SB C&Sの最新技術情報 発信サイト

C&S ENGINEER VOICE

SB C&S

基礎から学ぶ!vSAN 8.0 ESA検証環境構築 第1回 vSANクラスターの作成

VMware
2024.11.14

こんにちは。SB C&Sの山田です。

基礎から学ぶ!vSAN 8.0 ESA検証環境構築」シリーズの第1回は、「vSANクラスターの作成」です。「基礎から学ぶ!vSphere 8.0 検証環境構築」シリーズでvSphereの基盤となる要素を構築しましたが、その環境を利用してvSANクラスターを作成します。

1. VMware vSANとは

vSANクラスターを作成するにあたって、VMware vSAN(以下、vSAN)についておさらいしましょう。
vSANとは、「複数のESXiホストの内蔵デバイスを束ねて、1つの共有ストレージとして扱うことができる」機能です。この機能を実現している技術をSDS(Software-Defined Storage:ソフトウェア定義されたストレージ)と呼びます。

vSANには、このSDS技術がvSphereに組み込まれています。SDS技術を利用した仮想化基盤として一般的なソリューションに、HCI(Hyper-Converged Infrastructure)と呼ばれるものがあります。vSANはHCIの中でもスタンダードで、豊富な実績があります。

図1.png

vSphereにおいて、vMotionHAなどの可用性を担保する機能を利用するためには、共有ストレージが必要です。従来の仮想環境では、FCiSCSINFSなどの外部ストレージが利用されてきました。しかし、外部ストレージを用意することは、別のハードウェア機器を新たに購入する必要があったり、ストレージ特有のスキルが必要となったりするため容易ではありません。 

そこで、vSANのようなHCIを導入することで、これらの課題が一気に解消されます。

vSANの特徴としては、以下のものが挙げられます。

  • vCenter Serverで仮想環境とストレージの一元管理が可能
    内蔵ストレージデバイスを共有ストレージとして扱うため、ストレージだけ別のツールで管理する必要がなくなります。
  • 仮想マシン毎にストレージポリシーを設定して可用性を担保
    vSANにおける仮想マシンの可用性は、ストレージポリシーを仮想マシン毎または仮想ディスク毎に設定する手法で管理します。
    ※vSANのストレージポリシーについては「第3回 vSANストレージポリシーの設定(後日公開予定)」をご覧ください。
  • フラッシュデバイスを利用することで優れたパフォーマンスを実現
    従来からある「vSAN Original Storage Architecture(OSA)」では、SSDとHDDによるハイブリッド構成、全てSSDなどのフラッシュデバイスによるオールフラッシュ構成が可能です。
    vSAN 8.0では新しいアーキテクチャである「vSAN Express Storage Architecture(ESA)」が実装されました。
    「vSAN ESA」は、ディスクグループの概念を排除し、NVMeベースの単一層アーキテクチャ(ストレージプール)により高いパフォーマンスを提供するアーキテクチャです。OSAでは必須だった、キャッシュデバイスを除外することでストレージ仮想化の速度と効率を向上させています。

従来からあるアーキテクチャである、OSAは現在も従来通り使用できますので、用途に応じて「OSA」と「ESA」を自由に選択することができます。

ただし、アーキテクチャの異なる「OSA」と「ESA」は、クラスタ内での混在はできませんのでご注意ください。

vSAN ESAの詳細は以下の記事でもご紹介しておりますので、合わせてご確認ください。
VMware vSAN Express Storage Architecture (ESA)の紹介

2.使用する環境

今回使用した環境は以下の通りです。以前の「基礎から学ぶ!vSphere 8.0 検証環境構築」シリーズで構築した環境をベースにしていますが、vSANにあわせてESXiホストのハードウェア構成を変更しています。

  • ハードウェア:Nested ESXiとして作成した仮想マシン3
    ※今回の検証環境ではvSAN ESAのクラスターを構成するために、各Nested ESXiの仮想マシンにCPU、メモリ、vSAN用のNVMeデバイスを再設定しています。詳しくは以下の環境情報をご覧ください。
  • ソフトウェア:VMware ESXi 8.0 Update 3b vCenter Server Appliance 8.0 Update 3b
    ※「基礎から学ぶ!vSphere 8.0 検証環境構築」で利用していたiSCSIストレージは不要になります。

以下のホスト名、アドレスとします。

コンポーネント ESXiホスト名 IPアドレス CPU メモリ vSAN用デバイス容量
ESXi-A1 esxi-a1.demo.local 192.168.255.11/24 4 32 NVMeデバイス:300GB×2
ESXi-A2 esxi-a2.demo.local 192.168.255.12/24 4 32 NVMeデバイス:300GB×2
ESXi-A3 esxi-a3.demo.local 192.168.255.13/24 4 32 NVMeデバイス:300GB×2

