITサービスをテンプレート化する機能を提供します。
Service Brokerでは、Assemblerで作成したテンプレートをカタログとして提供し、事業部門や開発チームのメンバーが、セルフサービスで利用できるようになります。
Orchestratorではインフラ作業を自動化するワークフローを作成でき、それらは「カタログから仮想マシンなどを展開する」といった自動化に利用できます。また、Orchestratorで作成するワークフローでは、セルフサービス化の際に活用できる承認機能も実装可能です。
Pipelinesでは、GitHubなどのコード リポジトリと連携したCI/CDパイプラインを提供します。
Aria Automationは、以前はvRealize Automationと呼ばれていましたが、VMware Explore 2022のタイミングでAria Automationに改称されました。今年(2024年)のVMware by Broadcomによる製品再編で、VCFで提供されるコンポーネントの一部となり、今後は VMware Cloud Foundation Automation(VCF Automation)に改称されます。
Aria Automation と VCF との関係
VMwareでは、以前から「VMware Validated Solutions」と呼ばれる、VCF上にVMware製品を実装するための指針となるドキュメントが提供されています。そして、Aria Automationについては、VCFに統合される以前から「Private Cloud Automation for VMware Cloud Foundation」として提供されています。
このドキュメントでは、Aria Automationを展開するうえでの設計、準備、具体的な構築および運用の手順などが紹介されています。
2024年9月時点での最新バージョンである、VCF 5.2にAria Automationを展開する場合、前提として以下のコンポーネントも展開することになりますが、それらの展開手順もVMware Validated Solutionsでカバーされています。
- Aria Suite Lifecycle:Aria製品の展開やアップデートといったライフサイクルを管理する。
- Workspace ONE Access:IDプロバイダーと認証を受け持つコンポーネント。(旧称は VMware Identity Manager)
「Private Cloud Automation for VMware Cloud Foundation」は、vCenter ServerやNSX Managerの認証やロール割当をカバーするVMware Validated Solutionsである、「Identity and Access Management for VMware Cloud Foundation」を前提としています。
そのため、VCFでのAria Automation環境構築のおおまかな流れとしては、下記のようになります。
Aria Automation と Aria Operations との関係
今回VCF9でのコンソール統合が説明されたもうひとつの製品は、VCF Operations(Aria Operations)です。
Aria Operationsも以前はvRealizeブランドでしたが、VMware Explore 2022のタイミングでAriaに改称されました。そして今年のVMware by Broadcomによる製品再編で、現在はVCFで提供されるコンポーネントの一部となり、今後は VMware Cloud Foundation Operations(VCF Operations)に改称されます。
ただ、この投稿では Aria Automationと同様、ひとまず「Aria Operations」の名前を使用します。
Aria Operationsが冠された主な製品として、現時点では以下が挙げられます。
- Aria Operations
オンプレ仮想化インフラ~マルチクラウドのリソースや性能などの監視/モニタリンク - Aria Operations for Logs
Syslogやイベント情報などのログ監視 - Aria Operations for Networks
仮想~物理のネットワーク監視
上記のように、主にITインフラの監視やモニタリング、トラブルシューティングを受け持つ製品であり、セキュリティ コンプライアンスのチェックなどもカバーします。
なお、VCFでデプロイされたAria Operationsでは、Aria Automationのテンプレートによる展開なども情報収集の対象となります。
Aria Automation と VMware Cloud Director との関係
VCF9では、VMware Cloud Director(VCD)も、VCF Automationの一部として統合されることがアナウンスされました。VCDも、Aria Automationと同様に、マルチ テナントのクラウド環境を構築して、セルフサービスのポータルを利用者に提供できる製品です。
Aria Automationは、「企業内の複数部署に対してITサービスを提供する」といったケースに向いている製品といえます。仮想マシンよりも上のレイヤまでの自動化を含めたテンプレートの作成や、柔軟な承認ワークフローの作成などにより、「ITサービス」を提供することに適しています。
一方でVCDは、「サービス プロバイダーが複数の顧客に対して分離された環境を提供する」といったケースに向いている製品といえます。インフラを確実に分離することで高いセキュリティを確保し、カタログでITサービスを提供するよりも、「クラウド環境自体」を提供することに適しています。
テナント分離の分類としては、Aria Automationはソフト テナンシー、VCDはハード テナンシーと呼ばれることもあります。
ただ、両製品には役割が重複するところがあり、実装の仕方によっては相互に役割をカバーできるケースもあります。今後VCF9がリリースされた際には、VCF AutomationにVCDが統合されることで、利用者が自分の組織にあった機能をより柔軟に利用できるようになることが期待できそうだと考えられます。
さいごに
Aria Automationは、VCFに自動化やセルフサービス化を提供しますが、これまでAria Operationsほどは利用されていなかったような印象があります。しかしVCFに統合されたことにより、以前よりも利用しやすくなったのではないかと考えられます。
一方で、VMware by Broadcomによる先進的な機能では、Aria Automationが利用されています。たとえばKubernetesをベースにセルフサービスを提供するCloud Consumption Interfaceや、Private AI Foundation with NVIDIAによるAIワークロードの展開では、Aria Automationをもとに機能が提供されています。
VCF9に向けてAria Automationをキャッチアップすることで、VCFをより活用いただければと思います。
参考情報
著者紹介
SB C&S株式会社
ICT事業本部 ICT事業戦略・技術本部 技術統括部 第1技術部
渡辺 剛 - Go Watanabe -
VMware vExpert
Nutanix Technology Champion