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【UiPath Agents】Maestro プロセス運用ガイド

UiPath
2026.04.20

みなさま、こんにちは。植木です。

前回の記事では、Maestro の各要素の実装設定やエラー処理・リトライについてご紹介しました。

本記事はその続編として、「作ったプロセスをどう運用するか」 に焦点を当て、

デバッグからデプロイ・監視・最適化・監査対応まで、

運用フェーズで押さえておきたいポイントをご紹介します。

各要素の実装設定やエラー処理の詳細は以下の記事をご参照ください。

本記事は、20263月時点の情報をもとに作成しております。

 


目次

1. はじめに

2. デバッグ

3. パブリッシュ・デプロイ

4. バージョン管理

5. インスタンス管理

6. 監視

7. 最適化

8. ログ・監査


1. はじめに - この記事の使い方

本記事は 「デバッグリリース運用改善」 という実務の流れに沿って構成しています。

  • 2(デバッグ): テスト・検証の方法
  • 34(公開・バージョン管理): 本番リリースとバージョン管理
  • 5(インスタンス管理): 本番稼働中の障害対応
  • 67(監視・最適化): 継続的な品質改善
  • 8(ログ・監査): コンプライアンスと監査対応

各セクションは独立して読めるため、目次から必要な箇所へ直接ジャンプしてご活用ください。

 


2. デバッグ - 本番前にテスト・検証する

2.1 二種類の動作確認方法

Maestroでは、動作確認を行う方法が二種類あります。

項目 デバッグ シミュレーション
起動手順 左上ツールバー、または開始イベントを右クリックし「デバッグ」 / 「ステップごとにデバッグ」を選択 開始イベントを右クリックし、「シミュレート」→「シミュレーション」
目的 エージェンティックプロセスを実際に実行してテスト・検証する 運用環境で実行せずにプロセスの動作をプレビューする
実行環境 実際のリソース(ロボット、エージェント、API等)に接続して実行 実際のタスク(ロボットジョブ、API呼び出し、エージェントのアクション等)は実行しない
ジョブ種別 エージェントのデバッグジョブが開始される(無料デバッグクレジット使用) ジョブは発生しない(ローカルシミュレーションのみ)
利用シーン 本番に近い環境での統合テスト。実際のリソース(ロボット・エージェント・API)に接続して動作を確認でき、変数値を編集しながらの挙動検証にも最適 実装前の設計段階でのロジック検証やプレビュー。ロボットやエージェントなしで制御フロー・データフローを確認したい場合や、反復的な設計・大規模モジュール式プロセスの早期検証に最適

 

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2.2 ブレークポイント

ステップごとにデバッグ」を開始すると、

デバッグ中の一時停止ポイント(ブレークポイント)を設定できるようになります。

 設定方法: 要素の左上にカーソルを合わせてクリック、

      または右クリック「ブレークポイントを追加」を選択

※ブレークポイントは実行間で保持されます。一度設定すれば次回も同じ位置で停止します。

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2.3 制約と注意点

制約 内容
デバッグの実行時間の上限 最大30分
本番リソースへの影響 デバッグ実行時に本番環境で稼働中のRPAなどを選択する場合は、本番環境に影響が出ないようご注意ください
並列処理のテストの注意点 並列パスをステップごとにデバッグする場合、1つずつ順番に実行することになるため、複数のプロセスが同時に動くことで発生するエラーは再現できない可能性がある点にご注意ください。

 

※補足:30分制限への対処法

長いプロセスはサブプロセスに分割し、個別にデバッグしてください。

 


3. パブリッシュ・デプロイ - プロセスを本番環境にリリースする

ステップ 操作 補足
① パブリッシュ Maestroの開発画面から「パブリッシュ」をクリック 名前・変更ログ・バージョンを指定
② デプロイ Orchestrator の「テナント」→「ソリューション」→「パッケージ」を選択し、パブリッシュしたMaestroのパッケージを選択し、「デプロイ」をクリック フォルダを選択してデプロイを実行
③ (任意) 開始点の指定 複数の開始イベントがある場合、対象プロセスの編集画面や実行前の設定の「ランタイム引数」で開始イベントを選択 単一スタートなら不要

パブリッシュは「パッケージをテナントに登録する」操作です。

Orchestrator 側でプロセスとしてデプロイ(対象フォルダに追加)して初めて実行可能になります。

※プロセスの実行権限や実行環境などは事前に設定してください。

 

