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VxRail 8.0 のご紹介

ストレージ / HCI
2023.04.20

皆さんこんにちは。SB C&SでVxRailのプリセールスを担当しております、湯村です。

今回は、2023年1月にリリースされたVxRail 8.0についてご紹介します。

本ブログのアジェンダは以下の通りです。

​​​​​​​​​​VxRailのこれまでの歩み
​​​​​​​​​​VxRail 8.0 で何が変わったのか?
​​​​​​​​​​その他 VxRail最新情報

VxRailのこれまでの歩み

VxRailについて

VxRailはDell TechnologiesとVMwareが共同開発した "唯一" のHCI(Hyper-Converged Infrastracture)です。簡単にVxRailの特徴をおさらいします。

HCIは、これまで3Tier基盤の構成要素だったサーバー・ストレージ・SANスイッチがひとつに統合された基盤です。SDS(Software Defined Storage)と呼ばれる機能によって各ノードのローカルディスクを統合し、共有ストレージとして扱うことができます。VxRailはvSANのアーキテクチャをベースにしており、vSANのSDS機能が用されています。

1.pngVxRailの特徴

VxRailがリリースされた2016年から数々のアップデートが繰り返し行われ、よりユーザー様が導入・運用しやすいHCIへと変化し続けています。歴史のあるVxRailですが、今も昔も変わらない特徴がいくつかあります。

  1. 「迅速な導入」
    VxRailは予め動作検証済のアプライアンスであるため、機器選定時の互換性チェックが一切必要ありません。さらに、VxRailに必要なソフトウェアはインストール時にまとめて導入されるため、開梱してからシステムを稼働させるまでの時間を大幅に短縮できます。

  2. 「シンプルな運用管理」
    VxRailに関する全ての管理作業はVxRail Managerと呼ばれる管理専用の仮想マシンを経由して行われます。管理GUIは使い慣れたvSphere Clientにプラグインとして統合されているため、VxRailの管理作業をとても簡単に行うことができます。

  3. 「アップデート作業の自動化」
    VxRailには強力なライフサイクル管理機能があります(通称:VxRail LCM)。一般的な3Tier仮想化基盤の場合、それぞれのソフトウェアおよびハードウェアのアップデートは別々に行う必要がありますが、VxRailではVxRail LCMによってシステムが必要とする全てのコンポーネントを一括でワンクリックアップデートできます。

これらのVxRailを代表とする特徴は、度重なるアップデートによって強化され、2023年現在もユーザーフレンドリーなHCIとして変化を続けています。

VxRail 8.0 で何が変わったのか?

そんなVxRailも2023年に入り、ひとつの転機を迎えるかもしれません。2023年1月6日に「VxRail 8.0.000」が正式にリリースされました。VxRail 8.0はvSphere/vSAN 8.0に対応しており、主なアップデートはvSphere/vSAN 8.0のアーキテクチャに実装された機能をそのまま受けつぐものとなっています。大きく変わったアップデートは主に2つあります。

アップデート1.「vSAN Express Storage Architecture(ESA)の対応」

従来のvSANはキャッシュとキャパシティの2つの階層によってディスクグループを構成することでvSANデータストアを作りだしていました。この従来の構成をvSAN Original Storage Architecture(OSA)と呼びます。一方で、ESAはキャッシュ階層を無くし、キャパシティ階層のみ構成されたシングルティア構成となっています。ディスクグループは無く、全てのデバイスはESXiホスト毎のストレージプールとして構成されます。ただし、「全てのデバイスにはNVMe SSDを使用しなければならない」ことや、「ストレージ用ネットワークが最低25Gb必要」である等の高度な要件があります。
※VxRail 8.0においても引き続きOSAをご利用いただけます。

未だVxRail8.0におけるvSAN ESAのパフォーマンス評価は公開されておりませんが、vSAN ESAを導入することで、RAID5/6の容量効率を保ちながら、Write IO性能はRAID1と同等の処理が実現すると言われています。また、CPU効率の向上や高い圧縮率が見込まれているため、vSAN ESAの性能はOSAに比べて向上することが期待できます。もちろんいきなり導入するのはリスクがありますので、導入を検討される場合は必ずPoCを行いましょう。

現状では導入要件が多いvSAN ESAですが、今後の動向には注目必至です。

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アップデート2.「vSphere Distributed Sservices Engine(DSE)の対応」

もう1つのアップデートはvSphere Distributed Services Engine(DSE)が実装されたことです。vSphere DSEは、Data Processing Unit(DPU)にCPUの処理をオフロードすることで、CPUは仮想マシン上で稼働するワークロード処理に集中できるというものです。DPUはSmart NICと呼ばれるPCIデバイスに搭載されます。

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vSphere環境でDPUを利用できるようにするには、4つのステップが必要となります。

Step1. ESXiのインストール
ホストだけでなく、DPU自体にもESXiをインストール(※)します。ESXiインストール画面でインストール先にDPUも選択できるので、簡単にインストールすることが可能です。
※DPU専用のESXi OSがDPU上で稼働しており、PCIeバスを通してESXiホストと通信を行う仕組みになっています。

Step2. 分散仮想スイッチ(vDS)の作成およびオフロード有効化
vDSを作成し、オフロードオプションを選択します。vSphere8の環境でvDSを作成する際、「Network Offloads compatibility」というオプションが追加されているので、ここで搭載しているSmart NICを選択します。

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Step3. NSX-Tのインストール
ホストとDPUにNSX-Tを同時にインストールします。NSX-Tのインストール時に注意する箇所は、トランスポートノードプロファイルを作成するときに、Step2で作成したvDSを指定するだけです。後は通常のNSX-Tインストール方法と変わりません。

Step4. UPTv2の設定
仮想マシンの仮想NICをUPTv2モードに設定します。デプロイする仮想マシンのネットワーク設定にて、「UPT Support」を有効にすることで、この仮想マシンはDPUへのオフロードが行われるようになります。

以上、DPUを利用するための方法をご紹介しました。どれも基本的な設定内容ですので、導入も簡単そうですね!

