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Data Fabricを使う前に知っておきたいこと

UiPath
2025.12.26

 

こんにちは!山崎です。

第1回・第2回では、

・Data Fabric は「RPA向けのクラウド版Excel」であること
・実運用では、データの入れ方にいくつかのパターンがあること

を見てきました。

第3回の今回は、
「じゃあ実際に使うとき、どこを押さえておけば安心なの?」
という話をまとめます。

ポイントは3つです。

・Maestro / Agentic Automation との関係
・Choice Set(チョイスセット)という便利機能
・気になるコストと容量の考え方

 


目次

  1. Data Fabricは「人とロボットが非同期で動く」ための土台
  2. Choice Setがあると「人とロボットの会話」がズレない
  3. 「全部Data Fabricに入れる」はやらなくていい
  4. 気になるコストと容量の話
  5. まとめ:Data Fabricは「考えなくていいことを減らす仕組み」

1. Data Fabricは「人とロボットが非同期で動く」ための土台

最近の UiPath では、
MaestroAgentic Automation といった言葉をよく聞くようになりました。

ざっくり言うと、

・ロボットが全部自動でやる
・人が全部判断する

のどちらかではなく、

人とロボットが、同じプロセスの中で、それぞれのタイミングで動く

という世界観です。

ここで重要になるのが、「いま、このデータはどんな状態なのか?」を共有できる場所です。

第2回で紹介した
パターン4:ロボットが途中結果を書き込み、人が確認する
パターン5:外部システムを参照する
は、まさにこの前提で成り立っています。

Data Fabric は、

・ロボットが途中経過を書き込めて
・人がそれを見て判断できて
・その結果をまたロボットが拾える

という 状態管理の中心 になります。

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だからこそ、Maestro や Agentic Automation の文脈でData Fabric の重要性が増している、と考えると分かりやすいと思います。

2. Choice Setがあると「人とロボットの会話」がズレない

ここで紹介したいのが、
Choice Set(チョイスセット) という機能です。

これは一言で言うと、

「この列に入れていい値を、あらかじめ決めておける仕組み」です。

たとえば、ステータス。Excelで管理していると、

・未処理
・未対応
・処理前
・未処理中

といった表記ブレが、いつの間にか増えていきがちです。

人にとっては同じ意味でも、ロボットにとっては 全部別の値 になります。

Choice Set を使うと、

・未処理
・要確認
・承認済
・完了
・エラー

といった 選択肢を事前に定義 できます。

そしてそのフィールドには、その選択肢の中からしか値を入れられません。

ブラウザから入力しても、Apps から編集しても、Studio から更新しても同じです。

結果として、

・表記ブレが起きない
・条件分岐がシンプルになる
・想定外の値でロボットが止まらない

という状態が作れます。

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「人とロボットが、同じ言葉で会話できる」これが Choice Set の一番の価値です。

Maestro のようにプロセス全体をまたいで状態を扱う場合、
この「ズレない前提」はかなり効いてきます。

 

3. 「全部Data Fabricに入れる」はやらなくていい

ここまで読むと、

「じゃあ、いろんなデータを
 全部 Data Fabric に入れた方がいいのでは?」

と思うかもしれません。でも、そこまでやる必要はありません。

第2回で触れた通り、

・処理や判断に使うデータ
・状態管理やマスタ

は Data Fabric に置き、

・PDFや画像などの原本ファイル
・すでに基幹で管理されているデータ

は、外部の置き場所をそのまま使うという設計が基本です。

Data Fabric は「何でも入れるデータベース」ではなく、プロセスを動かすためのデータのハブ

この位置づけを意識すると、使いすぎて困ることはほとんどありません。

 

4. 気になるコストと容量の話

最後に、どうしても気になる コストと容量 の話です。

Data Fabric は、Enterprise 環境であれば 標準で利用できます

よく心配されるのが、

「使っていくうちに、どんどんお金がかかるんじゃないの?」

という点ですが、通常のRPA用途であれば、そこまで神経質になる必要はありません。

理由はシンプル。

・ステータスやマスタなどのテキストデータはとても軽い
・容量を食うのはPDFや画像などのファイル

からです。

 

設計として、

・ファイルは外部ストレージで、Data Fabric にはURLやメタ情報だけを持つ。
・テキストデータも、1年などの区切りでData Fabricから自動削除される運用にする

という形を取っていれば、

Data Fabricにおいてコストの心配はいらない理解で大丈夫そうです。

※企業規模や使い方がすごい会社の場合は、担当者への確認を前提にしてください。

※あと、容量を食いすぎない設計は気にかけてください

 

まとめ:Data Fabricは「考えなくていいことを減らす仕組み」

3回に分けて見てきましたが、
Data Fabric を一言でまとめるなら、

RPAでありがちな「データ管理どうしよう?」を
まとめて引き取ってくれる仕組み

だと思います。

・Excelのロックや表記ブレ
・Queueだけでは扱いにくい状態管理
・人とロボットが混ざるプロセス

そういった悩みを、無理なく整理してくれます。

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最初からMaestro や Agentic Automation をフルで意識する必要はありません。

まずは、

・処理台帳
・マスタ管理
・人が確認する中間データ

といった身近なところから少しずつ使ってみる。

その延長線上に、人とロボットが自然に協調するプロセスが見えてくるはずです。



 

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著者紹介

SB C&S株式会社
ICT事業本部 技術本部
先端技術統括部
DXコンサルティング部 デジタルイノベーション課
山崎 佐代子