■パブリッシュ

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■デプロイ手順

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■デプロイ先のフォルダを選択

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■(任意)複数の開始イベントがある場合、エントリポイント(任意の開始イベント)を選択

 ※エントリポイントごとにプロセスの登録やトリガーの登録が可能

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4. バージョン管理 - バージョンを切り替える・戻す

4.1 バージョンアップグレード・ダウングレード

  1. Studio Web で修正新バージョンの番号を付けてパブリッシュ
  2. Orchestrator 「テナント」→「ソリューション」→「デプロイ」画面で、現在のバージョンの横に表示されるアップグレードアイコンをクリック
  3. 最新バージョンを選択しデプロイ

※アップグレードは「今後の新規実行」に適用されます。実行中のインスタンスには影響しません。

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5. インスタンス管理 - 実行中の問題に対処する

5.1 実行中のインスタンスの確認方法

  1. Automation Cloud の「Maestro」を選択し、「プロセスのインスタンス」を選択
  2. 任意のプロセスを選択し、任意のインスタンスをクリック

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5.2 インスタンス図ビュー

プロセスインスタンス画面では、個別インスタンスの実行状況を、

図(ダイアグラム)ビューで視覚的に確認できます。

 

実行カウント表示:

各要素にアイコンが表示され、色で状態がわかります。

意味
🟢 緑 完了
🔵 青 進行中
🔴 赤 障害(Faulted)

 

5.3 インスタンス操作一覧

操作 動作 可逆性
一時停止 現在のステップ完了後に停止 ✅ 「再開」で再開可能
再開 一時停止したインスタンスを再開 -
リトライ 最後に完了したステップから再実行 ✅ 繰り返し可
移行 インスタンスを別バージョンへ移行(その後「リトライ」が必要)
次に移動 実行位置を任意の要素へ移動(その後、「リトライ / 移行」が必要)
キャンセル インスタンスをキャンセル ❌ 不可逆

⚠️ キャンセルは取り消せません。 本番インスタンスに対して実行する際は十分に確認してください。

 

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5.4 失敗インスタンスの移行

実行途中で失敗したインスタンスを、新バージョンで再実行することができます。

  1. 「移行」をクリック移行先バージョンを指定
  2. 移行完了後、「リトライ」で再実行

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5.5 「リトライ」と「次に移動」の使い分け

  • リトライ: 失敗ステップの直前から再実行。一時的なエラー(ネットワーク障害等)の復旧に最適
  • 次に移動: 実行位置を任意の要素に移動。「ステップを飛ばしたい」「前からやり直したい」場合に使用

 

5.6 要素レベルの自動リトライ

タスク単位で自動リトライを設定できます。

パラメータ(最大回数・待機時間・バックオフ方式など)の詳細は、

前回の記事の「3-2. リトライ」をご参照ください。

運用上のポイントとして、自動リトライは一時的なエラーの自動復旧に有効です。

ロジックエラーやデータ不整合など根本的な問題には、

手動操作(リトライ / 次に移動 / 移行)で対応してください。

 

5.7 操作履歴

すべてのインスタンス操作は アクション履歴(Action History に自動記録されます。

記録内容: 誰がいつ何をしたか + 任意のコメント

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5.8 プロセスのインシデント(インシデント管理)

Maestro では「プロセスのインシデント」画面から、

プロセス実行中に発生したエラーやインシデントを一元管理できます。

 

主な機能:

  • インシデントの発生頻度・推移の把握
  • 問題が集中している要素やプロセスの特定
  • インシデント詳細からの原因調査

インスタンス管理の操作と組み合わせることで、

「インシデント検知原因特定 → リトライや移動で復旧」という障害対応を効率よく行えます。

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6. 監視 - プロセスの状態を可視化する

6.1 監視機能へのアクセス

アクセス方法:

  1. 「プロセスのインスタンス」から任意のプロセスを選択
  2. 「監視」タブを選択

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6.2 ヒートマップの表示

「監視」タブから、ヒートマップを確認できます。

 ヒートマップ表示:要素を P50(中央値)の所要時間で着色します。

          青(短い)赤(長い)のグラデーションで、

          ボトルネックとなっている要素を一目で特定できます。

ヒートマップは「どの要素に時間がかかっているか」を直感的に把握できるため、

最適化の起点として活用してください。

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6.3 プロセスレベルの監視指標

監視タブのダッシュボードでは、以下の指標が標準で提供されています。

項目 説明
インシデントの経時的推移 時間単位ごとのエラー数を示す時系列グラフです。スパイクや不安定性の繰り返しを検出する場合に使用します。
完了したインスタンス 完了済みインスタンスの総数を任意の単位で表示します。
エラーが発生した要素のトップ 失敗した要素の名前と、その要素での失敗回数を表示します。
所要時間の長いアクティブなインスタンスのトップ 実行中のインスタンスで、所要時間の長いものを表示します。
平均所要時間の長い要素のトップ 平均所要時間の長い要素の名前と時間を表示します。
非アクティブなインスタンスの平均時間 非アクティブなインスタンスの平均実行時間を表示します。ステータス別の分類も表示されます。
時間の外れ値のトップ 通常の実行パターンから大きくかけ離れた要素を表示します。逸脱時間(要素の実際の実行時間と平均実行時間との差)、要素の最長実行時間、平均実行時間が表示されます。

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6.4 すべてのインスタンスビュー(横断的な監視)

複数のプロセスを横断的に比較する際は、「プロセス インスタンス」画面を使用します。

どのプロセスに問題が集中しているかを俯瞰的に確認できます。

ウィジェット 内容
上位のプロセス (インスタンス別) 実行回数が多いプロセスの横棒チャート
上位のプロセス (時間別) 実行時間が長いプロセスの横棒チャート
プロセス インスタンスのステータス 完了/失敗の推移を示す積み上げ棒グラフ
プロセス インスタンス テーブル プロセス名・実行中・完了・エラー・合計 などの一覧

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7. 最適化 - プロセスを高速化・安定化する

テナントで Process Mining が有効化されている場合

プロセスのインスタンスから「最適化」タブを開くと、インスタンスの分析データを確認できます。

詳細は Process Mining の領域となるため、本記事ではKPIの概要のみご紹介します。

 

7.1 最適化タブのKPI

最適化タブで確認できる5つの KPI です。

KPI 意味 改善のヒント
トレースの数 トレース総数 分析の母数が十分か確認
バリアントの数 経路パターン数 多すぎれば例外処理が複雑化している可能性
適合率 実際の実行経路が設計モデルにどれだけ一致しているかの割合 低い場合、想定外の経路を通るケースが多く、設計の見直しが必要
Automation rate 自動化ステップの割合 低ければ手動介入を自動化する余地あり
Average trace time 平均実行時間 増加傾向ならボトルネック調査が必要

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8. ログ・監査 - ログと監査証跡を管理する

8.1 記録される情報・されない情報

自動記録される情報:

  • プロセス/サブプロセスの識別情報
  • タイムスタンプ(開始/完了/所要時間)
  • ステータス(Running / Completed / Faulted / Cancelled
  • 各ステップの実行主体情報
  • 各ステップ完了時点での変数値のスナップショット(その時点の値を記録)

デフォルトで記録されない情報:

  • フル業務ペイロードや文書内容
  • 顧客情報を含む AI プロンプト/応答
  • 明示的な意思決定結果フィールド

 

規制要件で業務データの記録が必要な場合は、

ログ出力ステップの組み込みや Data Fabric へのデータ保存を設計してください。

 

8.2 ログ保持期間

ログ種別 デフォルト保持期間
Automation Cloud 監査ログ 最大2年
ロボット実行ログ 30日
Maestro 実行トレース(Insights) Standard: 2年 / Advanced: 5年

⚠️ ロボット実行ログは 30 で削除されます。

  長期保存が必要な場合は外部ストレージへのエクスポートを検討してください。

 

8.3 セキュリティ・プライバシーの留意点

観点 留意事項
変数値の記録 個人情報を変数に格納する場合はマスキングや暗号化を検討
AI プロンプトの非記録 エージェント連携時のプロンプト/応答はデフォルト非記録。AI ガバナンス要件に応じて別途設計
アクション履歴 手動操作は担当者情報付きで記録。「誰が何をしたか」の追跡は標準で可能
append-only モデル Insights のデータは追記型。削除・改ざんが困難なため監査証跡としての信頼性が高い

 


まとめ

本記事では、デバッグ・デプロイ・インスタンス管理・監視・最適化・監査対応まで、

Maestro の運用フェーズで必要な情報をご紹介しました。

特にインスタンス図ビューのヒートマップは、日常の運用品質を大きく向上させる機能です。

ぜひ実際の運用に取り入れてみてください。

本記事が Maestro の運用の参考になれば幸いです。

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著者紹介

SB C&S株式会社
ICT事業本部 技術本部 第1技術統括部 第2技術部 3課
植木 真