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Microsoft の「VM Conversion」で VMware 仮想マシンを Hyper-V へ簡単移行!

仮想化
2025.11.18

皆さんこんにちは。SB C&Sの湯村です。

VMwareライセンス体系の大幅な変更によって多くのユーザーがVMwareから別の仮想化環境に移行せざるを得なくなっています。今回は、VMware基盤からHyper-V基盤へ仮想マシンを移行する方法に焦点をあて、Microsoftが提供を開始したVMware仮想マシン移行ツール「VM Conversion」をご紹介します。

※注意事項※
本ブログでご紹介する「VM Conversion」は、ブログ公開時点(2025年11月18日)でプレビュー機能となります。機能や仕様については新しいバージョンが出る度に変更となる可能性があります。最新の情報についてはMicrosoft Learnの紹介ページをご確認ください。

目次

1.「VM Conversion」とは?
2.「VM Conversion」の利用条件
3.使用した検証環境
4.前提条件の準備
5.Windows Admin Centerの初期設定
6.「VM Conversion」拡張機能のインストール
7.「VM Conversion」による仮想マシンの移行

1.「VM Conversion」とは?

「VM Conversion」はWindows Admin Center(※)の拡張機能としてインストールされ、移行元のVMware環境と移行先のHyper-VホストをWindows Admin Centerと連携させることで、VMware仮想マシンをHyper-Vホストへ移行する機能です。シンプルですがプレビューの段階で既に利便性の高い移行ツールとなっています。
(※)Windows Admin CenterはMicrosoftが無償で提供する「Windows Server OSやWindows Client OSをブラウザで一元管理できるツール」です。オンプレミス環境の管理ツールとして古くから多くのユーザーに利用されています。

ここで、Microsoftが提供している移行ツールと比較してみましょう。既に、「System Center Virtual Machine Manager(SCVMM)」や「Azure Migrate」といった、VMware基盤からHyper-VやAzureへ移行できるツールが存在します。

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VM Conversionが他の移行ツールと異なる点は、ズバリ以下の3点です。

  • 無償で使用できる。
  • 移行元や移行先にエージェント等の役割をデプロイする必要が無い。
  • Windows Admin Cener由来の簡単な操作が可能。

それぞれの移行ツールは用途や利用環境の違いがあるため、同列に比較しにくいのですが、VMware to Hyper-Vの移行を行うためには、これまでSCVMMを利用するしかありませんでした。(※)ただし、高度なスキルを要することや、エージェントのインストールが必要になる等、少し使いにくいところもありました。
(※)Veeam等の3rdパーティのバックアップソリューションを使用すれば移行可能です。

2.「VM Conversion」の利用条件

VM Conversionを利用するための前提条件を以下に列挙します。(202511月時点の情報)

  • Windows Admin Center(以下、WAC)の前提条件
    • WAC(バージョン2410)をゲートウェイサーバーとしてインストールする。
      ゲートウェイサーバーWACをクライアントとホストの間を中継するサーバーにインストールする方式
    • WACをインストールしたサーバーには、以下モジュールのインストールやコピーが必要となる。
      • PowerCLI」のインストール
      • Microsoft Visual C++ 再頒布可能パッケージ」のインストール
      • Visual Studio 2013 Visual C++ 再頒布可能パッケージ」のインストール
      • VMware Virtual Disk Deployment KitVDDK)バージョン0.3」のファイルコピー
  • 移行元VMware環境の前提条件
    • 移行対象の仮想マシンがvCenter Serverの配下にある。
    • 拡張機能からvCenter Serverに接続するために、FQDN/ユーザー名/パスワードが必要となる。
    • WACをインストールしたサーバーからネットワークが到達できる。
      PowerCLIvCenter Serverにアクセスできること。
    • 仮想マシンの仮想ディスクがvSAN上に配置されていないこと。
    • 仮想マシンにスナップショットが無いこと。
  • 移行先Hyper-Vホストの前提条件
    • WACをインストールしたサーバーからネットワークが到達できる。
      WACHyper-Vホストを登録できれば問題ない。
    • クラスターへ移行する場合は、アクセス可能な共有ストレージ(クラスター共有ボリューム)のパスが必要。