さて、このvSphere DSEをVxRailで利用するメリットとしては何が挙げられるでしょうか?それはつまり「導入しやすく、管理しやすい」ことです。

現状、VxRailではVxRail 8.0.010のみがvSphere DSEに対応しており、「新規導入」が前提となります。つまり、VxRailを購入する際に8.0.010を指定すれば予めDPUの搭載されたVxRailが納品されます。
※VxRail 8.0.010はDSE専用の工場出荷バージョンであり、8.0.000以前のバージョンからアップグレードすることはできません。

冒頭でVxRailの特徴のひとつとして「迅速な導入」が可能とご紹介しましたが、DPU搭載VxRailもその恩恵を受けることができます。既にホストおよびDPUにESXiがインストールされた状態で納品されますので、通常のVxRailのデプロイを行えば問題ありません。Day2作業としてNSX-Tのインストールが必要になりますが、先ほどご紹介したステップはそこまで時間がかかるものではないので、非常に導入が楽です。

運用管理フェーズにおいてもvSphere ClientからDPUの情報を確認できたり、VxRail LCMによるDPUのアップグレードも可能です。また、Dell Technologies製品のハードウェア障害を自動通報してくれるツール「Secure Connect Gateway(旧Secure Remote Services)」にも対応しており、DPU障害時にも迅速な復旧対応が可能となります。

つまりVxRailは、最新のvSphere 8.0アーキテクチャであるvSphere DSEを活かすことができるプラットフォームといえます。現状、vSphere DSE機能のうちネットワーク処理のオフロードのみが対応しているため、将来的な拡張が期待されます。こちらも引き続き注目していきましょう!

その他 VxRail最新情報

VxRail 8.0へのメジャーアップデートはvSphere/vSAN 8.0に対応したものですが、時期を同じくしてVxRail自身の新たなソリューションが誕生していますので併せてご紹介します。

Witness組込み型 エッジ向け 2ノードVxRail「VD-4000」の誕生

VxRailは基本的に3ノード以上で構成することが必要であり(推奨は4ノード以上)、小規模な環境ではマッチしないケースが多いですが、2ノード構成であればそうした環境にもVxRailをご利用いただける機会が多くなります。以前から2ノードVxRailを構成することは可能でしたが、Witnessと呼ばれる監視モジュール用にノードをもう1台用意する必要がありました。2023年3月にリリースされた「VD-4000シリーズ」は、Witnessが筐体に組み込まれているため、低コストで2ノードVxRailを構築できます。

VD-4000は「据え置き設置型」もしくは「ラックマウント型」からシャーシを選択でき、それぞれのシャーシ内にコンピュートノードを搭載する仕組みとなっています。用途に合った構成を組むことができるため、様々なエッジ環境に適したVxRailとして期待されています。

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Dynamic AppsONによる3Tier統合管理ソリューション(※間もなくリリース)

様々なラインナップをもつVxRailですが、2021年には「VxRail Dynamic Node」がリリースされました。Dynamic Nodeはコンピュートノードとも呼ばれ、通常のVxRailに内蔵しているvSANストレージデバイスが一切無く、コンピュート部分(CPUやメモリ)だけを搭載しているノードになります。ユースケースとしては、VMware HCI Mesh機能によって既存クラスタのvSAN領域をストレージとして利用するか、Dell Technologiesの外付けストレージ製品を組み合わせて3Tierのような構成で利用するケースになります。しかし、これまで外付けストレージ構成は一般的な3Tier基盤と同様に別々のメンテナンス作業が必要でした。

Dynamic AppsONは外付けストレージにPowerStore Tを組み合わせたソリューションで、VxRail LCMによってDynamic Node内部のコンポーネントだけではなく、PowerStoreのコンポーネントまでアップグレードが可能になります。これによって、サーバーからストレージまでend-to-endの統合管理が実現します。

7.png以上、VxRail 8.0のアップデート内容および最新のVxRail情報をご紹介しました。

いかがでしたでしょうか?VxRail 8.0はまだ未知数な部分が多い状態ですが、vSphere/vSANのメジャーアップデートに直ぐに対応したことで、いち早く最新機能を活用できるようになりました。VD-4000やDynamic AppsONのような様々なユースケースにも対応してくれるVxRail独自のソリューションも開発されており、VxRailの今後も目が離せません。

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著者紹介

SB C&S株式会社
ICT事業本部 技術本部 技術統括部 第1技術部 2課
湯村 成一 - Seiichi Yumura -

Dell Technologies社製品のプリセールス業務を行うエンジニア。
主にVxRail・Azure Stack HCIといったHCI製品を担当している。