本ブログ記事では、2022年8月末に開催されたVMware Explore 2022 USにて発表されVMware vSphere 8 / vSAN 8についてご紹介します。
※可能な限り正確な情報を掲載するよう努めていますが、必ずしも正確性を保証するものではありません。また今後のリリースを予定していると発表されている製品・機能の紹介も含んでおり、今後内容が変更される可能性もありますのであらかじめご了承ください。
vSphere 8 アップデート情報からのピックアップ
まずvSphere 8のアップデート情報からご紹介していきます。主に4つの観点でのアップデートがありました。
本記事では、このうち次の3つの機能をピックアップしてご紹介いたします。
- オンプレ環境とクラウド環境を1つのコンソールから統合管理できるCloud Console
- ワークロードのパフォーマンスを向上させるvSphere Distributed Services Engine
- 運用効率を向上させるvSphere Lifecycle Manager
DevOps関連については、vSphere with Tanzuと関係する「VMware Tanzu Kubernetes Grid 2.0」の提供が発表されました。詳細は別記事で投稿しておりますのでこちらをご参照ください。
Cloud Console
2022年6月に、既存のオンプレミスvSphere環境の管理をSaaS提供のコンソールによる管理に置き換えるものとして「VMware vSphere+」が発表されていました。Cloud Consoleの発表はそれを具体的に説明するものになります。
vSphere+は、Cloud Consoleという一つの管理コンソールからクラウドからオンプレミスまで複数の環境をオペレーションとライフサイクル含め、統合管理できる製品です。また、今回のイベントで新しく発表されたvSphere 8もvSphere+のCloud Consoleから管理、運用することができると紹介されました。
Cloud ConsoleではAdmin Services、Add-On Cloud Services、Developer Servicesの3つのサービスが提供されています。
Admin Servicesは、vSphere+に接続されたインフラ全体を簡単に管理できるようにするためのものです。複数のvCenter Serverの情報を取得し、vCenterのアップデートや、仮想マシンの展開ができるため、複数環境の管理が容易になります。
Add-On Cloud Servicesは、各環境のリソースや容量を可視化するサービスです。また、VMware Cloud Disaster Recoveryと連携し、DRの際に従量課金制の環境に対してコストを最適化できます。
Developer Servicesは、開発者向けのものでDevOps関連のサービスです。VMware Tanzuと連携します。
vSphere Distributed Services Engine
2020年に開催されたVMworld 2020の時点で、5G対応やAI/機械学習などの高いワークロードが必要とされる次世代アプリケーションにvSphereが対応する事を主なメッセージとして「Project Monterey」が発表されておりました。そして今回、その開発の成果がvSphere Distributed Services EngineとしてvSphere 8に実装されたことが発表されました。
vSphere Distributed Services Engineでは、CPUのワークロードの一部をオフロード処理するものとしてGPUに加え新たにDPUが利用できるようになります。
DPUはデータ プロセッシング ユニットと呼ばれるデータを処理できるチップでNetwork Interface Cardに搭載されており、CPUやGPUと同様にハードウェア コンポーネントにあたります。具体的には、DPUにはESXiの追加インスタンスを直接インストールする必要があり、物理ホストとDPUの両方でESXiのサービスが動作することになります。そして、DPUにNSXのサービスをオフロードすることでCPUがコンピュート処理に専念でき、結果的にコンピュートとネットワークのパフォーマンスがどちらも向上できることが紹介されていました。
ジェネラル セッションは、DPU搭載ホストと非搭載ホストでのパフォーマンス検証の結果をもとにCPUコアの節約、スループット、そしてレイテンシへの効果が紹介されていました。
- DPU搭載ホストを使用した環境が、20%少ないCPUコアでDPU非搭載ホストの環境と同等の性能を達成
- スループットが36%向上し、トランザクションのレイテンシが27%短縮された
DPUにより、コンピューティングリソースの総コストを削減し、ワークロードのパフォーマンスを向上させることが期待できると考えられます。
vSphere Lifecycle Manager