多くの条件がありますが、WACサーバーにインストールするモジュールをしっかり準備できていれば、その他はごく一般的な条件です。以降、実際に検証して得られた詳しい移行ステップをご紹介します。

3. 使用した検証環境

使用した検証環境は以下の通りです。

  • 移行元
    • VMware ESXiホスト:8.0 Update 3b8.0.3-24280767
    • vCenter Server:8.0 Update 3c8.0.3-24305161
    • 移行対象仮想マシン:Windows Server 2022
  • 移行先
    • Hyper-Vホスト:Windows Server 2022Hyper-Vホスト3台(Nested ESXi環境)でフェールオーバークラスターを構築
    • クラスター共有ボリューム(CSV):Windows Server 2022仮想マシンにiSCSIターゲットを構築して利用
    • Active Directory(兼DNS):フェールオーバークラスター認証用
  • Windows Admin Centerインストール用仮想マシン:Windows Server 2022

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また、「Hyper-Vのインストール」、「外部仮想スイッチの作成」、「フェールオーバークラスター構築」、「クラスター共有ボリュームの作成」については、Hyper-Vの基礎を学習できるブログに記載していますので、参考にしてみてください。

4. 前提条件の準備

VM Conversion拡張機能を利用するための前提条件を準備します。本記事では、以下2つのインストール手順は割愛します。

4.1. PowerCLI のインストール

1. WACがインストールされたWindows OSにログインし、管理者権限でPowerShellを開きます。

2. 次のコマンドを実行して、PowerCLIモジュールをインストールします。
※本環境はインターネットに接続されています。

Install-Module -Name VMware.PowerCLI

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3. 次のコマンドを実行して、PowerCLIモジュールがインストールされていることを確認します。

Get-Module -Name VMware.PowerCLI -ListAvailable

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4. 次のコマンドを実行して、vCenter Serverへの接続テストを行います。
※ユーザー名とパスワードはvCenter Serverの管理者アカウントを指定します。

 Connect-VIServer -Server "<vCenter Server FQDN>" -User "<username>" -Password "<password>" -Force

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4.2. Virtual Disk Deployment Kit(VDDK)ver. 8.0.3 のファイルコピー

VDDKBroadcom(旧VMware)のDeveloper Portalからダウンロードします。指定のバージョン「8.0.3」以外のものをダウンロードしないように気を付けましょう。
※ダウンロードするにはBroadcomのアカウントが必要です。

1. Developer Portalにアクセスしたら、画面右上で [v8.0] を選択し、[VMware Virtual Disk Development Kit (VDDK) 8.0.3 for Windows] をダウンロードします。

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2. ダウンロードしたファイルを解凍し、解凍後のファイルを全て以下のパスにコピーします。
C:\Program Files\WindowsAdminCenter\Service\VDDK
WACインストール後に「Windows Admin Center」フォルダが自動で作成されます。
※「VDDK」フォルダは手動で作成してください。

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5. Windows Admin Center の初期設定

前提条件の準備が完了したら、WACにログインして移行するための環境を整備します。まずは、WACに移行先となるHyper-Vホストおよびフェールオーバークラスターの情報を登録します。

1. WACをインストールしたマシンのデスクトップにある [Windows Admin Center(v2)] をダブルクリックします。

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2. ブラウザが開きますので、警告の詳細情報を表示してWACにアクセスします。

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3. WACをインストールしたマシンのドメイン管理者アカウント情報を入力し、[サインイン] をクリックします。
※Hyper-Vフェールオーバークラスターにおける運用は、基本的にホストやWACマシンが参加しているドメインの管理者権限で行います。一部の操作で権限が足らずに実行できない場合があるためです。

