
こんにちは。
前編の続きの後編として、「Microsoft 365 Copilot Coworkで起業できるのか?ーCEO Agentを作って1,000クレジット使って検証してみたー」というテーマで、Microsoft Copilot Coworkで「CEO Agentを作成してみてできることや、実際の消費したクレジットについて簡単にブログにまとめていきたいと思います。
前編をまだ読まれていない方は、是非こちらの前編ブログからご確認いただけると幸いです。
CEO Agentに投資家向け資料を作らせてみる
前編ブログで作成したCEO Agentを作った後からのお話です。
CEO Agentを作成し、次の仕事として、
「資金調達をする際に投資家に見せる資料を作成したい。
その視点で経営レポートと経営改善計画、事業計画書を作成してください」
と依頼しました。
ここからがCoworkらしいところです。
単なるチャット回答ではなく、実際のWord、Excel、PowerPointという成果物まで作成させました。
成果物を作成させるまでに、AI同士でディスカッションや必要な情報を取得したりします。

また、一度作成した資料を投資家目線で資料を確認し、資料をブラッシュアップしてくれます。
しっかり、何に使用したい資料かを明確化させることで、AI自身でゴールを設定し作業してくれます。

ここからは、実際に生成させた資料を交えて解説していきます。
各種生成させたWord、Excel、PowerPointの資料をダウンロードして閲覧できるようになっております。
是非、一度ダウンロードいただき資料を見ていただけると、面白いかもしれません。
成果物① 事業計画書
Wordで生成された事業計画書は10ページあり、エクイティストーリー、会社概要、事業内容、市場と提供価値、実績、経営課題、3か年計画、資金調達計画、組織・採用、KPI、リスクなど、投資家説明に必要な項目が整理されています。
特に面白かったのは、渡した数字を単純に並べるだけではなく、ある程度計算しているところです。
たとえば月商は2026年1月の820万円から7月の1,200万円まで伸びている一方、7月末時点の累計売上は7,000万円。年間目標1.5億円を達成するには残り5か月で月平均1,600万円が必要であり、直近3か月平均の約1.44倍が必要だと分析しています。
また、利益率についても、
「売上だけで20%を達成するなら月商約1,548万円」
「粗利率だけなら74.2%」
「固定費だけなら月504万円」
と改善条件を計算し、最終的には複数施策を組み合わせる案を提示しています。

このあたりは、単純な文章生成というより「データを読ませて経営資料に変換する」用途としてかなり面白いと感じました。また、わかりやすいように表で表してくれます。
一方、外部市場データを渡していないところについては「情報不足」と記載されています。
これは今回、CEO Agent側に「存在しないデータを事実として作らない」というルールを入れていた効果でもあります。
【実際に生成させた事業計画書】
(エンジニアボイス記事付録)ABCコンサル_事業計画書.docx
※無償でダウンロードいただけます
成果物② 経営レポート・改善計画
Excelでは、売上、営業KPI、顧客、財務、組織・AI、改善計画、3か年計画などをまとめた経営レポートを作成させました。
ここで感じたのは、Coworkに任せるなら、文章だけより「元データ→計算→資料」という流れを作った方が価値が出るということです。
特に経営資料の場合、Wordだけ作らせると「それっぽい文章」になりやすい。
一方、
「まずExcelで計算する」
↓
「その結果をWordにする」
↓
「さらにPowerPointにする」
という形にすると、数字の整合性を取りやすくなります。
今回の事業計画書でも、KPIを月次で測定し、別途Excelレポートと同じ計算式を利用する設計になっています。

