みなさん、こんにちは。
AmazonとNetAppの共同開発によって2021年にリリースされたクラウドストレージサービスですが、ファイルサーバーやVMware Cloud on AWSでのNFSデータストアなど、適正なワークロードは多岐にわたります。
今回は、そんなAmazon FSx for NetApp ONTAPの機能や特徴についてご紹介します。
Amazon FSx for NetApp ONTAPとは? |
Amazon FSx for NetApp ONTAPは、高いパフォーマンスや低いTCOを実現するAmazon のフルマネージドサービス「Amazon FSx」シリーズから提供されるクラウドストレージです。
NetAppのストレージOSである「ONTAP」をベースに開発されているため、スナップショットやレプリケーション、ストレージ効率化機能などの豊富なデータ管理機能を搭載しています。
また、AWSの管理ポータルから少ないステップでデプロイすることができ、シンプルに共有ストレージとして利用するだけならNetAppに詳しくない方でもONTAPのストレージを簡単に用意することが可能です。
サポートされるリージョンやデプロイタイプなどは以下のようになっています。
- リージョン:東京、大阪
⇒サポートされる全てのリージョンを確認したい場合はこちらをクリック - デプロイタイプ(HAペア):シングルAZ、マルチAZ
⇒デプロイタイプでは、同一リージョン内で単一のAZに対してフェイルオーバーをするか、
複数のAZを跨いだフェイルオーバーをするか選択できます。 - 外部との接続方法:Transit Gateway、VPCピアリング
⇒外部のVPC同士をつなげたい場合はTransit GatewayまたはVPCピアリングを使用、
オンプレミス環境からつなげたい場合は、Transit GatewayでAWS VPNまたはAWS Direct Connect
を使用します。
機能紹介(オンプレミスONTAPとの比較含む) |
Amazon FSx for NetApp ONTAPはONTAPの豊富なデータ管理機能をクラウドストレージで利用できるといったメリットがあります。
以下の表にAmazon FSx for NetApp ONTAPでサポートされるONTAPの主要な機能についてまとめます。
ご覧いただくと分かるようにONTAPで利用できる機能はAmazon FSx for NetApp ONTAPでもほとんどが利用可能です。
いくつかカテゴリに分けてご紹介します。
ボリューム管理
SVMはONTAP上に作成される仮想ファイルサーバのような役割をもっています。
作成可能なボリュームとしてはFlexVolとFlexGroupの2つが挙げられます。
FlexVolは汎用的なワークロードに最適なボリュームとなっており、最大300TiBの容量をサポートします。
一方でFlexGroupは最大20PiBの容量をサポートしており、Electronic Design Automation (EDA)、耐震解析、ソフトウェア構築/テストのワークロードなど要求の厳しいワークロードに適しています。
このようなONTAP独自のボリューム管理をAWS上でも利用することが可能です。
ストレージ効率化
ONTAPでは圧縮、重複排除の他にインラインデータコンパクションというNetApp独自の効率化機能を実装しており、それにより非常に高いストレージ効率を誇ります。
また、FlexCloneのポインタベース制御により、ボリュームやファイル単位で複製をする際にストレージ内の同一ブロックを再利用することで容量消費を最小化することができます。
Amazon FSx for NetApp ONTAPでは、これらのストレージ効率化機能をすべてサポートしているため、使用容量とともにコストを削減することに役立ちます。
データ保護
Read-Onlyで改ざん不可なSnapshotやデータレプリケーション機能であるSnapMirror、ボリュームやファイルのWORM化機能であるSnapLockなど、これまでと同様にONTAPで利用できる各機能がAmazon FSx for NetApp ONTAPでもサポートされています。
SnapMirrorに関してはAmazon FSx for NetApp ONTAP同士だけでなく、ONTAPやCVOともレプリケーションすることができるため、ハイブリッド/マルチクラウド間でのデータ管理も可能となっています。
Amazon FSx for NetApp ONTAPならではの特徴 |
ここからは他社のクラウドストレージとは異なるAmazon FSx for NetApp ONTAPならではの特徴についてご紹介していきたいと思います。
フルマネージドサービス
