みなさん、こんにちは。
SB C&S 市島です。
私は現在、アメリカ・ラスベガスで開催されているVMware by Broadcomの年次カンファレンス「VMware Explore 2024 Las Vegas」に参加しています。
本ブログでは、VMware Explore 2024 Las Vegasのジェネラルセッションで発表された内容を中心に、現地から速報レポートとしてお届け致します。
※可能な限り正確な情報を掲載するよう努めていますが、VMware Explore 2024 Las Vegasでの発表直後の内容を含むため、後日の修正が必要となることや、情報が古くなることで正確性を保持できなくなる可能性もあります。必ずしも情報の正確性を保証するものではない事をあらかじめご了承ください。
2022年5月にBroadcom社によるVMware社の買収方針が報道されてから、これまでVMwareの年次イベントが2回ありましたが、年次イベントのジェネラルセッションの場でHock Tan氏が多くのメッセージを直接語ることはありませんでした。(過去の開催では、客席からの短い挨拶やビデオメッセージのみでした)
今回のVMware Explore 2024では、パブリッククラウド・プライベートクラウドの動向やVMware Cloud Foundation(VCF)を中心とした取り組みに関して、Hock Tan氏自らが多くのメッセージを発信しました。
Hock Tan氏が特に熱く語ったのは、パブリッククラウドの課題とそれを解決するのがVCFであることを宣言したメッセージです。
昨今のITインフラストラクチャは、パブリッククラウドの期待から「Cloud First」の号令のもとに多くのインフラをパブリッククラウドへシフトしてきました。ですが、パブリッククラウドへシフトした結果、多くのお客様で3つの課題「Cost(費用)」「Complexity(複雑さ)」「Compliance(コンプライアンス)」に悩まされていると語りました。
そして、こういった3つの課題から、パブリッククラウドからプライベートクラウドへの回帰を検討しているエンタープライズのお客様が83%もいると紹介されました。
こういったパブリッククラウドで悩まれているお客様の課題を解決するのが、VMware Cloud Foundation(VCF)で構成されたプライベートクラウドだとHock Tan氏は語ります。
VCFのプラットフォームと、そのVCF上で構成可能な様々なサービスによって「Resilience(レジリエンス,回復力)」「Security(セキュリティ)」「Cost Saving(コスト低減)」を実現でき、パブリッククラウドで代表されるAWS(Amazon Web Services)のようなクラウド環境をプライベートに提供できると紹介しました。
ここで、本ブログ記事の筆者の個人的な感想を挟ませていただきますが、このプライベートクラウドへの回帰に対する強いHock Tan氏のメッセージは、今回のゼネラルセッションの中でとても印象的でした。
昨年、一昨年のVMware Exploreでは「Cloud Smart」のメッセージを掲げていました。複数のパブリッククラウド、プライベートクラウドを別々に利用している状況、つまりマルチクラウド環境にわたり複雑化してしまった"カオス"なITインフラ環境を、VCFを中心としたVMwareの各種ソリューションや機能によって、マルチクラウドを維持しつつ"スマート"にしていくビジョンでした。
これが2024年では大きくメッセージが変わり、VCFによって構成されたプライベートクラウドが最適な解決策だと語られています。
こういったメッセージの変化は、今後VMware Cloud Foundationという柱となるプラットフォームソリューションに対し、より一層注力してくVMware by Broadcomの強い意志を感じました。また、これまでVMwareという独立したソフトウェアベンダーであった体制から、Broadcomという世界Topレベルの半導体メーカーの傘下になったことの変化を改めて感じとれました。
以上が、ゼネラルセッションの導入部分のご紹介です。
ここから、VCFを中心とした各種アップデートのメッセージをご紹介します。
スピーカーがPaul Turner氏(Vice President, Products, VCF)にバトンタッチされ、VMware Cloud Foundationのアップデートに関する紹介に移りました。
Paul Turner氏のパートでは、本イベントの主たるアップデートトピックであるVMware Cloud Foundation 9 が発表されました。
本ブログ執筆時点(2024年8月時点)で、VCFの最新バージョンは5.2ですが、一気に"9"にジャンプアップされます。これは、VCFの主たる構成要素であるVMware vSphereの次期バージョン"9"の番号に合わせたバージョンになることが推測できます。
今回発表されたVCF 9は、ITインフラのサイロ化を解消する統合プラットフォームとして、運用・自動化機能の強化、既存のvSphere環境をVCFで統合管理するためのインポート機能の強化、NVMeによるメモリ階層化機能などが提供されると発表されています。
また、VCF 9の運用・自動化機能の機能強化の発表に含まれる形で、今回「VCF Operations」や「VCF Automation」といった、従来Aria(少し前はvRealize)の製品群の変化、機能強化が大きく発表されています。
- ※LogsはVMware Cloud Foundation Operationsに含まれる形に
上記に紹介した旧称Ariaのソリューションは、現在それぞれ別の管理コンソールを提供しています。さらにVCFとしては、SDDC Managerなどの様々な管理コンソールが提供されている状況ですが、今回のVCF 9の発表で運用・自動化を行う管理コンソールを1つのダッシュボードに統合していく方針が発表されています。
