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NVIDIA Omniverse 紹介

AI
2026.04.03

こんにちは。SB C&S の村上です。

この記事では3Dシーン開発などで活躍するNVIDIA Omniverse™の概要について、主要コンポーネントを中心に紹介します。

3D開発について

3D開発は、いまや一部の専門領域だけのものではなく、さまざまな分野で使われています。例えば以下のような領域で3Dが取り扱われています。

  • 映像制作(映画、アニメなど)
  • ゲーム開発(アセット制作)
  • デジタルツイン(工場・建物などの可視化、シミュレーション)
  • 製造業の設計/検証(製品可視化、組立検証)
  • メタバース(AR/VR、展示)

3D開発というと「モデルを作る」工程が注目されがちですが、実際には複数の素材(アセット)を統合し、1つの"3Dシーン"として成立させるところまで含めて3D開発になります。

3Dシーン開発では一般的には以下の流れをたどります。

  1. 各種パーツ制作
  2. 統合作業
  3. レビュー
  4. アウトプット

各種パーツ制作はシーンを構成する部品を作る工程となり、制作は3Dモデル担当やテクスチャ担当など役割ごとに分業されることも多くあります。また、利用されるツールは担当や用途によって異なり、DCC(Maya / Blenderなど)に加えて、CADなどが混在するケースもあります。
統合作業では出来上がったパーツを組み合わせて1つのシーンを作成していきます。実際にはいくつものシーンが作られることもあるため、統合作業が更に分業化や階層化されるケースもあります。
その後レビューを通してシーンとして問題なければエンコード処理で動画化したり、ゲームエンジンに取り込んで活用したり、そのままシミュレーションツールで利用したりといったアウトプットの工程へ渡ります。

nvidia_omniverse_01.png

ただし、3Dシーン開発のフローでは様々な課題があります。
各種パーツ制作や統合作業で使うツールが異なることによってフォーマットが変わり、都度変換が必要となることがあります。また、共同作業ゆえにファイルの送り合いが頻繁に発生することでのコンフリクトなどが例にあがります。

  • 相互運用: 各種パーツ制作や統合作業で使うツールごとでフォーマットが異なり、変換や調整が発生する
  • 共同作業: 「最新版どれ?」「ZIPで送り合い」が起きやすく受け渡しコストが増える
  • 差分管理: 変更点が追いづらく、データ破壊やコンフリクトなども発生しやすい

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こういった課題に対して、3D開発のプラットフォームを提供するのがNVIDIA Omniverseとなります。

OpenUSDについて

NVIDIA Omniverseの話に入る前に、先に重要な要素であるOpenUSDについて紹介します。
OpenUSD(以降USD)は、DCCやCADツール間の「共通フォーマット」として機能し、複数人・多種ツールでの共同作業を成立させる土台になります。
もともとは映画制作の中で開発された「巨大な3Dシーンを破綻なく組み立てるための仕組み」で、近年は業界横断の共通基盤として採用が広がっています。
Pixar、Adobe、Apple、Autodesk、NVIDIA が 3D コンテンツのオープン標準を推進する Alliance for OpenUSD を結成

USDの特徴としては大きくは以下2つです。

  • 共通フォーマット:DCC/CADなど異なるツール間での共同作業が可能
  • 非破壊編集(レイヤー):元データを壊さず、差分をレイヤーとして積み上げて合成できる

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NVIDIA Omniverseでは、このUSDを中心とした世界になっています。

NVIDIA Omniverseとは

NVIDIA OmniverseはUSDを中心に、"複数ツール""複数人"で同じ3Dシーンを扱うための機能群を提供するプラットフォームです。実態はアプリケーション単体ではなく、役割の異なったライブラリ/マイクロサービスが集合して構成されています。
中でも以下3つが基礎となるコンポーネントです。

  • Nucleus: 共同作業の"中心"になるデータ基盤
  • Kit & Extension: 用途に合わせた"ツールを作る"ための土台
  • Connector: DCC/CAD/BIMとUSDをつなぐ"橋"

USD形式の採用と上記のコアコンポーネントの活用によって、"相互運用""共同作業""差分管理"の問題点を解消しています。

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次の章ではイメージを膨らませるため、冒頭の3D開発フローをOmniverseに置き換えて説明します。

Omniverseを用いた3D開発フロー

まずOmniverseになった場合に一番大きく変わる点として、以下の3つが加わります。

  • 共同作業場所として、作業の中心にNucleusが追加
  • パーツ制作担当のツールにNucleusへ接続するためのConnectorが追加
  • 統合作業、レビュー用のツールがOmniverseで作成可能なKitアプリケーション

