こんにちは。SB C&Sの山田です。
今回の「基礎から学ぶ!vSAN 8.0 ESA検証環境構築」シリーズ第2回は、「vSANクラスターの拡張」です。前回の記事で作成したvSANクラスターに、新しくESXiホストを追加する手順をご紹介します。
1. vSANの拡張性
vSANはデータストアを柔軟に拡張できるというメリットがあります。柔軟な拡張というのは、スケールアップやスケールアウトを容易に行えるということです。
スケールアップは、ストレージデバイスを追加することでストレージ容量を拡張させる方法です。たとえば下図のように、既存のvSANクラスター内のホストにストレージデバイスを追加するだけでストレージ容量を拡張することができます。
また、スケールアウトは、下図のように新しいホストを既存のvSANクラスターに追加することでストレージ容量を拡張します。スケールアウトは、ストレージ容量だけでなくCPUやメモリ等の物理リソースも拡張されるため、vSANのパフォーマンスを向上させることができます。
このように、目的に合わせて柔軟に拡張できるのがvSANの特徴です。
2. 使用する環境
今回使用した環境は以下の通りです。以前の「基礎から学ぶ!vSphere 8.0検証環境構築」シリーズで構築した環境をベースにしていますが、vSANにあわせてESXiホストのハードウェア構成を変更しています。
- ハードウェア:Nested ESXiとして作成した仮想マシン3台+拡張のための追加用仮想マシン1台
※今回の検証環境ではvSANクラスターを構成するために、各仮想マシンにvSAN用のストレージ容量を追加しています。詳しくは以下の環境情報をご覧ください。 - ソフトウェア:VMware ESXi 8.0 Update 3b / vCenter Server Appliance 8.0 Update 3b
※「基礎から学ぶ!vSphere 8.0検証環境構築」で利用していたiSCSIストレージは不要になります。
以下のホスト名、アドレスとします。
コンポーネント | ESXiホスト名 | IPアドレス | CPU | メモリ | vSAN用デバイス容量 |
---|---|---|---|---|---|
ESXi-A1 | esxi-a1.demo.local | 192.168.255.11/24 | 4 | 32 | NVMeデバイス:300GB×2 |
ESXi-A2 | esxi-a2.demo.local | 192.168.255.12/24 | 4 | 32 | NVMeデバイス:300GB×2 |
ESXi-A3 | esxi-a3.demo.local | 192.168.255.13/24 | 4 | 32 | NVMeデバイス:300GB×2 |
ESXi-A4 |
esxi-a4.demo.local | 192.168.255.14/24 | 4 | 32 | NVMeデバイス:300GB×2 |
下図の赤枠部分を構築していきます。
3. vSANクラスターの拡張
vSANクラスターに新しいホスト(esxi-a4.demo.local)を追加します。今回は、以下のステップに従ってホストを追加します。
① ホスト追加前のvSANクラスターの合計リソースを確認します。
② ホストを追加します。※メンテナンスモードのまま追加します
③ Skyline Healthで出ているアラートが正常であることを確認します。
④ 追加したホストのネットワーク設定を行います。
⑤ 追加したホストのストレージプールを作成します。
⑥ メンテナンスモードを解除し、vSANクラスターの合計リソースを確認します。
3.1 ホスト追加前の合計リソース確認(①)
1. vSphere Clientにログインし、拡張前のリソース合計容量を確認します。
- 左ペインの [Cluster] をクリックします。
- 右ペインの [サマリ] タブをクリックします。
- クラスター拡張後に比較するため、画面右側に表示されているクラスターのリソース合計容量を確認します。
※今回の検証環境では以下のリソース合計容量となっています。(クラスター拡張前)
CPUのキャパシティ:32.3GHz
メモリのキャパシティ:96GB
ストレージのキャパシティ:1.79TB
3.2 ホストの追加(②)
vSANクラスターにホストを追加します。
1. 新しいESXiホスト(esxi-a4)をクラスターに追加します。
- [Cluster] を右クリックします。
- [ホストの追加] をクリックします。
2. ウィザードに従ってホストの追加を行います。
- [既存のホスト] をクリックします。