【実際に生成させた事業計画書】
(エンジニアボイス記事付録)株式会社ABCコンサル 投資家向け経営レポート.xlsx
※無償でダウンロードいただけます
成果物③ 投資家向けPowerPoint
最後に、
「数字とその根拠、アクション計画を示す」
「ミッション・ビジョン・バリューを入れる」
「メイリオ」
「紺色、水色ベース」
「革新的な未来への希望を想起させる」
というかなり具体的なデザインの指示(プロンプト)を出しました。
結果として、11枚の投資家向けピッチ資料が生成されました。
資料では、
受注率21.4% → 30%
粗利率62% → 68%
顧客継続率85% → 90%
という3つの改善ポイントを明示し、1億円を調達して8名を採用、FY2028に売上3.2億円・営業利益率24.3%を目指す、というストーリーまでまとめています。
また、受注率改善によるインパクトについても、
「商談28件 × 受注率差8.6ポイント × 平均案件単価150万円」
という計算根拠まで資料に入っています。
この「数字だけでなく、その数字の根拠までPowerPointに入れる」という部分は、今回かなり良かったところです。
ただし、MVVについては元データが存在しなかったため、Coworkがドラフトとして新しく作っています。資料にも「本資料用のドラフト案」と明記されています。
ここは非常に重要です。
AIが作ったものを、あたかも既存の会社方針だったかのように扱ってはいけません。
「元データに存在する事実」と「AIが提案した内容」を分ける設計は必須だと思います。
【実際に生成させた投資家ピッチ資料】
(エンジニアボイス記事付録)ABCコンサル_投資向け資料.pptx
※無償でダウンロードいただけます
結局、Coworkだけで起業できるのか?
今回試してみた感想としては、「起業そのものはできない。しかし、一人で起業準備する人の仕事量をかなり減らす可能性はある」という評価です。
会社を作るには当然、経営判断、契約、法務、税務、採用、資金調達など、人間や専門家が責任を持つべき仕事があります。
Coworkがそれを代替するものではありません。
一方で、市場調査の整理、事業計画のドラフト、財務モデルのたたき台、経営レポート、投資家向け資料、メール下書き、会議準備など、「経営者が大量の時間を使っている情報整理・資料化」については、かなり相性が良いと感じました。
実際、今回生成した事業計画書では、受注率21.4%、営業利益率7.8%、代表者への業務集中などを経営課題として整理し、優先順位をつけています。
つまり「AI CEO」というより、"経営企画担当+アナリスト+資料作成担当"をAI化するくらいに考えると、かなり現実的です。
気になるクレジット。今回の検証では1,000クレジット消費
今回、CEO Agentの作成から資料生成までを実施した一連の検証では、約1,000 Copilot Creditsを消費しました。
ここは重要なので、Microsoft公式によると、Coworkは使用量ベースで課金され、タスクの価格は、モデル利用、コンテキスト取得、ツール呼び出し、実行時間という4つの要素から計算されます。
さらに管理者向けドキュメントでは、モデル応答、ツール/スキル呼び出し、画像生成、ブラウザータスクなども組織の消費量に含まれると説明されています。
つまり、「Wordを10ページ作ったから○○○クレジット」という単純な料金体系ではありません。
同じ10ページでも、どれだけ調査したか、どのモデルを利用したか、何回ツールを呼んだか、何回修正したかなどによって消費量が変わります。
1,000クレジットはいくら?
Microsoft Learn上で1 Copilot Credit = $0.01と案内されています。
したがって、単純換算すると、1,000 Credits × $0.01 = $10です。
ただし、これは従量課金(Pay-as-you-go)単価で換算した場合です。
MicrosoftはCopilot Creditのキャパシティパックとして、25,000 Copilot Credits / 月 = $200というプランも提供しています。
このパックを全量使い切る前提で単純に割ると、$200 ÷ 25,000 = $0.008 / Creditです。
つまり1,000 Credits分は、単純な容量単価では約$8相当になります。
ただし、パックは25,000 Creditsの月次容量として購入するものなので、「今回のタスクが請求上必ず$8になる」という意味ではありません。契約方式や利用量によって実際の支払額は変わります。
※参考:ライセンス概要
今回の生成したタスクと大体の算出結果
今回確認できた実測値は、一連の検証全体で約1,000 Creditsとだったことです。(1000クレジットしか使えないように設定してありました)
この検証では、
- AI社員共通OSスキルの作成
- CEO Agentスキルの作成
- CEO Agentによる経営分析
- 経営レポート/改善計画のExcel生成
- 事業計画書のWord生成
- Word事業計画書の追加・修正
- 投資家向けPowerPoint生成
- PowerPoint用ビジュアル生成
- 各処理に伴うモデル利用、コンテキスト取得、ツール/スキル呼び出し
などを行っています。
その結果が約1,000 Creditsでした。
したがって、タスクごとにどれくらいのクレジットを消費したかは、プロンプトを投げる際に「タスクを処理するさいに、消費クレジットも同時に示す」ように指示しましたが、「それはできない」とCopilotから返答が来ており、予算を考える際には、「ページ単価」ではなく「ワークフロー単位」で考える方が良いと思いました。
今回のケースなら、CEO Agentを作り、経営データを分析し、Excel・Word・PowerPointまで一式作成する検証→ 実測 約1,000 Creditsという見方です。
従量課金の単価なら約$10相当なので、これを1つの実測サンプルとして蓄積し、同じ社内ワークフローを何度か実行して平均値を見る方が現実的です。
MicrosoftもCustomer Cowork Estimatorを用意しており、管理者はMicrosoft 365管理センターのCost Managementからユーザー、グループ、サービスなどの消費量を確認できます。
Coworkの設定方法
利用前に管理者側の設定も必要です。
Microsoft公式情報では、Coworkを利用するユーザーにはMicrosoft 365 Copilotライセンスが必要です。
さらにCoworkは使用量ベース課金の対象なので、管理者がMicrosoft 365管理センターで利用設定を行います。
現在の公式手順では、
Microsoft 365 admin center
→ Copilot
→ Cost Management
から使用量ベース課金を設定し、支払い方法や月間上限、ユーザー単位の上限、アラートなどを設定できます。
Coworkをユーザーに表示させるDiscoverabilityの設定も管理できます。
利用可能になったらユーザー側では、
Microsoft 365 Copilotを開く
→ Chat横の「Cowork」を選択
→ 自然言語で仕事を依頼
という流れです。

