
この記事は、Nutanix製品のソフトウェアバージョン AOS 7.5.x.x/pc.7.5.x.x 時点の情報をもとに作成しています。その後のバージョンアップデートにおける機能追加や仕様変更などについては、最新のメーカードキュメントをご参照ください。
Prism Centralのバックアップ機能に関する連載記事のリンクは以下の通りです。
第1回-PCBRの紹介 ←本記事
第2回-PCBRの使用法 Continuous Backup編 ←作成予定
第3回-PCBRの使用法 Point-in-Time Backup編 ←作成予定
はじめに
こんにちは、SB C&Sの友松です。最近のNutanix環境では、Prism Centralの展開が必須となりましたが、Prism Central 自身のバックアップ方法については、あまり詳しく知られていないことも多いのではないでしょうか。
そこで今回は、Prism Centralに標準搭載のバックアップ機能 Prism Central Backup and Restore(以下、PCBR)について紹介します。あわせて前半では、前提知識としてPrism Centralの可用性についても整理します。
ノード障害におけるPrism Centralの可用性について
PCBRを紹介する前に、Nutanix環境において、ノード障害に対するPrism Centralの冗長構成や可用性について解説します。Prism Centralの保護を考えるうえでは、まず「Nutanixクラスターの可用性によってどこまで耐えられるのか」を押さえておくことが重要です。
レプリケーション・ファクターとHigh Availability
Prism Centralが稼働するNutanixクラスターでは、標準機能であるレプリケーション・ファクターによって、データがノードをまたいで冗長化されます。これはPrism Central関連のデータについても同様です。
そのため、ノード障害が発生した場合でも、ハイパーバイザーのHigh Availability(HA)機能と連携し、停止した仮想マシンはクラスター内の別ノードで再起動できます。Prism Central VMも同様の考え方で復旧可能です。
なお、ノード障害によって1台構成のPrism Centralが一時的に停止した場合でも、クラスターの仮想ネットワーク(VLAN)やストレージサービスそのものが停止するわけではありません。そのため、多くのケースでは、一般的な仮想マシンの稼働への影響は限定的です。
3台冗長構成による可用性の強化
一方で、Flow Virtual NetworkingのVPC / オーバーレイなど、Prism Centralへの依存度が高い機能では、Prism Centralの一時停止がネットワークサービスへ影響する可能性があります。こうした要件がある場合は、3台構成でのPrism Central展開が推奨されており、ノード障害時の可用性を高めることが可能です。
このように、Prism Centralには、データの冗長化やPrism Centralの複数台構成によって、ノード障害に耐える機能が備わっています。一方で、クラスター外部へのバックアップが必要な場合 や、クラスター障害発生時に別クラスターへPrism Centralを復旧したい場合 には、ここから紹介する PCBR が有効です。
Prism Central Backup and Restore(PCBR)とは
PCBRは、Prism Central自身を保護するためのネイティブなデータ保護機能です。Prism Central管理下のクラスター、または S3 互換のオブジェクトストレージへバックアップを取得し、障害発生時にはそのバックアップからPrism Centralを復旧できます。この機能は、Prism Centralを別クラスターへ移行する用途にも利用できます。
また、PCBRではPrism CentralのvDISK全体が丸ごとバックアップされるのではなく、Insights Data Fabric(IDF)と呼ばれる、Prism Centralのサービス構成情報やアラート、パフォーマンスメトリックデータなどを含むデータベースが、バックアップ先のPrism Element(CVM)やオブジェクトストレージに定期的に同期される仕組みです。
なお、Nutanixの Protection Domain や Disaster Recovery、またサードパーティ製品は、Prism Centralの保護をサポートしていないためご注意ください。Prism Centralを保護する場合は、PCBRの利用が前提となります。
ちなみに、ほとんどの機能はPCBRで復旧できますが、一部再設定やサポートへの問い合わせが必要なものがあります。PCBRがサポートする復旧対象については、以下のリンク先をご参照ください。
Implementation Considerations and Limitations for Prism Central Backup and Restore
https://portal.nutanix.com/page/documents/details?targetId=Prism-Central-Guide-vpc_7_5:mul-considerations-pcdr-pc-r.html
PCBRのバックアップ方式と構成例
ここからは、PCBRのバックアップ方式と代表的な構成パターンを紹介します。バックアップ方式は次の2つから選択できます。
- Continuous Backup(継続的バックアップ)
Prism Centralの管理下にある任意のクラスターへバックアップを取得する方式です。RPOは30分で最大3クラスターまでバックアップ先として利用できます。復旧は最新のバックアップからのみ実行可能です。 - Point-in-Time Backup(特定時点バックアップ)
Amazon S3や汎用的なS3互換のオブジェクトストレージへバックアップを取得する方式です。バックアップ間隔は1~24時間で設定でき、任意のリストアポイントから復旧可能です。リストアポイントは最大30日分保持されます。
マルチクラスター環境でのバックアップ: Continuous Backup
Prism Centralが複数のクラスターを管理している環境では、Prism Centralが稼働していない別クラスターに対して、Continuous Backup方式 でバックアップを取得するパターンが考えられます。
この構成例では、例えば、Prism Centralが稼働しているクラスターで大きな障害が発生し、すぐに復旧できない場合に、別クラスターへPrism Centralをリストアしてサービスを再開することが可能です。
また、シングルノードクラスターを外部バックアップ用途として使用する Single Node Replication Target(SNRT) 環境において、同一のPrism CentralでプライマリクラスターとSNRTを管理している場合は、SNRTへバックアップを取得する構成も考えられます。
なお、PCBR はバックアップ取得先クラスターだけでなく、Prism Central管理下のクラスターへリストアできるため、SNRT を外部保管先として利用しつつ、復旧先をプライマリクラスター側に想定する設計も可能です。
シングルクラスター構成でのバックアップ: Point-in-Time Backup
単一のNutanixクラスター環境では、クラスター外部のAmazon S3やS3互換オブジェクトストレージに対して、Point-in-Time Backup方式 でバックアップを取得するパターンが考えられます。なお、この場合もオブジェクトストレージを外部保管先として利用しつつ、復旧先はプライマリクラスター側とする設計が基本となります。
また、Amazon S3などのオブジェクトストレージへのバックアップでは、ストレージ側のオブジェクトロック機能と組み合わせることで、ランサムウェア対策を意識した設計も可能です。なお、先述のマルチクラスター環境においても、Point-in-Time Backup方式を選択できますので、オブジェクトロック機能の活用が可能です。
まとめ
この記事では、Prism Central専用のバックアップ機能である Prism Central Backup and Restore(PCBR) について紹介しました。Prism Centralは、ノード障害に対しては冗長構成やHA によって一定の可用性を確保できます。一方で、クラスター障害を想定した外部保管や別クラスターへのリストア、またランサムウェア対策といった要件に対しては、PCBR を利用した設計が重要になります。
なお、次回の記事では、PCBR の設定方法について解説します。
◆参考ドキュメント
Prism Central Backup, Restore, and Migration
https://portal.nutanix.com/page/documents/details?targetId=Prism-Central-Guide-vpc_7_5:mul-cluster-pcdr-introduction-pc-c.html
Nutanix Cloud バイブル
https://www.nutanixbible.jp/#anchor-prism-central-backup-and-restore
Prism Central Resilience
https://www.nutanix.com/tech-center/blog/prism-central-resilience
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著者紹介
SB C&S株式会社
ICT事業本部 技術本部 第1技術統括部 第1技術部 1課
友松 桂吾 - Keigo Tomomatsu -
Nutanix Technology Champion 2022-2026
