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NetApp INSIGHT Japan 参加レポート

ストレージ / HCI
2021.03.05
 
皆さん、こんにちは
 
2021年2月25日、26日に『NetApp INSIGHT Japan』が開催されました。
 
昨年同様NetApp INSIGHT Japanのスポンサーセッションで登壇させて頂きましたが、今回はそれだけでなく、NetApp社との共同セッションにも登壇させて頂きました。
 
今回は基調講演のトピックスや弊社が登壇したセッションについて紹介します。
 
 NetApp INSIGHT Japan開催概要             
 
 
『NetApp INSIGHT』とはワールドワイドで開催されるNetAppのカンファレンスイベントです。
昨年はANAインターコンチネンタルホテルで開催されていましたが、今回はコロナウイルスの感染拡大の影響でデジタルイベントとして開催されました。
 
 
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デジタルイベントでの開催でしたが以下のような多様なセッションが用意されていました。
 
 ●基調講演:NetAppの有識者による最新情報、ゲストスピーカーの講演
 ●ライブセッション:データエキスパートによるライブ配信セッション
 ●オンデマンドセッション:NetApp社のエキスパートやスポンサーなど多種多様な内容のセッション
 
ワールドワイドで開催されたNetApp INSIGHTに似ていますが、著名人の講演やスポンサーが登壇するなど独自のイベントとなっていました。
 
(ワールドワイドのデジタルイベントとして開催されたNetApp INSIGHT 2020 Digitalの参加レポートは『NetApp INSIGHT 2020 Digital 参加レポート』をご参照下さい)
 
 基調講演             
 
 
まずは基調講演から振り返ります。今回の基調講演はかなりのボリュームでしたのでポイントを絞り紹介します。
基調講演は2/25と2/26の両日実施されました。それぞれの日程でNetAppのキーパーソンとゲストスピーカーが講演されました。

▶ 基調講演 Day1

初日の基調講演ではNetAppのCEOであるGeorge Kurian氏、ネットアップ合同会社社長の中島 シハブ・ドゥグラ氏、NetAppのチーフテクノロジーエバンジェリストの Matt Watts氏が登壇されました。
  
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George Kurian氏はCOVID-19の感染流行は大きな混乱を引き起こし、世界規模で前例にないペースで広がっている中で組織が成功するにはスピードとアジリティが不可欠であると語りました。
クラウドはデジタルビジネスを推進し、お客様との結びきを強めるプラットフォームでありその中心にデータがある、データはデジタルビジネスにおける通貨であることを強調していました。
 
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またGeorge Kurian氏はサイバーエージェント様がハイブリッド、マルチクラウドでアプリケーションの構築、展開、最適化を効率化した例やYahoo Japan様がデータセンターとクラウドを統合、シンプル化、自動化させData as a Serviceを提供した例をあげ、NetAppは「クラウドを最大限に活用するための支援をするスペシャリスト」であると語りました。「スペシャリスト」というキーワードはワールドワイドで開催されたNetApp Insghtでも出てきており、NetAppの技術への力の入り方がうかがい知れます。
 
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Data Fabric戦略も大きな進歩を続けており、Spot、Talon、CloudJumperの買収とクラウドストレージの機能強化を行い、アプリケーションの特性に合わせたインフラプラットフォームを確立したと伝えています。このData Fabricの強化によりクラウドコストを最大90%削減するとのことでした。
 
今後日本では自動運転車、エネルギー最適化、企業の脱炭素などといった新技術に投資が行われ社会的責任の課題に取り組む中で、NetAppはお客様が適切なData Fabricを構築できるように支援してこの取組に貢献すると語っています。
Data Fabricは利益を追求するだけのものではなく社会貢献にもつながるため、企業がSDGsを掲げる中で重要になるのではと感じました。
 
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シハブ氏はクラウドの利用によりデータのサイロ化が発生していることを述べ、今後のデジタル化の鍵は「Data Fabricによるデータサイロからの脱却」が必要であることを伝えていました。
データサイロによってデータが十分に活用できていない現状から脱却し、データサービスレイヤの最適化やData Fabricの構築が重要であることを伝えています。データサービスレイヤを最適化するためのポイントとして、以下の6つのポイントを考慮したアプリケーションの特性に応じたデータ中心の管理が必要であると語っていました。
・Discover
・Integrate
・Automate
・Optimize
・Protect
・Secure
 
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シハブ氏が挙げた6つのポイントを踏まえ、ネットアップ合同会社のシニアソリューションアーキテクトの小原氏が代表的なサービスのデモを3つ行っていました。
 
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1つ目のデモはCloud Managerから操作し、オンプレAFFからAmazon S3への「Cloud Backup Service」を紹介していました。オンプレからクラウドへ少ない手順でバックアップを実施するデモとなっていました。
 