※追加するESXiホストがvCenter Serverに登録されていない場合は「新規ホスト」をクリックしてください。 - [esxi-a4.demo.local] にチェックを入れます。
- [次へ] をクリックします。
3. ホストサマリを確認します。
- [次へ] をクリックします。
4. クラスタイメージのインポート画面では追加するホストからイメージをクラスタへ反映することができます。
- [イメージをインポートしない]を選択します。
※今回はイメージを変更しないためインポートしません。 - [次へ] をクリックします。
5. [完了]をクリックします。
6. 左ペインに [esxi-a4.demo.local] が追加されていることを確認します。
3.3 Skyline Healthの確認(③)
Skyline Healthで出ているアラートが正常であることを確認します。
1. Skyline Healthを確認します。
- 左ペインの [Cluster] をクリックします。
- 右ペインの [監視] タブをクリックします。
- [Skyline Health] をクリックします。
- Skyline Healthの [再テスト] をクリックします。
2. 健全性検出画面にて[vSANクラスタパーティション]を展開します。
3. 展開された画面にて[トラブルシューティング]をクリックします。
4. 新しく追加したホスト [esxi-a4.demo.local] の [パーティション番号] が既存ホストのパーティション番号と異なることを確認します。
※「esxi-a4.demo.local」はメンテナンスモード状態であるため、他のホストと通信が取れない状態になっています。そのため、異なるパーティション番号が表示されますが、正常な動作です。
5. 健全性検出画面にて[すべてのホストで vSAN vmknic が構成済み] をクリックし展開します。
6. 展開された画面にて[トラブルシューティング]をクリックします。
7. vSAN vmknicが存在しないホストに [esxi-a4.demo.local] が表示されていることを確認します。
※この段階では、「esxi-a4.demo.local」のVMkernelポートには、まだvSANトラフィック用のネットワーク設定を行っていないため、このような表示になっていますが、正常な動作です。
3.4 ネットワークの設定(④)
追加したホストは元々スタンドアロンであったため、標準仮想スイッチでネットワークが構成されています。今回の検証環境では、分散仮想スイッチにvSANトラフィックを転送させるため、標準仮想スイッチから分散仮想スイッチへネットワークを移行する手順をご紹介します。
1. 現状の分散仮想スイッチの設定を確認します。
- 左ペインの [] をクリックします。
- [DSwitch] をクリックします。
- 右ペインで [構成] タブをクリックします。
- [トポロジ] をクリックします。
画面右側に表示される分散仮想スイッチのトポロジを確認します。
※今回の検証環境では、「Management-dvPG」および「VirtualMachine-dvPG」がポートグループとして構築された状態です。
2. 分散仮想スイッチにESXiホストを追加します。
- [DSwitch] を右クリックします。
- [ホストの追加と管理] をクリックします。
3. タスクを選択します。
- [ホストの追加] を選択します。
- [次へ] をクリックします。
4. ESXiホストを選択します。
- [esxi-a4.demo.local] にチェックを入れます。
- [次へ] をクリックします。
5. 物理アダプタ(物理NIC)にアップリンクを割り当てます。
- [vmnic2] に [アップリンク1] を割り当てます。
- [vmnic3] に [アップリンク2] を割り当てます。
- [次へ] をクリックします。
6. VMkernel アダプタの管理で、 [次へ] をクリックします。
7. 仮想マシンネットワーク移行の画面で [次へ] をクリックします。
8. 設定内容を確認し、[完了] をクリックします。
9. トポロジを確認し、ここまでの設定が反映されていることを確認しましょう。
10. VMkernelポートの設定を編集します。
- 左ペインの[]をクリックします。
- [esxi-a4.demo.local]を選択します。
- 構成タブをクリックします。
- ネットワークの[仮想スイッチ]をクリックします。
- vSwitch0を展開します。
- 追加したホストのvmk0横にある [・・・] をクリックします。
- [設定の編集] をクリックします。
11. vmk0にvSANサービスを付与します。