製品ポートフォリオがVCFに統合されましたが、様々なコンソールが点在している状態でしたので、管理コンソールが統合されることは個人的にも期待しており、今後のアップデートが待ち遠しいと思っています。
次に、今後VCF Automationに対してマルチテナンシー機能が実装されることが発表されました。従来、vSphereの仮想化インフラでマルチテナント環境を実現する際は、サービスプロバイダー向けのプロダクトであったVMware Cloud Director(VCD)が機能提供しておりましたが、今後はVCF 9のVCF Automationに組み込まれる形となるようです。
このアップデートが実現されると、サービスプロバイダーでなくても、自社のインフラ環境(プライベートクラウド)を使って、パブリッククラウドに近いサービス環境を提供できるようになりそうです。
この「VCF Operations」や「VCF Automation」の運用・自動化機能の強化が、プライベートクラウド実現をうたう、VCFの重要なアップデートであると感じています。
ここまでのご紹介のように、VCFはプライベートクラウドを実現するプラットフォームソリューションとしての進化を続けていますが、VCFを利用可能な環境は限定的ではない、というメッセージもあわせて本パートで語られました。
以前から提供されている、VMware Cloud on AWSやGoogle Cloud VMware Engine、Azure VMware Solution(AVS)といったサービスを利用してパブリッククラウドにVCFを導入する方法や、 Cloud Service Provider(CSP)によるマネージドサービスのVCFインフラなど、VCFを利用することのできる様々な選択肢が紹介されました。
前半のHock Tan氏のメッセージから、VMware Cloud on AWSやAVSなどがどうなるのか疑問に感じていたところでしたが、VCFが利用可能なプラットフォームとして現状でも含まれているようでした。
ゼネラルセッションの後半では、VCF上で提供できる拡張機能としてVCF Advanced Servicesが登場しました。
セッションの中では、VCF Advanced Servicesが何をもたらすのかについてChris McCain氏(Director)とValentina Alaria氏(Product Management Director)が、寸劇の形式でIT管理者・開発者の日常を演じながら紹介しました。
今回発表されたVCF Advanced Servicesは、VCFのアドオンとして利用することのできるVMware by Broadcomの様々なソリューションのカタログを表しているようです。
上記スライド写真をよくご覧頂くと、Avi Load Balancer、Tanzu、vDefend(NSXによって提供されるセキュリティ機能)、Liver Recovery(旧称SRM・VCDR)、VeloCloud SD-WAN、Edge Compute Stackといった、以前からVMwareが提供している様々な製品群が紹介されていることがわかるかと思います。
AWSやAzureなどのパブリッククラウドのように、クラウド上で様々な機能をすぐに利用できるイメージに近い形で、IT管理者・開発者が必要とするネットワーク・セキュリティ・ディザスタリカバリ・データサービスといった様々な機能をVCFのプラットフォーム上で利用できることが語られていました。
最後のトピックは、VMware Private AIのアップデートです。ゼネラルセッション冒頭に登壇したChris Wolf氏が再登場し、VMware Private AIのメリットやアップデートについて語りました。
まずは、昨年大々的に発表されたVMware Private AI Foundation with NVDIAについてです。2024年5月GAされ、VMwareとNVDIAの高度なテクノロジーが組み合わさったターンキーソリューションとして、お客様から高い評価を得ていることが紹介されていました。
さらに、VMware Private AI Foundation with NVDIAを含む、VMware Private AIに対しての様々な機能アップデートが発表されました。以下のスライド写真で紹介されている4つはアップデートの一部です。
VMware Private AIのアップデートに関しては、ゼネラルセッション終盤にも関わらず、上記以外にも多数の機能アップデートが発表されておりました。VMware by Broadcomが、Private AIに関わる製品開発に力を入れていることが伺える発表だったと感じました。
ウェビナー告知
本速報レポートでのご紹介は以上です。
本記事では、ジェネラルセッションで紹介された内容を中心にお伝えいたしましたが、Exploreのブレイクアウトセッションでは、今回発表されたアップデートに関する製品デモンストレーションや、もう一歩踏み込んだ技術解説がされており、当社メンバーにて様々なセッションに参加して情報収集に励んでいます。
帰国後には、今回のExploreに参加した当社VMware技術メンバーを中心に「VMware Explore 2024 報告会 オンラインセミナー」を開催いたします。
2024年9月20日(金) 15:00~16:30(オンラインウェビナー)
https://licensecounter.jp/vmware/dl/pdf/vmwx-us-report-sbcs-240920.pdf
報告会ではより有益な情報をお伝えできるよう、引き続き情報収集に努めておりますので、ぜひ本記事をご覧頂いた皆様は、上記リンク・QRコードからセミナーへのお申し込みをお願いします!
著者紹介
SB C&S株式会社
ICT事業本部 技術本部 技術統括部
第1技術部 1課
市島 拓弥 - Takuya Ichijima -
VMware vExpert