みなさま、こんにちは。
SB C&Sで仮想化製品のプリセールスエンジニアを担当している、稲葉です。
これまで、vSANの検証や構築に携わってきましたが、今回VxRailを触れる機会がありましたので、通常のvSAN(vSAN Ready Nodeにて構築したvSAN)と比べてVxRailではどのような機能が備えられ、メリットにつながるかを紹介していきます。
そもそもVxRailとは何か?ということをお知りになりたい方は、まずこちらをご覧ください。
1)管理コンポーネントはデプロイ済み
VMwareの仮想基盤を構築する場合は、物理サーバーへのハイパーバイザー(ESXi)のインストールや、vCenter Server Appliacneのデプロイ作業が必要になります。通常のvSAN環境の構築においてもこの点は同様となり手動での対応が必要です。
それではVxRailは?と言いますと、ESXiのインストールや、vCenter Server Applianceなどの管理に必要な仮想マシンがすでに備わった状態で工場から出荷されます。そのため初期構築時に必要なISOイメージの取得やアップロード、個別でESXiホストをインストールするという作業をスキップして次に進むことができます。
図1)VxRail 4.7.300 の工場出荷時の状態
私が検証した環境(VxRail 4.7.300)では出荷時点で以下の仮想マシンがデプロイされた状態でした。(*1
・VxRail Manager(4.7.300)
・VMware vRealize Log Insight(Ver.4.8.0)
・VMware vCenter Server Platform Services Controller(Ver.6.7U3)
・VMware vCenter Server Appliance(Ver.6.7U3)
*1) デプロイされる仮想マシンはVxRailのリリースバージョンにより異なります。
2)初期構築の自動化
VxRailではVxRail特有の仮想アプライアンス「VxRail Manager」を使用することで初期構築を簡単に終わらせることができます。
通常のvSANでは、ESXiのインストール後、IPアドレスやパスワードの設定、vCenter Serverのデプロイ、仮想スイッチの構築などの作業が必要となり、かつ台数に比例して設定作業も増加します。
VxRailではVxRail Managerの初期構築機能を利用することで、従来実施してきた手動での作業を自動化することができます。vSAN環境の構築フローの中で、どの箇所が作業不要となり、自動化されているかを以下の図で表してみました。
VxRail Managerの機能によりESXiに対するネットワークやパスワードの設定、vCenter Server ApplianceやvRealize Log Insightのデプロイ・設定、分散仮想スイッチの設定、vSANの構築などが自動化されます。
VxRail Managerにて構築する際に、どのような情報(パラメーター)が必要になるのか、におきましてはDell EMC 石塚さんが書かれた記事の「詳細設計」にわかりやすく書かれていますのでこちらを一度ご覧ください。
情報ガイドステーション - VxRail攻略Wiki - 第5章:詳細設計
https://japancatalog.dell.com/c/vxrail_wiki/
3)ハードウェアも含めた統合管理
VxRail Managerによる初期構築が完了すると、vSANクラスターが構成され、vCenter ServerへVxRail ManagerのPlug-Inが自動的に追加されます。このPlug-Inを通して通常のvSANの機能に加え、VxRailならではの機能をvSphere Clientの画面から操作できるようになります。
図2)VxRail 4.7.300 のvSphere Client - [クラスター設定] 画面より
No | 表示名 | 主な機能 |
1 | システム | VxRailのバージョン、外部vCenterモードへの変換 |
2 | 更新 | Software、Firmwareを含めた一括取得と更新 |
3 | 証明書 | VxRail Manager SSL証明書の新規配置・交換 |
4 | 市場 | VxRailで使用可能なアプリケーションの取得 |
5 | VxRailホストの追加 | VxRailホストの追加 |
6 | ホスト | ホスト情報(IP、名称、モデル)の確認、ホスト名の変更 |
7 | サポート | Dell EMCサポートアカウント、リモートサービス(SRS)の設定 |
8 | ネットワーク | インターネット接続、プロキシ、VxRail ManagerとvCenter Server間の通信頻度の設定 |
9 | 正常稼働モニタリング | VxRailによる正常稼働チェッカーの有効化 |
10 | トラブルシューティング | VxRail Managerによる障害時のログ収集 |
VxRailではDell EMCのIPMIツール「iDRAC」が収集したハードウェア情報をVxRail Managerを介して、vSphere Client上に表示することもできます。これによりハードウェアの健康状態をよりvSphere Clientからグラフィカルに確認することができます。
図3)VxRail 4.7.300 のvSphere Client - [ホスト監視] 画面
4)ノード拡張がより簡単に
VxRailでは新たなESXiホスト(ノード)を拡張する場合、配線しiDRACの設定後すぐに拡張処理に進むことができます。
通常のvSAN環境では拡張時もESXiのセットアップから始まりますが、VxRailノードには先にお伝えした通り、初期出荷時点でESXiのインストールがすでに完了しているため、ESXiのインストールは必要ありません。
vSphere Clientの画面から「ホストの自動検出」機能にて表示されたノードを選択すると、接続されたVxRailホストが表示されますので、あとは表示されたVxRailホストにチェックを入れ、必要なパラメータを入力することで追加処理をVxRail Managerが実施してくれます。
