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【連載】NVIDIA vGPU ご紹介

仮想化
2022.10.12

こんにちは。SB C&Sの幸田です。

当ブログでは、サーバーを軸としたITの世界における仮想化の概念デスクトップ仮想化ネットワーク仮想化など、これまで様々な仮想化技術を取り扱ってきました。
このたびは「GPUの仮想化」について、NVIDIA vGPU を軸に、複数の記事に渡る連載のかたちでご紹介したいと思います。

こちらが連載各回へのリンクです。日を追って順次公開してまいります。


第1回 vGPUのコンポーネント
...仮想環境に実装される vGPU の構成要素を一つひとつご説明します。

第2回 vSphere環境でのvGPUセットアップ手順
...VMware vSphere 環境でvGPUをセットアップする手順を、Step by step で丁寧に解説します。

第3回 Nutanix AHV環境でのvGPUセットアップ手順
...Nutanix オリジナルのハイパーバイザーであるAHVの環境でvGPUをセットアップする方法を解説します(2021/9/25 公開)。

第4回 vGPUはどのようにリソースを分割するのか
...vGPUによる仮想化によって、GPUのプロセッサ部分やメモリ部分など、主要なリソースがどのように分割され、仮想マシンに利用されるのかを解説します。

第5回 vGPUライセンスの仕組み
...vGPUを利用するために必要なライセンスと、ライセンス認証機構の仕組みについて詳しく解説します。

【準備中】第6回 VDIでのvGPU (仮題)
...現状、vGPUが最も多く使われるユースケースは VDI (仮想デスクトップ) です。3Dグラフィックスを扱う専門的なアプリケーションを実行可能なVDIなど、いくつかの主要なユースケースをご紹介します。

【準備中】第7回 GPGPUとしてのvGPU (仮題)
...近年において vGPUのユースケースが増加しているのが、機械学習などの並列演算にGPUを用いる GPGPU (General Porpuse GPU) です。


そもそも vGPU とは?

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GPU市場で圧倒的な存在感を放つNVIDIAは、GPU仮想化においても同様に業界をリードしています。
GPU
仮想化を実現するプロダクトは、"NVIDIA vGPU" と名付けられ展開されています (※以前の製品名はNVIDIA GRID)

産み出された当初から多くのソフトウェアベンダーおよびハードウェアベンダーと連携しており、
性能面に加えて機能面でのアップデートも高い頻度で継続的に行われ、最新の仮想化技術をサポートすることに抜かりがありません。幅広い最新のプラットフォームとの互換性を保ち続けている、まさにGPU仮想化のスタンダードといえるプロダクトです。

以下、この記事では、vGPU の代表的なユースケースをご紹介します。

CADやBIM, そしてCAEなど、高度なグラフィックスや演算処理を扱うエンジニアリングソフト向け仮想デスクトップ

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代表的なものとしては、CAD (Computer-Aided Design) ソフトウェアが挙げられます。
近年では、自動車や航空機、電気機器、建築構造物など、様々な領域で3Dグラフィックスを用いた設計プロセスが一般的になっており、仮想デスクトップで設計業務を行う場合、vGPUは必須といってよいかと思います。

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建築構造物の設計に特化したBIM (Building Information Modeling) などを利用する現場においても、 vGPUが活用されています。持ち運びできる軽量なデバイスからでも、高度な3D BIMツールを利用できるメリットは、非常に大きいといえます。

CAE (物理シミュレーション)

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さらに、工学分野における流体や気体、熱伝導、電磁ほか様々なシミュレーションを行うソフトウェアである CAE (Computer Aided Engineering) においても、vGPUの処理能力が効果をもたらします。複数ユーザーがCAEを利用する場合、ワークステーションも複数台を用意してしまうと煩雑な運用管理に悩まされることになりますが、vGPUを用いることで少数のサーバーに集約された、リモートで利用可能な環境を実現できます。

メディア・エンターテインメントの現場で用いる仮想デスクトップ

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また、リモートワークが当たり前になる中で、今まで専用の物理ワークステーションをオフィスに出勤して使うことが主だったメディア業界・エンターテインメント業界のクリエイターの方々向けにも、仮想デスクトップの提供が盛んになっています。
特に直近では、極めて強力なレンダリング性能をもつ最新のGPUである "RTX" シリーズが仮想化に対応したため、大変な注目を集めています。

オフィス業務アプリケーションを用いる仮想デスクトップ

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近年においてvGPUの活用ケースは、CAD/BIM/3DCGなどのハイグラフィックスなアプリケーションにとどまらず、ドキュメント閲覧/編集ソフトや表計算ソフトなど、一般的なオフィスアプリケーションを用いる仮想デスクトップにも急速に広がりました。

仮想デスクトップにおいてもWindows 10への切り替えが進み、一般的なオフィス業務アプリケーションの利用でのユーザー体験が向上する一方、グラフィックスの負荷はOSアップデート毎に上がり続ける傾向を示しているため、vGPUを活用して生産性・快適性を向上し、同時に基盤拡張コストの抑制も検討するユーザー様が増加しています。

特に、コロナウイルス感染症の拡大防止に向けて全世界的に取り組まれているリモートワークにおいては、Zoomなどのリモート会議ツールが盛んに利用されますが、まさにvGPUはこのようなグラフィックを用いるアプリケーションに最適です。仮想デスクトップとその基盤全体にかかる負荷を、大きく削減する効果が得られます。

次世代の XR, メタバース, デジタルツインのプラットフォーム

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今後の大きな広がりが期待されているVR/AR, メタバース、デジタルツインなどに代表される3Dコンテンツにおいても、vGPUの様々な活用ケースが生まれつつあります。この領域では、3D空間での光の反射や陰影など大規模演算を瞬時に、かつサービス配信ともなれば同時かつ大量に行う必要があり、要求を満たすためには高性能GPUの「高効率な利用」が不可欠であるため、vGPUの活用が大きな効果をもたらす可能性に満ちています。

Deep Learning をはじめとする機械学習向けの学習/推論基盤

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さらに、NVIDIAが圧倒的な存在感を放つ Deep Learning を中心とした機械学習のシステム基盤向けにも、費用対効果の高い専用のvGPUライセンスが提供開始されており、より一層活用がしやすい状況となっています。先進的なAIプラットフォームとして注目を集めている NVIDIA AI Enterprise のスタンダードな構成のひとつは、vGPUをフル活用したものです。

科学研究領域のHPCや大規模データ解析などにおける大規模並列処理

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GPUはその高い並列処理能力が注目され、GPGPU (General Purpose GPU) と呼ばれる利用方法がこの十数年で広く普及しました。特に最も早くから活用していたのが研究者の方々です。従来のコンピューターでは極めて長い時間を要する演算を、GPUによって現実的な所要時間の中で完結させることを実現してきました。膨大なデータを用いた分析も同様に行われ、現在ではビジネスの場面でも当たり前のようにGPUによるデータ解析が行われています。これらの処理にも、コスト効率が高くリソースの割り当てを柔軟に行うことのできる仮想環境、およびvGPUを活用するケースが増加しています。

今後の連載で、vGPUに関するより技術的なトピックを配信

引き続き、vGPUに関する記事を発信してまいります。各記事をぜひご一読いただければと思います。

著者紹介

SB C&S株式会社
ICT事業本部 技術本部 第1技術部 2課
幸田 章 - Akira Koda -

VDI を含む仮想化、クラウド、NVIDIA GPU によるコンピューティング(グラフィックス, AI/HPC)等のプリセールス・エンジニア業務に従事。
VMware vExpert 2015-2022