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4. ログインすると直ぐに、WACの拡張機能(必須コンポーネントのみ)が自動的にインストールされていくことがわかります。今回使用するVM Conversionはオプション機能なので、後ほど手動でインストールします。

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5. ログイン後は、WACをインストールしたマシン自身の情報が表示されています。[+追加] をクリックします。

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6.「リソースの追加または作成」ページで、「サーバー クラスター」の [追加] をクリックします。
※クラスターを追加すると、クラスターに所属するHyper-Vホストも一緒に登録できます。

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7. クラスター名を入力すると、事前に作成しておいたフェールオーバークラスターが検出されます。[さらにクラスターにサーバーを追加] にチェックを入れると、クラスター配下のHyper-Vホストが検出されます。全て正常に検出されたら [追加] をクリックします。
※フェールオーバークラスターやHyper-Vホストが検出されている時点で、WACからHyper-V環境へネットワークが到達していることになります。ここで検出に失敗した場合は、ドメイン参加が完了していなかったり、ファイアウォールやネットワークの設定が正しくない可能性があります。見直してみてください。

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8. リソース一覧に、フェールオーバークラスターとHyper-Vホストの名前が全て表示されていることを確認します。

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6.「VM Conversion」拡張機能のインストール

続いて、本題となるVM Conversion拡張機能をインストールします。

1. 以下の手順を実行し、「VM Conversion」のインストールを行います。

  • 画面右上の [歯車マーク] をクリックします。
  • 左ツリーの [拡張] をクリックします。
  • 拡張機能一覧にある [VM Conversion(Preview)] を選択します。
    ※ご覧の通り、インストール可能な拡張機能は、MicrosoftだけでなくDellやLenovo等様々なハードウェアメーカーから提供されています。メーカー独自の拡張機能をインストールすることによって、メーカー独自の運用管理機能を使用することができます。
  • [インストール] をクリックします。

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2. インストール中の通知は [OK] をクリックして閉じます。

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3. [インストール済の拡張機能] をクリックし、[VM Conversion(Preview)] がインストールされていることを確認します。

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7.「VM Conversion」による仮想マシンの移行

いよいよVMware仮想マシンを移行します。今回は、VMware Toolsがインストールされていない仮想マシン「vm-01-offtools」とVMware Toolsがインストールされている仮想マシン「vm-02-ontools」の2台を移行し、それぞれどのような挙動になるか確認します。

7.1. 仮想マシンの移行(VMware Tools無し)

まずはVMware Toolsがインストールされていない仮想マシンを移行します。

1. WAC画面上部の [設定] から [すべての接続] をクリックします。

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2. リソース一覧に戻るので、[クラスター名] をクリックします。

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3. クラスターマネージャーの左ツリーにある [VMの変換(プレビュー)] をクリックし、[vCenterに接続する] をクリックします。
※PowerCLIが正しくインストールされていると「PowerCLI is installed. Click "Connect to vCenter" to proceed.」の文が表示されます。

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4. vCenter ServerのFQDNおよび管理ユーザーのアカウント情報を入力し、[送信] をクリックします。

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5. vCenter Server接続中の通知は [OK] をクリックして閉じます。

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6. vCenter Serverへの接続が成功すると、vCenter Server配下の同期可能な仮想マシンが一覧で表示されます。VMware Toolがインストールされている仮想マシン [vm-02-ontools] のみIPアドレスが表示されていることも確認できます。
※以下は環境の都合上、移行対象の仮想マシンのみ表示しています。

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7. VMware Toolsがインストールされていない [vm-01-offtools] を選択し、[同期] をクリックします。

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8. 同期先のフォルダは、デフォルトのパスにHyper-Vホストのローカルフォルダが指定されています。しかし、今回は移行先にクラスターを指定しているため、共有ストレージのパスに変更する必要があります。[参照] をクリックします。

