
皆様、こんにちは。
Veeam Backup & Replication(以下、VBR)の初期構成(いわゆる「オールインワン構成」)について、事前に押さえておきたいポイントをご紹介します。
※バージョン12.x の情報に基づきます。
製品仕様は予告なく変更される場合があります。
オールインワン構成とは?
1 台の Windows マシンにvSphereのバックアップに必要なコンポーネントを集約した構成です。インストールはウィザードに従うだけで完了し、小規模環境のバックアップであればこの 1 台だけで運用できます。
オールインワン構成で展開されるコンポーネント
下記、オールインワン構成で展開されるvSphereバックアップに必要なコンポーネントです。
Backup Server
バックアップとリストア、レプリケーションを一元管理するコンポーネントです。データベースにPostgreSQLを使用します。
※Backup ServerとPostgreSQL(Microsoft SQL Serverの選択も可能)が一緒にインストールされます。
Backup Proxy
オールインワン構成では「VMware Backup Proxy」と「General-Purpose Backup Proxy」、2つのBackup Proxyが展開されます。
vSphereのバックアップにはVMware Backup Proxyを使用します。
VMware Backup Proxyはその名の通り、VMware vSphereバックアップ専用のBackup Proxyです。
仮想マシンからバックアップ対象のデータを読み出し、バックアップ先へ転送するコンポーネントです。その他、バックアップデータのリストアやレプリケーション処理も担います。
General-Purpose Backup Proxyは主にNASファイル共有、オブジェクトストレージのバックアップに使用します。
※Hyper‑V / Nutanix AHVを保護する場合は、それぞれ専用のBackup Proxyを配置する必要があります。
- ご参考 -
各コンポーネントのシステム要件
https://helpcenter.veeam.com/docs/backup/vsphere/system_requirements.html?ver=120
Veeam Backup & ReplicationによるHyper-Vバックアップ
https://licensecounter.jp/engineer-voice/blog/articles/20250408_VBR_hyper-v.html
Backup Repository
バックアップデータを受領し、ストレージに保存します。
リストアや二次バックアップでの転送処理も担います。
オールインワン構成では、バックアップデータの保存にWindowsのディスク領域を割り当てます。CドライブのみのプラットフォームではCドライブ自体がBackup Repositoryのディスク領域として使用されます。
推奨構成は容量効率・高速化に優れたReFSボリュームを別ドライブに割り当て、Backup Repositoryのディスク領域として使用します。
VBRを物理/仮想のどちらで展開するべきか?
オールインワン構成ではVBRのパフォーマンスやセキュリティを重視した場合、完全に独立した物理マシンでの構成がおすすめです。
仮想マシンでもVBRを展開できますが、オールインワン構成はそれなりのリソースを必要とします。仮想マシンで展開する場合、可能であればVBRのコンポーネントをBackup Serverのみ(VBR内のBackup ProxyとBackup Repositoryは利用しない)とする構成が適しています。Backup ProxyとBackup Repositoryはスケールアウト構成で展開します。
スケールアウト構成
バックアップ対象が増えた場合、VBRのリソースを増強する必要があります。
また、初期導入の要件からバックアップ対象の規模が大きい場合、オールインワン構成のリソース許容量を超える可能性があります。このような場合、VMware Backup Proxy、Backup Repositoryをスケールアウトします。
VMware Backup Proxyは物理マシンでも仮想マシンでも構成できます。
VMware Backup Proxy のOSはWindowsもしくはLinuxを使用します。
VMware Backup Proxyのスケールアウト構成はESX上への展開です。
展開方式:Virtual Appliance (HotAdd)
VMware Backup ProxyがESXホスト経由でバックアップ対象VMDK を参照し、スナップショットのデータを取得します。(VMware Backup ProxyとVMDK間の通信はネットワークを経由しません)
取得したスナップショットのデータはVMware Backup Proxyで重複排除・圧縮を行い、仮想マシン用のネットワークを経由してVMware Backup Repositoryに転送されます。
Backup Repositoryのスケールアウトではさまざまな構成が可能です。
手軽なBackup Repositoryとして、WindowsおよびLinuxを利用できます。
Windows推奨のReFSと同様に、LinuxではXFSのファイルシステムが推奨です。
また、Linuxではイミュータブル機能をもった強化Linuxリポジトリを追加コストなしで利用できます。
その他、NAS(NFS/SMB)や重複排除ストレージ、オブジェクトストレージも利用可能です。
- ご参考 -
低コストでバックアップのランサムウェア対策ができる!Veeamの「強化Linuxリポジトリ」機能のご紹介
https://licensecounter.jp/engineer-voice/blog/articles/20240327_content_25.html
オールインワン構成の課題
二次バックアップ
オールインワン構成のみで運用した場合、障害時にバックアップデータを失う可能性があります。障害に備えて二次バックアップの導入を強く推奨致します。
障害が広範囲へ及ぶ可能性を考慮し、可能な限り遠隔地へのバックアップをご検討下さい。
ネットワーク
vSphereのデータセンター外に位置するオールインワン構成へのバックアップデータの送信は、バックアップ対象の仮想マシンが存在するESXの管理ネットワーク(Management Network)を経由します。このバックアップデータはVMware Backup Proxyを経由していないため、重複排除・圧縮が適用されません。管理ネットワークが1GbEでバックアップデータの通信量が多い場合はESX上へのVMware Backup Proxy展開をご検討下さい。
- Tips -
バックアップ対象のvSphereデータセンター内にオールインワン構成を仮想マシンとして展開し、バックアップ対象の仮想マシン(VMDK)にアクセスできるケースではVirtual Appliance (HotAdd)として動作します。
まとめ
VBRオールインワン構成のみでバックアップできる環境はvSphereの仮想マシン、及び、NASファイル共有、オブジェクトストレージです。
小規模なvSphere環境のバックアップであれば、オールインワン構成で収まりますが、余裕をもったバックアップを行うにはBackup Proxy及び Backup Repositoryのスケールアウトをご検討下さい。
今回、VBRオールインワン構成を前提にvSphereのバックアップに必要なコンポーネントに注目してご紹介させて頂きました。
VBRオールインワン構成ではファイルレベルリストアやインスタントリカバリ等で使用するマウントサーバ、NASのバックアップで使用するキャッシュリポジトリなどのコンポーネントも兼任できますが、機能を理解してのコンポーネント設計・サイジングが必要となります。
※他のコンポーネントは別の機会でのご紹介を予定しております。
VBRのご利用経験がない方は、ぜひ無償評価版でお試し下さい。
https://www.veeam.com/jp/backup-replication-virtual-physical-cloud.html
著者紹介

SB C&S株式会社
ICT事業本部 技術本部 技術統括部 第1技術部 2課
データマネジメント事務局
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