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1筐体から構成可能!NetApp HCIの2ストレージノード構成!! 第1回〜構成と設定方法〜

ストレージ / HCI
2021.01.19

皆さん、こんにちは
SB C&S株式会社 技術担当の小川です。

NetApp HCIがリリースされて約2年半が経ちました。これまでストレージチャンネルでNetApp HCIのさまざまな情報をブログで紹介してきましたが、情報を公開し始めてから今日に至るまでさまざまなバージョンアップが成されています。そしてこの度Ver1.8がリリースされ、これまでデプロイに必要な最小構成としてコンピューティングノードが2台、ストレージノード4台必要だったところが、今回のリリースよりストレージノードが2台あればデプロイが可能になりました。これにより、これまで最低でも2筐体必要だったのが1筐体でHCI環境を実現することができるようになりました。

今回はこのNetApp HCIの2ストレージノード構成と設定方法について解説します。

 

 2ストレージノード構成イメージ             

 

先にも述べたようにこれまでのNetApp HCIの最小構成ではコンピューティングノードが2台、ストレージノード4台必要であったためH410シリーズの場合は以下の図のように1つの筐体にコンピューティングノード1台、ストレージノード2台搭載し2筐体で構成しなければNetApp Deployment Engine(以降NDE)でのデプロイが出来ませんでした。

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Ver1.8からは1つの筐体にコンピューティングノード2台、ストレージノード2台搭載した構成でもNDEでのデプロイが可能となりました。

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 2ストレージノード構成におけるマスターノード選出の仕組み             

 

これまでの最小構成として4つのストレージノードが必要な理由は、システムとしての「耐障害性」への対応という点です。NetApp HCIのストレージノードは容量やパフォーマンスを向上させる場合、ストレージノードを追加することで容量、パフォーマンスが向上するスケールアウトの仕組みを採用したアーキテクチャです。ストレージノード間はEthernetで接続されクラスタを構成し1つのストレージシステムとして動作します。そのためネットワークに障害が発生した際にスプリットブレイン状態になることも懸念されます。

NetApp HCIではこのスプリットブレイン状態でもサービスが継続できるように「マスターノード」を1つ選出しマスターノードが存在するネットワーク側をサービスが継続するクラスタとすることで、障害時でも継続して運用ができるアーキテクチャとなっています。
そうすると「2ストレージノード構成では耐障害性が保てないのでは?」と疑問に思う方もいるかと思います。

ここではマスターノード選出の仕組みを元に2ストレージノード構成でどのように耐障害性を実現しているか説明します。

▶4ストレージノード構成におけるマスターノード選出のおさらい

NetApp HCIのストレージノードをセットアップしストレージクラスタが構成されると管理Web UIなどを提供するマスターノードが選出されます。マスターノードを選出するためには『Ensembleノード』というマスターノード選出機能を持つノードが各ノードから選出されます。これまでの最小構成である4ノード構成では3ノードがEnsembleノードに選出されます。

 

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4ストレージノード構成では、ストレージノードが2つずつのスプリットブレインの状態になってもEnsembleノードが多いネットワーク環境でマスターノードが選出される仕組みになっています。

 

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▶2ストレージノード構成にけるマスターノードの選出

NetApp HCIのストレージノードは4つのストレージノードがあることで耐障害性を実現しているアーキテクチャです。そのため、そのまま2つのストレージノード減らすと耐障害性を実現することが出来ません。

これを解決するために2ストレージノード構成ではコンピューティングノードのハイパーバイザー上に『Witnessノード』という仮想アプライアンスが構成されます。WitnessノードはNetApp HCIの最小構成時に各コンピューティングノードに1台ずつ、合計2台構成されます。マスターノードは必ずストレージノードから選出されます。

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このWitnessノードの片方がEnsembleとなりスプリットブレインの状態になった場合でもマスターノードが選出されサービスを継続することが可能です。

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他社製品でもWitnessの役割を持つアプライアンスを用いて2ノード構成が可能と謳う製品もありますが、スプリットブレイン状態になることを考慮するとコンピューティングの役割を持つサーバーの内部にWitnessを構成できないため、結果として別途サーバーを用意する製品もあります。それに対しNetApp HCIでは別途サーバーを用意せずにコンピューティングノード内にWitnessノードを展開するため1つの筐体でHCI環境を実現することが可能なこともメリットの1つです。

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▶2ノードストレージ構成から3ストレージノード構成への変更

