この投稿では、HPE SimpliVityに内蔵されているバックアップ機能の特徴について紹介いたします。
SimpliVity の概要については、以前の投稿「HPE SimpliVityとは」もあわせてご参照ください。
SimpliVityのバックアップ機能とは
SimpliVity には、製品に標準機能として組み込まれたバックアップ機能があります。ひとことで「バックアップ」といっても色々な取得方法があり、その利用ケースも異なります。SimpliVity のバックアップ機能は、従来の OS イメージ バックアップにあたるものです。バックアップは仮想マシン単位であり、取得すると、仮想マシンのその時点のメタデータを保持します。そして、リストアも基本的には仮想マシン単位で実行します。バックアップはメタデータのコピーにあたる処理のみが実施されるので、一瞬(数秒)で完了します。
つまり、バックアップ取得時点での「仮想マシンのスナップショット」のようなものを HCI 内部に作成して、いつでもそこに戻せるようにするのが、SimpliVity の機能によるバックアップといえます。
なお、SimpliVity のメーカー/製品としては「スナップショット」という表現はせず、たんに「フルバックアップ」と表現しています。そして、ここでは「スナップショットのような」という表現はしたものの、SimpliVity で利用されるハイパーバイザー側(おもに VMware ESXi)がもつ「スナップショット」機能とも仕組みが異なります。
SimpliVity のバックアップの仕組みは、バックアップ対象全体のデータではなくメタデータのみをコピーするものであり、元データの全体をコピー(冗長化)するものではありません。バックアップデータの保護については、SimpliVity ならではの RAIN+RAID による冗長化に依存しています。
SimpliVity によるバックアップのカバー範囲
ここまでの説明をふまえて、SimpliVity のバックアップ機能のカバー範囲について考えてみます。
SimpliVity のバックアップ機能は、あくまで「仮想マシン」を対象としています。仮想マシンにインストールされているゲスト OS のデータはバックアップ対象となりますが、仮想マシンが起動する、SimpliVity 自体(仮想化基盤)や、SimpliVity の外部に配置されたデータ(仮想マシンから利用する共有フォルダのデータなど)については、バックアップ対象外であり、別途データ保護の検討が必要となります。
SimpliVity によるバックアップのユースケースとしては、仮想マシン レベルの障害におけるデータ リストアが考えられます。たとえば、仮想マシンの誤削除、ゲスト OS のデータ破損、ユーザーの操作ミスによるファイルの誤削除といった状況での、仮想マシンやその中のファイルの復旧といったケースです。
(バックアップ機能の対象外となるケースについては、本稿の最後にもう少し補足いたします。)
バックアップの設定・取得方法
ここからは、SimpliVity の実機スクリーンショットによるイメージを交えながら、SimpliVity のバックアップ機能をご紹介します。
なお、ソフトウェアは本稿執筆時点での最新版(SimpliVity OmniStack 4.0、vSphere 6.7) を利用しています。また、紙面の都合上すべての手順のスクリーンショットではなく、特徴的なものをピックアップしています。
SimpliVity のバックアップ機能は、vCenter Server の vSphere Client(HTML5 の vSphere Client)から操作することになります。当然ながら Linux 版の vCenter である「vCenter Server Appliance」にも対応しています。vCenter から SimpliVity の機能を利用するためのプラグインは、SimpliVity のセットアップの時点で vCenter にインストールされるものなので、バックアップのためだけの追加ソフトウェア インストールは不要です。
SimpliVity のバックアップでは、「バックアップ ポリシー」を作成し、仮想マシンにセットします。
バックアップ ポリシーとは、SimpliVity 独自の設定要素であり、バックアップ格納先(ローカルの SimpliVity か、リモートか)、スケジュール、保存世代といったバックアップ設定を定義するものです。
ここからのバックアップ ポリシーやバックアップの設定についても、他の vSphere や SimpliVity の機能と同様に、基本的にすべて vSphere Client から操作します。
SimpliVity上の仮想マシンには、必ずバックアップ ポリシーを設定しておく必要があります。