※CPU、メモリ、NVMeデバイスを追加する際は、仮想マシンの設定の編集から追加してください。以下はNVMeデバイスを追加する際のキャプチャです。

2.png

下図の赤枠部分を構築していきます。

3.png

 

3. vSANネットワークの設定

今回の検証環境は「基礎から学ぶ!vSphere 8.0 検証環境構築」シリーズで設定したネットワーク構成を引き継ぐ形でベースにしています。そのため、分散仮想スイッチ上には「Management-dvPG」および「VirtualMachine-dvPG」の2つのポートグループが既に設定されています。
※詳しくは「基礎から学ぶ!vSphere 8.0 検証環境構築 第5回 ネットワークの設定(分散仮想スイッチ)」をご覧ください。

Management-dvPGに構成されているVMkernelポート(vmk0)では、管理サービスとvMotionサービスが有効になっています。ここにvSANサービスを追加することで、vSAN用ネットワークを構築します。

vSphere検証環境構築シリーズの記事でご紹介したように、本来はサービス毎にVMkernelポートを作成することが推奨とされています。今回の検証環境では全てのサービスを同じVMkernelポートに設定していますが、ネットワークを構築する際はその点も考慮に入れると尚良いでしょう。

1. vSphere Clientにログインし、VMkernelポートの設定を編集します。

  • 左ペインの [アイコン.png] をクリックします。
  • [esxi-a1.demo.local] をクリックします。
  • 右ペインの [構成] タブをクリックします。
  • [ネットワーク] の[仮想スイッチ]クリックします。
  • vSwitch0VMkernelポート(1)の横にある [・・・] をクリックします。
  • [設定の編集] をクリックします。

1.jpg

2. vmk0vSANサービスを付与します。

  • 使用可能なサービスで [vSAN] にチェックを入れます。
  • [OK] をクリックします。

2.jpg

以上の手順を各ホストに設定すればvSANネットワークの設定は完了です。設定自体はとても簡単で、あらかじめ構築されたvSphere環境があれば、VMkernelポートにvSANサービスを付与するだけで完了します。

4. vSANクラスターの作成

ネットワークの設定が完了した後にvSANクラスターを作成します。

vSANクラスターを作成する前に、vSphere HAが無効になっていることを確認してください。vSphere HAが有効になっていると、vSANクラスターを作成できません。通常、vSphere HAの通信ではESXiの管理ネットワークが使用されますが、vSANクラスターではvSAN独自のネットワークが使用されるようになります。そのため、vSphere HAを有効にしたままではvSANクラスターを作成できないのです。

今回は「基礎から学ぶ!vSphere 8.0 検証環境構築 第7回 クラスターの構築」で作成したクラスターを利用しているため、vSphere HAを無効化する手順も記載します。

1. vSphere HAの設定を編集します。

  • 左ペインの [アイコン.png] をクリックします。
  • [Cluster] をクリックします。
  • 右ペインで [構成] タブをクリックします。
  • [vSphere の可用性] をクリックします。
  • vSphere HAの [編集] をクリックします。

3.jpg

2. vSphere HAを無効化します。

  • vSphere HAのトグルボタンをクリックし無効化します。
  • [OK] をクリックします。

4.jpg

3. vSANを構成します。

  • 同じ構成タブの中から、vSAN項目にある [サービス] をクリックします。
  • [vSAN HCI] を選択します。
  • [シングルサイトのvSANクラスタ]を選択します。
  • [構成]をクリックします。

5.jpg

4. vSAN ESAを設定します。

  • vSAN ESAのトグルボタンをクリックし有効化します。
  • [次へ] をクリックします。

 ※検証環境ではNestedのため、互換性チェックにて警告が出ております。vSAN ESA 認定ハードウェアの場合は警告は出ません。

6.jpg

5. サービスの設定を行います。

  • 今回は何も設定せず[次へ]をクリックします。

7.jpg

6. vSANを構成するストレージデバイスを選択します。

  • [次でグループ化]のドロップダウンリストより[ホスト]を選択します。
  • 要求するディスクにチェックを入れます。
  • [次へ]をクリックします。

※今回のESAのため、OSAの構成のようにディスクグループの概念がありません。要求するストレージデバイス(NVMe)全てがパフォーマンスと容量の用途で使用されます。

8.jpg

7. フォルトドメインの設定を行います。

  • 今回の検証環境はここでの設定は不要のため[次へ]をクリックします。

9.jpg

8. 設定の最終確認をします。

  • 問題が無ければ[終了]をクリックします。

10.jpg

9. vSANの構成が開始し、vSphere Client画面下部の [最近のタスク] vSAN構成のタスクが表示されます。全てのタスクが完了することを確認します。

11.jpg

10. vSANの構成が完了すると、データストアにvSANデータストアが作成されます。

  • 左ペインで [アイコン2.png] をクリックします。
  • 配下に作成された [vsanDatastore] をクリックします。
  • 右ペインでvSANデータストアの合計容量が約1.8TBとなっていることを確認します。
    vSANデータストアの合計容量は、NVMeデバイスの合計容量です。手順6で選択したNVMeデバイスの合計容量と等しくなります。

