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VCF on VxRail とは? 第1回 概要およびメリットについて

仮想化
2025.02.14

皆さんこんにちは。SB C&SでVxRailのプリセールスを担当しております、湯村です。

今回は「VCF on VxRail」についてご紹介します。VMware Cloud FoundationVCF)は、VMwareのソフトウェア群とDell TechnologiesHCIVxRail」によって構成されるSoftware-Defined Data CenterSDDC)プラットフォームです。VCF on VxRailはリリースされてからしばらく経過していますが、VMware製品ポートフォリオが変更されたことによって、今再び注目されているソリューションです。

本記事では、VCFについて簡単におさらいしつつ、 VCF on VxRailを構成するメリットを中心にご紹介します。


1. VMware Cloud Foundation(VCF)とは?

VCFを導入すると、あらゆるハードウェアが "ソフトウェアによって抽象化" され管理されます。つまり、サーバー・ストレージ・ネットワークといった本来ハードウェアとして管理する必要があったコンポーネントを全て仮想化し て一元管理することができます。この仕組みをSoftware-Defined Data Center(SDDC)と呼びます。つまり、VCFはSDDCを実現するソリューションです。

VCFを導入することで、サイロ化していた企業のITシステムの集中管理が可能となり、新しいサービスの提供と効率的な管理が実現します。

VCFを構成する主要コンポーネントには、以下の4つです。
※環境に合わせて、vSphere Kubernetes Service やAria Suite もVCF環境に構築できます。

  1. ESXi・vCenter Server:サーバーリソースの仮想化
  2. vSAN:ストレージの仮想化
  3. NSX:ネットワークの仮想化
  4. SDDC Manager:SDDC環境の統合管理ツール

サーバー仮想化を担う「ESXi・vCenter Server 」、共有ストレージを担う「vSAN」、ネットワーク仮想化を実現する「NSX」があります。これらは全てハードウェアリソースが仮想化されていますので、VCFを運用する際はハードウェアのことを考えずに運用することができます。

そして、このVCFを統合管理するのが「SDDC Manager」です。SDDC Managerは、上記VMwareコンポーネントのインストールと構成を自動的に処理してくれるだけでなく、これらコンポーネントのライフサイクル管理を簡素化し、運用管理を簡素化します。

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SDDC Managerの詳しい情報については「VMware Cloud FoundationのSDDC Managerとは ? 」で説明されていますので併せてご覧ください。

2. VCF on VxRail とは?

2.1. VxRail について簡単におさらい

VCF on VxRailを知るためにはVxRailそのものについて理解する必要があります。VxRailは、Dell TechnologiesとVMware(現Broadcom)が共同開発した "唯一の" HCIです。ハードウェアはDell TechnologiesのPowerEdgeがベース、ソフトウェアはVMwareのvSphereがべベースとなったHCIです。VxRailに関する詳細情報については割愛しますが、VxRailの最大の特徴として以下のものが挙げられます。

VxRail独自のライフサイクル管理機能によって、ソフトウェア・ハードウェアのアップデート管理を一括で実行できる

一般的に、従来から幅広く導入されてきた「サーバー・SANスイッチ・ストレージ」で構成された 3Tier仮想化基盤は、「互換性確認が面倒になる」「各々のハードウェアに関する運用スキルが必要になる」「サポートがバラバラで障害対応に時間がかかる」といった課題があります。そこで、HCIを導入することでこのような課題が丸っと解決します。

しかし、実際の「HCIのライフサイクル管理」にはソフトウェアとハードウェア(ファームウェア)を別々でアップグレードする必要があるケースが多く、運用管理における重要なタスク について課題が残っていました。

VxRailはDellとVMwareが共同開発したことによって、このライフサイクル管理にも強力な機能が実装されています。それが「VxRail LCM」です。VxRailクラスターに必要なコンポーネントである、ESXi・vCenter Server・vSAN・VxRail Manager・各ノードのファームウェアが、全てひとつになったアップグレードバンドルとして提供されており、運用者はこのバンドルをvSphere Clientから適用するだけで全て自動でアップグレードすることができます。

VxRail LCM機能の中核を担っているのが「VxRail Manager」と呼ばれるVxRail独自の管理ツールです。VxRail Managerは、ライフサイクル管理だけではなくVxRailクラスターのデプロイや増設も担っており、VxRailクラスター全体の要といっても過言でありません。

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2.2. VCF on VxRail 環境構築の流れ(従来のVCFとの比較)

