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NetApp AFF C190で考えるファイルサーバの設計 〜その5〜

ストレージ / HCI
2021.08.17

 

みなさん、こんにちは
SB C&S 技術担当の小川です。
 
これまでストレージの設計、容量設計、ネットワークの設計、ファイルサーバ数(SVM数)の設計、共有の設計、クォータの設計など設計に必要な様々な情報を紹介しました。
 
 
今回は紹介した情報をもとにAFF C190を用いたファイルサーバの設計例を紹介します。
 
 ファイルサーバの要件             
 
 
これまでの情報を踏まえファイルサーバの設計例を紹介します。ファイルサーバを設計するにあたり要件を整理する必要があります。
以下の要件は既存でファイルサーバを2台運用しており、それをAFF C190へリプレイスすることを想定した例になります。
 

【ファイルサーバの要件】

・技術部門、営業部門がそれぞれ利用していたファイルサーバ全2台をAFF C190へ移行
・正常運用時はハードウェアの最大性能での運用ならびにアクセスの負荷分散を行う
・障害が発生した場合は縮退構成を許容する
・技術部門、営業部門それぞれに2つの部署がある
・ファイルサーバ名は以下の2つを利用する
 ▶ tech01.svm.com
 ▶ sales01.svm.com
・既存のファイルサーバと同じ方法でアクセス(同じUNCパス)
 ▶アクセスパスの例
  ¥¥tech01.svm.com¥tech_user01
  ¥¥sales01.svm.com¥sales_user01
・必要全体容量は今後の容量も考慮し15TBを希望
・事前検証では容量が1/3まで削減できることを確認
・2台のファイルサーバは同一容量を希望
・アクセスするクライアントは特定のネットワークからのアクセスが多い
・2台のファイルサーバのIPアドレスは異なるサブネットに属している
・プライマリDNSサーバーと同じドメインのDNSゾーンのファイルサーバ名を設定している
・ユーザ用の共有を作成する
・共有を提供するユーザー数は3000人
・ファイルサーバを利用する2つの部門のユーザー数はほぼ同数
・ユーザ用の共有フォルダは部署フォルダの配下に配置する
・ユーザ用の共有フォルダは該当するユーザのみが読み書き可能
・各部署のフォルダには1TB割り当て
・部署配下のユーザからのデータ書き込みは100GBまでに制限
・レプリケーションは設定しないがSnapshotは使用する
・Snapshotは使用するが1日の変更差分はわからない
・Snapshotを使用したリストアは普段はユーザ毎に行うが、有事の際は部署単位でリストアする
 
 ファイルサーバの設計例             


ここから「コントローラの耐障害性の設計」、「容量の設計」、「ネットワークの設計」、「SVMの設計」、「共有の設計」、「Data LIFと物理ネットワークの紐付け」のそれぞれの設計例を紹介します。

【コントローラの耐障害性の設計】

まずはコントローラの耐障害性を考えます。ONTAPのHA構成は「Active-Active」か「Active-Standby」のどちらかを選択します。要件に「正常運用時はハードウェアの最大性能での運用ならびにアクセスの負荷分散を行う」、「障害が発生した場合は縮退構成を許容する」とあるので、正常時にすべてのコントローラを使用し、障害時には片方のコントローラで動作する「Active-Active構成」を選択します。
 
Active-Active構成.png
 

【容量の設計】

続いて必要な容量を考えます。「必要全体容量は今後の容量も考慮し15TB」、「事前検証では容量が1/3まで削減」という要件から必要な容量は5TBになります。
この容量からSnapshot容量とパフォーマンス維持のための空き容量を考えるのですが、Snapshotの1日の差分がわからないとのことなので20%確保することにします。空き容量は全体の20%の容量なので計算すると以下になります。
 
必要な容量 = 5TB(使用容量) + 1TB(Snapshot容量) + 1.5TB(空き容量) = 7.5TB
 
上記容量からSSDの搭載数を考えると選択できる構成は実効容量が11.37TiBの18本構成となります。なお、AFF C190で購入可能な構成で記載されている実効容量はRoot Aggregateの容量を差し引いた容量となっているため別途Root Aggregateの容量設計は不要です。
 
構成の選択.png
 
 
08_SSD本数.png
 
「技術部門、営業部門がそれぞれ利用していたファイルサーバ全2台をAFF C190へ移行」、「2台のファイルサーバは同一容量」という要件からそれぞれのコントローラにひも付く5.5TBのData Aggregateを2つ作成します。
 
Data_Aggregate.png
 

【ネットワークの設計】

次に物理ネットワークについて考えます。今回の例ではファイルサーバ以外の用途(VMware用のデータストアなど)の要件がないことからすべての物理ネットワークポートを用いた負荷分散を行うため、コントローラの物理ネットワークポートを1つのリンクアグリゲーショングループにまとめます。そのリンクアグリゲーショングループにVLANインタフェースを作成します。VLANは「2台のファイルサーバのIPアドレスは異なるサブネット」という要件からコントローラごとに2つずつ作成します。
リンクアグリゲーションの設定はマルチモードで設定します。スタティックかダイナミック(LACP)のどちらにするかは接続するスイッチの設定に合わせて下さい。
リンクアグリゲーションのバランシングポリシーは「アクセスするクライアントは特定のネットワークからのアクセスが多い」ということとファイルサーバとしてAFF C190を利用するため特定のポート番号でのアクセスになるという2つの観点からリンクアグリゲーショングループ内のすべての物理ポートで均等に負荷分散を実現するためにシーケンシャル(ラウンドロビン)を選択します。
 
作成したリンクアグリゲーショングループとVLANインタフェースはLIFのフェイルオーバーのためにIPspaceとブロードキャストドメインを設定します。今回の例では以下のようにひも付けます。
 
