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【UiPath Agents】Maestro 実装パターン例

UiPath
2026.05.08

みなさま、こんにちは。植木です。

前回までの記事では、Maestro を構成する各BPMN要素の使い方、個別要素の実装設定、

そしてプロセスの運用フェーズで押さえるべきポイントをご紹介してきました。

本記事では、これまでの学習内容をベースに、簡易的な業務プロセスを題材として取り上げ、

Maestro で「1 つのプロセス」として実装していく方法をご紹介します。

BPMN要素のリファレンス・個別実装・運用機能の詳細は、以下の記事をご参照ください。

※本記事は、2026年5月時点の情報をもとに作成しております。


目次

1. はじめに - 想定する業務シナリオ

2. プロセスの全体像

3. 開始イベントと顧客カルテ生成

4. 案件タイプ別の事前準備と提案書作成

5. 営業レビュー・商談・フォロー

6. ヒートマップで見るボトルネック分析


1. はじめに - 想定する業務シナリオ

1-1. 本記事のテーマ:エース社員の"仕事の進め方"を組織の資産に

Maestro が実現できるのは、業務の効率化だけではありません。

優秀な人の仕事の進め方そのものを資産化し、

組織の誰もが自然に再現できる状態をつくることも可能です。

本記事では、この活用方法にフォーカスしてご紹介します。

 

1-2. 題材:BtoB 営業サポートプロセス(営業伴走プロセス)

本テーマの題材として、「営業 × 営業事務 × AI × RPA」による営業伴走プロセスを取り上げます。

優秀な営業事務の気遣いや段取りを Maestro で実装し、

「あの人しかできない」を「組織の誰もができる」に変えていくことを目指します。

 

1-3. 想定シナリオの課題

今回の題材では、次のような課題があることを想定します。

  ・営業が商談準備に追われ、顧客対応の質が落ちる
  ・優秀な営業事務の対応が属人化している
  ・新規と既存で準備内容が違うのに、仕組みは共通化できていない
  ・顧客フォローが担当者任せで抜け漏れが発生する

これらはいずれも、単純な「作業の自動化」では解決しきれない、 業務の"進め方"に根ざした課題です。

 

1-4. 従来の RPA/ワークフロー製品では解決できない理由

実はこれらの課題は、従来の RPA やワークフロー製品が苦手としてきた領域でもあります。

それぞれの特徴を整理すると、以下のような構造的な限界が見えてきます。

業務の特徴 従来ツールの限界
開始イベントが複数ある シナリオが開始イベントごとに分散
数日~数ヶ月の長期プロセス 長期待機の管理が苦手
AI・人・RPA が交互に入れ替わる 役割の切替が設計困難
例外対応が業務の本質 例外フローが後付けになりがち

 

だからこそ、人・AI・RPA を一つのプロセスとして束ねられる "Maestro" の出番となります。

 

1-5. エース営業事務の"段取り"をBPMN要素にマッピング

では、Maestro で実際にどう表現していくのか。

まずは、エース営業事務が自然にこなしている"段取り"を一つずつ洗い出し、

それぞれに対応するBPMN要素を当てはめていきます。

この対応づけこそが、"仕事の進め方"をプロセスとして資産化するための第一歩です。

エースの所作 Maestro 要素
問合せを見た瞬間に企業情報を調べる AIエージェント(企業情報リサーチ)
既存顧客の過去取引・担当者交代を先に共有 サービスタスク+AI 要約
案件タイプ別に必要な材料を揃える 排他的ゲートウェイ+タイプ別処理
提案書ドラフトを用意 AIエージェント(提案書生成)
AI 成果物の品質を人がチェック ユーザータスク+ループ構造
営業レビューが滞留したら声かけ タイマー境界(中断なし)
商談後すぐのお礼・議事録整理 AIエージェント(議事録要約)
数日後にさりげなくフォロー タイマー中間イベント

 

これらの要素を、実際の業務の流れに沿って一つのプロセスとして束ねていくと、

どのような全体像になるのか、次のセクションで具体的に見ていきます。

 


2. プロセスの全体像

2-1. BPMN全体図(シンプル版)

※取り組みやすいように、細かい例外処理などは含めていません。

 まずは全体像をつかみながら、Maestroの機能を確認してください。

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2-2. 登場するBPMN要素一覧

  • メッセージ開始イベント/手動開始イベント
  • 並列ゲートウェイ
  • 排他的ゲートウェイ
  • AIエージェント/サービスタスク/コールアクティビティ/ユーザータスク/送信タスク/RPA ワークフロー
  • タイマー境界(中断なし)イベント/タイマー中間イベント
  • 終了イベント

 

2-3. 完成ファイル

本記事で作成するMaestroのプロセス(AIエージェントやRPAなどを含むソリューションファイル)は、

以下よりダウンロードできます。

ご参考にしてください。

※メールやチャットツールへのコネクションは未設定です

 

ファイル名:Maestro_営業サポートプロセス_配布用.uis

 


3. 開始イベントと顧客カルテ生成

※本記事では、文字数や再現性の都合上、AIエージェントやRPAワークフローなどは

 すべてダミーを使用していますので、ご了承ください。

 

3-1. 開始イベント①:新規問合せ(メールのメッセージ開始)

問合せ専用メールボックスへの新着を起点に、プロセス開始

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※補足:メールのフィルター条件も設定可能

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3-2. 開始イベント②:既存顧客(チャットのメッセージ開始)

指定のチャネルにメッセージが投稿されたらプロセス開始

チャットもフィルター条件を設定可能

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3-3. 企業名確認(新規・既存)