vSphere Lifecycle Managerが機能強化され、クラスタの単位で迅速なアップデートが可能になります。
vSphere 8 は、事前にESXiのアップデート イメージをダウンロードしステージングしておくことで、クラスタ内のESXiホストを並行してアップデートできるようになります。そのため、ESXiのアップデートに関する運用時間を大幅に短縮することが可能になることが紹介されていました。
また前述のvSphere Distributed Services Engineで紹介した、DPUにインストールされたESXiの管理についてもvSphere Lifecycle Managerが対応することが発表されました。これにより、DPUが追加されることによる運用面での負荷を削減できるとのことです。
他にもTech Previewとしてクラスタの構成管理のためのvSphere Configuration Profilesという機能も追加されると発表されています。
こちらは推奨状態として定義した構成管理プロファイルの内容を、クラスタ内のESXiホスト全体に適用できる機能です。ESXiホストを追加する際の構築時間短縮や、クラスタ内で発生した構成の差異を容易に修正できるようになると考えられます。この機能は将来的に従来のホスト プロファイルを置き換えるものと説明されていますが、vSphere 8では引き続きホスト プロファイルもサポートされると発表されています。
今回はピックアップした内容を紹介させていただきましたが、そのほかにもさまざまなアップデート情報がありました。詳細はVMware公式サイトもご確認ください。
vSAN 8 アップデート情報からのピックアップ
次にvSAN 8に関するアップデート情報をご紹介します。
vSAN Express Storage Architecture(ESA)
vSAN 8のアップデート情報で注目する点はvSAN Express Storage Architecture(ESA)です。これは次世代のストレージデバイスの位置づけであるNVMeデバイスに最適化され新しくなったアーキテクチャであり、vSANの大きな変化として発表されました。
従来型のvSANアーキテクチャはESAと区別するためにvSAN Original Storage Architecture(OSA)と呼ばれる形になりました。なお、vSAN 8ではOSAも継続して使用することができると発表されています。
アーキテクチャで大きく異なる箇所は、ストレージ デバイスの構成です。
従来のOSAはキャッシュとキャパシティの2階層のアーキテクチャであり、それぞれの階層に専用のデバイスを用意してディスク グループを構成する仕様でした。対してESAはディスク グループが廃止され、ストレージ プールと呼ばれる1階層のアーキテクチャが使用されています。
このストレージ プールに利用されるデバイスは、NVMeベースのTLCフラッシュデバイスのみとなりますが、すべてのデバイスがパフォーマンスとキャパシティに活用されます。そのため同じ容量、同じ数のデバイスの構成の場合はESAの方がより多くのキャパシティを確保できます。
また可用性も向上します。OSAはキャッシュ デバイスで故障などが発生するとディスク グループ自体が使用できなくなってしまいますが、ESAは故障デバイスのみが使用できなくなるだけで済むとのことです。
ライセンスエディションはvSAN Advancedもしくは、Enterpriseエディションが必要となる予定です。
vSAN Original Storage Architecture(OSA)の新機能
OSAのアップデート情報は、オールフラッシュ構成時のWriteバッファで使用されるデバイスの論理制限が、600 GB から最大 1.6 TB になることが発表されました。
今までは800GBのデバイスでも600GBまでしかWrite バッファとして使用されていませんでした。vSAN 8からは1.6TBのデバイスを利用した場合でも、1.6TBの全容量をWriteバッファとして使用されます。Write バッファが増えたことにより、より負荷の高いワークロードを実行できるようになったのではないかと思います。
この記事ではVMware Explore 2022 US で紹介されたVMware vSphere 8 / vSAN 8のアップデート情報をピックアップしてご紹介しました。VMware Exploreで発表された情報は、別ブログ記事でもお伝えしておりますので、まだご覧になっていない方は是非こちらからご覧下さい。今後も引き続き、最新情報の取集・発信をしていきたいと考えておりますのでご確認いただけると幸いです。
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著者紹介
SB C&S株式会社
ICT事業本部 技術本部 技術統括部
第1技術部 1課
山田 和良 - Kazuyoshi Yamada -
VMware vExpert