さらに、各種ファイルのやり取りが、全て共通フォーマットであるUSDに置き換わります。

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1つずつ見ていくと、まず中心にNucleusというデータの共有、権限管理、同期の機能をもったUSD置き場が用意されます。
従来、チームで1つ大きなUSDを扱う場合、ファイルを都度コピーして編集したり、ZIPで送り合ったりすることが発生していました。Nucleusでは共通の置き場を用意することで、メンバーはその置き場でUSDの編集を行うのみになります。イメージとしてはOmniverse内のファイルサーバーが提供されるようなもので、各DCCやOmniverseのアプリから接続して利用します。
また、チェックポイントというバージョン管理の仕組みも搭載されています。

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続いて、DCCやCADなどで作られた資産をUSDとして持ち込む/持ち出すための拡張として各DCCツールにConnectorが追加されます。
例えば、Blenderで作業しているデータは基本「.blend」という独自形式になり、そのままではOmniverseの世界で共同編集することはできません。そこで拡張としてConnectorを導入するとBlenderからNucleusへ直接共通フォーマットのUSD形式として持ち込むことができます。

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最後に、各統合担当やレビュー担当のツールがNucleusと親和性の高いKitアプリケーションに置き換わります。
OmniverseではKitとExtensionsというコンポーネントを組み合わせ、用途に合わせた自社用アプリケーションとして、Kitアプリケーションを作ることができます。
例えば、「レビュー用にワンクリックで書き出し」「命名規則に違反したら警告」などの現場の作法を取り込んだアプリを作成することができます。イメージとしては、「Unreal Engine Editor」や「Unity Editor」を拡張して社内ツール化する感覚です。
また、Kit AppではNucleusとの自動同期がされるため、数多くのファイルの受け渡しによる共同作業での問題点も解消されています。

なお、Kitベースのアプリを作る際にはKit App Templateというテンプレート群が用意されており、それらを使うことでスムーズに作成できます。テンプレートは必要最小限しか無いものから、そのままでもある程度のエディタとして使うことができるものも含まれています。

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Kitアプリケーションの開発事例として、BMW GroupではKit App TemplateのUSD Composer を元に工場データの検索、構築、分析などの拡張機能を追加した「Factory Explorer」と呼ばれるKitアプリケーションを開発し活用されています。
https://www.nvidia.com/ja-jp/case-studies/bmw-group-develop/

以上のようにOmniverseでは、3D開発フローが大きく変えずに、所々にOmniverseのコンポーネントを加えることで、課題解消の手助けをしてくれます。
ざっくりとしたイメージだと以下のように、Connectorで作ったモデルをUSDとしてNucleusへ格納して、Kitアプリケーションでレビューするといった流れです。

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3D開発でOmniverseを活用したあとは、通常通りアウトプットして後続の工程(動画へのエンコードやゲームエンジンへの取り込みなど)をしていくイメージとなります。

Omniverseのその他 機能群

ここまでの説明では、NVIDIA Omniverseの一番中心の部分をご紹介しました。なお、Omniverseでは先程までのコンポーネントをベースに便利な機能が多く提供されているため、いくつか抜粋して紹介します。

Isaac Sim

ロボット開発のための機能が充実したKitアプリケーションです。
特徴としては以下のような機能が追加されたUSD Composerのような位置づけです。

  • ロボットモデル (URDF) をUSDとして取り込み機能
  • ロボットの関節制御をするためのArticulation Controller機能
  • カメラ/深度/ステレオなどの視覚センサーなどのロボット用センサー群を搭載

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公式Extensions

各Kitアプリケーションをより便利にするNVIDIA公式のExtensionsが数多く提供されています。これらを用いることで、本来はコードでの実装が難しい複雑な機能も簡単にKitアプリケーションへ追加することができます。
以下は代表的なものです。

  • NVIDIA Omniverse Replicator
    • 合成データ生成のためのフレームワーク
    • 例えば、OpenUSD のシーンを"自動で増やして、画像+教師データを大量生成
  • NVIDIA Omniverse Physics
    • USD上のオブジェクトに「重さ」「摩擦」「衝突」「関節」などの物理属性を与えることが可能
  • NVIDIA Omniverse Hub Workstation Cache
    • Nucleusから大規模なUSDファイルを取り扱う際に都度読み込みに時間がかかるのを防ぐ"ローカル常駐キャッシュ"
    • 各Kit Appから一度開いたUSDや、そこから派生するデータ(読み込みに必要な情報)をローカルにキャッシュし次回以降の読み込みを高速化

これらは全てKitアプリのExtensionとなり、Kitアプリ内の画面操作で追加することが可能です。

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NVIDIA Omniverse Farm

NVIDIA Omniverse Farmは、Omniverse上で行われるレンダリングやシミュレーション、バッチなどの各処理を、複数のマシンやサーバーに分散実行するための仕組みを提供します。
3D開発では、重ための処理が日常的に各作業者のPC内で行われています。それらの処理をジョブとしてFarm(計算リソース)にて分散実行させることで、単一マシンでは時間がかかる処理でも並列化・高速化を可能にしています。