図4)VxRailホスト追加時の画面例
VxRailホスト追加時はわずか6ステップで完了。
なお、VxRailの拡張を行う場合は、VMwareが公開しているvSANの拡張手順ではなく、VxRail Managerによる「ホストの自動検出」から実施することがサポータブルな対応となります。
5)統合されたアップグレード
VxRailではソフトウェアおよびファームウェアをわずか3ステップでアップグレードできる機能が備わっています。
通常、vSphereの仮想基盤をアップグレードする場合は、アップグレードするESXiをマウントし手動でアップグレードする方法と、Upgrade Managerを使用する2パターンがあります。また、ファームウェアは使用しているハードウェアのメーカーサイトから必要なファームウェアを選択・取得し適用することでアップグレードすることができます。
しかし実際アップグレードを実施するとなると、適用する順番を考えたり、複数のファームウェアからリリースノートを参照しながら必要なバージョンを確認したり、バージョンの互換性を確認するなど、事前準備に時間を割かれた方が多いのではないでしょうか。
また複数台のESXiホストでクラスターを構成している場合、ESXiホストのライセンスがEnterprise PlusであればDRS機能を使用して仮想マシンを稼働させつつ、ローリングでホストをアップグレードすることができますが、Standardライセンス以下ではDRS機能が使用できないため、手動での仮想マシンの移動が必要になります。
これらの2つの問題を解消することができるのがVxRailの「更新」機能です。
メリット1:ソフトウェアとファームウェアのアップグレードを自動化!
VxRailではvSphere Clientの「更新」機能を使用することでVxRailが管理する仮想マシンやファームウェアをまとめてアップグレードすることができます。バージョンアップするモジュールはDell EMCからの自動取得と手動によるアップロードの2パターンを選択できます。
- VMware製品
- VMware ESXi
- vCenter Server Appliance (*1
- DELLEMC製品
- VxRail Manager
- SRS(Secure Remote Service) (*2
- ファームウェア(BIOS、iDRACなど)
*1) vCSA、PSCがVxRail Managerの管理下ではない場合はアップグレード対象から除外されます。またvRealize Log Insightは自動アップデートの対象に含まれないため、個別でのアップグレードが必要になります。
*2) SRSはリモートでDell EMCのサポートが受けることができるサービスです。詳細はこちらをご覧ください。
更新対象や更新内容については、Dell EMCサポートが公開しているKBを参照することで具体的な更新対象を確認することができます。
VxRail Appliance Ver.4.7.xx Release Note
https://support.emc.com/docu91467_VxRail-Appliance-Software-4.7.x-Release-Notes.pdf
(※閲覧にはDell EMCのパートナーアカウントが必要となります。)
メリット2:StandardライセンスでもDRSが使用できる!
VxRailでは「更新」機能を使用時のみDRSの機能によるローリングアップグレードを選択することができます。
「更新」処理を進めていく中で、「一時的にESXiホストに対しEnterpriseライセンスを適用しDRSの使用しますか?」というメッセージが表示されます。この設定を有効にすることで、ESXiホストがStandardライセンスの場合でも、仮想マシンを稼働させながら全てのクラスター配下のVxRailホストを自動的にアップグレードすることができます。
なお、ESXiホストのライセンスがStandard、Enterprise PlusでもDRSの機能を使用するかは選択式となります。(必須ではありません。)
DRSを使用したくない場合は、「更新」処理の途中で「待ち」の状態となりますので、手動操作にて仮想マシンの停止か移動をすることで更新処理を進めることができます。
更新に関する注意点としましては、VxRailのアップグレードを行う場合は必ず、この「更新」機能を使用することです。これはVxRai Managerが各管理用のソフトウェアのバージョンを管理しているためとなります。
ESXiホストをアップグレードする場合は、ESXiホストのISOをマウントして手動にてアップグレードする方法や、Upgrade Managerを使用してアップグレードする方法がありますが、VxRailではこのような従来のアップグレード手順は非サポートとなりますのでご注意ください。
いかがでしたでしょうか。
今回はvSANにはない、VxRailならではの機能をご紹介いたしました。
今回ご紹介したようにVxRailを使用することで、通常のvSANには含まれない便利な機能を使用することができるようになります。
通常のvSANであれば複数のメーカーのサーバー製品を選択しvSANを構成できる柔軟性を持ち合わせている反面、ソフトウェアもハードウェアもトータル的に管理する機能がまだ十分ではないように思えます。
VxRailではDell EMCのハードウェアに限定されますが、VMwareとのアプライアンス製品のため、ソフトウェアもハードウェアもトータルに管理し、かつ問い合わせ先も一本化することができることが大きなメリットになるのではないでしょうか。
「構築や運用にかかる負担を減らす仮想基盤」として選択の参考にしてみてください。
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著者紹介
SB C&S株式会社
ICT事業本部 技術本部 第3技術部 1課
稲葉 直之
静岡出身で大阪に就職職してはや十数年。お茶と日本酒をこよなく愛し、現在は仮想化及びその周辺のプリセールスエンジニアとして日々修行中。