ストレージノードを1台追加し3ストレージ構成になった場合、Ensembleノードは追加したストレージノードに変わります。ただし最小構成を維持するためWitness ノードは必要です。

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▶3ストレージノード構成から4ストレージノード構成への変更

ストレージノードが4台になった場合はWitness ノードを削除する必要があります。

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 NDEによる2ストレージノード構成のデプロイ             

 

NetApp HCIは「NetApp Deployment Engine(以降NDE)」を用いてデプロイを実施します。4ストレージノードで実施するNDEと2ストレージノード以上で実施するNDEの相違点は以下の2つです。 

  • NDE実行時に必要なIPアドレス
  • 2ストレージノード構成に伴うNDEの設定項目

なお、Ver1.3.1を用いた4ストレージノード構成でのNDEの実施方法に関しては『NetApp HCI 第3回 NDEによるNetApp HCI環境のデプロイ』をご参照下さい。

▶NDE実行時に必要なIPアドレス

2ストレージノード構成で使用するIPアドレスは4ストレージノード構成とほぼ変わりませんが物理サーバーを管理するためのIPMIはWitness ノードにはないためIPMI用のIPアドレスが2台分削減されます。

以前公開したブログ、『NetApp HCI 第2回 NDEの事前準備その2:ノードの事前設定』で紹介したVer1.3.1の段階ではmNodeにはiSCSI用のIPアドレスは不要でしたが、Ver1.8である現在はmNodeにもiSCSI用のIPアドレスが1つ必要となります。

また、Ver1.3.1ではNDEでNetApp HCIのコンピュートノード上に特定バージョンのONTAP Selectをデプロイすることが可能でしたがVer1.8である現在はONTAP Selectのデプロイがなくなりました。そのため別途任意のバージョンのONTAP Selectのデプロイが可能です。NDEの段階ではONTAP SelectのIPアドレスの準備は不要です。

必要なIPアドレスとパラメータシート例を以下に示します。

 

【NDE実行に必要な仮IPアドレス】

ストレージノード(1台のみ)

  • ストレージノードの1Gb Ethernet(マネジメントネットワーク) ×1

ストレージノード1台に仮IPアドレスを設定する際はデフォルトゲートウェイの設定も必要となります。また、DNSの設定はオプションとなります。

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【本番環境のIPアドレス】

ストレージノード (1台あたり)

  • IPMI ×1
  • マネジメントIPアドレス ×1
  • iSCSI IPアドレス ×1

コンピューティングノード (1台あたり)

  • IPMI ×1
  • マネジメントIPアドレス ×1
  • iSCSI-A IPアドレス ×1
  • iSCSI-B IPアドレス ×1

Witnessノード (1台あたり)

  • マネジメントIPアドレス ×1
  • iSCSI IPアドレス ×1

ストレージ クラスタ(1クラスタあたり)

  • Cluster MVIP ×1
  • Cluster SVIP ×1
  • Management node IPアドレス ×1

その他

  • vCenter ServerのIPアドレス ×1
    ⇒DNSで名前解決できる場合はFQDNでも可
  • プライマリDNSサーバー ×1
  • セカンダリDNSサーバー ×1
  • プライマリNTPサーバー ×1
    ⇒DNSで名前解決できる場合はFQDNでも可
  • セカンダリNTPサーバー ×1
    ⇒DNSで名前解決できる場合はFQDNでも可

 

【パラメータシートの例】

ストレージノードの仮IPアドレス

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各ノードのIPアドレス

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ストレージクラスタのIPアドレス

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mNodeのIPアドレス

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vCenter ServerのIPアドレス

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DNS、NTPサーバーのIPアドレス

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2ストレージノード構成に伴うNDEの設定項目

2ストレージノード構成でNDEを実行した際に設定画面は大きく変わることはないですが、以下の2点が変更されています。

Inventory画面で2ストレージノードを選択した場合でも次の設定項目に進める

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Network Settingsの画面にWitnessノード設定項目が追加

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2ストレージノード構成についての説明は以上となりますが、2ノードストレージ構成になったからといって特別なハードの追加や特別な設定がなく簡単に環境を実現出来ます。さらに2ストレージノードであっても高い耐障害性が実現していることがご理解いただけたかと思います。 

次回は2ストレージノード構成でNDE実行後のVMware vSphere環境について紹介します。

 

 

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著者紹介

SB C&S株式会社
技術統括部 第1技術部 2課
小川 正一(VMware vExpert)