例えば、以下のようなシナリオでの利用が挙げられます。

  • 大量フレームのレンダリング
  • フレーム/ショット単位でジョブを分割し、複数ワーカーで同時に処理して時間を短縮
  • シミュレーションの一括実行
  • 条件違いの検証をまとめて投入し、夜間バッチとして自動実行
  • パイプライン処理の自動化
  • USD変換、アセット前処理、出力フォーマット変換などの繰り返し作業をジョブ化して安定運用

Omniverse Farmの実態としては、ジョブの受付・管理を行うための管理用サーバーを1台用意して、そこに処理実行用のワーカーを複数台ぶら下げる構成になります。ワーカーはオンプレのPC群でもサーバーでも構成でき、必要に応じて台数を増減させられます。

NIM連携

Omniverseでは、NVIDIA NIM™で提供される生成AIとの連携も用意されています。この連携機能により、アセット探索やUSD編集、品質チェックといった作業をAIで補助し、開発フロー全体の生産性向上を実現できます。
代表的な連携機能として以下3つがあります。

  • USD Search
    • 大量のOpenUSD資産(USDデータ、画像、関連アセット)を、自然言語や画像入力で横断検索を可能にする
  • USD Code
    • こういうシーンにしたい/こういう変更をしたい" を自然言語で渡し、USD編集やパイプライン処理の"コードや操作"を生成・補助
  • USD Validate
    • OpenUSDのルール/品質/互換性チェックを自動化
    • CIに組み込むことが想定

その多機能

他にもまだまだたくさんの機能が提供されています。
記事執筆時点でも100を超えるOmniverse関連のコンポーネントが用意されています。

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Omniverseの利用方法

Omniverseのコンポーネントの多くは、NVIDIA NGC Catalogから入手して利用できます。例えばNucleusのインストーラーやConnectorを含んだDCCなどを直接取得することができます。
なお、一部テンプレートなどはGitHubのOmniverseリポジトリから取得を行う必要があります。

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また、NGCからコンポーネントを取得する際には権限が必要となります。現在利用可能な権限は以下の2つであり、権限がついたアカウントでログインするとダウンロードできます。

  • NVIDIA Developerアカウント
    • 検証用途で利用可能
  • NVIDIA Omniverse Enterprise
    • Omniverseの各ソフトウェアを本番利用する際に必要なライセンス
    • 各ソフトウェアのサポートも付随

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Omniverse × Cosmos

最後にNVIDIA Cosmos™との連携について紹介します。

NVIDIA Omniverseでは、Physical AIの開発プラットフォームであるCosmosとの連携機能も提供しています。
NVIDIA Cosmosは、ロボットや自動運転といった Physical AI を前進させるために、「現実世界のふるまい(動き・見え方・因果関係)」を学習・活用できるWorldモデル と、その周辺ツール群をまとめて提供するプラットフォームです。大量のデータをCosmosにて取り扱い、Physical AIの構築をしています。
ただし、Physical AIでは、実環境でのデータ収集や検証がコスト・安全性・再現性の面で難しく、Cosmosを活用する上でも大規模で多様な学習データの用意が課題になります。

そこでOmniverseでは、主に以下2つの機能にて、Cosmosに必要となるデータを現実の再現性高くデータをスケールさせながら集められるようにしています。

  • Cosmos Writer
    • Omniverse上のシミュレーションシーンから学習用データを書き出すための仕組み
    • 例えば、同一シーン・同一時間軸で RGB(色画像)/ Depth(深度)/ Segmentation(セグメンテーション)/ Edge(輪郭)といった複数のデータを同期しながら生成可能
  • Cosmos Transfer
    • Writerで得られたDepthやSegmentationなどの情報を元に、画像表現を任意の条件へ変換・拡張するための仕組み
    • 例えば、シーンの構造を保ったまま、照明・質感・外観のバリエーションを増やす、特定センサーの見え方に寄せるといった使い方が可能

実際の利用の流れについては、公式ドキュメントのケーススタディにまとまっているため、合わせてご参照下さい。
https://docs.omniverse.nvidia.com/guide-sdg/latest/case-studies/case4.html

まとめ

NVIDIA Omniverseの全体感について、コアコンポーネントを中心に紹介しました。3D開発の世界ではあらゆるツールが活用される一方で、それに伴った共同作業などの課題がでてきます。そこでOmniverseをプラットフォームとすることで、"複数ツール"・"複数人"での開発がスムーズに行うことができるようになります。
また、各開発に役に立つ機能群やAIとの連携など、幅広く機能を提供していることも特徴です。

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著者紹介

SB C&S株式会社
ICT事業本部 技術本部 技術統括部
第2技術部 1課
村上 正弥 - Seiya.Murakami -

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