AIエージェントでメール本文やチャットの本文から企業名を抽出

新規問合せと既存顧客で開始イベントが異なるため、それぞれのケースに対応させたタスクを作成

※注意:AIエージェントやRPAで使用可能な変数名は英数字のみ

    (変数名に漢字やひらがなを使用するとMaestroのプロセス上で不具合が発生します)

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既存顧客のケースも同様に作成します。

 

3-4. 開始条件に合わせて分岐

新規問合せの場合、既存顧客の場合、例外ケースの場合の、3分岐を作成

ここでは一例として、次の通り分岐条件を設定します。

・新規問合せ:「新規問合せルートの企業名確認エージェント」の出力が空白ではないとき

・既存顧客:「既存顧客ルートの企業名確認エージェント」の出力が空白ではないとき

・例外:条件は空白で「既定のパスにする」にチェックを付ける

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3-5. 新規問合せの場合:企業情報リサーチ

AIエージェントで企業情報をリサーチ

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3-6. 既存顧客の場合:取引履歴確認

RPAで取引履歴を確認

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3-7. 例外の場合:例外処理用のRPAを実行

例外処理用のRPA(ここではテスト用RPA)を実行

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3-8. 顧客カルテ作成

共通フォーマットを作成し、以降はこれを利用する。

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4. 案件タイプ別の事前準備と提案書作成

4-1. 案件タイプによる分岐(今回は一例として3分岐のみ)

案件タイプ 使用要素 準備内容
新規 サービスタスク RPAで会社案内・事例集の準備
追加提案 AIエージェント AIエージェントでクロスセル候補抽出
更新 コールアクティビティ(エージェンティックプロセスを開始して待機) サブプロセスの更新見積作成プロセスを呼び出し

※以下は、「顧客カルテ生成エージェント」が出力した案件タイプが「新規」のとき、という想定です。

 他の分岐条件も同様に設定します。

※分岐先の各アクティビティの詳細設定は、これまでと同じ形式のため省略します。

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4-2. 提案書ドラフト作成

AIエージェントで提案書のドラフトを作成

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4-3. 提案書ドラフトレビュー

AIエージェントが作成したドラフトを担当者が確認・修正

※ユーザータスクでは担当者または担当グループを設定することに注意

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5. 営業レビュー・商談・フォロー

5-1. 営業担当レビューとリマインド

ユーザータスクにタイマー境界(中断なし)イベントを設定し、一定期間処理が進まなければリマインド

ここでは、2日経過後に営業担当者へチャット通知、3日経過後に事務担当者へチャット通知を、

それぞれ設定しています

 

■ユーザータスク(営業担当者レビュー)

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■タイマー境界イベント(中断なし)(2日後にリマインド)

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※3日経過後に事務担当者へ通知するタスクも同様に作成します

 

■送信タスク(teamsのチャネルへ通知)

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5-2. 商談実施待機と議事録登録

商談実施はユーザータスクで待機し、営業が議事録を登録するとタスク完了→次工程へ

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5-3. 商談実施有無による分岐

分岐 処理
商談実施 AIエージェントでお礼メール作成・報告書作成 / RPAで顧客管理システム更新
商談未実施 問合せ履歴のみ登録

 

■商談実施/未実施の分岐(ユーザータスクの出力に合わせて分岐条件を作成)

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■商談実施後の「AIエージェントでお礼メール作成・報告書作成 / RPAで顧客管理システム更新」は並列ゲートウェイで作成

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■商談未実施の場合は「問合せ履歴のみ登録」後、プロセス終了

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5-4. 数日後のフォローアップ

タイマー中間イベントで7日間待機後、フォローアップ プロセスを実行

 

■タイマー中間イベント(7日間待機)

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■コールアクティビティ(フォローアップ プロセスを実行)

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6. ヒートマップで見るボトルネック分析

6-1. ヒートマップで見るべきポイント

  • どのタスクで滞留時間が長いか
  • どの経路が多く通過/あまり通らないか
  • 例外経路(エラー境界・タイマー境界)の発火頻度

 

下図の例では、「事務担当者のレビュー」で滞留していることが分かります。

この場合、たとえば提案書の品質を向上させるためにプロンプトやデータを見直すなど、

改善策を検討することができます。

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6-2. ※参考:よくあるボトルネックと改善の方向性、KPI 設定の一例

ボトルネックの例 改善の方向性
提案書の品質 NG が多発 プロンプトテンプレートの見直し・RAG 強化
営業レビューの滞留 タイマー期間の調整・担当者アサイン見直し
更新経路の遅延 更新見積サブプロセスの最適化
情報不足差戻しが頻発 企業情報リサーチ・CRM 履歴取得の拡充
SLA 超過が頻発 タイマー期間の再設定・AI 性能の見直し

 

■KPI 設定の一例

  • プロセス全体のリードタイム
  • 各タスクの平均所要時間
  • 例外発生率(エラー境界/タイマー境界の発火割合)
  • 商談実施率(実施終了/情報登録終了の比率)

 


まとめ

今回の記事では、取り組みやすさを重視して、プロセスを大幅に簡略化してご紹介しました。

ぜひご自身のプロジェクトの運用ルールに合わせて、応用バージョンを作成してみてください。

Maestro を活用すれば、"作業の自動化"にとどまらず、

"仕事の進め方そのもの"をプロセスとして資産化し、

組織の標準能力に引き上げることができます。

長期・複雑・例外ありの業務であっても、1つのプロセスとして見通しよく扱える点が大きな強みです。

みなさまの業務にあてはめる際の、設計のヒントになりましたら幸いです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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著者紹介

SB C&S株式会社
ICT事業本部 技術本部 第1技術統括部 第2技術部 3課
植木 真