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9. 事前に作成しておいた以下のクラスター共有ボリューム(CSV)を選択し、[OK] をクリックします。
C:\ClusterStorage\Volume1
※CSVを作成する際はデフォルトで上記のパスになります。

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10. [同期] をクリックします。

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11. プリチェックが始まり、完了すると同期が始まります。同期中に裏で行われているのは、移行対象仮想マシンの仮想ディスクをHyper-Vホストにコピーする(vmdkからvhdxに変換する)作業です。同期中に失敗すると、状態欄にエラー内容が表示されますので、それを基にトラブルシューティングを行いましょう。

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12. 同期が正常に完了したら、[移行] タブをクリックします。

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13. 移行の状態が [移行の準備完了] となっていることを確認し、[移行] をクリックします。

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14. [続行] をクリックします。

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15. 正常に移行が完了したら、通知欄を見てみましょう。同期完了後から発生した差分のデータが同期された後、移行元の仮想マシンをパワーオフし、同期先のvhdxファイルから仮想マシンを作成していることがわかります。今回の検証では、移行開始から移行先で仮想マシンがパワーオンするまで、わずか2分程度しかかかりませんでした。仮想マシンのリソースサイズや、保持しているデータ量によって変わると推測できますが、最低限のダウンタイムで移行できるのは非常に頼もしいですね。

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16. 左ツリーの [仮想マシン] をクリックすると、クラスター内のいずれかのHyper-Vホストで仮想マシンがしっかり稼働していることがわかります。また、仮想マシンにコンソール接続したところ、移行前に設定していた固定IPアドレスは削除されていたことが分かりました。

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7.2. 仮想マシンの移行(VMware Tools有り)

最後にVMware Toolsがインストールされている仮想マシンを移行します。
※仮想マシンを同期する手順までは同様ですので、移行開始時からの手順をご紹介します。

1. VMware Toolsがインストールされている [vm-02-ontools] を選択し、[移行] をクリックします。

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2. 移行時の条件設定を求める画面が表示されます。今回は以下のように設定し、[続行] をクリックします。

  • [静的IPアドレスを移行する] にチェックを入れます。
    ※静的IPアドレス移行は、移行元の仮想マシンに割り振ってある静的IPアドレスを保持したまま仮想マシンを移行する機能です。適用するには、移行元の仮想マシンにVMware Toolsがインストールされている必要があります。
  • [Uninstall VMware Tools] にチェックを入れます。
    ※静的IPアドレス移行が完了した後にVMware Toolsをアンインストールしてくれる、とても便利な機能です。
  • 「ソースVMの資格情報」には、移行元仮想マシンのWindows管理者アカウント情報を入力します。

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3. 移行が開始します。正常に移行が完了したら、通知欄を見てみましょう。VMware Tools無しの仮想マシンに対する作業に加えて、静的IPアドレスの移行やVMware Toolsのアンインストールが行われています。こちらの検証でも、移行開始から移行先で仮想マシンがパワーオンするまで、わずか3分程度となり、タスク量に反して短いダウンタイムとなりました。つまり、移行対象の仮想マシンにVMware Toolsをインストールしておけば、ダウンタイムから復帰した直後からすぐにサービスを利用することができるため、移行プロジェクトにおける工数削減に繋がります。

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以上、VM Conversion拡張機能による仮想マシンの移行についてご紹介しました。

まだプレビュー段階ではありますが、手軽に利用できてダウンタイムの少ない移行ができるという意味では既に優れている移行ツールかと思いますし、Microsoft純正のVMware to Hyper-V移行ツールとしては久しぶりの登場になりますので、今後のアップデートに期待したいと思います。

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著者紹介

SB C&S株式会社
ICT事業本部 技術本部 技術統括部 第1技術部 2課
湯村 成一 - Seiichi Yumura -

Dell Technologies・HPE製品担当のプリセールスエンジニア。
主に仮想化・HCIを専門領域としている。