
VMware Cloud Foundation(以下、VCF)は、オンプレミス環境にパブリッククラウドのような管理性と体験をもたらす統合プラットフォームです。
ただし、その導入・構築には、ネットワークやストレージを含む、仮想化基盤として必要な多岐にわたる情報の整理と設計が求められます。
こうしたVCF環境の計画を効率的かつ確実に進めるためのツールとして、「VCF Planning and Preparation Workbook」(以下、ワークブック)が提供されています。
本記事では、過去に検証した際の使用経験を例に、このワークブックの活用ポイントをお伝えします。
VCF Planning and Preparation Workbook とは
VCF Planning and Preparation Workbookは、VMware by Broadcomが提供するVCF構築の計画を支援するExcelのツールです。
VCF環境の導入前に、必要な設計情報や構築パラメータを体系的に整理することができます。

特に以下の領域をカバーしており、VCF環境の「全体像」を明確に把握するのに役立ちます。
- VCF構成情報(VCFフリート、VCFインスタンス、マネジメントドメイン/ワークロードドメインなど)
- 仮想アプライアンス情報(FQDN、IPアドレス、パスワードなど)
- インフラ要件(NTP、DNS、ネットワーク設定、サブネット設計など)
- デプロイメントオプション(冗長化構成、スーパーバイザー構成など)
ワークブックはBroadcom TechDocsで無償提供されており、誰でもダウンロードして入手できます。
Broadcom TechDocs - VMware Cloud Foundation 9.0 Planning and Preparation
VCF 9.0の変更点とワークブックの進化
VCF 9.0は、過去バージョン(例えば、VCF 5.2など)から比較して多くの変更点があります。
例えば、「VCF Operations Fleet Management」などの新しい仮想アプライアンスが登場し、「VCF Fleet」や「VCF Instance」といった新しい構成概念が増え、「VCF Installer」を使用した新しいインストール方法が導入されました。
これに伴い、構築プロセス全体が整理・統合され、ワークブックもそれに対応した仕様となっています。
個人的には過去バージョンのワークブックも使用していたので、進化とも言えるほどの変化に驚きがありました。

特に「Deploy Management Domain」のシートは用途が明確です。
セルの項目が上から順番にVCF Installerのインストールウィザードと一致しているため、あらかじめ計画・整理しておいた情報が、そのまま入力時の作業手順書として活用できます。

使用例:VCF 9.0 環境の新規構築
実際にワークブックを活用してVCF 9.0環境の新規構築を実施しました。

このような環境構築の作業で実際に使用したワークブックのシートは以下です。

VCF 9.0 環境を新規構築してみて、ワークブックを活用することで次のような効果が得られました。
- 動的な仕様確認
構成変更の影響をリアルタイムに把握可能。
設計時に「選択に連動する項目、選択によって制限される項目」が簡単に分かる。 - マネジメントドメインのサイジング
VCFとしてデプロイする仮想アプライアンスのサイズ・台数・消費リソース合計が可視化可能。
調達時に「マネジメントドメインで必要なリソース要件」が出せる。 - 事前準備の明確化
インストールに必要なすべてのパラメータをExcel上で整理可能。
構築時に「何を選択するか、何を入力するか」が明確になる。 - VCF Installerとの整合性
VCF Installerのウィザード項目と一部のワークブック内容が一致しているため、コピー&ペーストで入力作業が完結。
構築時に「人が介入する余地を減らしてヒューマンエラーが抑制」される。
また、プロジェクト単位でVCFを導入する際、複数の担当者が同時に設計・構築を行うケースは珍しくありません。実際に別の構築担当者にも同じワークブックを共有したところ、同一構成を再現できました。

このように、チーム作業での再現性があり、設計・構築の標準化や、容易なナレッジ共有も見込めます。
まずは使ってみる
VCF Planning and Preparation Workbookは、VCF導入を検討しているエンジニアにとって情報の整理と設計を支援する実践的なツールとなりました。
さらにチーム活用を見込むことで、一般的な構築準備の段階で生じがちな「属人化」「入力ミス」「情報分断」といった課題を解消する助けにもなります。

本記事では、使用経験を例に挙げながらワークブックの活用ポイントをお伝えしましたが、ぜひ一度Broadcom TechDocsから最新版をダウンロードしてご自身の環境に合わせて試してみてください。
この手のツールは気軽に使い始めるというのが一番のキモです。
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著者紹介
SB C&S株式会社
ICT事業本部 技術本部 技術統括部
第1技術部 1課
千代田 寛 - Kan Chiyoda -
VMware vExpert