実際にデプロイする際もAWSの管理ポータルから実施することができ、デプロイに必要なパラメータはファイルシステム名やボリューム容量など、細かな設計なく簡単に立ち上げることが可能です。
また、他のフルマネージドサービス(Azure NetApp FilesやGoogle Cloud NetApp Volumes)と違い、ONTAPの機能のほとんどを利用することでき、デプロイ後にコマンドによってそれらをカスタマイズすることも可能です。
NetAppに詳しい人もそうでない人も扱えるサービスになっています。
高可用性/災害対策
シングルAZの場合、アクティブ/スタンバイとなるファイルシステムを単一のAZ内に自動デプロイします。各ファイルシステムは完全同期しており、アクティブなファイルシステムがメンテナンスや予期せぬ障害などで停止すると数秒以内にスタンバイのファイルシステムに自動フェイルオーバーします。
マルチAZの場合、単一リージョン内で複数のAZにまたがるファイルシステムを自動デプロイします。これによりAZ単位で障害が発生した場合でも、別のAZに存在するファイルシステムに自動フェイルオーバーすることで運用を継続させることができます。
ストレージ効率化機能によるコスト削減
そのため、容量の効率化はコスト削減をするうえで重要です。
前章でご紹介した圧縮や重複排除といったストレージ効率化機能に加えて、データの階層化機能が実装されています。
アクセス頻度の少ないコールドデータはプライマリプールから自動的に安価なキャパシティプールに階層化され、さらに階層化されるデータは圧縮などの効率化が効いた状態で移動するため、コストの削減に大きく貢献します。
階層化するデータの種類はポリシーによって決定され、仕組みとしてはONTAPのFabricPool機能が使われています。
「FabricPoolに関する記事はこちらをクリック」
ワークロード別のストレージ効率化による節約期待値は以下のようになっています。
※実際の環境で節約できる容量は変わってくるため、参考値としてご理解ください。
VMware Cloud on AWSのNFSデータストアをサポート
最後にご紹介したいのは、VMware Cloud on AWSでのNFSデータストアとしてAmazon FSx for NetApp ONTAPを利用できるという点です。
これはCVOではサポートされていないフルマネージドサービス特有の活用方法となりますが、ONTAPの機能を活かした柔軟なリソース管理がいくつものメリットを生んでいます。
まず1つ目のメリットは「ストレージ追加時の最適化」です。
通常、VMware CloudのデータストアはvSANを使用しており、データアクセスにおけるパフォーマンスは高いものの、ストレージ容量を追加する際はvSANとしてホストのCPUやメモリなど、必要以上のリソース追加の結果、コストがかさんでしまうデメリットもありました。
そこでVMware Cloudは、新たな試みとしてストレージリソースのみを追加できる「NFSデータストア」をサポートすることとなり、Amazon FSx for NetApp ONTAPが選択できるようになりました。
これにより、不必要なCPU/メモリのコストを支払わずコストの最適化を図れるようになっています。
また、FlexCloneの機能を使うことで「高速かつ容量効率の高いクローンVM」を作成することが可能です。
前章でご紹介した通り、FlexCloneはファイルを複製する際にストレージ内の同一ブロックを再利用することで容量消費を最小化しています。
複製時、実際にコピーは発生していないため、vmdkファイルをFlexCloneすることで、大量のVMを高速かつ極小容量で複製することができます。
ちなみに、vCenterからクローン処理を実行するとFlexCloneではなく、VMwareのクローン処理が行われるのでご注意ください。
FlexCloneを実行する場合はONTAP CLIからコマンドで実行する形となります。
さらにNetAppではSnapCenter for VMware vSphere(以下:SCV)というVMware用のバックアップツールを提供しており、SCVを利用することで仮想マシンやデータストア単位のバックアップやVMware側に性能影響を与えないリストア処理を実現することも可能です。
実は今回、本記事を作成する中でVMware Cloud on AWSのNFSデータストアとしてAmazon FSx for NetApp ONTAPを構築する際の手順や動作検証を実施しており、そちらについても別の記事でまとめておりますのでご興味のある方は是非ご確認ください。
「VMware Cloud on AWS × Amazon FSx for NetApp ONTAP(VTGW)の記事はこちら」
「VMware Cloud on AWS × Amazon FSx for NetApp ONTAP(VPC ピアリング)の記事はこちら」