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2つ目はCloud Managerから操作するAFFからGCP上のCloud Volumes ONTAP (CVO)へのSnapMirrorを実施していました。通常SnapMirrorは送信元と宛先の双方の画面を操作する必要がありますが、Cloud Managerを利用すると1つの画面でSnapMirrorの設定が可能となります。デモで紹介された画面は1つ前のデモの続きの画面になっていたのでCloud Backup Serviceが設定されており、他のサービスとの一元管理が実現していることも見て取れました。
 
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3つ目のデモは「Cloud INSIGHTs」によるランサムウェア検出のデモが紹介されました。ランサムウェアは短期間で特異なI/Oがあることから、それらの情報を元に暗号化されたファイルの検出を行っていました。
 
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続いてNetAppのチーフ テクノロジー エバンジェリストであるMatt Watts氏が登壇されました。
Matt Watts氏は業界の動向について過去の動向から今後の動向までを「波」という表現で紹介していました。
第1の波はインフラ中心の波でレガシープラットフォームの刷新、エンタープライズアプリのUIの改善などです。第1の波は過去のものではありますがイノベーションを起こせる投資対象となり得るとのことです。
第2の波は自動化です。スピード、コスト改善、効率化改善などが求められます。
第3の波は現在直面している「クラウド」です。新しいビジネスの創出、スピードの向上などあらゆることが関係しており、ITだけでなく、ツール、技術、アプリなどについても新しい考え方や視点が必要になってくるとのことです。
そして第4は「AI」になるであろうと予測していました。現時点では活用するにはスキルが整っていないため波としてはまだまだかも知れませんが、大量のデータを活用する波となるのでIT部門は備える必要があると語っていました。
 
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この他にゲストスピーカーセッションとして台湾IT担当大臣であるオードリー・タン氏が講演されていました。基調講演は2021年3月19日まではNetApp INSIGHT JapanのWebサイトからオンデマンドで配信されていますので、まだお聴きになられていない方やライブ配信を聴き逃した方はご視聴されてみてはいかがでしょうか。

▶ 基調講演 Day2

2日目の基調講演ではネットアップ合同会社のCTOである近藤氏が登壇され、NetAppのテクノロジー戦略について説明していました。
 
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NetAppのData Fabric戦略について「デザインの原則」と「3つのペルソナ(ターゲットユーザ)」という観点で説明していました。この戦略を元にData Fabric拡充するためのサービスが増えたことを紙芝居形式で紹介していました。
 
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続いて「Why NetApp ?」について様々な例を上げ説明していました。
 
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ランサムウェア感染後の復旧の最適解としてSnapshotとFlexCloneを用いた復旧方法を紹介していました。
ランサムウェアはファイルを暗号化して身代金を要求するため、暗号化される前の状態のSnapshotがあれば、Snapshotからクローンボリュームを作成し身代金を払うことなく復旧可能です。Snapshot自体もRead OnlyなのでSnapshot自体の改ざんの心配もありません。
 
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DBアプリの開発者への価値としては、テスト環境を構築するための容量とコピー時間を大幅に削減できます。紹介した例では通常であれば6TBの5つのテストパターンを作成するのに合計容量が30TBとなりコピーで要する時間が1時間かかるところがNetAppのテクノロジーで多くの容量を消費せずコピー時間も数秒での作成を実現できると伝えていました。ONTAPのFlexClone技術があれば実データのコピーが発生しないので高速にコピーが作成できます。
 
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同様にSAPの3システムランドスケープ運用の例を紹介していました。3システムランドスケープは開発環境、テスト環境、本番環境を回しながら運用やバージョンアップを行う手法で、この運用を効率化させた実例を元に紹介していました。この例ではシステムコピーに29時間かかっていたのがNetAppのテクノロジーで4時間まで短縮したとのことです。
 
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DevOpsによるソフトウェア開発者への価値については、デベロッパーサンドボックスの高速配備が可能であることを説明していました。DevOpsにおける自動化プロセスにおいて複数のサンドボックスの配備時間が数時間から数秒になったとのことです。また、特定ビルドでバグが発覚した場合、どの時点でバグが発生したか探す処理(Bisect)でNetAppのテクノロジーを用いることで高速化できるとのことでした。ONTAPの開発工程でもこの手法がとられているそうです。
 
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テスト環境の配備に関する事例としてHughes Network Systems社の事例を取り上げていました。
Hughes Network Systems社ではこれまでテスト環境の配備に2〜3週間要していましたがNetAppのソリューションとAnsibleによる自動化を導入することで4〜6時間に短縮したとのことです。
NetAppはAnsibleの200を超えるモジュールを提供しているとのことでした。
 
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Ansibleと言えばRedHat社が浮かびますが、NetAppはRedHat社とのパートナーシップにより網羅性を高めています。パートナーシップは古くから続いておりOpenStackなどでも連携しています。
 
