
みなさん、こんにちは。SB C&S 市島です。
本ブログ記事では、2025年9月にOmnissaが開催した"Omnissa ONE 2025 Las Vegas"で発表された内容をお届けします。
前編の記事では、Keynoteセッション冒頭に語られたOmnissaのビジョンと、Horizonのアップデート情報をお届けしました。
【前編の記事はこちらから】
後編では、Workspace ONEとOmnissaのAIテクノロジーに関するアップデートをご紹介します。
※可能な限り正確な情報を掲載するよう努めていますが、イベント発表直後の内容を含むため、後日の修正が必要となることや、情報が古くなることで正確性を保てなくなる可能性もあります。必ずしも情報の正確性を保証するものではない事をあらかじめご了承ください。
Workspace ONE アップデート
Workspace ONEに関するアップデートについてご紹介します。AppleのDay-Zero OSサポート(バージョン26のサポート)や、Enterprise App Repositoryの拡張など、Workspace ONEに関する多くの機能アップデートが紹介されました。本ブログ記事では発表された情報の中からピックアップしてご紹介します。
Next-Generation Windows Management
Workspace ONE UEMによるWindows管理の内部的アーキテクチャが切り替わっていく方針が、" Next-Generation Windows Management"として発表されました。
WindowsをMDMソリューションで管理する際は、Windows OSがもともと兼ね備えているMDM 用 API を使った管理が行われていました。今回の発表により、今後はWorkspae ONEのIntelligent Hub エージェントベースのWindowsデバイス管理の仕組みに切り替えていき、よりWorkspae ONE独自の柔軟な管理が可能になる方針です。
以下はブレイクアウトセッションで紹介された、Windowsデバイス管理の内部的な仕組みを図で表現したものです。Intelligent Hubによって管理可能な機能範囲が拡大していることが、おわかりいただけるかと思います。
このアップデートにより、MicrosoftのSCCM(System Center Configuration Manager)やIntuneなどの別のデバイス管理ソリューションと併用した状態でのWorkspace ONE UEMによるデバイス管理が可能になり、同時利用や既存ソリューションからWorkspace ONEへの移行が柔軟に行えるようになります。
Windows Server Management
Workspace ONE UEMによる、Windows Server OSの管理がLimited Availability(限定提供)として発表されました。
従来Windows Server OSは、MDMによる管理機能をOS自体が持っていないため管理対象OSとしてサポートしていませんでした。前述のNext-Generation Windows Managementのように、Intelligent Hub エージェントベースでのWindows OS管理の仕組みが整備され、Windows Server OSも同様にWorkspace ONE UEMの管理コンソールで一元的な管理が可能になります。
ブレイクアウトセッションでは、本機能利用時に必要となる今後リリース予定のWorkspace ONE Server Essentials SKUの具体的な紹介もあり、まもなくGAされることがうかがえました。
この機能アップデートは、現地でご一緒させていただいた日本のお客様も非常に関心がある発表で、本機能にクローズアップしたブレイクアウトセッションに日本のお客様も複数の方が参加していました。
スマートフォン・PCなどのクライアントデバイスだけでなく、サーバー管理もあわせて担当されている情報システム部門のご担当者からすると、クライアントデバイスもサーバーも1つのツールで統合的に管理できる今回の発表に高い期待を持っているとのことで、筆者個人としても印象的でした。
Vulnerability Defense(CrowdStrikeとの連携)
今回発表されたVulnerability Defense は、デバイス・アプリケーションの脆弱性情報をOmnissa プラットフォーム上で統合管理します。
従来から、Omnissa Intelligenceのコンソールでデバイスの脆弱性情報を確認する機能が提供されていましたが、主な情報はデバイスのOSバージョンやパッチ適用状況からの限定的な分析でした。
今回のOmnissa ONEでは、脆弱性管理機能におけるCrowdStrikeとの連携が発表され、CrowdStrike Falconプラットフォームから管理デバイスの脆弱性情報・セキュリティステータス情報をOmnissaプラットフォームが受け取れるようになります。
・Workspace ONEとCrowdStrike Falcon Exposure Managementの連携イメージ図
この連携機能により、Omnissaプラットフォームの1つのコンソールでOSやアプリケーションの脆弱性情報(CVE/CVSSの情報)を可視化し、パッチ適用による修復作業、修復処理の適用状況の調査といったセキュリティ対応を統合プラットフォームで一元管理できると発表されました。
・Workspace ONE UEMコンソール上で確認したアプリの脆弱性(CrowdStrikeとの連携による情報)
CrowdStrikeと連携したVulnerability Defenseの機能は、2025年後半に開始される予定とのことです。また、将来的にはTenableなどの他ベンダーとの連携を拡張する計画や、Workspace ONE独自の脆弱性スキャン機能の提供も予定されていると、ブレイクアウトセッション中で紹介されていました。