- 使用可能なサービスで [vSAN] にチェックを入れます。
- [OK] をクリックします。
3.5 ストレージプールの作成(⑤)
追加したESXiホストに対してストレージプールを作成します。今回は既存のESXiホストと同様の構成にするため、以下の構成でストレージプールを作成します。
- NVMe デバイス:300GB × 2本
1. ディスクの管理画面にアクセスします。
- 左ペインの [] をクリックします。
- [Cluster] をクリックします。
- 右ペインの[構成] タブをクリックします。
- vSANの [ディスク管理] をクリックします。
- [esxi-a4.demo.lcoal] を選択します。
- [ディスクの表示] をクリックします。
2. [ディスクの追加] をクリックします。
3. 追加するNVMeディスクを選択します。
- 容量が [300GB] のNVMeデバイス(2台)を選択します。
- [追加] をクリックします。
4. ストレージプールにNVMeデバイスを追加するタスクが始まりますので、画面下部の [最近のタスク] で全てのタスクが完了するまで待ちます。全てのタスクが完了したら、ストレージプールの作成は完了です。
3.6 メンテナンスモードの終了(⑥)
ここまで全ての設定が完了したら、メンテナンスモードを終了します。Skyline Healthで他のESXiホストと通信がとれていることを確認します。また、vSANクラスターにホストを追加する前の合計リソースと比べて、どのように変化しているか確認します。
1. メンテナンスモードを終了します。
- 左ペインの [esxi-a4.demo.local] を右クリックします。
- [メンテナンス モード] にカーソルを合わせます。
- [メンテナンス モードの終了] をクリックします。
2. メンテナンスモードが終了したら、Skyline Healthを確認します。
- 左ペインの [Cluster] をクリックします。
- 右ペインの [監視] タブをクリックします。
- [Skyline Health] をクリックします。
- 3.3節で確認した以下2つのネットワークに関する健全性が健全状態(緑チェック)であることを確認します。
- vSAN クラスタ パーティション
⇒ メンテナンスモードが終了したことによって、ESXiホスト間の通信が可能となり、エラーが解消されます。 - すべてのホストで vSAN vmknic が構成済み
⇒ VMkernelポートに対してvSANサービスを付与したことによってエラーが解消されます。
- vSAN クラスタ パーティション
3. vSANクラスター拡張後のリソース合計容量を確認します。
- [サマリ] タブをクリックします。
- 画面右側に表示されているクラスターのリソース合計容量を確認します。
※今回の検証環境では以下のリソース合計容量となっています。(クラスター拡張後)
CPUのキャパシティ:43GHz
メモリのキャパシティ:128GB
ストレージのキャパシティ:2.34TB
以上で、vSANクラスターの拡張は完了です。いかがでしょうか、vSANだからといって特別なことをしているわけではありません。
OSAと手順を比べても大きく異なる点はなかったかと思います。ネットワーク設定やホスト追加作業等、vSphereの一般的な構築作業を行うだけでvSANクラスターを拡張できることがご理解いただけたかと思います。
また、今回の検証項目で、ESAがOSAより優れている点を挙げるとすると、「ディスクグループの概念が不要」という点です。
OSAでは、スケールアップ時にキャッシュ層とキャパシティ層の2階層で管理されるディスクグループを作成する必要があります。このディスクグループでは、キャッシュ層とキャパシティ層の容量比率が決まっているため、キャパシティを増やす際にはパフォーマンスを落とさないようにキャッシュも同時に増やす必要があり、再設計が必要になる場合があります。
一方、ESAではディスクグループの概念が存在しません。そのため、ストレージデバイスを追加しても上記のような設計変更を考慮する必要がなく、柔軟かつシンプルにスケールアップが可能です。
以上、vSANクラスターの拡張についてご紹介しました。次回は、vSANの可用性に焦点をあてて、ストレージポリシーの設定についてご紹介します。是非ご覧ください!
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著者紹介
SB C&S株式会社
ICT事業本部 技術本部 技術統括部
第1技術部 1課
山田 和良 - Kazuyoshi Yamada -
VMware vExpert