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Omnissa Horizon on Nutanix AHV検証レポート-デスクトッププールの構成-【Horizon 2506 LAリリース版】

デジタルワークスペース
2025.11.19

こんにちは。SB C&Sの石井です。

近年、Omnissa HorizonがNutanix AHVへの対応を発表し、vSphere以外の仮想化基盤の利用が注目されてきているかと思います。

今回は、Nutanix AHV上でHorizonを構成し、デスクトッププールの機能を検証しました。また、vSphere環境と比較し、現段階での差異や導入を検討する際のポイントを整理しました。

※今回の検証で使用したHorizon 2506は限定サポート(Limited Availability)のため一般公開(General Availability)とは差異がでる場合があります。あらかじめご了承ください。

Horizon 2506の限定サポートの詳細については以下をご確認ください。
Omnissa Horizon on Nutanix AHV LA(限定サポート)のご紹介

vSphere環境とNutanix AHV環境におけるデスクトッププールの比較

こちらは、Nutanix AHV環境とvSphere環境におけるデスクトッププールの簡単な比較になります。

項目 Nutanix AHV vSphere
展開方式(クローン方式) ・インスタントクローン Mode B ・フルクローン
・インスタントクローン Mode A
・インスタントクローン Mode B
ユーザー割り当て ・専用
・フローティング
・専用
・フローティング
OSカスタマイズ ・Sysprep ・Sysprep
・Cloneprep
RDSH ・手動ファーム ・手動ファーム
・自動ファーム
電源管理 サポート サポート
メンテナンス サポート サポート

両環境で共通してサポートしている機能が多い一方で、大きく異なるのは展開方式(クローン方式)とOSのカスタマイズ、RDSHによる展開の部分になります。次章からそれぞれの違いについて紹介していきます。
※Nutanix AHVでもCloneprepおよびRDSHの自動ファームは今後サポート予定です。

展開方式(クローン方式)

次に、デスクトッププールの展開方式(クローン方式)について確認します。
AHV環境では、インスタントクローンMode Bによる方式が採用されています。

このMode Bによる展開手法では、まずデスクトップの基となるゴールドイメージからテンプレートを準備します。そのテンプレートのフルクローンとしてレプリカVMが作成されます。その後、レプリカVMからユーザーが利用するVDIを展開していきます。展開されたVDIはデスクトップ固有の差分情報だけを保存することでストレージ消費を抑えつつ効率的に運用することができます。

展開方式-1.png

 

一方、vSphere環境ではインスタントクローン Mode Bに加えてインスタントクローン Mode Aの方式も利用することができます。Mode Aによる展開手法では、レプリカVMを作成するところまではMode Bと同様です。ただしその後に、レプリカVMからペアレントVMが作成される点が大きく異なります。このペアレントVMはサスペンド状態のままメモリがアクティブな状態で待機しており、そのアクティブな状態のマシンを使ってユーザーが利用するVDIを即座に展開します。Mode Aで使用されるこの仕組みは、vCenter ServerのvmForkテクノロジーを使用しているためAHV環境では動作しません。

展開方式-2.png

 

ここまで見ると「vSphere環境のほうがMode Aも使えて便利なんじゃないか」と思うかもしれません。ただ、Nutanix AHVにはゼロデータコピー機能があるため、Mode Aが使えないことによる大きなデメリットはありません。

ゼロデータコピーは、同一のデータブロックを物理的に複製せずに参照する仕組みでクローン作成時も元データをコピーせず、メタデータのみを作成します。そのため、非常に高速に展開でき、ストレージの増加もほとんど発生しません。HorizonにおけるVDIの展開でもこの仕組みが採用されており、Mode AのようにペアレントVMを用意しなくても、効率的にVDIを展開することができます。

また、Mode AではペアレントVMをサスペンド状態で維持する必要があり、メモリを常時消費します。大規模環境だとペアレント VMの数が増えてリソースを圧迫することもあるため、必ずしもMode Aが有利とは限りません。

さらに、最近のvSphere環境でもデフォルトはMode Bが採用されています。そのため、展開方式(クローン方式)がAHV環境でHorizonを採用しない障壁にはならないかと思います。

 

ここまで、インスタントクローンの(ModeA/ModeB)について説明しましたが、vSphere環境ではフルクローン方式も利用できます。フルクローンは、ゴールドイメージを完全にコピーして1台の独立したVDIとして動作をする方式です。インスタントクローンとは異なり、ユーザーがログオフしてもVDIがリフレッシュされずに残り続ける特徴があります。

AHV環境ではフルクローンの展開方式はありません。そのため、「VDIを利用すると毎回リフレッシュされてしまうのでは?」と思われますが、AHV環境では「パーシステンス」という設定を行うことで同様の運用を実現できます。

展開方式-3.png

パーシステンスとはログオフ後にVDIのディスクを保持するか、再作成するかを指定する設定になります。「非パーシステント」に設定すると、ログオフ後にVDIが削除され再作成されます。「パーシステント」に設定するとログオフ後もVDIが残り続け、ユーザーの変更内容が保持されます。