 ポート
 ブロードキャストドメイン
 IPpace
・コントローラAのリンクアグリゲーショングループ
・コントローラBのリンクアグリゲーショングループ
・ブロードキャストドメイン A
・IPspace A
・コントローラAのVLAN 10
・コントローラBのVLAN 10
・ブロードキャストドメイン B
・IPspace B
・コントローラAのVLAN 20
・コントローラBのVLAN 20
・ブロードキャストドメイン C
・IPspace C

 
物理ネットワーク.png
 

【SVMの設計】

次にSVMについて考えます。「技術部門、営業部門がそれぞれ利用していたファイルサーバ全2台をAFF C190へ移行」、「既存のファイルサーバと同じ方法でアクセス(同じUNCパス)」という要件から必要なファイルサーバが2台なのでSVMを2つ作成します。SVM 1にはData Aggregate 1を使用しSVM 2にはData Aggregate 2を使用します。なお、SVMは特定のコントローラにひもづくのではなくクラスタ全体に定義されます。
 
Data_AggregateをSVMにひも付け.png
 

【共有の設計】

次に共有の設計を考えます。
まずは要件に「ユーザ用の共有フォルダは部署フォルダの配下に配置する」、「各部署のフォルダには1TB割り当て」とあるので、部署ごとに1TBの容量のFlexVolを作成します。ただし、SnapshotはFlexVolの中に格納されるのでSnapshotリザーブ20%を加味し実際に作成するFlexVolの容量は1.25TBとなります。1つのData Aggregateの容量が5.5TBに対して割り当てるFlexVolの容量は2.5TBとなるためData Aggregateの容量が3TB余りますが、余りの容量は使用量が増えたときにFlexVolに追加します。FlexVolに容量を追加する際は業務を止めることなく追加することが可能です。
続いて要件に「ユーザ用の共有を作成する」、「共有を提供するユーザー数は3000人」、「ファイルサーバを利用する2つの部門のユーザー数はほぼ同数」とありますがFlexVolの最大数(コントローラあたり1000個)を超えた共有を作る必要があるためFlexVolでは実現できません。そのためFlexVolの配下にユーザ毎のqtreeを作成し、それぞれのqtreeに共有を設定します。また、「部署配下のユーザからのデータ書き込みは100GBまでに制限」とあることからユーザ毎に作成したqtreeすべてに対して100GBのクォータを設定します。
さらに「ユーザ用の共有フォルダは該当するユーザのみが読み書き可能」というアクセス権に関する要件から、それぞれの共有フォルダは該当のユーザに対する読み書きのアクセス権を設定します。
データ保護の要件として「Snapshotを使用したリストアは普段はユーザ毎に行うが、有事の際は部署単位で毎にリストア」とあるので、qtreeが格納されたFlexVolにSnapshotの設定を行えば、普段はユーザが自分自身のWindowsクライアントのボリュームから「以前のバージョン」を開きコピー・アンド・ペーストでリストアし、有事の際はシステム管理者がSnapRestoreを使ってFlexVolのリストアが可能です。
 
共有の設計.png
 

【Data LIFと物理ネットワークの紐付け】

最後にSVMのData LIFと物理ネットワークをひも付けます。SVM作成時にData LIFが2つ作成されるのでSVM1のData LIFはVLAN 10のVALNインタフェースがひも付くIPspaceにひも付け、SVM2のData LIFはVLAN 20のVALNインタフェースがひも付くIPspaceにひも付けます。
  
また、「プライマリDNSサーバーと同じドメインのDNSゾーンのファイルサーバ名」という要件からONTAP側での名前解決でどのData LIFを使用するか選択させるために、DNSサーバにData LIFを指定したDNS委任を設定しておきます。
 
最終形態.png
 
今回の設計内容をまとめると以下のようになります。
 
要件 設計例
コントローラの耐障害性 Active-Active構成
容量 18本のSSD構成 / 11.37TiB
Data Aggregate 2つ作成 / 各5.5TiB
2つのコントローラそれぞれに1つずつひもづけ
物理ネットワークポート コントローラごとにリンクアグリゲーショングループを1つ作成
データアクセス用のネットワークポートをリンクアグリゲーショングループに追加
リンクアグリゲーションモード マルチモード
リンクアグリゲーションのバランシングポリシー スタティック (ラウンドロビン)
VLAN それぞれのファイルサーバアクセス用にVLANを作成
リンクアグリゲーショングループそれぞれにVLANインタフェースを作成
・VLAN10
・VLAN20
ファイルサーバ数 SVMを2つでファイルサーバを作成
ファイルサーバ名 tech01.svm.com
sales01.svm.com
共有 部署ごとにFlexVolを作成
部署のFlexVol配下にユーザ用のqtreeを作成
ユーザがアクセスするqtreeに共有を設定
(UNCパス) ¥¥ファイルサーバ名\qtreeの共有名
データLIFと物理ポートのひも付け SVMの2つのデータLIFをそれぞれのリンクアグリゲーショングループに設定したVLANインタフェースにひも付け
 
ユーザアクセスイメージ.png 
 
以上で要件に合わせた設計例は完了です。
 
 
これまで全5回にわたりAFF C190を用いたファイルサーバの設計に役立つ情報を紹介しました。本ブログの情報はAFF C190だけでなく他のONTAP製品にも流用できます。他の製品ではハードウェア構成が決め打ちでないためSSDの本数をディスクシェルフを用いて増やすなど、より柔軟の構成が可能になっています。手軽に始めるためAFF C190から始めるも良し、お客様の要件をより細かく解決するために他のモデルで始めるも良し、皆様の環境に合わせてご提案いただければと思います。
 
 

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著者紹介

SB C&S株式会社
技術統括部 第1技術部 2課
小川 正一(VMware vExpert)