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Ansibleを拡充している理由の1つとしてRESTfull APIの対応が上げられます。ONTAP9.6以降からRESTful APIによるONTAPの設定や制御をサポートしています。
 
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AI関連ではでモデルの精度を高めるために様々なチューニングなどを施しますが、それらを効率化するためにAIコントロールプレーンというノウハウを提供しています。また、Pythonベースのデータサイエンスツールキットを提供することによりML Opsを効率化しているとのことです。
これによりデータセットのコピーによるデータ容量を大幅に削減した実績を紹介していました。
 
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更にKubernetesへの対応としてCSI標準のストレージドライバとして動作するソフトウェアのTRIDENTだけでなく、様々なKubernetes環境を管理するNetApp Astraを提供しています。
Kubernetesのアップデートサイクルはとても早いのですがNetAppはそれにすぐ対応しているとのことです。
また、TRIDENTは今後VMwareのVCFやTanzu環境でも利用できるようになる予定とのことでした。
これが実現すればVMware環境で利用していたコンテナ環境をパブリッククラウドに展開するということも可能になるかもしれないので非常に楽しみです。
 
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最後に日本での取り組みについて、ネットアップ合同会社ではユーザ様が利用できる検証環境の「ハイブリッド・マルチクラウドラボ」やストレージ基盤の自動化やセルフサービスポータルの実体験を実現する「NetAppデジタルトランスフォーメーションラボ」を紹介してました。
また有償のプロフェッショナルサービスも拡充されていることを紹介していました。これまでのONTAPの構築だけでなくハイブリッドクラウド環境への移行のサポートなど、様々なサービスが充実しているのでNetAppのソリューションを導入される際は是非ご利用いただければと思います。
 
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この他にゲストスピーカーセッションとして広島県総務局の桑原 義幸氏と慶應義塾大学大学院の岸 博幸氏が講演されていました。これら2日目の基調講演に関しても2021年3月19日まではNetApp INSIGHT JapanのWebサイトからオンデマンドで配信されていますので、まだ視聴することが可能となっています。
 
 ライブセッション             
 
 

▶ NetApp ✕ Veeam

ライブセッションでは弊社の臼井が登壇し、『NetApp × Veeam』について紹介させて頂きました。
バックアップを取得する際は「静止点の取得」や「仮想マシンのバックアップ取得時のパフォーマンス」など様々な考慮点がありますがNetAppとVeeam連携することで最適なバックアップを提供することができます。また、Veeamの現行バージョンとの連携だけでなく次期バージョンでのNetApp連携についてのアップデート情報も紹介させて頂きました。
 
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NetAppとVeeamの連携に関してはホワイトペーパーを公開しているのでご参照ください。
 
 
 オンデマンドセッション             
 
 

▶Storage Efficiency

オンデマンドセッションではNetApp社の青柳様と弊社の河村がストレージの容量効率化の技術について共同で登壇しました。
今回のセッションでは「データ圧縮」、「重複排除」、「ストレージコンパクション」をテーマに3つのセッションを実施しました。
データ圧縮と重複排除で如何にして効率的に且つパフォーマンスに最適なデータ削減がなされているか、またデータコンパクションといったNetApp特有のデータ削減技術がご理解いただけるセッションになっていたのではないかと思います。
 
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Storage Efficiencyについて、より理解を深めたい方は以下のブログもご参照ください。
 

▶ FabricPool

また、FabricPoolのオンデマンドセッションではNetApp社の青柳様と弊社の小川が登壇しました。
FabricPoolは「特定のデータ」を「ポリシー」に基づきパブリッククラウドなどの「オブジェクトストレージ」に転送し階層化する機能です。
これまでクラウドを利用するにも課題があった方へのクラウド利用の1つの解となる機能です。
今回のセッションでは転送するためのポリシーの説明やONTAP 9.8からの新機能の一部を紹介させて頂きました。
 
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FabricPoolについて、より理解を深めたい方は以下のブログもご参照ください。
 
 
またONTAP 9.8 の目玉機能の1つであるONTAP S3の情報もいち早く公開しておりますので、こちらもご参照ください
 
 
 NetApp INSIGHT Japan まとめ             
 
 
今回のNetApp INSIGHT Japanはオンライン開催であるもののコンテンツが非常に充実したイベントでした。
アフターコロナでのデジタル化が進む中で「何でデジタル化を作り上げるか」、「デジタル化により何を求めるか」を考えるきっかけになったイベントであったと感じました。
今後様々なサービスがリリースされると思いますので引き続き紹介できればと思います。
 
 

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著者紹介

SB C&S株式会社
技術統括部 第1技術部 2課
小川 正一(VMware vExpert)

 
 

著者紹介

SB C&S株式会社
ICT事業本部 技術本部 第1技術部 2課
河村 龍