Coworkを使うポイント
今回の検証を通じて、Coworkに向いている仕事と、あまり丸投げしない方がいい仕事が見えてきました。
特に向いていると感じたのは、「入力データがある程度決まっていて、複数ステップを経て、最後に成果物を作る仕事」です。
たとえば、
営業データを確認
→ 課題分析
→ Excelで計算
→ Wordで月次報告書
→ PowerPointで経営会議資料
という仕事です。
これはCoworkとの相性は良いと思います。
逆に、
「新規事業が成功するか判断して」
「この会社に投資すべきか決めて」
「採用する人を決めて」
といった責任を伴う最終判断を丸投げする使い方は避けるべきです。
Coworkはユーザーの権限の範囲で動作し、メール送信、Teams投稿、会議設定などのセンシティブな操作については承認ダイアログを提示する設計になっています。
「自律的に動くから人間が不要」ではなく、AIが作業を進め、人間が重要な判断ポイントを握るという設計が現実的だと思います。
クレジットを無駄にしないために
Coworkを本格利用するなら、プロンプトの上手さ以上に仕事の設計が重要になりそうです。
今回の経験からは、最初に元データを整理して渡す、成果物を明確にする、途中で何度も方向転換しない、同じルールはカスタムスキル化する、Word・Excel・PowerPointそれぞれの役割を決める、といった工夫が有効だと感じました。
特に、
「いい感じの資料を作って」
↓
修正
↓
また修正
↓
別の資料も作成
↓
数字を変更
↓
もう一度全部生成
という進め方は、当然ながらモデル利用やツール呼び出しが増えます。
(クレジットもその分消費します)
最初から、入力 → 分析 → 計算 → Word → PowerPointという完成形を設計しておく方が効率的です。
企業利用では管理者側で月間予算、ユーザー上限、アラートなども設定できます。Microsoft 365管理センターのCost Managementでは、ユーザー、グループ、サービス単位などでCopilot Creditsの利用状況を確認できます。
まず小規模なPoCを行い、「この業務を1回実行すると平均何Creditsか」を自社で測るのが一番確実だと思います。
今回使ってみて感じたこと
今回一番印象に残ったのは、PowerPointが作れることでも、Wordが作れることでもありませんでした。
「仕事の進め方をスキルとして保存できる」ことです。
生成AIはこれまで、「良いプロンプトを書く」という使い方が中心でした。
でも企業の仕事では、本当に重要なのはプロンプトそのものではなく、「うちの会社では、この仕事をどう進めるのか」という業務プロセスです。
CEO Agentなら、
何の数字を見るのか。
何を異常と判断するのか。
何を優先するのか。
何を人間に確認するのか。
最終的にどんな資料を出すのか。
これらをスキルに落としていく。
そう考えるとCoworkのスキルは、単なる「プロンプト保存機能」というより、企業の仕事の型をAIが実行できる形に変換する入口になり得ると感じました。
まとめ:Coworkで起業はできない。でも「一人会社の人数」は増やせそう
今回の問いは、「Coworkを使って起業できるのか?」でした。
答えは、
Coworkだけで会社経営を完結させることはできない。
でも、起業家が一人で抱えていた仕事を、かなりAI側へ移せる可能性はある。
です。
今回、CEO Agentを作り、
経営分析
→ 経営改善計画
→ Excelレポート
→ Word事業計画書
→ PowerPoint投資家資料
まで作成しました。
実際に生成された事業計画書では、確認できない外部市場情報を「情報不足」としながら、社内データをもとに売上、利益、受注率、採用、資金使途まで整理できています。
投資家向け資料も、単なる会社紹介ではなく、1億円の資金使途を採用4,800万円、マーケティング1,800万円、AI基盤1,600万円、CS体制1,000万円、運転資金800万円と整理するところまで作れました。
これらを含む今回の一連の検証で、実測は約1,000 Copilot Creditsでした。
ここから先に重要になるのは、「AIに何を質問するか」ではなく、「自社のどの仕事をスキルにするか」だと思います。
営業Agent、採用Agent、マーケティングAgent、経理Agent、CEO Agent。
こうしたAI社員を増やしていったとき、一人あるいは少人数の会社がどこまで仕事を回せるようになるのか。
Coworkは、その実験をかなり現実的に始められるところまで来ています。
ただし、出力をそのまま正解と考えないこと。
数字の根拠を確認すること。
重要な意思決定は人間が行うこと。
そしてクレジット消費を計測すること。
この4つは、実際に使ううえで外せないポイントだと思います。
今回の検証では「CEO Agent」を作りましたが、次は営業AgentやマーケティングAgentを作成させたり、Coworkではどのようなことができるのかを試してみたいところです。
著者紹介
SB C&S株式会社
ICT事業本部 技術本部 技術統括部 第2技術部 2課
近藤 泰介 -Taisuke Kondoh-
SB C&S株式会社に入社。
主にデジタルワークスペース実現のためのソリューション展開、案件支援、先進事例の獲得、協働パートナーの立ち上げを経験。
現在はDevOps/DevSecOps・AI領域の商材のプリセールスを行いながら、新興技術調査、新興企業/商材の目利きを行う。
また、Microsoftを中心としたビジネス領域の調査・プリセールスも行う。
vExpert 2023、vExpert 2024、vExpert 2025 受賞
