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vSphere IaaS Control Plane とは

VMware
2024.09.05

こんにちは。SB C&S の村上です。

この記事ではvSphere 8.0 Update 3 (U3) で機能拡張された、vSphere IaaS Control Plane (旧: vSphere with Tanzu) のアップデート内容について紹介します。

まず、vSphere IaaS Control Planeという言葉をあまり聞き慣れない方もいらっしゃると思います。
vSphere IaaS Control Planeは、vSphereの仮想化基盤上にKubernetesによるコンテナ技術のワークロードを稼働させるソリューションです。
従来はvSphere with Tanzuと呼ばれていましたが、vSphere 8.0 U3のリリースタイミングで名称変更されました。(vSphere with Tanzuについてはこちらのブログ記事をご参照ください。)

2024年6月25日に提供が開始されたvSphere 8.0 U3では、vSpherevSANなどの機能アップデートがありましたが、同時にvSphere IaaS Control Planeに関するアップデートも数多くありました。本記事では、その中から注目すべき内容をピックアップして紹介していきます。

Tanzu Kubernetes Grid Service の独立

vSphere 8.0 U3にて、Tanzu Kubernetes Grid (以降TKG) ServiceのコンポーネントがvCenterから分離され、独立したSupervisor Serviceとして提供されるようになりました。

これまでTKG ServiceのコンポーネントはvCenterのリリースに含まれて管理されていましたが、Supervisor Serviceとして独立したことで、vCenterとは別に更新や管理が可能となりました。

これにより、新しいTKG Serviceのバージョンの導入がしやすくなり、より最新に近いKubernetesをベースとしたクラスターの展開がしやすくなりました。

バージョン管理自体はvSphere Client上から実施でき、製品として用意されているバージョンごとの定義ファイルを読み込ませることで、任意のバージョンを選択できるようになります。

vsphere_iaas_control_01.png

Supervisor Control Plane バックアップ&リストア

vSphere 8.0 U3では、Supervisor Control Planeのバックアップが可能になりました。厳密にはvCenter Serverのバックアップの一部として、Supervisor Control Planeも含めることができます。

このバックアップでは、vSphere名前空間、展開されているTKG、Pod、DeploymentなどのKubernetesリソースなども対象となります。

バックアップはvCenter Serverの管理インターフェイス (VAMI)から行い、リストアはvSphere Clientのワークロード管理から実施できます。

vsphere_iaas_control_02.png

vSAN ストレッチクラスタへのデプロイのサポート

vSANストレッチクラスタへSupervisor Control Planeをデプロイし、Tanzu Kubernetes Gridを実行することができるようになりました。

vSANストレッチクラスタを用いることで、2つのデータセンターにまたがる構成にでき、1つのサイトが障害を起こしても、もう片方のサイトでワークロードを維持できるようになります。厳密には、Supervisor Control PlaneやTKG ClusterのControl Plane&Worker Node、およびTKG Cluster内のすべてのPodを、障害が起きていないサイト側で実行状態に戻せるようになります。

構築の注意点として、新規でvSANストレッチクラスタにSupervisor Control Planeを展開する必要があります。つまり、既存で非ストレッチクラスタや別のストレージソリューションで構成されているSupervisor Control Planeの流用はできません。

Local Consumption Interface

vSphere 8.0 U3から、Supervisor ServiceとしてLocal Consumption Interface (LCI) が追加されました。LCIは、各vSphere名前空間上でリソースの作成や可視化を行うことができるUIを、vSphere Clientに追加します。

例えば、TKG Clusterの作成や可視化、TKG Cluster上で動作するVolumeやServiceの可視化が実現できます。また、展開済みのTKG Clusterへリクエストを送るためのkubeconfigも、LCI上から取得できるようになります。

導入方法は他Supervisor Serviceと同様で、メーカーから提供されている定義ファイルを読み込ませることで利用できるようになります。

vsphere_iaas_control_03.png

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Tanzu Kubernetes Grid Cluster のオートスケーラー機能

TKG Cluster のワーカーノードの、自動スケールアウト (増加) およびスケールイン (削減) が可能になりました。これにより、使用状況に応じてクラスタ内のワーカーノード数を自動的に調整できるようになります。

オートスケーラーは、TKG ClusterへkubectlやTanzu CLI等を用いてインストールして利用します。

インストールされたオートスケーラーは、kube-systemの名前空間上でPodとして動作し、使用状況を監視して、必要に応じて自動でノード数の調整を行うようになります。スケールの範囲については、TKG Clusterへのアノテーションで、あらかじめノードの最小数と最大数を指定可能です。

vsphere_iaas_control_05.png

まとめ

今回はvSphere IaaS Control Plane (旧 vSphere with Tanzu) の注目のアップデート情報について紹介しました。本記事で紹介しきれなかったアップデート情報については下記リリースノートをご確認ください。

VMware vSphere IaaS Control Plane 8.0 Release Notes

また、vSphere IaaS Control PlaneはVMware Explore 2024で注目されていたVCF9やPrivate AIにおいて重要なコンポーネントとなるため、今後も期待が高まります。

VMware Explore 2024で発表された内容を紹介する記事は以下サイトにリンクを掲載していきますので、ぜひご参考ください。

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著者紹介

SB C&S株式会社
ICT事業本部 技術本部 技術統括部
第1技術部 1課
村上 正弥 - Seiya.Murakami -

VMware vExpert