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VMware vSAN Express Storage Architecture (ESA)の紹介

VMware
2024.11.14

こんにちは、SB C&Sの山田です。

今回は、VMware vSANのアーキテクチャの一つである「vSAN Express Storage Architecture (ESA)」についてご紹介します。

本情報発信サイトのC&S Engineer Voiceのブログ記事では、これまでにもvSAN ESAに関連する機能の詳細について発信してきましたが、今回はESAそのものの概要を改めて紹介します。

vSANには「Original Storage Architecture (OSA)」と、「Express Storage Architecture (ESA)」の2つのアーキテクチャが存在しますが、ESAは、vSAN 8.0から新しく実装されました。
ESAが実装されたタイミングで、従来のアーキテクチャはOSAとリネームされています。同じvSANという製品にはなりますが、それぞれ異なる仕組みという形になります。ESAは従来のOSAと比べ、パフォーマンスを最大限に活かせるように作られました。


本記事では、まずESAの基本的な特徴を紹介し、その後、従来のOSAと比べて、ハードウェア構成や構築手順、機能の違いを紹介していきます。

vSAN Express Storage Architecture (ESA)の概要

vSAN ESAは、従来のOSAより様々な面で優れている点があります。

それぞれの違いを簡単に要約しますと、使用するストレージデバイスの種類と内部の処理が異なります。
OSAのストレージデバイスはHDD、SSD(SAS、SATA、NVMe)を使用する構成に対して、ESAでは、NVMe SSDのみを使用する構成です。

OSAでもNVMe SSDのみ使用する構成が可能ですが、もともとNVMe用に設計されていなかったため、ストレージデバイスの性能を最大限発揮することができませんでした。
そこで新しく、NVMeデバイスの性能を最大限発揮できる用に再設計されたアーキテクチャがESAです。
ESAはOSAと比べ、書き込みレイテンシが短縮されるなど、パフォーマンスの観点で大幅に向上しています。

ここからはOSAとESAそれぞれの違いを詳しく紹介していきます。

ハードウェア構成の違い

前述でも記載しましたが、vSAN OSAのハードウェア構成では、ストレージデバイスがキャッシュ層とキャパシティ層の2層に分かれているディスクグループという概念で構成されています。
キャッシュ層にはSSD、キャパシティ層にはHDDやSSDが使用されており、各ディスクグループにはキャッシュとキャパシティのデバイスが含まれます。
この構成は、キャッシュ層に対する依存が大きいのが特徴です。キャッシュ層の性能がvSAN全体のパフォーマンスに直接影響するため、キャッシュ層のSSDには高性能なモデルが求められます。
また、キャッシュ層のデバイスはキャパシティ用途として使用されないため、vSANデータストアの容量には加算されません。

一方、ESAのハードウェア構成は、従来のOSAに比べてシンプルです。すべてのストレージデバイスをNVMe SSDで統一し、キャッシュ層とキャパシティ層の区別がないストレージプールという概念で構成されています。
そのため、ESAはディスクグループがなく、ストレージ全体が単一層で構成されており、データのアクセスパスが短縮され従来よりも優れたI/O性能を発揮することが可能です。全てのデバイスがパフォーマンスと容量に貢献しています。

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オールNVMeデバイスを使用するESA構成のハードウェアですが、vSAN ESA ReadyNode の構成のみサポートされます。
vSAN ESA ReadyNode はVMwareで検証済みの認定パーツのみで構成された製品のことを指します。そのため、自分で一から構成を作成するBYO(Build Your Own)はサポートされておりません。

vSAN ESA ReadyNodeは、「vSAN ESA ReadyNode Hardware Guidance 」を参照し要件に近いプロファイルを決め、該当のプロファイルの構成を「VMware Compatibility Guide 」から選定します。

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vSAN-ESA-AF-2を選択して検索すると該当のハードウェアが表示されます。

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また、ESAのネットワーク要件としては、10GbE以上が必須です。具体的には「vSAN-ESA-AF-0」の構成は10GbE以上、「vSAN-ESA-AF-2」以上の構成は25GbE以上が必要になります。
OSAと比較した表は以下です。

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vSAN ESAの機能

ESAはOSAとは異なるアーキテクチャのため、パフォーマンスが向上するように内部のデータ処理も変わっています。具体的な仕様は本記事では割愛しますが、新しいアーキテクチャによって、オーバーヘッドを抑えつつ効率的にデータを処理することができるようになっています。

特にお伝えしたいのは、ESAはスナップショット機能が向上したということです。
従来のスナップショットでは、スナップショットの作成や削除時にI/O性能が低下することがありましたが、ESAではこの問題が改善されています。

ESAのスナップショット機能では、スナップショットを高速に作成・削除でき、I/O性能への影響がほとんどありません。スナップショットの世代が増えても、パフォーマンスへの悪影響が少なく、安定した動作が維持されます。
※ただし、スナップショットを長期間にわたり保持し続けると、使用されないデータが蓄積し、ストレージ容量の消耗を招く可能性があるため、不要なスナップショットは定期的に削除することが良いと考えております。

OSAで使用できる機能もESAではほとんど網羅しています。ESAが実装された当初のvSAN 8.0では、OSAで使用できた一部の機能がESAでは利用できませんでしたが、現在の最新バージョンであるvSAN8.0 U3では、さらに多くの機能が使用できるようになっています。
vSAN 8.0 U3の詳細は以下の記事をご確認ください。

VMware vSAN 8.0 Update 3 新機能のご紹介

ただし、デデュープについては、vSAN 8.0 U3でもまだESAに実装されていません。しかし、VMware Explore 2024の発表によると、今後「グローバルデデュープ」という新しい機能がvSANに導入される予定です。このグローバルデデュープは、OSAのデデュープよりも効率性が高く、さらに優れた機能になるとされているので、今後の注目要素の1つと考えております。

構築手順の違い

OSAとESAの構築手順の違いですが、OSAの構築手順は「基礎から学ぶ!vSAN 7.0検証環境構築」で、初心者の方々にもわかりやすくということを念頭にして、vSAN 7.0をベースに構築手順を紹介しておりますので、ご確認いただければと思います。

ESAに関しても現在執筆を進めており、「基礎から学ぶ!vSAN 8.0 ESA検証環境構築」の連載にて構築手順を紹介していきます。ぜひご確認ください。

まとめ

vSAN ESAは、従来のOSAと比較して多くの利点を提供し、次世代の仮想インフラに最適なアーキテクチャです。

高い要件が必要なユースケースに対応でき、I/Oパフォーマンスが重要なデータベースやリアルタイムのデータ分析など、高負荷ワークロードにおいて重要性を発揮すると思います。

また、キャッシュ層がないため、従来のようにキャッシュデバイスが故障した場合にディスクグループ全体が影響を受けることがなくなりました。各デバイスが個別に管理されることで、障害が発生しても影響範囲が最小限に抑えられ、可用性が向上します。

このようにOSAと比べるとESAは、ユースケースによって多くのメリットがあるかと思うので、ぜひキャッチアップから導入についてご検討いただければと思います。

以上、簡単ではございましたが、今回はvSAN ESAの概要紹介でした。

著者紹介

SB C&S株式会社
ICT事業本部 技術本部 技術統括部
第1技術部 1課
山田 和良 - Kazuyoshi Yamada -

VMware vExpert