12.jpg

5. vSAN構成後の作業

vSAN構成後は、vSANクラスターの状態に問題ないか健全性チェックが自動的に行われます。ここでは、以下の項目の健全性を確認し、正常にvSANが動作していることを確認します。

  • 健全性確認
    • vSANのハードウェア構成および互換性の正常性確認
    • vSpherevSANの設定および構成の正常性確認
  • プロアクティブテスト(仮想マシンの作成テスト)
    • vSAN機能の正常性確認
    • 仮想マシンの作成および削除ができることを確認

最後に、冒頭で無効にしていたvSphere HAを再度有効にしてvSANクラスターの作成は完了です。

5.1 健全性確認

Skyline健全性を利用して健全性を確認します。

1. Skyline健全性の画面を開き、健全性の再テストを行います。

  • 左ペインの [アイコン.png] をクリックします。
  • [Cluster] をクリックします。
  • 右ペインで [監視] タブをクリックします。
  • [Skyline Health] をクリックします。
  • [再テスト] をクリックします。

13.jpg

健全性のパーセンテージが95%以上(メーターが緑色)になっていることを確認します。
※今回の検証環境ではNestedのため認定外のNVMeの使用により健全性の検出が表示されていますが、検証上の動作では問題ありません。

5.2 プロアクティブテストの実行

プロアクティブテストを利用して、仮想マシンの作成が成功することを確認します。

1. プロアクティブテストの実行画面にアクセスします。

  • 同じ監視タブの中から [プロアクティブ テスト] をクリックします。
  • [仮想マシン作成テスト] をクリックします。
  • [テストの実行] をクリックします。

14.jpg

2. [実行] をクリックします。

図1.png

3. 実行結果が [パス] になっていること、各ESXiホストのステータスが全て [成功] になっていることを確認します。

15.jpg

5.3 vSphere HAの有効化

vSphere HAを有効にします。

1. vSphere HAの設定を編集します。

  • [構成] タブをクリックします。
  • [vSphere の可用性] をクリックします。
  • vSphere HA [編集] をクリックします。

16.jpg

2. vSphere HAを有効化します。

  • vSphere HAのトグルボタンをクリックし有効化します。
  • [OK] をクリックします。

17.jpg

6. Tips ~ クイックスタートを使ってみよう! ~

vSphereには「クイックスタート」という、ワークフローに従うことで迅速にクラスターを構成できる機能があります。今回の検証環境では、既にクラスターが作成済みの状態からvSANの構築を開始していますが、クイックスタートを利用すると、クラスターだけが作成されている状態からワークフローに従ってvSANクラスターを構成することができます。また、vSANクラスターを構成するだけでなく、vSphere DRSやvSphere HAの有効化、分散仮想スイッチの設定などにもクイックスタートを利用できます。

クイックスタートでの設定手順は以下のようになります。

6.1 クラスターの作成

vSANを構築するクラスターを作成しておきます。クラスターの作成については「基礎から学ぶ!vSphere 8.0 検証環境構築 第7回 クラスターの構築」で紹介されています。

6.2 クイックスタートの実行

クイックスタートは下記のようにvSphere Clientに組み込まれています。

222.png

次のようにワークフローを進めていくと、vSANクラスターが構築できます。

クラスターの基本

vSANサービスを選択します。他にもvSphere DRSvSphere HAもここで選択できます。

ホストの追加

vSANクラスターを構成するESXiホストを選択します。

クラスターの構成

  • 分散仮想スイッチの設定
    クイックスタートを利用すると分散仮想スイッチで構成されます。vSANのトラフィックで利用する分散仮想スイッチのポートグループや、アップリンクポートで利用する物理ポートを指定します。
  • VMkernelポートのIPアドレスを指定
    ESXiホストのvSANトラフィック用のIPアドレスを指定します。
  • 詳細オプションの選択
    暗号化や重複排除/圧縮など、クラスター単位で設定するものをここで有効化します。
  • ディスクの要求
    構築手順で紹介したように、要求するNVMeデバイスの設定を行います。
  • フォールトドメインの作成
    ESXi
    ホストがラックを跨いで設置されている場合はフォルトドメインの作成を行います。
  • 設定内容の確認および実行

このようにワークフローに従って進めるだけでvSANクラスターが構築できるので、とても簡単にvSANを導入できることがわかったと思います。今回の記事がvSANの導入を検討している方々にとって参考になれば幸いです。

次回は、今回作成したvSANクラスターにESXiホストを追加する構築手順をご紹介します。是非ご覧ください!

他のおすすめ記事はこちら

著者紹介

SB C&S株式会社
ICT事業本部 技術本部 技術統括部
第1技術部 1課
山田 和良 - Kazuyoshi Yamada -

VMware vExpert