そのため、AHV環境ではフルクローン機能はありませんが、インスタントクローンのパーシステンス設定を行うことで従来のフルクローンと同様の運用をすることが可能です。

OSカスタマイズ

続いて、OSカスタマイズについて確認していきます。

デスクトッププールの展開時には、作成されたマシンをそれぞれ固有の設定や識別情報を持つマシンとして利用できるように初期化処理が行われます。この処理を担当するのが「Sysprep」と「Cloneprep」になります。

AHV環境では現時点でSysprepのみがサポートされています。SysprepはWindows標準のツールでOSのSID(セキュリティ識別子)やコンピューター名などをリセットし、クリーンな状態で展開することができる仕組みです。

一方で、vSphere環境ではSysprepに加えてCloneprepもサポートされています。

カスタマイズ-1.png

 

CloneprepはHorizon独自の初期化機能で、OSの再起動を実施せずに高速にマシンを展開することができるのが特徴です。ただし、SID(セキュリティ)のリセットなどは行わず、必要最低限の項目だけを初期化する仕組みになります。

 

※重要: Windows更新プログラムによるOmnissa Horizon:認証不可事象について
(対象KB:KB5064081KB5065426

Microsoft側のWindows更新プログラムの影響でOmnissa Horizonの仮想デスクトップにログインできない、ファイルサーバーにアクセスできない、といった事象が発生する可能性があります。

Windows 11Windows Server 2025で「KB5064081」または「KB5065426」を適用したデスクトップ環境において、Sysprepを実行していない形式でデスクトップ展開されている場合、ログインやファイルサーバーアクセスが失敗する可能性があります。

これは、Microsoft社の提供するWindows更新プログラムにより、SIDの重複検出機能が強化されたことが原因です。

SIDの重複は、Omnissa Horizonのインスタントクローン展開時にCloneprepを使用している場合に発生するため、該当する機能を利用している場合はWindows更新プログラムによって影響を受ける可能性があり注意が必要です。

詳細は以下のドキュメントをご参照ください。
Kerberos and NTLM authentication failures due to duplicate SIDs(Microsoft)
Potential impact to Instant Clones from Microsoft Windows update KB5065426 (6001154)

 

なお、AHV環境でも一般提供(GA)のタイミングではCloneprepのサポートが予定されています。しかし、この影響により次のバージョンでCloneprepがサポートされるかは分かりません。今後のアップデート動向には注意が必要かと思います。

RDSH(Remote Desktop Session Host)

続いてRDSHについて確認していきます。

RDSHは、サーバーOSに搭載されたマルチユーザーログオン機能を利用し、1台のサーバーOSを複数人で共有して利用できる仕組みです。そのため、VDIのようにユーザーごとに個別の仮想マシンを準備する必要がありません。

このRDSHは、大きく分けて2つ形式があります。1つのサーバーOS上で複数人が同じデスクトップを利用する「公開デスクトップ」形式と1つのサーバーOSにインストールされたアプリケーションを複数人で利用する「公開アプリケーション」の2つの形式があります。

RDSH-1.png

 

このように、RDSHでは1つのサーバーOSを複数ユーザーで共有して利用できますが、仮想化基盤によってプールの展開方法が異なります。

AHV環境では、現在手動プールのみサポートされています。そのため、管理者があらかじめ作成したWindows Serverを手動プールで登録することは可能です。

一方、vSphere環境では、自動プールと手動プールの両方に対応しています。自動プールを利用することでVDIと同様にサーバーOSを複数台自動的に展開・管理することができます。

AHV環境でも今後のバージョンでRDSHの自動プールがサポートが予定です、そのため、現時点では制限がありますが、今後AHV上でHorizonを利用する上で大きな障壁にはならないかと思います。

まとめ

今回は、Omnissa Horizon on Nutanix AHVのデスクトッププールについて検証した内容をまとめました。vSphere環境と比較すると、現時点ではまだ利用できる機能に制限がある部分はありますが、今後のバージョンでサポート予定のため、今後の進化に期待したいです。

また、AHVの大きな特徴であるゼロデータコピーによるデスクトップの展開は、ストレージやメモリのリソースを効率的に活用できる大きな利点だと感じました。

なお、1217日(水)にOmnissa Horizon on Nutanix AHVのセミナーも予定しております。今回紹介したデスクトッププール構成だけでなく、AHV環境全体でのポイントなど紹介する予定のため是非ご参加ください。
詳細は以下リンクからご参照ください。
【12/17(水) Webセミナー】Omnissa Horizon on Nutanix AHVのご紹介 【NTCセミナー #15】

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著者紹介

SB C&S株式会社
ICT事業本部 技術本部 技術統括部
第2技術部 2課
石井 基久 - Motohisa Ishii -

Omnissa Tech Insider