従来のVCFにおけるSDDC環境のデプロイについて、VCF on VxRailの場合と比較してみましょう。

Step1. Cloud BuilderのOVAファイルをデプロイする。
Cloud Builderは、SDDCの初期構築を実行するための仮想アプライアンスです。
従来VCFの場合:SDDCをデプロイする環境とは別の環境にデプロイする必要があります。
VCF on VxRailの場合:別の環境を用意する必要はなく、VxRailクラスター上にデプロイできます。

Step2. Cloud BuilderからSDDCをデプロイする
Cloud BuilderからSDDCをデプロイする方法は「Bring-up」と呼ばれており、デプロイ時に必要なパラメーターを「デプロイメントパラメーターワークブック」 と呼ばれる専用のExcelファイルに記入し、Bring-upの際にアップロードします。
従来VCFの場合:vCenter Server・vSAN・NSX・SDDC ManagerがBring-upでデプロイされるため、事前にワークブックに記入するパラメーターが多くなります。
VCF on VxRailの場合:VCF on VxRail専用のワークブックを用いてBring-upを実行しますが、既にVxRail(vCenter・vSAN)がデプロイされている状態から実行するため、ワークブックに記入するパラメーターが少なくなります。

Step3. SDDC ManagerからVIドメインをデプロイする。
Step2の段階では管理ドメインがデプロイされますが、実際に仮想マシンやコンテナ等のワークロードを展開するVIドメインはSDDC Managerからデプロイします。これは従来のVCFもVCF on VxRailも同様です。

VCF on VxRail環境におけるSDDCのデプロイについては、第2回にて詳しくご紹介しますが、VCF on VxRailのデプロイの方が簡素化されていることがお分かりいただけると思います。

2.3. VxRail 上に SDDC 環境 を構築すると何がいいのか?

さて、そのVxRail上にVCFを構築する「VCF on VxRail」はどのようなメリットがあるのでしょうか?

その①「従来のVCFよりデプロイが簡素化され、導入しやすい」

先ほどご紹介した通り、VCF on VxRailのデプロイは従来のVCFより簡素化され、導入しやすくなっています。

その②「SDDC ManagerでVCF on VxRailの全コンポーネントをアップグレードできる」

冒頭で、SDDC Managerの役割として「VCFコンポーネントのライフサイクル管理を行う」とご紹介しましたが、従来のVCF(VCF on VxRail以外の環境)ではSDDC Managerでハードウェア(ファームウェア)のアップグレードができません。一方VCF on VxRailでは、SDDC Managerだけでなく「VxRail Manager」が存在することで、ハードウェアのライフサイクル管理も可能となります。しかも、操作はSDDC Managerから全て実行することができるように設計されていますので、従来VCFの弱点だったライフサイクル管理もラクラク運用することができます。

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その③「VCFライセンスを保有していればクラウドネイティブな運用基盤へ」

Broadcom社がVMware社を買収したことで、VMwareソフトウェア群のライセンス体系がサブスクリプション型の販売形態に変化しました。ライセンスは4つのエディションで提供されています。
※2025年2月時点での情報です。

その中でも「VMware Cloud Foundation」エディションは、NSX やコンテナ環境を構築できるvSphere Kubernetes Service 、仮想環境を丸ごと監視できるAria Suite、そしてSDDC Managerといった様々な製品がVCFエディションに含まれています。例えば、VMware基盤を既に運用されているユーザーがVCFライセンスを既に保有していれば、基盤をVCF on VxRailにリプレイスすることでクラウドネイティブな仮想化基盤を導入することができます。 

その④「Dell Technologiesの一元保守を受けることができる」

さらに、VCF on VxRailは従来のVCFとは異なり、Dell Technologiesの一元保守を受けられるというメリットがあります。従来のVCFはハードウェアの一元サポートが提供されておらず、ソフトウェアとハードウェアを別々でサポート窓口に問い合わせる必要がありますが、VCF on VxRailであればソフトウェアもハードウェアも全てDell Technologiesが連絡先となるため、障害対応をスムーズに行うことができます。

以上、VCF on VxRailの概要および導入メリットについてご紹介しました。次回の記事では、VCF on VxRailのデプロイ方法についてご紹介します。 

VxRail関連の技術情報はこちら

著者紹介

SB C&S株式会社
ICT事業本部 技術本部 技術統括部 第1技術部 2課
湯村 成一 - Seiichi Yumura -

Dell Technologies社製品のプリセールス業務を行うエンジニア。
主にVxRail・Azure Stack HCIといったHCI製品を担当している。