SB C&Sの最新技術情報 発信サイト

C&S ENGINEER VOICE

SB C&S

VCF Import Tool の紹介 ~概要編~

VMware
2024.10.30

こんにちは。SB C&Sの大塚と申します。
VMware Cloud Foundation(VCF)のバージョン5.2から、新機能としてVCF Import Toolが実装されました。

本記事では、このVCF Import Toolについて概要をお伝えさせていただきます。

VCF Import Toolの使い方については、こちらの記事をご参照ください。

 

VCF Import Toolとは

画像2.jpg

VCF 5.2にてVCF Import Toolが利用できるようになりました。

このツールはVCF独自の管理コンポーネントであるSDDC Managerにて管理されていない、通常のvSphere環境に対して、CLIを使用したツールを用いてVCFのワ―クロードドメインへ変換(Convert)、移行(Import)を実施できます。

VCF Import Toolの変換(Convert)、移行(Import)の各利用方法は、それぞれ目的が異なるため整理してご紹介いたします。

新たに管理ドメインへ変換(Convert)

現在の環境にSDDCの管理ドメイン(Management Domain)が存在しない場合、現在のvSphere環境を管理ドメインに変換させることができます。これにより、VCF環境を新規構築せず既存のvSphere環境を用いた形で、VCFによるSDDC環境としての利用を開始することができます。

既存のVCF環境へVIドメインとして移行(Import)

既存でVCFによって構成されたSDDC環境が存在する場合に利用できる手法です。現在のvSphere環境(非VCF環境)をVIドメインとして移行することができます。


既存のvSphere環境をワ―クロードドメインとして変換・移行する際には、そのワ―クロードドメイン内にNSXをデプロイすることもできます。これはオプションで指定することができ、変換、移行する際に同時にデプロイを行うか、もしくは完了後に任意のタイミングで行うか選択することができます。


要件

VCF Importツールを使用するためには要件があります。要件は、「新たに管理ドメインへ変換(Convert)」の場合と、「既存のVCF環境へVIドメインとして移行(Import)」の場合、そしてその両方に共通する要件として、いくつかのポイントがございます。要件の詳細は最新のDocsでご確認いただければと思いますが、本記事では重要なポイントをご紹介します。

新たに管理ドメインへ変換(Convert)

  • 変換元の環境がvSphere 8.0 U3 以上で構成されている
  • vCenter Serverが変換元の環境のクラスター内に存在する

既存のVCF環境へVIドメインとして移行(Import)

  • 移行元の環境がvSphere 7.0 U3 以降であること
  • 移行するvSphere環境を管理しているvCenter Serverが、移行元の環境内にあるクラスターに存在する、もしくは管理ドメイン内のクラスターに存在する

変換・移行する場合の共通要件

  • vCenter ServerおよびESXiのインストールが完了している
  • クラスター内のホストは全て同一の構成がとられている
  • サポートされているストレージタイプはvSAN、FC、NFSの3タイプ
  • クラスタ内でVDSが構成されている、また既存のVSSは全て削除しておく
  • DRSを完全自動化モードに設定しておく
  • 拡張リンクモードが構成されている場合はサポート対象外
  • NSXが構成されているvSphere環境はサポート対象外
  • VxRailはサポート対象外
  • vSANストレッチクラスタはサポート対象外

これらの要件の詳細は下記Docsからご確認いただけます。
https://docs.vmware.com/jp/VMware-Cloud-Foundation/5.2/vcf-admin/GUID-41CEC8AD-73D1-4FBD-9063-994EA26D2C69.html


利用シーンと今後の展望

これまでVCFによるSDDCを導入する場合は、新規ハードウェアを用意し、Cloud Builderと呼ばれる仮想アプライアンスを使用して構築する必要がありました。そのため、既存の環境を維持したままVCFの環境を構築することはできませんでした。

このVCF Import Tool を使って既存の環境をVCFへ変換、移行できるようになることで新規環境を用意するコストや、構築にかかる手間などを削減することが可能となりました。また、既存環境の移行を行うことでSDDC Managerの管理下に置けるため、VMwareの提供するベストな環境を整備することができます。

VCFを導入したい場合でも、拠点ごとにvSphere環境が複数存在しているため、同一の環境を構築するのにハードルがあるといった組織にとっては、このVCF Import Toolが非常に有用です。実際の手順については「VCF Import Tool の紹介 ~使い方編~」にてご紹介していますが、ツール自体も簡単に使用でき、かつ既存環境のワ―クロードを止めることなく実行できるという点は非常に優れていると感じます。

VCFによるSDDCの初期デプロイはブリング アップ(Bring-up)と呼ばれる、Excel形式のパラメーターワークブックをアップロードすることで自動的に構築を行うことができます。このVCFならではの方法によって、構築にかかる時間を削減することができるという、VCFにおける大きな魅力の1つとなっていますが、一方でパラメーターの指定や自動構築中のエラーへの対応を行わなければならず、やはり慣れた手作業で構築を行いたいと感じた方もいるのではないでしょうか。実際に私もVCFの構築検証を行った際に、Cloud Builderのエラー対処などにより、ある程度の初期構築は手作業で行いたいと感じることもありました。

VCF Import Toolによって、ESXiのインストールやvCenter Serverの構築など、要件を満たす環境をまずは手作業で構築しておき、あとはツールを使って管理ドメインへ変換、VIドメインへ移行するといったことが可能なため、こういったニーズへも対応することができるようになりました。


ですが上記でもご紹介したように、利用するためには多くの要件・制限事項があるという点には注意が必要です。今後のアップデートでこういった要件・制限事項がある程度緩和されると、より使いやすいツールとして普及していくと思われます。

著者紹介

SB C&S株式会社
ICT事業本部 技術本部 技術統括部
第1技術部 1課
大塚 亜人夢 - Atomu Otsuka -

VMware vExpert