料金体系 |
Amazon FSx for NetApp ONTAPの料金体系は使用したリソースや機能の料金のみを支払うシンプルな従量課金制を採用しています。
料金に関連する要素は以下の6つです。
- SSDストレージ(プライマリプール使用量):GB/月単位でのお支払い
⇒当月にファイルシステム用にデプロイしたストレージの平均使用量
ボリュームに割り当てた容量ではなく、ファイルシステム全体に割り当てた容量となります。
お間違いのないようご注意ください。 - SSD IOPS:IOPS/月単位でのお支払い
⇒当月の利用可能な標準 IOPSから追加した分の平均 IOPS使用量
まず、デフォルトとしてSSDストレージのGBごとに3 IOPS利用することができます。
さらにオプションでIOPS(東京/大阪リージョンでは最大80,000 IOPS)を追加することができ、
追加分の平均 IOPS量を支払いいます。 - スループットキャパシティ:MBps/月単位でのお支払い
⇒当月にファイルシステム用にデプロイした平均スループット使用量
Amazon FSx for NetApp ONTAPでは、ファイルシステムで提供するスループット量を
128MBps~4096MBps(東京/大阪リージョンでは128MBps~2048MBps)から選択します。 - キャパシティプール使用量:GB/月単位でのお支払い
⇒当月にデータ階層化により消費されたキャパシティプールの平均使用量
また、キャパシティプールのデータにアクセスする際のリクエストコスト(読み書き)も発生します。 - バックアップ:GB/月単位でのお支払い
⇒当月に消費されたバックアップストレージの平均使用量
これはAmazon FSx バックアップという機能となり、Snapshotとは関係ありません。
ファイルシステム上のボリュームを日次で増分バックアップします。 - SnapLock:GB/月単位でのお支払い
⇒当月に消費されたSnapLockボリュームの平均使用量
SnapLockはボリューム単位でWORM化を有効にする機能です。
IOPSおよびスループットキャパシティは利用するリージョンやスケールアップ/スケールアウト構成によって、設定可能な最大値が異なります。
詳細については以下のリンクにある「Impact of throughput capacity on performance」からご確認ください。
「リージョン毎に設定可能なIOPS、スループットキャパシティはこちらをクリック」
また、各リージョンやデプロイタイプ(シングル/マルチAZ)ごとの月当たりの料金は以下のリンクからご確認ください。
「Amazon FSx for NetApp ONTAPの月当たりの料金はこちらをクリック」
以下に月の支払い料金についての例をまとめます。
- リージョン:東京
- デプロイタイプ(HAペア):シングルAZ
- SSDストレージ(プライマリプール使用量):10TB(そのうち3TBがキャパシティプールへ階層化)
- SSD IOPS:10,000 IOPS
- スループットキャパシティ:512MBps
- バックアップ:8TB
【月の合計料金】
SSDストレージ(プライマリプール使用量):7TB × 0.150 USD GB/月 = 1050 USD/月
SSD IOPS:10,000 IOPS × 0.0204 USD IOPS/月 = 204 USD/月
スループットキャパシティ:512 MBps × 0.906 USD MBps/月 = 469 USD/月
キャパシティプール使用量:3TB × 0.0238 USD GB/月 = 71 USD/月
バックアップ:8TB × 0.050 USD GB/月 = 400 USD/月
月の合計料金:2194 USD(日本換算で約33万円 ※記事公開時のレート)
また、実際の運用ではストレージ効率化機能によりストレージの使用量が65%前後減ると予測できるため、それに応じて料金も大幅に削減できると考えらえれます。
まとめ |
本記事とは別にVMware CloudのNFSストレージである「VMware Cloud Flex Storage」と「Amazon FSx for NetApp ONTAP」の違いについてまとめた記事も公開していますので、ご興味のある方はそちらについてもご確認いただけますと幸いです。
「VMware Cloud Flex StorageとAmazon FSx for NetApp ONTAPの比較記事はこちらをクリック」
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著者紹介
SB C&S株式会社
ICT事業本部 技術本部 技術統括部 第1技術部 2課
河村 龍 - Ryu Kawamura -