Apple platform SSO with Omnissa Access(Beta)
macOS 14から搭載されているApple platform SSO機能のIDプロバイダーとして、Omnissa Accessが対応予定であるとの発表がありました。この機能が実装されると、macOSのログイン時の認証を、Omnissa Accessに統合できるようになります。
Platform SSOを使用しmacOSのログイン認証をIDaaSに統合したい場合は、Microsoft Entra IDやOktaなどの対応したIDプロバイダーで構成する必要がありましたが、将来的にOmnissa Accessによる統合認証がサポートされるようになります。
OmnissaのAI イノベーション
最後に、Omnissaの掲げる"Autonomous Workspace(自律型のワークスペース)"の実現において中核的機能になる、AIテクノロジーのアップデートについてご紹介します。
AI Assistant - Omni(今年後半リリース予定)
昨年のOmnissa ONE 2024で発表されたOmnissaのAIアシスタント「Omni」が、今年後半にリリース予定と発表されました。
Horizon・Workspace ONEといったOmnissa製品の管理・運用に関するドキュメント・KBの検索、クライアントの状態調査、スクリプトの自動生成、トラブルシュートといったこれまで管理者の方が時間をかけて調査・対応をしていた作業を支援するユースケースが紹介されました。
昨年の発表時点では、Omniはコンセプトの紹介やデモ用の動画紹介でしたが、今回のイベントでは実際にOmnissa Connect(管理コンソール)の画面でOmniが動作している実際の姿をブースで見ることができ、リリース間近であることが感じ取れました。
・Omnissa Intelligenceによるデバイスデータ検索を、Omniに依頼して調査するデモ
本ブログの著者個人としてもOmniのリリースは大変期待しており、Workspace ONEの運用をされている方にとても有効なソリューションになると感じています。従来からOmnissa Intelligence(Workspace ONE Intelligence)のコンソールによって、管理しているデバイスの様々な情報の可視化・分析が可能でしたが、ツールを使いこなすための学習コストが高いことをネックに感じていました。
Omniの実装により管理者が調査したいと思った情報をテキストで入力するだけで、Omniが調査スクリプト・ワークフロー、可視化のためのダッシュボードを作成してくれるようになり、多くのお客様がより簡単にOmnissa製品を活用できるようになるのではないかと思っています。
Omnissa AI Agentic Service
Omniの発表に続いて紹介されたのが、Omnissa AI Agentic Serviceです。これはOmnissaプラットフォームによる管理・運用の操作を自律的に実行するAIワークフローの機能です。
Keynoteセッションでは、Omnissa AI Agentic Serviceの具体的な利用例として、脆弱性検知時の対応が紹介されました。脆弱性検知時の対応ワークフローを以下の流れで提案し、スクリプトの作成やパッチの適用・事後の調査作業を提案し、管理者に対して各種対応実施を提案してくれます。
- 脆弱性の優先順位付け:AIが脆弱性の一覧を解析し、影響度の高いものから順に整理し対応をレコメンド
- 修正プランの作成:対象となるソフトウェアを特定し、最新アプリの取得や対応スクリプトを生成
- 展開ポリシーの設定:リスクを抑えながら徐々に展開するため、社内デバイスへの段階的な配布ルールを作成
- 承認と通知:IT管理者はOmnissa AI Agentからの提案を確認して修正や承認を実施、進行状況はSlackなどに通知
- レポートの生成: AIが要約レポートを作成、どのデバイスに影響があり、どのような処理が行われたかを報告
Omnissaのコンセプトである"Autonomous Workspace(自律型のワークスペース)"を具体的なものとする機能であり、今後のリリースがとても楽しみです。
おわりに
Omnissa ONE 2025 Las Vegasで発表された内容の中から、注目ポイントをピックアップしてご紹介しました。
昨年と比較し、今年のOmnissa ONEの発表は、Autonomous Workspaceの実現に向けた具体的な機能アップデートが目立った印象です。特にOmnissa AI Agentic ServiceのデモはAIが自律的にワークスペースの運用を行うもので、Omnissaが目指す未来像の完成形の1つだと感じました。
また、本イベントのKeynoteセッションでCEOのShankar氏が語っていた、OmnissaがEUC(End User Computing)をメインに掲げる唯一の独立企業であることも改めて印象に残りました。専業だからこそできるデジタルワークスペースの統合と拡張、そして様々なベンダーとのエコシステム拡大を通じた進化が今後も期待されます。
本ブログでのご紹介は以上です。
今回発表されたさまざまな機能のリリースを楽しみにするとともに、今後もエンドユーザー様やパートナー様に有益な技術情報を届けていきたいと思います。
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著者紹介

SB C&S株式会社
ICT事業本部 技術本部 技術統括部
第1技術部
市島 拓弥 - Takuya Ichijima -
VMware vExpert