ちなみに、仮に「バックアップが必要ない」という仮想マシンがあるとします。その場合にも、バックアップ スケジュールを設定していないポリシーを作成して、割り当てておく必要があります。
SimpliVity ではない仮想化基盤と比較すると、必ずバックアップ ポリシーを指定しなくてはならない手間は増えますが、その代わりにバックアップ取得もれを防止しやすくなっています。また、SimpliVity によるデータストアには、デフォルトのバックアップ ポリシーを設定しておくことができるので、運用手順は簡素化できるはずです。
バックアップの取得は、バックアップ ポリシーに設定したスケジュールにより、自動的に実行されます。
また、手動でのバックアップは、対象の仮想マシンの右クリックから表示できる「Back Up Virtual Machine」メニューから取得できます。
バックアップの確認とリストア
取得されたバックアップ データは、仮想マシン、もしくはクラスタの「Search Backups」から確認できます。たとえば、誤って仮想マシンを削除してしまった場合などには、クラスタからバックアップ データを探すことができます。
「Search Backups」メニューでは、スケジュールによる自動取得、または手動取得したバックアップが一覧表示されます。
下記の例では、vm01 という仮想マシンが、スケジュールによって定期バックアップされている様子がわかります。
バックアップを仮想マシンからリストアする場合には、この Search Backups 画面で対象のバックアップを選択して、「Restore Virtual Machine」を実行します。現在の仮想マシンを上書きするか、新しい仮想マシンとしてリストアするかも選択可能です。
SimpliVity のバックアップ方式は、いわゆる「フル バックアップ」であり、選択したバックアップのみのリストアで(複数のバックアップを取得順にリストアするような手順なしで)、仮想マシンのバックアップを完了することができます。なお、今回紹介したリストアは「仮想マシン単位」のものでしたが、SimpliVity の機能でファイル単位のリストアも可能です。
バックアップ機能のカバー範囲外となるものは?
最後に、SimpliVity のバックアップ機能にかかわる注意点をお伝えします。
SimpliVity のバックアップは、仮想マシンのバックアップ・リストアをするうえで便利な機能ですが、その一方で、バックアップの対象とならないものについて注意が必要です。
ここまでに説明したとおり、SimpliVity のバックアップは、HCIそのもの(仮想化基盤自体)をバックアップするものではありません。SimpliVity 自体が RAID・RAIN によって冗長化される高信頼性の製品ではありますが、システムの要件によっては HCI 全体の障害にも備える必要があります。たとえば「SimpliVityフェデレーション単位の障害」のようなケースでは、まずは SimpliVity の仮想化基盤自体を復旧してから、仮想マシンのリストアをする必要があります。このようなケースの対策としては、別途バックアップ先 SimpliVity クラスタ(SimpliVity のバックアップ機能によるリモートバックアップ先として利用する)の用意や、他のバックアップソリューション(たとえば HPE StoreOnce や、他社製バックアップ ソフトウェアなど)で SimpliVity 外部のサーバーやストレージにバックアップを取得しておくこともあります。
SmpliVity の外部にあるデータも、当然ながらバックアップの対象外となります。たとえば、「仮想マシンから利用している共有フォルダ上のデータ」の破損や誤削除をしたとしても、そのデータは SimpliVity の外部にあるものなので、SimpliVity バックアップの対象外です。このような外部配置のデータについては、従来どおり、共有フォルダ(を提供しているサーバーやストレージ)側でバックアップを検討する必要があります。
SimpliVity のバックアップ機能については、運用設計によってはデフォルト バックアップ ポリシーなどの利用で無意識でも利用できるものですが、特徴を理解することでより確実なバックアップ実装ができるのではないでしょうか。
今後も、SimpliVity についての情報をお伝えできればと思います。
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著者紹介
SB C&S株式会社
ICT事業本部 ICT事業戦略・技術本部 技術統括部 第1技術部
渡辺 剛 - Go Watanabe -
VMware vExpert
Nutanix Technology Champion